『幾多の北』と三つの短編

『幾多の北』と三つの短編

4作品/計90分/配給:株式会社WOWOWプラス、Au Praxinoscope(オープラクシノスコープ)

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イベント情報
4/23(日)上映後、山村浩二監督のトークイベントがございます。

アヌシーもオタワも絶賛!
山村浩二の野心的初長編『幾多の北』&プロデュース作品

日本を代表するアニメーション作家として、また既に100冊を越える絵本作家としても知られる山村浩二。近年、NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」のエンディング・テーマだった「べるがなる」の作詞者でもあり、現在「みんなのうた」でオンエア中の「小さな夢」(うた:ヒグチアイ)のアニメーションも手掛けている。また今年劇場公開された犬童一心監督によるダンサー田中泯のドキュメンタリー映画『名付けようのない踊り』のアニメーション・パートを担当したことも大きな話題を呼んだ。

山村は、第75回米アカデミー賞の短編アニメーション部門にノミネートされた『頭山』(2002)を始め、これまでに発表してきた数多くの作品が世界中の映画祭で130を越える賞を受賞、世界四大アニメーション映画祭(フランスのアヌシー、カナダのオタワ、クロアチアのザグレブ、日本の広島)の全てでグランプリ受賞歴を持つ世界唯一のアニメーション作家であり、国内はもとより、世界中の作家たちから称賛を浴び続けている。

『幾多の北』(2021/64分)は、彼が月刊誌「文學界」(文藝春秋)の表紙のために2012年から2014年にかけて毎号描いていたイラストとそれに付随するテキストをアニメーションに発展させたもので、コロナ下での隔離状態の中で一気に完成させた初の長編作品。
東日本大震災後に彼自身が感じた不安や苦悩が、オランダの前衛ジャズ・ミュージシャンにして作曲家ウィレム・ブロイカー(1944-2010)のどこかサーカス的な音楽に乗せて、断片的なイメージや書かれた言葉で表現されていく。明快なストーリーを持たず、一般に「長編アニメーション」という言葉からイメージされるものとは異なる「行き切った」仕上がりで、その前例のないチャレンジは世界で大きく評価され、今年2022年の5月に行われた第61回アヌシー国際アニメーション映画祭の実験性・革新性のある長編作品を対象とする長編コントルシャン部門でクリスタル(最高賞)を、そしてこの9月には第46回オタワ国際アニメーション映画祭の長編部門でグランプリを受賞するなど、既に国内外で8つの賞に輝いている。

これまで日本国内では限られた映画祭などでしか上映されていなかったこの新作長編を、2023年1月、ついに一般劇場で公開。そして『幾多の北』に加え、墨絵のかわいい動物たちが歌に合わせてコミカルに動く山村の監督作『ホッキョクグマすっごくひま』(2021/7分)、山村が若い作家たちをプロデュースした『骨嚙み』(矢野ほなみ監督/2021/10分)、『ミニミニポッケの大きな庭で』(幸 洋子監督/2022/7分)と、三つの新作短編も同時上映。これら三作品も既に国内外の映画祭で多くの受賞を果たしており(特に矢野の『骨嚙み』は昨年2021年の第45回オタワ国際アニメーション映画祭の短編グランプリほか世界中の映画祭で28もの賞を受賞)、全四作品を合わせるとトータルの受賞数は実に49にも及ぶ(2022年11月末現在)。

今回の上映は、山村浩二の現在に加え、彼の下で育った新しい才能までも一望できるショーケースであり、現在日本の「作家によるアニメーション」の「極北」を体験出来る絶好の機会とも言える。


ミニミニポッケの大きな庭で

©2022 YUKI YOKO / Au Praxinoscope


ミニミニポッケの大きな庭で

2022年/7分/監督:幸洋子/プロデュース:山村浩二

観察、記録、実験しながら日々を紡いだ、いとをかしアニメーション詩。NHK Eテレの番組「シャキーン!」「ムジカピッコリーノ」の番組内アニメーションも手掛ける幸洋子(ゆき・ようこ)が、自身の日記を落書きのように大胆にアニメート。自由律俳句のようなテキストと本人マンによる過激な音楽、サラウンドの混淆。「アニメーションってこんなに自由なんだ!」と開いた口が塞がらない衝撃作。

ホッキョクグマすっごくひま

2021©Yamamura Animation


ホッキョクグマすっごくひま

2021年/7分/監督:山村浩二

すごく暇なホッキョクグマは、広い海で様々な海獣たちと出会う。日本語と英語の言葉遊びで、絵巻物風に描く「海獣人物戯画」。楽しい音楽と歌に合わせて、かわいい墨絵の動物たちがまったりと遊ぶ。

骨嚙み

©2021 Honami YANO, Au Praxinoscope


骨嚙み

2021年/10分/監督:矢野ほなみ/プロデュース:山村浩二

父親のお葬式で、少女は父と過ごした最後の夏を思い出す。 光の粒子のようにまたたく点描のレイヤーが映し出す、日本のとある小さな島でのいとなみ。有頂天や高田渡のPVも手掛ける矢野ほなみが、2年の歳月を費やして紙の表にも裏にも色彩を打ち続け、自身の過去と向き合った一作。その余韻は今も世界中を震わせている。

幾多の北

2021©Yamamura Animation/Miyu Production


幾多の北

2021年/64分/監督:山村浩二

ナレーションやセリフもなく、画面に現れるテキストと繊細に動く絵、そして音楽や効果音が巧みにミックスされたサウンドに包まれながら「体感」するアニメーション。音楽を聴くように、展覧会の絵を眺めるように、旅は続く。旧ソ連のタルコフスキーやハンガリーのタル・ベーラなど、ヨーロッパの実写映画作家の時間の流れをも思わせる、堂々たる大作。ポスト3.11、コロナ禍とも共振し、作品に身をゆだねるうちに、観る者それぞれの「北」が立ち上がる。

上映日時

4/22(土) 4/23(日)~4/28(金)
18:45-20:15 18:30-20:05

料金

一般 大学・専門・シニア 高校生以下
通常 ¥1800 ¥1200 ¥800
会員 ¥1500 ¥1200 ¥800