10/4(金)~
エストニアの聖なるカンフーマスター
© Homeless Bob Production / White Picture / Neda Film / Helsinki Filmi
2023年/エストニア・フィンランド・ラトビア・ギリシャ・日本ほか/115分/配給:フラッグ・鈴正
原題:NAHTAMATU VOITLUS
英題:THE INVISIBLE FIGHT
監督・脚本:ライナル・サルネット
製作:キッサ・カトリン
撮影:マート・タニエル
振付:サーシャ・ペペリャノフ
音楽:日野浩志郎
出演:ウルセル・ティルク、エステル・クントゥ、カレル・ポガ、インドレク・サムル
この道(カンフー)で生きていく。
国境警備の任に就く青年ラファエルの前に、3人のカンフーの達人が現れる。皮ジャンに身を包み、ラジカセでメタルを鳴らしながら宙を舞う彼らの前に警備隊は壊滅状態に。奇跡的生還を果たしたラファエルは、その日以降禁じられたカルチャーであるブラック・サバスの音楽やカンフーに熱狂するようになる。しかし見様見真似のカンフーでは気になった女性一人も射止めることができない。空回りの冴えない日々を送るラファエルは、ある時偶然通りかかった山奥の修道院で衝撃の出逢いを果たす。それは、見たことのないカンフーを扱う僧侶たち・・・即座に弟子入りを志願するラファエルなのだった!
“エストニアのギレルモ・デル・トロ”
奇才ライナル・サルネットが放つ
カンフー×ブラック・サバス=奇想天外な青春フュージョンコメディ!
ITとサウナの国エストニアから誰も観たことのない奇想天外すぎる青春コメディが誕生!
若くして「映画の神童」と呼ばれ、ダークファンタジー『ノベンバー』が日本でもスマッシュヒットを記録した奇才、ライナル・サルネットの最新作は、メタルとカンフーに魅入られた男の成長を比類なき映像で描く奇想天外な青春コメディだ。
ポップカルチャーが禁じられたソ連占領下のエストニアで、自らの道を信じ突き進む主人公と、それに巻き込まれていく人たち。自分らしく生きるとは?悩みを抱え日々を生きる現代人を揺さぶる普遍的テーマを描いた本作は、世界の映画祭で絶賛と笑いとショックを巻き起こす。エストニアのアカデミー賞といわれるEFTAでは11部門にノミネート、作品賞をはじめとする最多9部門を受賞した!その他世界の映画祭を席巻し、ついに日本上陸!
10/5(土)~
ラジオ下神白ーあのとき あのまちの音楽から いまここへ
©️KOMORI Haruka + Radio Shimo-Kajiro
2023年/日本/70分/配給:ラジオ下神白
監督・撮影・編集:小森はるか
出演:下神白団地の住民さん、アサダワタル、榊 裕美、鈴木詩織、江尻浩二郎、伴奏型支援バンド(池崎浩士・鶴田真菜・野崎真理子・小杉真実・岡野恵未子・上原久栄)、ほか
編集・整音:福原悠介
ミュージックビデオ撮影・録音協力:齊藤勇樹、長崎由幹、福原悠介
企画:アサダワタル
デザイン:高木市之助
広報物編集:川村庸子
協力:一般社団法人Teco、県営下神白団地自治会、市営永崎団地自治会
イベント情報
10/5(土)12:05回上映後、小森はるか監督のオンライン舞台挨拶がございます。
※都合によりオンラインの舞台挨拶となりました。
福島県復興公営住宅を舞台にした、
ちょっと変わった被災地支援活動。
「被災者」という括りでは収まらない、
一人ひとりの人生が滲んだ声の記録。
いわき市にある福島県復興公営住宅・下神白(しもかじろ)団地には、2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故によって、浪江・双葉・大熊・富岡町から避難してきた方々が暮らしている。
2016年から、まちの思い出と、当時の馴染み深い曲について話を伺い、それをラジオ番組風のCDとして届けてきたプロジェクト「ラジオ下神白」。2019年には、住民さんの思い出の曲を演奏する「伴奏型支援バンド」を結成。バンドの生演奏による歌声喫茶やミュージックビデオの制作など、音楽を通じた、ちょっと変わった被災地支援活動をカメラが追いかけた。
ラジオ、歌声喫茶、宅録、ミュージックビデオ……次々と変化する「伴走」のかたち
監督は、震災後の東北の風景と人の営みを記録し続けている映像作家の小森はるか(『息の跡』『二重のまち/交代地のうたを編む』)。本作は、文化活動家のアサダワタルを中心にした活動に、2018年から小森が記録として参加することによって生まれた。
カラオケとは違い、歌い手の歌う速度にあわせて演奏する「伴奏型支援バンド」。支援とは何か? 伴走(奏)するとはどういうことか? 「支援する/される」と言い切ることのできない、豊かなかかわりあいが丹念に写しとられている。
10/5(土)~1週間限定
幸せのイタリアーノ
©2020 WILDSIDE-VISION DISTRIBUTION
2022年/イタリア/113分/配給:オンリー・ハーツ
原題:Corro da te
監督:リッカルド・ミラー二
出演:ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ミリアム・レオーネ、ピエトロ・セルモンティ、ヴァネッサ・スカレーラ、ピラール・フォリアティ、アンドレア・ペンナッキ、カルロ・デ・ルッジエーリ、ジュリオ・バーゼ、ピエラ・デッリ・エスポスティ、ミケーレ・プラチド
字幕:関口英子
特別協力:イタリア大使館/イタリア文化会館
よこしまな“恋”は“嘘”のはじまり…
ジャンニは、ハンサムで独身、スポーツマンで女たらしの49歳。一流のアスリートをフィーチャーする有名シューズブランドのトップでもある。女性を口説くためなら何でもする彼は、新たなターゲットを誘惑するために車いすに乗って憐れみを請う。というのも彼が障がい者に対して抱く唯一の感情が憐れみだからだ。そんなジャンニが、ヴァイオリニストで車いすテニスにも情熱を注ぐキアラと出会い、人生で経験したことのない感情に激しく揺さぶられてしまう…。
人間が真に輝く瞬間を描くイタリアンコメディの巨匠監督
笑うことで浮かび上がる物事の本質
イタリア映画祭2023では笑いと涙の大反響。ヒロインを演じたミリアム・レオーネはイタリア映画記者組合よりコメディ女優賞を受賞。主人公には今のイタリア映画を牽引する第一人者ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ。パラリンピック・イヤーにふさわしい心が熱くなる傑作ラブコメディ!
世界の歪みに焦点を当て、巧みに笑いで本質を描きだすのを得意とするリッカルド・ミラーニ監督。世界を舞台に活躍してきたイタリア人女性建築家が、故郷に戻り男性中心のイタリア社会で悪戦苦闘しながらポジティブに奮闘する姿を描き、多くの女性の共感を得て日本でもスマッシュヒットなった『これが私の人生設計』(14)などで知られるイタリア映画屈指のヒットメーカーだ。笑いには人をオープンにする効用があると考えるミラーニが、コメディにするには難しいテーマを探していた時に出会ったのが本作(日本でも19年に公開されたフランス映画『パリ 嘘つきな恋』(18)のリメイク)だ。
「健康と外見の美しさが重視され、それにあてはまらない人たちは取り残されがちな今の時代にふさわしい物語だと思った。私は、どんなに思いやりのない人でも適切な条件が整えば、人間が本来持つ輝きを感じることができると信じたい。それこそが、この物語の主人公が困難に妨げられながらも歩む、さまざまなニュアンスと感情が入り混じった真実の道なのだ」(ミラー二監督)
10/12(土)~10/18(金)
カートゥーン・サルーン25周年 特集上映
カートゥーン・サルーン25周年 特集上映
10/12(土)~10/18(金)
カートゥーン・サルーン25周年 特集上映
10/12(土)~10/18(金)
アイルランドのアニメーションスタジオ「カートゥーン・サルーン」は今年設立25周年、それを記念して、長編4作品+短編2作品を1週間日替わりでリバイバル上映します。
上映作品は、「ケルト3部作」『ブレンダンとケルズの秘密』『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』『ウルフウォーカー』に『ブレッドウィナー』を加えた長編4作品と、『レイト・アフタヌーン』、劇場初上映となる『アマゾンの森から来たモンスター』の短編2作品。
舞台となる土地の歴史や文化を下敷きにしたストーリー、絵本の世界から飛び出てきたかのような美しく幻想的な描写と心に響く音楽。すべてアカデミー賞®アカデミー長編アニメ賞にノミネートされた4作品に加え、貴重な短編作品が一度に劇場でご覧いただけます。ぜひこの機会にカートゥーン・サルーンの珠玉の作品群をお楽しみください!
※すべて字幕版での上映となります。
入場料 特別料金1,600円均一
※特別興行につき、前売り券、ポイント鑑賞券、ご招待券はご利用いただけません。
※各種サービスデー適応外
入場者プレゼント 先着300名様に、ポストカードをプレゼント!(数量限定)
配給 チャイルド・フィルム、ミラクルヴォイス、ミッドシップ
公式ホームページ https://child-film.com/films/cs25th
上映スケジュール
10/12(土) | 10/13(日) | 10/14(月祝) | 10/15(火) | 10/16(水) | 10/17(木) | 10/18(金) |
11:30-13:00 ブレンダンとケルズの秘密 + レイト・アフタヌーン |
11:30-13:15 ソング・オブ・ザ・シー 海のうた + レイト・アフタヌーン |
11:30-13:15 ブレッドウィナー + アマゾンの森から来たモンスター |
11:30-13:16 ウルフウォーカー + アマゾンの森から来たモンスター |
11:30-13:00 ブレンダンとケルズの秘密 + レイト・アフタヌーン |
11:30-13:15 ブレッドウィナー + レイト・アフタヌーン |
11:30-13:16 ウルフウォーカー + アマゾンの森から来たモンスター |
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作品紹介
ブレンダンとケルズの秘密
©️Les Amateurs, Vivi Film, Cartoon Saloon
原題:The Secret of Kells
監督・原案:トム・ムーア
脚本:トム・ムーア、ファブリス・ジョルコウスキー
音楽:ブリュノ・クレ、KiLA
出演者(声):イヴァン・マクガイア、ブレンダン・グリーソン、ミック・ラリー
9世紀のアイルランド。バイキングの襲来にそなえ、ケルズ修道院を囲む塀を作る大規模な工事が続く中、バイキングに襲われたスコットランドのアイオナ島から、高名な修道士エイダンが、一冊の「聖なる書」を携え逃れて来る。その本には隠された知恵と力が秘められていた。本を完成させるためブレンダンは、インクの原料である、ある植物の実を探しに、危険を冒して、不思議な生き物が隠れ住む魔法の森へ出かける。森でオオカミの妖精アシュリンの助けを得てブレンダンは、無事に実を持ち帰るが、バイキングの襲来がケルズにも迫っていた。ブレンダンは本の力によって、迫りくる闇を打ち砕き、世界に光を取り戻すことができるのか?
*2009年アヌシー国際アニメーション映画祭観客賞
*2009年ソウル国際マンガ・アニメーション映画祭グランプリ受賞
*第82回アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート
ソング・オブ・ザ・シー 海のうた
©Cartoon Saloon, Melusine Productions, The Big Farm, Superprod, Norlum
2014年/アイルランド、デンマーク、ベルギー、ルクセンブルク、フランス/93分
原題:Song of the Sea
監督・原案:トム・ムーア
脚本:ウィル・コリンズ
音楽:ブリュノ・クレ、KiLA
歌:リサ・ハニガン、ノルウェン・ルロワ
少年ベンと、妹シアーシャは、消えゆく古代の魔法世界を守るため、不思議な旅に出発する。海で暮らすアザラシが陸に上がり人間の姿をしたセルキーになるという、アイルランドに伝わる神話をもとにした作品。
*第87回アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート
*第28回ヨーロピアン・フィルム・アワード長編アニメ賞受賞
*2015年東京アニメアワードフェスティバル グランプリ受賞
ほか多数
ブレッドウィナー
©2017 Breadwinner Canada Inc./Cartoon Saloon (Breadwinner) Limited/ Melusine Productions S.A
2019年/アイルランド、カナダ、ルクセンブルク/94分
原題:The Breadwinner
監督:ノラ・トゥーミー
脚本:アニータ・ドロン
原作:デボラ・エリス
出演者(声):サーラ・チャウディリー、ソーマ・チハヤー、ラーラ・シディーク
タリバン政権下、争いによって荒廃したカブールの町で、11歳のパヴァーナは、家族と小さな部屋に暮らしている。足の悪い父は、アフガニスタンの歴史を美しい伝説になぞらえて話してくれていた。ある日突然父親がタリバンに連行され、家族の暮らしは一変する。タリバンは女性のみの外出を禁じているため、残された者だけではお金を稼ぐことも、食料を買いに行くこともできない。家族のためにパヴァーナは、髪を切り少年になりすまし町に出て、父親を救いだす方法を探そうと決意する。
*第90回アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート
*第75回ゴールデングローブ賞最優秀長編アニメーション映画賞ノミネート
ほか多数
ウルフウォーカー
©WolfWalkers 2020
2020年/ルクセンブルク、アイルランド、アメリカ/103分
原題:Wolfwalkers
監督:トム・ムーア、ロス・スチュワート
脚本:ウィリアム・コリンズ
音楽:ブリュノ・クレ、KiLA
楽曲:オーロラ
出演者(声):オナー・ニーフシー、エヴァ・ウィッテカー、ショーン・ビーン
中世アイルランドの町キルケニー。イングランドからオオカミ退治のためにやって来たハンターを父に持つ少女ロビンが、森の中で友だちになったのは“ウルフウォーカー”のメーヴだった。人間とオオカミがひとつの体に共存し、魔法の力で傷を癒すヒーラーでもある彼女とロビンが交わした約束は、図らずも父を窮地に陥れるものだった。だが、少女は勇気を持って信じる道を進もうとする。
*第93回アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート
*第78回ゴールデングローブ賞最優秀長編アニメーション映画賞ノミネート
ほか多数
レイト・アフタヌーン
©Cartoon Saloon 2017
2017年 / アイルランド / 10分
原題:Late Afternoon
監督:ルイーズ・バグナル
出演者(声):フィオヌーラ・フラナガン、ルーシー・オコンネル
老婦人の記憶は今やあいまいとなり、小さなきっかけで子ども時代、過去へとさかのぼっていく。温かなタッチで描かれた家族の絆の物語。老婦人を『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』のおばあちゃん役、アイルランドを代表する名女優フィオヌーラ・フラナガンが担当したほか、彼女の子ども時代を同作のシアーシャ役であるルーシー・オコンネルが担当した。
*第91回アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート
アマゾンの森から来たモンスター
©2020 Cartoon Saloon / Greenpeace
2020年/アイルランド/3分
原題:There’s a Monster in My Kitchen
監督:トム・ムーア、ファビアン・アーリンハウザー
制作: マザー
アマゾン森林破壊の原因に警鐘を鳴らし、多くの人々が行動を起こすきっかけとなった作品。本作は、クリエイティブ・エージェンシーのマザーの依頼で制作された。2018年の『ランタンの物語』に続く作品で、ゴールデングローブ賞にノミネートされた人気TVシリーズ「ナルコス」のスター、ワグネル・モウラが声を担当している。テーマもスタイルも『ウルフウォーカーズ』から引き継がれており、同じアーティストが多数参加、音楽はブルーノ・クレが担当している。
10/12(土)~
SUPER HAPPY FOREVER
©2024 NOBO/MLD Films/Incline/High Endz
2024年/⽇本=フランス/94分/配給:コピアポア・フィルム
監督:五十嵐耕平
脚本:五十嵐耕平、久保寺晃一
音楽:櫻木大悟(D.A.N.)
プロデューサー:大木真琴、江本優作
共同プロデューサー:マルタン・ベルティエ、ダミアン・マニヴェル
ラインプロデューサー:上田真之
撮影:高橋航
編集:大川景子、五十嵐耕平、ダミアン・マニヴェル
出演:佐野弘樹、宮田佳典、山本奈衣瑠、ホアン・ヌ・クイン、笠島智、海沼未羽、⾜立智充、影山祐⼦、矢嶋俊作
どこか、また、海の彼方で
俊英・五十嵐耕平監督が紡ぐ、⻘春期の終わりを迎えた⼈々の
”奇跡のような幸福なひととき”
2023年8月19日、伊豆にある海辺のリゾートホテルを訪れた幼馴染の佐野と宮田。まもなく閉館を迎えるこのホテルでは、アンをはじめとしたベトナム人の従業員たちが、ひと足早く退職日を迎えようとしている。佐野は、5年前にここで出会い恋に落ちた妻・凪を最近亡くしたばかりだった。妻との思い出に固執し自暴自棄になる姿を見かねて、宮田は友人として助言をするものの、あるセミナーに傾倒している宮田の言葉は佐野には届かない。2人は少ない言葉を交わしながら、閉店した思い出のレストランや遊覧船を巡り、かつて失くした赤い帽子を探し始める。
第67回ロカルノ国際映画祭新鋭監督コンペティション部門正式出品作 『息を殺して』や、第74回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に正式出品されたダミアン・マニヴェルとの共同監督作『泳ぎすぎた夜』など、世界が注目する五十嵐耕平監督による待望の長編最新作『SUPER HAPPY FOREVER』。第81回ヴェネチア国際映画祭ヴェニス・デイズ部門では日本映画初となるオープニング上映作品として選出された。
本作にはダミアン・マニヴェルも共同プロデューサーとして参加し、ポストプロダクションをフランスで行うなど、日仏合作で製作。短編に引き続き佐野役を『TOCKA [タスカー]』や『愛にイナズマ』、『浜の朝日の嘘つきどもと』での好演も光った佐野弘樹が、宮田役を『サボテンと海底』や「TOKYO VICE Season2」、濱口竜介監督『悪は存在しない』で強烈な印象を残した宮田佳典が務める。そして、今泉力哉監督『猫は逃げた』で注目を集め、近年では『走れない人の走り方』など話題作への出演が続く山本奈衣瑠が凪役を演じた。
思いがけない出会いがもたらす幸せも、別離がもたらす悲しみも、月日とともに過ぎていく。しかし、“人生のかけがえのない瞬間”は、そんな時の流れにこそ隠れている。本作では5年前と現在という2つの時間の中で、「青春期の終わり」を迎えた人々の奇跡のようなひとときを、さりげなくも鮮やかに記録した。
10/12(土)~
ヒューマン・ポジション
©Vesterhavet 2022
022年/ノルウェー/78分/提供:クレプスキュール フィルム、シネマ サクセション/配給:クレプスキュール フィルム
原題:A Human Position
監督・脚本・編集:アンダース・エンブレム
撮影:マイケル・マーク・ランハム
音楽:エイリク・スリニング
製作:スティアン・スキャルタッド、アンダース・エンブレム
出演:アマリエ・イプセン・ジェンセン、マリア・アグマロ、ラース・ハルヴォー・アンドレアセン
日本語字幕:西村美須寿
【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,500円(税込)※特典B3ポスターを当館受付にて発売中!
そっと寄り添う ゆっくり生まれ変わる ─────
青くて、物悲しいノルウェーの長い夏。うっとりするような静けさの中、パステルカラーに包まれた港町の丘をゆっくりと登って振り返るアスタ。新聞社に勤める彼女は、地元のホッケーチーム、アールヌーボー建築を保存するための小さなデモやクルーズ船の景気など地元の人々を取材しニュースにする。彼女の支えとなるガールフレンドのライヴは、デザインチェアを修復し、キーボードを演奏し、作曲をする。子猫が歩きまわる家で、料理を作ったり、古い映画を観たり、ボードゲームを楽しんだりと二人は穏やかな時間を過ごしている。ある日、アスタは10年間ノルウェーに住み、働いてきた難民のアスランが強制送還されたという記事を目にする。その事件を調べて行くにつれ、アスタは自身を覆っていた無気力感を払拭し、仕事とプライベートの両方で自分が求める”心の居場所”を次第に見出していく…。
夢のような時間がゆっくりと流れる、ノルウェーの哀愁漂う港町… 人生のちいさな一歩を踏み出す、優しさに満ちたスローシネマ。
監督は、本作が長編2作目となるノルウェーが生んだ才能アンダース・エンブレム。フィヨルドに囲まれ、絵画のような色彩豊かな風景で「ノルウェーで最も美しい街」と称される監督の故郷オーレスンを舞台に、写真集を捲るように優しく美しい筆致で丁寧に描く。主人公アスタを演じるのは、監督デビュー作『HURRY SLOWLY(原題)』に続いて再びタッグを組んだアマリエ・イプセン・ジェンセン。彼女に優しく寄り添うライヴ役にはマリア・アグマロ。柔道着を着て、着物を着る。日本の映画を観て、囲碁を打つ。箸を使って食事をする。少しずつ描かれる二人の機微を愛でるように心静かに見守るプロセスは、観るものを心和む気持ちに導いてくれるだろう。
何かを声高に叫ぶわけでもなく、世界で最も裕福な国の一つといわれるノルウェーに対する、微妙な疑問とメッセージをそっと囁くように投げかける。心拍数を安定させながら、心乱さず高揚させてくれる物語は、”語らずに語る”全てが愛おしいスローシネマだ。
10/12(土)~
画家ボナール ピエールとマルト
©Pineal Culture Studio
2023 年/123 分/フランス/配給:オンリー・ハーツ
原題:BONNARD, Pierre et Marthe
監督:マルタン・プロヴォ
出演:セシル・ドゥ・フランス、ヴァンサン・マケーニュ、ステイシー・マーティン、アヌーク・グランベール、アンドレ・マルコン
⽇本語字幕:松岡葉⼦
後援:在⽇フランス⼤使館、アンスティチュ・フランセ
「幸福の画家」は幸せだったのか?
幸福の画家の「妻」は幸せだったのか?
ふたりの想いが今明かされる…
1893年、ピエールとマルトは画家とモデルとしてパリで出会う。ブルジョア出身のピエールは謎めいて型破りなマルトに強く惹かれ、二人はともに暮らし始める。田舎に家を見つけ社交的な世界から遠ざかり、クロード・モネなど限られた友人との交流を除いては半ば隠遁生活の中で絵画制作に励むピエール。マルトをモデルにした赤裸々な絵画は評判となりピエールは展覧会で大成功をおさめる。1914年第一次世界大戦が始まった夏、仕事で毎週パリに赴くピエールに不安がつのるマルト、終戦間近にはパリのアトリエでピエールのモデルになっている美術学校生ルネと出くわす。なぜかマルトはルネを気に入り3人の関係は複雑なものに…。
2018年には日本でも国立新美術館でオルセー美術館のコレクションを中心とした大規模な展覧会が催された「幸福の画家」ピエール・ボナール(1867-1947)。
彼は、印象派に続くナビ派の代表格で、日本美術から大きな影響を受け「日本かぶれのナビ」とも呼ばれた。近年の再評価と人気は非常に高く、20世紀の最も偉大な画家の一人という評価が揺るぎないものとなっている。大胆な色彩と日常の些細な事象を好んで描いたことで知られるボナールだが、平面的な画面構成を試みたり、見ることのプロセスそのものを描こうとするなど、終生実験的な姿勢を貫いていた。
本映画は、ピエールと生涯の伴侶となるマルトの1893年パリでの出会いから、第一次世界大戦をはさみ晩年までの二人の波乱に満ちた関係を軸にその歩みを描いている。謎めいたマルトは「幸福の画家」にとって、単なるミューズをはるかに超えた存在となり、ピエールは生涯で描いた2000点に及ぶ作品の3分の1に彼女を登場させた。二人は当時の常識からはかけ離れた破天荒な愛の関係を営むが、だからこそ充実した芸術的成果を得ることができたのかもしれない。この映画はそうした彼らの実話に基づいて作られた。
*横浜フランス映画祭2024 観客賞受賞
*第76回カンヌ国際映画祭 カンヌ・プルミエール正式出品
10/12(土)~1週間限定アンコール上映!
MONTEREY POP モンタレー・ポップ
©2002 THE MONTEREY INTERNATIONAL POP FESTIVAL FOUNDATION, INC., AND PENNEBAKER HEGEDUS FILMS, INC. ©2017 JANUS FILMS
1968年/アメリカ/78分/配給:オンリー・ハーツ
原題:Monterey Pop
監督:D.A.ペネベイカー
字幕:George Cockle ザ・サーファーズ・ジャーナル・ジャパン
出演:ママス&パパス、キャンド・ヒート、サイモン&ガーファンクル、ヒュー・マセケラ、ジェファーソン・エアプレイン、ジャニス・ジョプリン、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー、エリック・バードン&ジ・アニマルズ、ザ・フー、カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ、オーティス・レディング、ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス、ラヴィ・シャンカール
音楽、愛そして花
…それは見果てぬ夢だったのだろうか?
1967年6月、音楽界では歴史の分岐点になるふたつの事件が起きた。ひとつはビートルズの歴史的な傑作アルバム「サージェント・ペッパー・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のリリース。もうひとつは、本作が記録した世界初の大規模なロックイベント、モンタレー国際ポップフェスティバルだ。後者はチャリティイベントとして3日間に渡って行われ、20万人以上の観客を動員。69年のウッドストックに先立つ画期的な出来事として長く語り継がれることになった。
登場するのは、新しい時代の到来を告げ音楽界のレジェンドとなったミュージシャンばかり。今も史上最高のロック・ギタリストと崇められるジミ・ヘンドリックスはギターに火をつける衝撃的なプレイを見せ、女性ロックシンガーの原点ジャニス・ジョプリンは全身から声を絞り出すような圧巻のヴォーカルを披露。当時24歳だった二人は3年後にドラッグの過剰摂取のため他界。25歳だった伝説のソウルシンガー、オーティス・レディングも魂を揺さぶる歌声を聴かせるが半年後に飛行機事故でこの世を去る。フォークロック界の雄サイモン&ガーファンクル、60年代カウンターカルチャーの象徴ジェファーソン・エアプレイン、ブリティッシュロック界の大物ザ・フーやエリック・バードン&ジ・アニマルズ、インド音楽の名手でビートルズのジョージ・ハリスンも師事したラヴィ・シャンカール等々。
主催者のジョン・フィリップスもママス&パパスとして舞台に登場。彼が作ったフェスのテーマ曲「花のサンフランシスコ」(歌・スコット・マッケンジー)の「サンフランシスコへ行くならば、忘れないで花の首飾り」という歌詞は、まさに当時、ヒッピーの若者たちが起こした<フラワー・パワー>を象徴している。彼らは<Music, Love&Flowers>を旗印にして、激化していたヴェトナム戦争に対する反戦運動を盛り上げた。
監督のペネベイカーは、ボブ・ディランの65年の英国ツアーを記録した傑作『ドント・ルック・バック』(67)、デヴィッド・ボウイの73年の記念碑的なステージ『ジギー・スターダスト』(79)も映画化。2012年にはアカデミー賞名誉賞を受賞している。
音楽映画史に残る傑作でありながら日本で正式に劇場公開されたことのない本作が、今回レストアされた4K・5.1CH版という最良の状態で上映されることになった。本作は2018年、アメリカ国立フィルム保存委員会により「文化的、歴史的、また芸術的に重要」ということで半永久的保存推奨作品に登録されている。
10/19(土)~
あなたのおみとり
©️ EIGA no MURA
2024年/日本/95分 /配給・宣伝:リガード
製作・監督・撮影・編集:村上浩康
出演:村上壮 村上幸子
タイトル:岩渕俊彦(紙町銅版画工房)
整音:河村大(スタジオ・アーム)
【前売券】全国共通鑑賞券 1,500円(税込)を当館受付にて発売中!
イベント情報
10/20(日)上映後、村上浩康監督の舞台挨拶がございます。
家での最期を希望した父と、看取りを決意した母。
息子のカメラが映し出す、戸惑いと焦燥、驚きと喜び、感謝と労い…。
生と死に向き合う日々をありのままにみつめたドキュメンタリー。
「うちに帰りたい」。末期癌で入退院を繰り返していた父の言葉で、母は家での看取りを決意した。介護ベッドを置き、ヘルパーさんや訪問看護師さんが出入りする自宅で始まった父と母の新しい生活。ベッドから動けない父は何かと世話を焼く母に「ありがとう」と口にするようになり、母はできる限り父の近くで時間を過ごすようになった。少しずつ食事が摂れなくなり、痩せ、目を瞑る時間が増えていく父。持病の悪化で自身の健康にも不安を抱えることになった母。ヘルパーさんたちは毎日父の元を訪れ、丁寧にケアを行い、時に母の相談相手にもなってくれている。閉じていく命の前で広がっていく人と人のつながり。生と死のあわいに訪れる、夢のようなひととき。
40日余りにわたる両親の最後の日々をみつめたのは、『東京干潟』(2019)、『たまねこ、たまびと』(2022)などで自然と人間との結びつきを描き続けてきた映画監督の村上浩康。介護生活を続ける両親と積極的に関わりたいとの思いから回し始めたカメラには、「老老介護」「オレオレ詐欺」といった高齢者を取り巻く社会問題や、花や虫などの様々な命が映り込む。高齢化が進み続ける日本で介護や看取りは他人事ではなく、「看取り難民」という言葉も生まれている。いつ何が起こり、いつ終わるのかもわからない日常をどう生きるか。不思議な爽快感にあふれた、ある看取りの記録。
10/19(土)~
拳と祈り ―袴田巖の生涯―
©Rain field Production
2024年/159分/日本/配給:太秦
監督・撮影・編集:笠井千晶
音楽:Stephen Pottinger
ナレーター:中本 修、棚橋真典
撮影協力:三上誠志、原 徳則、永田靖、福田典嗣(スチール)
特別協力:WBC(世界ボクシング評議会)、日本プロボクシング協会 袴田巖支援委員会、川崎新田ボクシングジム
出演:袴田巖、袴田秀子
【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,500円(税込)を当館受付にて発売中!
獄中生活47年7ヶ月。30歳の元プロボクサーは、88歳の死刑囚となった。
生きて還った袴田巖の知られざる闘いの物語。
2014年3月、東京拘置所。死刑囚の袴田巖さんが、突如釈放された。1966年6月に静岡県で味噌会社専務一家4人が殺害され、放火された事件の犯人とされ、47年7ヶ月もの獄中生活を送ってきた。明日突然、死刑が執行されるかもしれない。そんな恐怖の日々をくぐり抜け、30歳の青年は78歳になっていた。着の身着のままワゴン車で東京拘置所を後にした時、本作監督の笠井千晶が助手席でまわすカメラが捉えたのは、まるで夢から覚めたような袴田さんの表情だった。死刑囚が再審開始決定と同時に釈放されるという、驚くべき事態を当日のニュースは劇的に報道した。その夜、半世紀近く引き裂かれていた姉と弟が枕を並べた。拘置所の壁に隔てられ、想像を絶する苦難を生き抜いたものの、奪われた時間は戻らない。なぜこれほどの試練が与えられなければならなかったのか。言葉にしがたい悲しみや喪失を2人の寝息が静かに包み込む。さらに続くことになる司法との闘いを覚悟しながら、カメラは2人の生活を記録し、対話を重ね、袴田さんの心の内面深くに迫っていく。
拳ひとつで闘った記憶は生き抜くための支えとなった。
前代未聞の釈放から10年、ついに再審判決を迎える――。
プロボクサーとして青春を駆け抜けた袴田さんは30歳で突然、逮捕された。無実の訴えは裁判所、そして世間からも黙殺された。そんな過酷な状況下でも、リングに上がり拳ひとつで闘った遠い記憶は、生き抜くための支えとなっていた。やがて袴田さんは獄中で、自らを「神」と名乗り始める。一方で、釈放され故郷・浜松に戻ってからもボクサーとしての記憶が袴田さんの足を思い出の地へと向かわせる。弟の無罪を信じて闘ってきた秀子さんは、そんな巖さんを明るく見守り、「この映画は、笑ってるとこでも泣いてるとこでも、私は真実のものを伝えてくれればいいと思ってます」と語る。生きて歩く死刑囚——。その存在は、権力によって覆い隠されてきた「死刑」という刑罰の残酷さを、白日のもとに晒す。そして、時に人の理解を超えた袴田さんの言動が意味するものとは何なのか。映画は、やがて一つの答えにたどり着く。
釈放から10年の節目に完成する本作は、死刑囚のまま生きることを強いられた、袴田巖さんの闘いの軌跡だ。22年間にわたって袴田さんを追い続けてきた笠井監督は現在もカメラを回し続けている。そして、来るべき再審判決の結末を見届け、いよいよ劇場公開される。
10/26(土)~
西湖畔(せいこはん)に生きる
©Hangzhou Enlightenment Films
2023年/中国/118分/配給:ムヴィオラ、面白映画
原題:草木人間
英語題:Dwelling by the West Lake
監督:グー・シャオガン
撮影監督:グオ・ダーミン
音楽:梅林茂
出演:ウー・レイ、ジアン・チンチン、チェン・ジエンビン、ワン・ジアジア
【前売券】ムビチケカード 1,500円(税込)を当館受付にて発売中!特典:オリジナルポストカード(5種の中から1種ランダム)をプレゼント!
山水画の世界を映画で極めたい――
『春江水暖~しゅんこうすいだん』監督が挑んだ
人の世の悪さえ包み込む、驚嘆の《山水映画》第二弾!
杭州、西湖のほとり。仏教故事にインスパイアされた物語。最高峰の中国茶・龍井茶の生産地で知られる西湖。そのほとりに暮らす母・タイホアと息子ムーリエン。母は、山の美しい茶畑で茶摘みの仕事をしていたが、あることをきっかけに茶畑を追い出され、やがて違法ビジネスの地獄に堕ちる……。釈迦の十大弟子のひとり・目連が地獄に堕ちた母親を救う物語「目連救母」現代版。
注目の人気男優ウー・レイの純粋、
実力派女優ジアン・チンチンの狂気
デビュー作『春江水暖~しゅんこうすいだん』で世界中から注目されたグー・シャオガン監督、挑戦の第二作。人気俳優のウー・レイとジアン・チンチンの競演、天上の茶畑から違法ビジネスの地獄へ急降下する映像美、音楽の梅林茂(『花様年華』)ら第一線スタッフで生み出した密度の高い映画美学。山水画の哲学をさらに追及した本年度の必見作。
10/26(土)~1週間限定
狼が羊に恋をするとき
©2012 Strawberry Time Films ALL RIGHTS RESERVED
2012年/台湾/85分/配給:台湾映画同好会、配給協力:台湾映画社
原題:南方小羊牧場
監督・脚本:ホウ・チーラン
出演:クー・チェンドン、ジエン・マンシュウ、グオ・シューヤオ
字幕:鈴木真理子
協力:SKIPシティ国際Dシネマ映画祭、トリウッド
イベント情報
10/27(日)16:40回上映後、トークイベントを開催します。
登壇者:三文字昌也(さんもんじ まさや)さん/都市デザイナー、合同会社流動商店共同代表、東京大学特任研究員
【台北・南陽街から始まる 台湾都市のディープな読み解き方(仮)】
近代台湾の都市史を研究する三文字昌也さんに、南陽街を基点に都市台北を深く読み解いていただきます。
「予備校に行くね」——メモを残し突然姿を消した恋人を追って、 青年タンがたどり着いたのは、台北駅近くの予備校街〈南陽街〉だった
「予備校に行くね」――メモを残し、恋人のイーインが姿を消した。落ち込むタンが彼女を捜しにやってきたのは台北駅近くの予備校街<南陽街>。タンはひょんなことから印刷店店長に拾われ、住み込みで働くことに。近隣の予備校から依頼されるテスト用紙の印刷に明け暮れる日々、タンはとある予備校の原稿に羊のイラストが描かれていることに気が付く。羊のイラストを描いていたのは「必勝予備校」のアシスタント・シャオヤン(小羊)だった。働きながらイラストレーターを目指す彼女は、海外留学してしまった元カレの帰りをこの街で待っていたのだ。タンはある日、羊のイラストが描かれたテスト用紙の原稿に出来心から狼のイラストを描き足し、印刷してしまう。テスト用紙上で会話を始めた狼と羊は瞬く間に学生たちの話題に。「狼は誰?」。そんなある日、タンはシャオヤンが元カレのことをあきらめ、この街を去ろうとしていることを知り…
台北駅近くに実在する予備校街〈南陽街〉を舞台に、実写にアニメーションやコマ撮りを加え独特の世界観を創り出すのは、巨匠ホウ・シャオシェン監督がプロデュースした『ONE DAY いつか(原題:有一天)』(10)で長編デビューしたホウ・チーラン監督。時代性を意識し、そこに共通する記憶に独自の視点と美しい構図で挑み続ける監督の長編2作目である。
本作は2012年秋の台湾公開後、日本ではSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013長編コンペティション部門、カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2014(東京)、台湾映画祭2015(福岡)と相次いで上映されたが、一般公開されないまま長らく〝幻の傑作〟となっていた。
主演は『赤い糸 輪廻のひみつ』のクー・チェンドン。大ヒット青春映画『あの頃、君を追いかけた』に続く主演2作目だった。そしてクー・チェンドンの相手役を演じた実力派女優ジエン・マンシュウにとっては、本作が映画初出演にして初主演となる記念碑的作品である。ふたりの、初々しいながらもその後の活躍を予感させる演技が光る。
10/26(土)~
ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ
©2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会
2024年/日本/配給:渋谷プロダクション
監督・脚本:阪元裕吾
アクション監督:園村健介
音楽:SUPA LOVE
主題歌:女王蜂「狂詩曲」(Sony Music Labels Inc.)
挿入歌:忘れらんねえよwithちさと&まひろ(fromベイビーわるきゅーれ)「そっか、自由か。」(Bandwagon/UNIVERSAL MUSIC)
特別協力:宮崎県
出演:髙石あかり、伊澤彩織、水石亜飛夢、中井友望、飛永 翼(ラバーガール)、大谷主水、かいばしら、カルマ、Mr.バニー、前田敦子、池松壮亮
『ベイビーわるきゅーれ』シリーズ待望の第3弾!
ちさと×まひろの前に史上最強の殺し屋、現る。
殺し屋協会に所属するプロの殺し屋コンビ、杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)が宮崎県に出張。到着早々ミッションをこなし、バカンス気分を満喫していたが、ちさとはとあることに気づく。今日は相棒まひろの誕生日、しかしこの後は次の殺しの予定が入っていてプレゼントを用意する暇もない!内心の焦りを隠しつつ、ターゲットがいる宮崎県庁に向かう。チンピラを一人消すだけの簡単な仕事のはずが、指定された場所にいたのはターゲットに銃を向けている謎の男。男の正体は一匹狼の殺し屋、冬村かえで(池松壮亮)。150人殺しの達成を目指す“史上最強の敵”が、ちさととまひろを絶体絶命のピンチに追い詰めるのだった・・・。
11/2(土)~
ドキュメンタリー オブ ベイビーわるきゅーれ
©2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会
2024年/日本/配給:渋谷プロダクション
監督・撮影・編集:高橋明大
製作:奥村雄二、人見剛史、松原 憲、小林良二、和田佳恵、五十嵐淳之、後藤 剛
エグゼクティブプロデューサー:鈴木祐介
企画・プロデューサー:小林良二
構成:高橋明大、赤坂浩亮
撮影協力:小林雄一郎
音楽:根田義市
出演:髙石あかり、伊澤彩織、池松壮亮、前田敦子、大谷主水、カルマ、水石亜飛夢、中井友望、阪元裕吾、園村健介、鈴木祐介
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』の壮絶な撮影現場に密着したメイキングドキュメンタリー
2021年7月、超低予算のアクション映画『ベイビーわるきゅーれ』は公開されるやいなや、日本のアクション界に衝撃を巻き起こした。脱力系殺し屋コンビ、ちさととまひろの日常を、ゆるゆるトークとソリッドなアクションの合せ技で描き出し、若き俊英、阪元裕吾監督の卓越したセンスと、白熱のスタントのハイクオリティを見せつけたのだ。
また、今や出演作が目白押しの人気俳優となったちさと役の高石あかりと、本業はスタントパフォーマーで「ベビわる」で映画初主演を果たしたまひろ役、伊澤彩織という名コンビの、途方もない実力を世に知らしめることになった。
「ベビわる」はたちまち熱狂的なファンを生み、翌年には続編『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』が公開。そして24年には第3作にして集大成となる『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』が公開となる。さらに24年秋にはテレビシリーズ「ベイビーわるきゅーれ エブリディ!」が放送されるなど、「ベビわる」ワールドは増殖を続けている。
そして、日本のアクションの最高峰にして最前線と呼ぶべき「ベビわる」の舞台裏が、ついにドキュメンタリー映画として劇場公開されることが決定!宮崎県でロケを敢行した『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』の制作現場に完全密着。ジョン・ウーとのコラボでも知られるアクション監督、園村健介の怒涛のアクションがいかにして生まれるのかをつまびらかに明かすだけでなく、現場に襲いかかるトラブルの数々、体力と精神力のギリギリまで追い詰められる出演者たち、予想外の事態に妥協を迫られる阪元監督らの苦悩など、決して順風満帆とはいかない映画作りの生々しい現場のリアルが映し出される。
また、従来のメイキングドキュメンタリーと一線を画すのは、“スタント”という人間と人間のぶつかり合いを、アスリートの闘いを観察するかのように克明に記録していること。史上最強の敵、冬村かえでを怪演した池松壮亮と、ちさととまひろの死闘シーンの撮影の模様では、演技とスタントが渾然一体となり、技と技とがせめぎあう緊張感に息を呑む。
我々がアクションを観て興奮するのは一瞬のできごとだが、それは氷山の一角に過ぎない。“映画”といううたかたの夢のために注ぎ込まれたエネルギーの総量に、誰もが圧倒さるはず。世界最高レベルのアクションの現場を特等席で眺める興奮。そしてここでしか得られないカタルシスと感動を与えてくれるメイキングドキュメンタリーが完成した。
11/2(土)~
フレデリック・ワイズマン傑作選 〈変容するアメリカ〉
フレデリック・ワイズマン傑作選
〈変容するアメリカ〉
11/2(土)-11/15(金)
フレデリック・ワイズマン傑作選
〈変容するアメリカ〉
11/2(土)-11/15(金)
現存する最も偉大なドキュメンタリー監督と言われるフレデリック・ワイズマン。1930年ボストン生まれの94歳の巨匠は、今年も新作『至福のレストラン 三つ星 トロワグロ』が日本公開され、フィルム時代の作品33本が4K復元デジタル化されるなど話題を提供しています。1967年の第一作以来、半世紀以上にわたって発表したドキュメンタリーは全44作。その中でも、ほぼ大半を占めるアメリカ社会の記録は、繁栄と矛盾に満ちた大国の姿を伝える偉大な足跡と讃えられています。
今年11月に行われるアメリカ合衆国大統領選挙。ドナルド・トランプ前大統領の動向によって「もしトラ」「ほぼトラ」という言葉がニュースを賑わせる今、ワイズマン作品を通して〈変容するアメリカ〉を見る特集上映を企画しました。
上映作品は、記念すべき第一作、1967年に完成させながら合衆国裁判によって1991年まで一般上映が認められなかった『チチカット・フォーリーズ』、 オバマ政権からトランプ政権へ、かつてない変化を経験した2010年代のアメリカ社会を記録し、民主主義の価値を問うた5作、近年の大ヒット作『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』『ボストン市庁舎』、劇場未公開の『大学 -At Berkeley』『インディアナ州モンロヴィア』、年内が最終上映となる後期の傑作『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』を上映いたします。
あらためてフレデリック・ワイズマン傑作選を通して、〈変容するアメリカ〉をご覧ください。
主催 ムヴィオラ、ミモザフィルムズ、チャイルド・フィルム
公式ホームページ https://moviola.jp/wiseman_america2024/
入場料一般1,800円/会員1,500円/大専・シニア1,200円/高校生以下800円
※リピーター割:半券提示で一般料金が300円引き
上映作品とスケジュール
11/2(土) | 11/3(日) | 11/4(月祝) | 11/5(火) | 11/6(水) | 11/7(木) | 11/8(金) |
14:25-15:50 チチカット・フォーリーズ |
14:25-18:40 大学 途中休憩あり |
14:25-17:40 ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ |
14:25-18:10 ニューヨーク公共図書館 途中休憩あり |
14:25-16:55 インディアナ州モンロヴィア |
14:25-17:40 ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ |
14:25-19:10 ボストン市庁舎 途中休憩あり |
16:45-19:10 インディアナ州モンロヴィア |
17:05-18:35
イ チチカット・フォーリーズ |
予定表 横にスクロールできます
11/9(土) | 11/10(日) | 11/11(月) | 11/12(火) | 11/13(水) | 11/14(木) | 11/15(金) |
18:05ー22:50 ボストン市庁舎 途中休憩あり |
18:05ー21:50 ニューヨーク公共図書館 途中休憩あり |
18:05ー19:35 チチカット・フォーリーズ |
18:05ー22:25 大学 途中休憩あり |
18:05ー21:15 ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ |
18:05ー21:50 ニューヨーク公共図書館 途中休憩あり |
18:05ー22:25 大学 途中休憩あり |
19:45-22:15 インディアナ州モンロヴィア |
21:25-22:50 チチカット・フォーリーズ |
予定表 横にスクロールできます
上映プログラム
A チチカット・フォーリーズ Titicut Follies劇場未公開
1967年/84分/白黒/作品提供:コミュニティシネマセンター
ワイズマンの記念すべき長編ドキュメンタリー第一作。精神異常犯罪者のための州立刑務所マサチューセッツ矯正院の日常を記録。収容者だけでなく、看守やソーシャル・ワーカー、心理学者たちがそこで何をしているかを見ることができる。合衆国裁判所で一般上映が禁止された唯一の作品で、永年に渡る裁判の末、91年にようやく上映が許可された。
B 大学 At Berkeley劇場未公開
2013年/244分/カラー/作品提供:コミュニティシネマセンター
カリフォルニア大学バークレー校。アメリカで最も古く権威のある総合大学で、世界有数の研究教育機関で、学生運動の拠点にもなったリベラルな校風でも知られる。授業や研究活動から、学費に対するデモ、運営のための無数の会議や行政との折衝など多視点で“大学”を記録した。
C ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ In Jackson Heights日本最終上映
2015年/189分/カラー/配給:チャイルド・フィルム、ムヴィオラ
世界中からの移民とその子孫が暮らし、167の言語の言語が飛び交うジャクソンハイツ。ワイズマンの視線はあらゆる場所、人に向けられる。教会、モスク、シナゴーグ…セクシャル・マイノリティ、不法滞在者、商店主不法滞在者、商店主、そして再開発の波に飲みこまれかける街を守ろうと闘う人々…。後期の傑作と名高い一作。
D ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス Ex Libris-The New York Public Library
2017年/205分/カラー/配給:ミモザフィルムズ、ムヴィオラ
世界で最も有名な図書館のひとつを記録した大ヒットドキュメンタリー。本を探すだけでではなく、多種多様なサービスや機会を提供するこの図書館を「政治情勢がどうであれ、この図書館は今なお、社会的包摂民主主義、表現の自由のひとつの理想形であり続けている」とワイズマンは語る。
E インディアナ州モンロヴィア Monrovia, Indiana劇場未公開
2018年/143分/カラー/作品提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭
ドナルド・トランプが勝利した2016年アメリカ大統領選の結果を受け、ワイズマンは、保守的な共和党支持者が多いことで知られる中西部インディアナ州の小さな農村モンロヴィアを映画にする。農場、高校、教会、銃砲店など様々な場所や活動を撮影し、“善きアメリカ人”が暮らす町の実像を記録する。
F ボストン市庁舎 City Hall
2020年/274分/カラー/配給:ミモザフィルムズ、ムヴィオラ
多様な人種と文化が共存する大都市ボストンの市庁舎。そこでは、警察、消防、保健衛生、高齢者支援、ホームレスの人々の支援、同性婚の承認など数百種類ものサービスを提供している。トランプ時代のアメリカで、市民のための市役所であろうと奮闘するマーティン・ウォルシュ市長の姿が印象に残る。
11/9(土)~
ブラッド・スウェット&ティアーズに何が起こったのか?
©2023 James Sears Bryant All Rights Reserved. Exclusively licensed to TAMT Co., Ltd. in Japan
2023 年/アメリカ/112 分/配給:ディスクユニオン
原題:What The Hell Happened To Blood Sweat & Tears?
監督:ジョン・シャインフェルド
出演:ボビー・コロンビー、スティーヴ・カッツ、デヴィッド・クレイトン・トーマス、ジム・フィールダー、フレッド・リプシウス(以上 BS&T メンバー)、クライヴ・デイヴィス(プロデューサー)
字幕:山口三平
【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,200円(税込)を当館受付にて発売中!特典:オリジナルポストカードをプレゼント!
全米No.1バンドはなぜ失墜したのか?
米ソ冷戦の渦に巻き込まれたロックの悲劇
1960年代後半から1970年代。シカゴ、チェイスなど、ホーンセクションを従えるバンドが一世を風靡することになるその時代、ブラスロックというジャンルを打ち立てたブラッド・スウェット&ティアーズは、ホーン入りバンドブームの先駆者となった。運命の1970年春も、彼らはグラミー賞を受賞したセカンドアルバム『Blood, Sweat & Tears(邦題:血と汗と涙)』と、〈You’ve Made Me So Very Happy〉〈And When I Die〉〈Spinning Wheel〉 といったヒットでチャートを席巻し、絶好調だった。
しかし彼らはこの年、アメリカ国務省が主催した、東欧諸国を回る“鉄のカーテンツアー”の直後、二分化した大衆の社会騒乱に巻き込まれ、人気絶頂から転落していく――。
国務省側が手配した撮影スタッフもバンドに同行したが、このドキュメンタリーは未完のまま隠され、陽の目を見ることはなかった。しかしそれらが奇跡的に発掘され、半世紀以上の時を経て初公開となった。鉄のカーテンの向こう側で撮影された門外不出のフィルム、当時の関係者から提供された数多くの写真、ニクソンとヘンリー・キッシンジャー国務長官との間のホワイトハウスでのやり取りを含むアメリカ政府文書、ユーゴスラビアとドイツのテレビ局向けのパフォーマンス映像、ルーマニアの秘密警察からのファイル――これまで明らかになっていなかった数多の機密データが、不都合な歴史の真実をあぶり出す。
全米No.1まで昇りつめながら突如として陥落した人気バンドに一体何が起こったのか? 彼らが鉄のカーテンで目撃してしまったもの、そして、それ故に帰国した彼らを待ち受けていた事は――?当事者であるBS&Tメンバーの全面協力のもと、ロック史のみならず現代の世界史にも繋がっている大国アメリカの闇と分断を垣間見る、壮大な音楽サスペンス・ドキュメンタリーが日本に上陸。
【ブラッド・スウェット&ティアーズ】
1967年、ブルース・プロジェクトを脱退したアル・クーパー(vo, key)がボビー・コロンビー(ds)、スティーヴ・カッツ(gt)と結成。ロック、ブルース、カントリー、ジャズなど様々なアメリカンミュージックを巻き込んだ新世代の音楽、そしてホーンセクションを従えるロックバンドという斬新なサウンドは、ホーン入りバンドが一世を風靡する先駆けとなった。68年のデビュー作『子供は人類の父である』は全米TOP50ヒットとなるが、直後アルは脱退。新ヴォーカルのデヴィッド・クレイトン・トーマス加入後のセカンドアルバム『血と汗と涙』は7週連続全米1位を記録、69年グラミー賞の4部門を受賞。収録曲の「スピニング・ホイール」「アンド・ホエン・アイ・ダイ」「ユーヴ・メイド・ミー・ソー・ヴェリー・ハッピー」もシングルチャートを席巻。そんな絶頂期の中、本作の舞台となる東欧ツアーへと旅立ってゆく。
11/16(土)・17(日)
柳下美恵の ピアノdeフィルム vol.13
柳下美恵のピアノdeフィルムvol.13
『囁きの合唱』
サイレント映画の35ミリフィルム上映 × ピアノの即興生伴奏
2024.11.16[土] & 11.17[日] 各日12:20
映画が誕生してまもなく130年。最初の約40年間の作品は今ではサイレント映画と呼ばれています。映写機のフィルムがスクリーンに映し出され、語りや音楽伴奏と共に上映していました。トーキーは映写速度が24コマ/秒ですが、サイレントは作品によって違っています。トーキーのスクリーンサイズは作品によって違っていますが、サイレントは1.33×1でした。デジタル上映が主流になる今、映画が誕生した頃の形にこだわった上映を試みます。
フィルム提供:国立映画アーカイブ
1918年/アメリカ/93分[18fps]予定/35mm/染色/サイレント/フィルム提供:国立映画アーカイブ
原題:The Whispering Chorus
監督: セシル・B・デミル/原作・原案:パーリー・プーア・シーハン/製作:フェイマス・プレイヤーズ=ラスキー/撮影:アルヴィン・ワイコフ
出演:レイモンド・ハットン、イーディス・チャップマン、キャスリン・ウィリアムズ
会社の金を使い込み、その発覚を恐れて死を偽装するも、やがて自らの「殺人」の犯人として窮地に立たされる男。暗闇にぼんやり現れる「顔」たちの“囁き”が、男を追い詰めてゆく。セシル・B・デミルはスペクタクルや史劇の巨匠として知られ、多くのファンを持つ監督、プロデューサー、脚本家、俳優。大スター早川雪洲主演の監督作『チート』(1915)はヒットしたが、白人女性に焼印を押す残酷な描写が国辱映画として日本では公開されなかったという逸話がある。『囁きの合唱』は自伝で経歴上の転換点になったと語る心理ドラマ。今回はジョージ・イーストマン・ハウス(現ミュージアム)復元による染色版を上映。(映画を残す、映画活かす。―無声映画篇―より転載、加筆)
11.16[土]・17[日]宮下啓子さん(無声映画愛好家)
料金一般・シニア2,000円/会員1,700円/ユース(25歳以下)1,000円
サイレント映画ピアニスト。武蔵野音楽大学ピアノ専攻卒業。1995年 山形国際ドキュメンタリー映画祭のオープニング上映、映画生誕百年祭『光の生誕 リュミエール!』でデビュー。 以来、国立映画アーカイブや神戸映画資料館などのフィルム・アー カイブ、映画の復元と保存に関するワークショップ、全国コミュニティシネマ会議、東京国際映画祭、京都国際映画祭、アップリンク、シネマ・ジャック&ベティなどの映画館、海外は韓国映像資料 院、SEAPAVAA(東南アジア太平洋地 域視聴覚アーカイブ)マレーシア会議、タイ無声映画祭、 ポルデノーネ無声映画祭、ボローニャ復元映画祭(イタリア)、ボン無声映画祭(ドイツ) などで伴奏。日本、イギリス、アメリカ、デンマークで出版された 『裁かるゝジャンヌ』のDVDやブルーレイの音楽を担当した。音楽で見せる欧米スタイルの無声映画伴奏者は日本人初。映画を楽譜として映画に寄り添い続ける。映画館にピアノを常設する“映画館に ピアノを!”、サイレント映画×ピアノの生伴奏“ピアノdeシネマ”、 サイレント映画週間“ピアノ&シネマ”などサイレント映画を映画館で上映する環境作りに注力中。
11.13[水]より、横浜シネマリンオンラインチケット予約サイト、劇場受付にて、座席指定券を販売いたします。詳細は劇場Webサイトにてご確認ください。
11/16(土)~
シュルレアリスム100年映画祭
シュルレアリスム100年映画祭
SURREALISM
シュルレアリスム宣言から100年――
その深遠なる世界を紐解く10作品、一挙公開!
11/16(土)-12/6(金)
シュルレアリスム100年映画祭
SURREALISM
シュルレアリスム宣言から100年――
その深遠なる世界を紐解く10作品、一挙公開!
11/16(土)-12/6(金)
1924年10月。アンドレ・ブルトンが「シュルレアリスム宣言」を発表。
ここに20世紀最大の芸術運動がはじまる。
それから100年。
その運動は、文学、絵画、映画、音楽、思想など広範な領域に影響を及ぼし、
その本質は今の時代にも受け継がれている。
シュルレアリスムとはいったい何か?その深遠なる世界を紐解く―
公式ホームページ https://trenova.jp/surrealism100/
主催・配給 トレノバ
入場料入場料:一般1,700円/会員1,400円/大専・シニア1,200円/高校生以下800円
上映プログラム
プログラム A金で買える夢
1947年/アメリカ/80分/英語/カラー/原題:Dreams That Money Can Buy
監督・脚本・編集:ハンス・リヒター
原案:マックス・エルンスト、フェルナン・レジェ、マン・レイ、マルセル・デュシャン、アレクサンダー・カルダー、ハンス・リヒター
出演:ジャック・ビットナー、ドロシー・グリフィス、マックス・エルンスト、ジョン・ラトゥーシュ
ジョーは家賃の支払いに悩む平凡な男。ある日、人の頭の中を見ることができる能力を持っていることに気づいた彼は、ビジネスを立ち上げ、欲求不満や不安を抱える人々にオーダーメイドの夢を売りはじめるが…。本編に登場する7つの夢は、マックス・エルンスト、フェルナン・レジェ、マン・レイ、マルセル・デュシャン、アレクサンダー・カルダー、ハンス・リヒターがそれぞれ原案を創作。シュルレアリスムや前衛芸術のオールスターが競い合うだけでなく、夢のパートの音楽にはジョン・ケージやポール・ボウルズも参加。若き日のスタンリー・キューブリックのエキストラ出演も。
皆殺しの天使
1962年/メキシコ/95分/スペイン語/B&W/原題:El angel exterminador
監督・脚本:ルイス・ブニュエル
撮影:カブリエル・フィゲロア
出演:シルビア・ピナル、エンリケ・ランバル、ジャクリーヌ・アンデレ、ルシー・カリャルド、エンリケ・G・アルバレス
トナー、ドロシー・グリフィス、マックス・エルンスト、ジョン・ラトゥーシュ
ある夜、ブルジョアの邸宅で晩餐会が催される。会がはじまると、使用人たちは次々と姿を消し、執事一人が残される。晩餐を終えた招待客は、客間に腰を落ち着かせるが、夜が明けても全員が帰る方法を忘れたかのように何故か外に出ることができなくなってしまい、ついには食料も底をつき…。人間の基本的な欲求が満たされなくなるにつれ、彼らの社会性は急速に崩壊していく。解読不能な夢のようなイメージを次々と登場させブラックユーモアたっぷりに描いた本作は、ブニュエルのメキシコ時代の最高傑作と称される。 第15回カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞。
ダダからシュルレアリスムへ
『幕間』1924年/フランス/22分/B&W/原題:Entr’acte
監督・脚本:ルネ・クレール/脚本:フランシス・ピカビア/音楽:エリック・サティ/出演:ジャン・ボルラン、インゲ・フリス、フランシス・ピカビア、マン・レイ、エリック・サティ、マルセル・デュシャン
『貝殻と僧侶』1928年/フランス/39分/B&W/原題:La Coquille et le Clergyman
監督:ジェルメーヌ・デュラック/脚本:アントナン・アルトー/撮影:ジョルジュ・ペリナール/出演:アレックス・アリン、ルシアン・バタイユ、ジェニア・アタナシウ
『幕間』は、フランシス・ピカビアのバレエ『本日休演』の幕間に上映するために作られた、名匠ルネ・クレールによるダダイズムの短編映画。音楽は20世紀の音楽に多大な影響を与えたエリック・サティが担当。ピカビア、サティに加えて、マン・レイやデュシャンも出演。
『貝殻と僧侶』は、歴史上初めてのシュルレアリスム映画。性的な欲望に取りつかれていく僧侶の妄想を幻想的に描いた作品。シュルレアリスムの詩人であり俳優としても知られるアントナン・アルトーの脚本をジェルメーヌ・デュラックが演出。ダダからシュルレアリスムに至る過渡期の2本を1プログラムで。
アンドレ・ブルトン ドキュメンタリー集 日本劇場初公開
2003年/フランス/63分 (『アンドレ・ブルトン あらゆるものにもかかわらず』27分、『野性の目』25分、『2003年3月31日、オテル・ドルーオ』11分)/フランス語/カラー/原題:André Breton malgré tout/L’oeil à l’état sauvage/Hôtel Drouot, March 31st 2003 監督:ファブリス・マゼ
シュルレアリスムを主導した詩人・作家であるアンドレ・ブルトンの活動の軌跡を追ったドキュメンタリー『アンドレ・ブルトン あらゆるものにもかかわらず』、彼が生涯をかけて集めたコレクションで満たされた伝説のアトリエの映像と彼の肉声によって、追い求めていたものに迫る『野性の目』、パリのオークションハウス「オテル・ドルーオ」にて、2003 年に開催されたブルトンのコレクション展の開幕直前に展示室を撮影し、コレクション散逸前の全貌を記録した『2003 年3 月31 日、オテル・ドルーオ』。ブルトンの思考、思想を深掘りする3つのドキュメンタリーを集めたプログラム。
マックス・エルンスト 放浪と衝動 日本劇場初公開
1991年/ドイツ/100分/英語、ドイツ語/カラー/原題:Max Ernst: Mein Vagabundieren – Meine Unruhe
監督:ピーター・シャモーニ
出演:マックス・エルンスト 声の出演:ピーター・マリンカー、シェリー・トンプソン、リンダ・ジョイ
シュルレアリスム絵画の理論的支柱であり、フロッタージュやデカルコマニーといったオートマティスムの技法を駆使して多様な作品を創造した、変幻自在の画家・彫刻家マックス・エルンスト。ドイツ出身の彼は第一次大戦への出征、レオノーラ・キャリトン、ペギー・グッゲンハイムらとの恋愛や別れ、第二次大戦時の迫害と亡命、ブルトンとの確執など波乱の人生を送った。ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞監督ピーター・シャモーニが、エルンストのインタビューや創作活動の貴重な映像、彼と30年連れ添ったドロテア・タニングや周囲の人々の証言などによって、その革命的な精神や創造的な思考に迫る。
謎の巨匠 ルネ・マグリット 日本劇場初公開
2023年/フランス/137分/フランス語/カラー/原題:René Magritte, le maître du Mystère
監督:ファブリス・マゼ
出演:ルネ・マグリット、ジャック・ロワザン、リリアン・サバティーニ、グザヴィエ・カノンヌ
シュルレアリスムを代表する画家の一人、ルネ・マグリット。「言葉とイメージ」の関係を探求し、絵画に哲学的要素を取り入れた彼の表現は、従来の美術の範疇にとどまらず、ポップアートやコンセプチュアルアート、広告デザイン、思想家などにも大きな影響を与えた。本作は、ベルギーでの幼少期から、デ・キリコの絵との出会い、パリのシュルレアリストたちとの交流、ブリュッセルでの国際的成功、第二次大戦期の苦境と戦後の新たな活動まで、マグリットの映像と作品もふんだんに使ってその足跡を追い、作風を移行させながら独自の世界を築いた彼の知られざる複雑な個性に迫る。
トワイヤン 真実の根源 日本劇場初公開
2015年/フランス・チェコ/93分/フランス語/カラー/原題:Toyen, the origin of truth
監督:ジュリアン・フェランドゥ、ドミニク・フェランドゥ
出演:アニー・ル・ブラン、アンナ・プラヴドワ、フランソワーズ・カイユ、ジョルジュ・ゴルドフェン
チェコの近代絵画、シュルレアリスムを牽引したトワイヤン。本名はマリー・チェルミーノヴァ。トワイヤンという通称は、仏語で「市民」という意味の単語”citoyen”に由来する。人一倍の好奇心と探究心を持つ彼女は、大戦や共産党政権の台頭など激動の時代の 中、芸術活動に取り組み、独自の表現方法を切り拓いた。サーカスや遊園地など娯楽のスケッチから始まる画家の道、画家・詩人のインジフ・シュティルスキーとの協業、「人工主義」の標榜、エロティシズムへの傾倒、シュルレアリスムへの接近、ブルトンやエリュアールらとの親交など、彼女の人生と表現について、丹念に掘り下げていく。
11/16(土)~
ロール・ザ・ドラム!
© 2018 POINT PROD / RTS / TELECLUB
2019年/スイス/90分/配給:カルチュアルライフ
原題:TAMBOUR BATTANT
監督:フランソワ=クリストフ・マルザール
音楽:ニコラ・ラベウス
出演:ピエール・ミフスッド、パスカル・ドゥモロン、ザビーネ・ティモテオ、ジャン=リュック・ビドー
日本語字幕:高橋彩
字幕監修:サミュエル・ドロン
後援:在日スイス大使館、日本ブラスバンド指導者協会
スイスで実際に起きた新旧ブラスバンドの対立を映画化!
1970年、スイス・ヴァレー州の小さな村、モンシュ。ワイン醸造家のアロイスは地元のブラスバンドの指揮者で、毎年、村で開かれる音楽祭のオーディション通過を目指して日々練習に励んでいる。しかし、アロイスの指導力を疑問視する楽団のメンバーが、村出身でプロの音楽家として活躍するピエールをこっそりパリから呼び寄せてしまう!伝統を重んじるアロイスと違い、才能ある女性や移民を次々と楽団のメンバーに加えるピエール。それぞれを指揮者に立てた2つの楽団が出来上がり、楽団の対立は村全体を巻き込んだ大騒動へと発展していく…。
監督は、スイスで多くの映画やTVシリーズを手掛けているフランソワ=クリストフ・マルザール。ヴァレー州で実際にあった出来事をベースに、伝統と革新がぶつかり合う地元のブラスバンドの対立を、ユーモアとウィットに満ちたタッチで描いた。スイスで最も権威あるスイス映画賞の撮影部門で審査員特別賞を受賞したほか、アロイスの妻マリー=テレーズ役のザビーネ・ティモテオは最優秀女優賞にノミネートされた。劇中のスコアを担当したのは、これまでスイス映画賞で3度、最優秀音楽賞に輝いたニコラ・ラベウス。オリジナル楽曲に加え、巧みにアレンジされた伝統的なブラスバンドの楽曲で映画の世界観に彩りを加えた。ワインの名産地ヴァレー州の美しい自然と、参政権を求めて闘う70年代のスイスの女性たちのファッションにも注目!
11/16(土)~1週間限定
郷愁鉄路~台湾、こころの旅~
©Pineal Culture Studio
2023 年/106 分/台湾/配給:武蔵野エンタテインメント
原題:南方、寂寞鐵道
英題:On The Train
監督:シャオ・ジュイジェン(蕭菊貞)
プロデューサー:チェン・ボーウェン(陳博文)、シェン・イーイン(沈邑頴)
音楽:チェン・ミンジャン(陳明章/陳明章音楽工作有限公司)、シェ・ユンヤー(謝韻雅/MIA)
編集:チェン・ボーウェン(陳博文)、チェン・ユーツォン(陳昱璁)
日本語字幕:樋口裕子
翻訳協力:小田急電鉄株式会社
鉄道と鉄道員の姿を記録した
台湾初の鉄道文化ドキュメンタリー映画が入線!!
台湾南部の鉄道路線「南廻線」。パイナップル畑や線路の近くまで迫る海など大自然の中をSLやディーゼル列車がのんびりと走り抜ける旅情豊かな路線だったが、2020年に全線で電化され、その模様は変化を遂げた。台湾でドキュメンタリー監督として活躍するシャオ・ジュイジェン監督が4年の歳月をかけ、失われていく沿線の原風景と鉄路をカメラにおさめ、鉄道員やその家族、「南廻線」を愛する人々の想いを記録として残した。
本作を完成させるため、シャオ・ジュイジェン監督のもとに台湾映画界を代表する精鋭スタッフ陣が集まった。4年間で撮りためた莫大な映像を巧みにつなぎ合わせたのはチェン・ボーウェン。さまざまな列車の走る音を繊細に映像に載せたのは音響の巨匠 ドゥ・ドゥーチー。そして台湾民謡の要素を取り入れた音楽は、是枝裕和監督『幻の光』やホウ・シャオシェン監督『戯夢人生』などの音楽を手掛けたチェン・ミンジャンが作曲している。
さぁ、郷愁鉄路を走る列車で、あなたもこころの旅に出ませんか――。
11/16(土)~
ピアニストを待ちながら
©合同会社インディペンデントフィルム/早稲田大学国際文学館
2024 年/61 分/日本/制作・配給:合同会社インディペンデントフィルム
監督・脚本:七里圭
プロデューサー:熊野雅恵
撮影:渡辺寿岳
照明:高橋哲也
録音:松野泉、黄 永昌
音楽:宇波拓
編集:宮島竜治、山田佑介
出演:井之脇海、木竜麻生、大友一生、澁谷麻美、斉藤陽一郎
――――繋がりにつながれて、真夜中――――
異才・七里圭監督 × 主演・井之脇海
世界的建築家・隈研吾が手掛けた村上春樹ライブラリーで全編撮影!
出られない図書館を舞台に描く、目に見えないものに紐付けられた若者たちの物語
目覚めるとそこは真夜中の図書館だった。瞬介(井之脇海)が倒れていた階段の両側には、吹き抜けの天井まで高く伸びた本棚がそびえ、あちこちの段に小さなヒトガタが潜んでいる。扉という扉を開けて外に出てみるが、なぜか館内に戻ってしまう。途方に暮れた瞬介は、導かれるようにして一台のグランドピアノを見つけ、そっと鍵盤を鳴らす。
やがて瞬介は、旧友の行人(大友一生)とその彼女だった貴織(木竜麻生)に再会する。三人は大学時代の演劇仲間だった。行人と貴織はもう随分前からここにいるらしい。他にも、見知らぬ中年男の出目(斉藤陽一郎)や謎の女絵美(澁谷麻美)もいる。行人は、この状況を逆手にとって、かつて上演できなかった芝居の稽古を始める。それは、行人が作・演ずるはずだった「ピアニストを待ちながら」。しかし、瞬介には気になることがあった。確か、行人は死んだはずでは……?
ガラスの向こうは明けない夜。自動ドアはいつでも開くが、どういうわけか外には出られない。どこにも行けない理不尽な状況で、居合わせた男女5人は、なぜか芝居の稽古に興じ始める。まるで、幽閉されたことに甘んずるかのように。そこにはいない誰か、不在の視線を意識しながら……。
このおかしな物語は、私たちが経験したコロナ禍や、今や当たり前になったオンライン、SNSでの非対面コミュニケーションの奇妙さを暗示している。20世紀の不条理は、すでにリアル。私たちは、いつも不在の相手につながれて、待たされて、くたびれている。サミュエル・ベケットの有名戯曲を思わせる題名に、その意図が込められている。
映画の舞台となるのは、世界的な建築家の隈研吾が手掛けた、村上春樹ライブラリー。村上文学をイメージした迷宮的空間で全編撮影されたことも、見どころの一つだ。本作は、この村上春樹ライブラリー(早稲田大学国際文学館)の開館記念映画として製作された短編をもとに、約1時間の劇場公開(ディレクターズカット)版として完成された作品である。
主演は、若手実力派の井之脇海。『東京ソナタ』(08)の天才ピアノ少年、『ミュジコフィリア』(21)の現代音楽に目覚める学生を更新するように、本作でも吹替なしのピアノ演奏を披露している。共演には、『福田村事件』(23)『熱のあとに』(24)など話題作の出演が続く木竜麻生とともに、『カゾクデッサン』(20)『劇場版 美しい彼〜eternal』(23)の大友一生を抜擢。そして、『王国(あるいはその家について)』等で鮮烈な印象を残す澁谷麻美、故青山真治監督作品で常連のベテラン俳優、斉藤陽一郎がわきを固める。
監督は、今年デビュー20周年を迎える七里圭。劇場初作品の『のんきな姉さん』(04)で注目され、カルト的な人気を誇る『眠り姫』(07/サラウンドリマスター版16)や『DUBHOUSE』(12)、「音から作る映画」プロジェクト(14〜18)、『背 吉増剛造×空間現代』(22)など、常に先鋭的な作品を生み出してきた異才である。唯一無二のフィルモグラフィーを重ねる七里にとって、本作は久々の劇映画となる。
11/23(土)~
二つの季節しかない村
©2023 NBC FILM/ MEMENTO PRODUCTION/ KOMPLIZEN FILM/ SECOND LAND / FILM I VÄST / ARTE FRANCE CINÉMA/ BAYERISCHER RUNDFUNK / TRT SİNEMA / PLAYTIME
2023年/トルコ・フランス・ドイツ/198分/配給:ビターズ・エンド
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
脚本:アキン・アクシュ、エブル・ジェイラン、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
出演:デニズ・ジェリオウル、メルヴェ・ディズダル、ムサブ・エキチ、エジェ・バージ
春は来ない
トルコ、アナトリア東部。
果てしなく続く壮大な自然の前で、人間は如何に小さなものか――。
美術教師のサメットは、冬が長く雪深いトルコ東部のこの村を忌み嫌っているが、村人たちからは尊敬され、女生徒セヴィムにも慕われている。しかし、ある日、同僚のケナンと共に、セヴィムらに虚偽の”不適切な接触”を告発される。同じころ、美しい義足の英語教師ヌライと知り合い……。
プライド高く、ひとりよがりで、屁理屈を並べ、周囲を見下す、”まったく愛せない”のに”他人事と思えない”主人公サメット。辺境の地でくすぶる男は、雪解けとともに現れた枯れ草に何を見つけ出すのか――。
11/30(土)~
ジェーン B.とアニエス V. 〜 二人の時間、二人の映画。
©︎ CINÉ TAMARAS / ReallyLikeFilms 2024
ジェーン・バーキン一周忌を追悼して、アニエス・ヴァルダとの2作品を特別追悼上映!
2023年7月16日に急逝したジェーン・バーキン。
時の大統領が弔意を示し、多くの映画人・音楽家がその死を悼んだ。
葬儀は全仏に生中継され、国民は悲しみの禍へ。
あれから一年。
ジェーン・ベー、あなたにもう一度会いたい。
ヌーヴェルヴァーグの母が伝説の女性に捧げた、鮮烈のイマジナリーポートレイト。
ジェーン・バーキン一周忌を追悼して、アニエス・ヴァルダとの2作品『アニエス V.によるジェーン B.』『カンフーマスター!』を特別追悼上映。
入場料:一般1,800円、会員1,500円、大専・シニア1,200円、高校生以下800円
作品紹介
アニエス V.によるジェーン B. デジタルレストア版
1988年/フランス/99分/配給:リアリーライクフィルムズ
原題:jane b. par agnes v.
監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
出演:ジェーン・バーキン 、ジャン=ピエール・レオー、ラウラ・ベティ、フィリップ・レオタール、アラン・スーション、セルジュ・ゲンズブール、シャルロット・ゲンズブール、マチュー・ドゥミー、フレッド・ショペル
「ジェーン、いつもカメラのレンズを直視することを躊躇うのはなぜ?」
ジェーンが40歳の誕生日に、自身の30歳の誕生日を回想する間、アニエス・ヴァルダの伝説の女性への尽きることのないイメージがヴィヴィッドに展開する。その空想は、犯罪映画の妖婦、サイレントシネマの凸凹コンビ、モンローのような男たちのファンタジーの対象、よくあるメロドラマの恋人たち、西部劇のカラミティ・ジェーン、ターザンとジェーン、そしてジャンヌ・ダルクへと、ジェーンのイメージを自由自在に拡張させていく。一方で綴られるジェーンの日常のスケッチ。そこにはセルジュ・ゲンズブールや娘たちとの時間も織り込まれる。そのどれもが、シャイで大胆で逞しくて危うくて儚くて美しい、ジェーン・バーキンの魅力が余す事なく詰まっている。
カンフーマスター! デジタルレストア版
1988年/フランス/88分/配給:リアリーライクフィルムズ
原題:Kung-fu Master
監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
出演:ジェーン・バーキン、マチュー・ドゥミ、シャルロット・ゲンズブール、ルー・ドワイヨン、デヴィッド・バーキン、ジュディ・キャンプベル、アンドリュー・バーキン
ジェーン・バーキンから発案された『アニエスV.によるジェーンB.』の為のプロットの一つを、ア二エス・ヴァルダが独立した作品として映画化が実現した作品。娘ルシー(シャルロット・ゲンズブール)が自宅の庭で開いたパーティーで、泥酔した同級生の少年ジュリアン(マチュー・ドゥミ)を介抱したマリー・ジェーン(ジェーン・バーキン)は、あろうことか15歳の少年に不思議な感情を抱く。ジュリアンもまた、40歳のマリー・ジェーンに恋愛感情を抱くようになる。微妙な力関係の中、人目を盗んで密会を重ねる二人。そんなある日、二人がキスを交わしているところを、ルシーに目撃されてしまう。パリとロンドンのジェーンの自宅と実家で撮影。シャルロットの他、ルー・ドワイヨン、アンドリュー・バーキン、ジェーンの実の両親などファミリーが総出演している。タイトルはジュリアンが夢中になっているゲームの名前が由来。
11/30(土)~
劇場版 荒野に希望の灯をともす
© Nihon Denpa News Co.,LTD.
2022年/日本/カラー/90分/企画:ペシャワール会/製作:日本電波ニュース社
朗読:石橋蓮司
語り:中里雅子
取材:柿木喜久男、大月啓介、アミン・ウラー・ベーグ
CG:平野雄一
音効:渡辺真衣、大島亮
演奏:中村幸
編集:櫻木まゆみ
構成・制作:上田未生
これは「生きるための」戦いだ。
20年以上に渡り撮影した映像素材から
医師 中村哲の生き方をたどるドキュメンタリーの完全版!
アフガニスタンとパキスタンで35年に渡り、病や貧困に苦しむ人々に寄り添い続けた、医師・中村哲。戦火の中で病を治し、井戸を掘り、用水路を建設した。なぜ医者が井戸を掘り、用水路を建設したのか?そして中村は何を考え、何を目指したのか?
中村の誠実な人柄が信頼され、医療支援が順調に進んでいた2000年。思いもよらぬ事態に直面し、中村の運命は大きく変わる。それが“大干ばつ”だ。渇きと飢えで人々は命を落とし、農業は壊滅。医療で人々を支えるのは限界だった。その時、中村は誰も想像しなかった決断をする。用水路の建設だ。大河クナールから水を引き、乾いた大地を甦らせるというのだ。しかし、医師にそんな大工事などできるのか?戦闘ヘリが飛び交う戦火の中で、無謀とも言われた挑戦が始まった―。
戦火のアフガニスタンで21年間継続的に記録した映像から、これまでテレビで伝えてきた内容に未公開映像と現地最新映像を加え劇場版としてリメイク。混沌とする時代のなかで、より輝きを増す中村哲の生き方を追ったドキュメンタリー。
12/7(土)~
パドレ・プロジェクト/父の影を追って
©ぶらっくかんぱにー All right reserved.
2023年/80分/日本/配給:ミカタ・エンタテイメント
監督・プロデューサー:武内 剛
撮影監督:成富紀之
構成:吾妻蓮
整音:藤木和人
カラリスト:星子駿光
音楽:青木晋太郎
通訳:Compagnone Francesca
字幕:三浦アーク、Elly、Maxwell Powers
コロナ禍の真っ只中、2歳で生き別れた父を探してイタリアへ
“ハーフ”として日本で育った監督が自らの旅を記録した、
ルーツを巡るドキュメンタリー
本作の監督である武内は、日本人とカメルーン人の間に生まれ、“ハーフ”として日本で育った。イタリアで出会った両親は、彼が2歳になる頃に別れ、母は日本へ戻って女手一つで武内を育てることになった。もちろん武内は父のことを何一つ覚えていない。「映画監督を目指していた」「DJをやっていた」……母の思い出話から浮かび上がるのはクリエイター気質の父の姿。その影を追うように、お笑い芸人・ぶらっくさむらいとしてエンターテインメントの世界で活動していた武内だったが、2020年に予期しない契機が訪れる。「COVID-19」それは命を落とす可能性もある正体不明のウイルスの世界的なパンデミックだった。もしかすると、もう二度と父親に会えないかもしれない――そう思った武内は父を探すため、イタリアへ旅立つことを決意。さらには、その記録を自ら監督・プロデューサーとして映画にすることに。
しかし緊急事態宣言の只中、渡航のハードルは高く、認知症の母から聞き出せる父の情報は驚くほど少なかった。手元にあるのは40年前の父の写真だけ。10日間という限られた滞在期間、イタリアの人口・約130万人の中から会ったこともない一人の肉親を探し出すのは予想以上の困難を極めた。自らの生い立ちにあらためて向き合いながら、異国の地で必死に捜索を続ける武内だったが、ある日ついに父親の手がかりを掴んで……。
12/14(土)~
映画作家 ジャンヌ・モロー
© 1976-1979-1983 FONDS JEANNE MOREAU POUR LE THÉÂTRE, LE CINÉMA ET L’ENFANCE. TOUS DROITS RÉSERVÉS
女が女の映画を作るということ
映画作家 ジャンヌ・モロー
女が女の映画を作るということ
映画作家 ジャンヌ・モロー
12/14(土)-12/27(金)
映画史にその名を刻む、フランスを代表する「⼥優」ジャンヌ・モロー(1928-2017)。
オーソン・ウェルズ、フランソワ・トリュフォー、ルイ・マル、ルイス・ブニュエルら「巨匠」「名匠」たちと共に数々の名作に携わった彼⼥の映画への情熱と好奇⼼に満ちた創造⼒は、「映画監督」としても発揮された。40歳代で初めて監督を務めたモローは「私は⼥たちを称賛している。ありのままの姿を彼⼥たちに⽰そうと思った。男たちが⽰す形ではなく」と語った。その⾔葉通り、彼⼥の映画には様々な年代の⼥性たちの率直な⾔葉や飾り気のない姿が映し出されている。
本特集では、70年代から80年代にかけて作られた、⼥性(たち)をめぐる3つの監督作品を⼀挙公開!監督第⼀作『リュミエール』とドキュメンタリー作品『リリアン・ギッシュの肖像』は⽇本の劇場では初めてのロードショーとなる。今こそ現代的な視点で⾒返すべき傑作群をぜひご覧ください。
前売券:全国共通特別鑑賞券1,400円(税込)を当館受付にて発売中!特典:前売券3枚ご購入でポストカードセットをプレゼント!(数量限定)
入場料:一般1,800円、会員1,500円、大専・シニア1,200円、高校生以下800円
作品紹介
リュミエール 国内劇場初公開
LUMIÈRE © 1976 FONDS JEANNE MOREAU POUR LE THÉÂTRE, LE CINÉMA ET L’ENFANCE. TOUS DROITS RÉSERVÉS
1976年/102分/フランス/カラー/ヨーロピアン・ビスタ
原題:Lumière
監督・脚本:ジャンヌ・モロー
撮影:リカルド・アロノヴィチ
音楽:アストル・ピアソラ
出演:ジャンヌ・モロー、ルチア・ボゼー、フランシーヌ・ラセット、キャロリーヌ・カルティエ、ブルーノ・ガンツ、キース・キャラダイン、フランソワ・シモン、ルネ・フェレ、ニエル・アレストリュプ、フランシス・ユステール、 パトリス・アレクサンドル、ジャック・スピエセル
日本語字幕:横井和子
ジャンヌ・モロー監督第一作。
サラ、ラウラ、ジュリエンヌ、キャロリーヌ。4人の「女優」たちの欲望、葛藤、そして連帯が鮮やかに描かれる監督第一作。
サラ役をモローが演じ、ドイツの名優ブルーノ・ガンツも出演。
タンゴを革新した作曲家アストル・ピアソラが音楽を担当。
南仏の別荘でヴァカンス中の4⼈の⼥たち、サラ、ラウラ、ジュリエンヌ、キャロリーヌ。異なる年 代の彼⼥たちの共通点は⼥優であること。親密な友情で結ばれた4⼈たちは、⼀年前のパリでの想 い出を語り始める。若き監督トマや医師グレゴワールと浮き名を流しながらドイツ⼈作家ハインリ ヒへの情熱に⽣きるサラ、キャリアを断ち夫と⼦どもを世話するだけの⽣活に焦るラウラ、試⾏錯 誤しつつイメージの殻を破ろうとするジュリエンヌ、そして今後のキャリアと束縛する恋⼈との関 係に悩むキャロリーヌ。さまざまな愛と⼈⽣の形を振り返る中で、サラの前に現実の死と孤独が近づいてくるのだった。
思春期
L’ADOLESCENTE © 1979 FONDS JEANNE MOREAU POUR LE THÉÂTRE, LE CINÉMA ET L’ENFANCE. TOUS DROITS RÉSERVÉS
1979年/94分/フランス/カラー/ヨーロピアン・ビスタ
原題: L’adolescente
監督・脚本:ジャンヌ・モロー
共同脚本:アンリエット・ジェリネク
撮影:ピエール・ゴタール
音楽:フィリップ・サルド
主演:レティシア・ショヴォー、シモーヌ・シニョレ、フラ ンシス・ユステール、ジャック・ヴェベール、エディット・クレヴェ ール、ジャン=フランソワ・バルメ、ユーグ・ケステル
日本語字幕:横井和子
モロー監督第二作目は、12歳の少女が大人への一歩を踏み出す姿を描く瑞々しい物語。戦争の影が迫る1939年。フランス中部の村で12歳のマリーが母、祖母と共に過ごした特別な夏休み(ヴァカンス)。
伝説的 な女優シモーヌ・シニョレが孫を見守る優しい祖母役で出演し、製作も兼ねている。共同脚本を作家アンリ エット・ジェリネクが担当。
戦争の影が迫る 1939年7⽉、12歳のマリーは両親とともに⽗の出⾝地であるフランス中部の村で 夏休みを過ごすことになる。⼤好きな祖⺟に⽢え、同年代の友⼈たちと遊び回る中、パリからやってきた若き医師アレクサンドルと出会う。マリーはハンサムで優しいアレクサンドルに恋してしまうが、彼は⼦どもを全く相⼿にするはずもなく……。
リリアン・ギッシュの肖像 国内劇場初公開
LILLIAN GISH © 1983 FONDS JEANNE MOREAU POUR LE THÉÂTRE, LE CINÉMA ET L’ENFANCE. TOUS DROITS RÉSERVÉS
1983年/59分/フランス/カラー、白黒/スタンダード
原題:Lillian Gish
監督・脚本:ジャンヌ・モロー
撮影:トーマス・ハーウィッツ、ピエール・ゴタール
音楽:ローランド・ロマネッリ
主演:レティリリアン・ギッシュ、ジャンヌ・モロー
日本語字幕:横井和子
1983年の夏、ニューヨーク。サイレント映画期から活躍し、ハリウッドの頂点を極めたリリアン・ギッシュとの邂逅。「歴史的女優」との対話から、その生涯と映画への情熱に迫る至高のドキュメンタリー。
リリアン・ギッシュ Lillian Gish 1893 年 10 ⽉ 14 ⽇、⽶国オハイオ州スプリングフィールド⽣まれ。幼少期から演劇の舞台に⽴つ。 1912 年に映画監督 D・W・グリフィスと出会い、その後『國⺠の創⽣』(1915)、『イントレランス』 (1916)、『散り⾏く花』(1919)、『嵐の孤児』(1921)など多くのグリフィス監督作品に出演した。サイ レント映画期を代表する俳優となり、トーキー映画の時代に⼊ってからも活躍。出演作品にキング・ ヴィダー監督『ラ・ボエーム』(1926)、ヴィクトル・シェストレム監督『真紅の⽂字』(1926)、ウィ リアム・ディターレ監督『ジェニィの肖像』(1947)、チャールズ・ロートン監督『狩⼈の夜』(1955)、 ジョン・ヒューストン監督『許されざる者』(1959)や最後の出演作品となったリンゼイ・アンダーソ ン監督『⼋⽉の鯨』(1987)などがある。1971 年に⽶アカデミー賞名誉賞を受賞。1993 年 2 ⽉ 27 ⽇、死去
12/28(土)~
私は憎まない
© Filmoption
2024年/カナダ・フランス/92分/ドキュメンタリー/制作: Filmoption/配給:ユナイテッドピープル
監督:タル・バルダ
脚本:タル・バルダ、ジェフ・クライン、サスキア・デ・ボア
プロデューサー:ポール・カデュー、マリーズ・ルイヤー、イザベル・グリッポン、タル・バルダ
製作総指揮:マヤ・カデュー=ルイヤー、マルタン・カデュー=ルイヤー、マリーズ・ルイヤー
撮影:ハンナ・アブ・アサド
編集:ジェフ・クライン
音楽:ロベール・マルセル=ルパージュ
サウンドデザイン:マルタン・カデュー=ルイヤー
登場人物:イゼルディン・アブラエーシュ、クリスティアン・アマンプール、シュロミ・エルダー 他
3 人の愛娘を殺されてもなお共存の可能性を信じ、ヒューマニティに基づき行動するガザ地区出身の医師、アブラエーシュ博士に迫るドキュメンタリー
ガザ地区の貧困地域、ジャバリア難民キャンプ出身の医師で、パレスチナ人としてイスラエルの病院で働く初の医師となったイゼルディン・アブラエーシュ博士は産婦人科でイスラエル人とパレスチナ人両方の赤ちゃんの誕生に携わってきた。「ユダヤ教徒、イスラム教徒、キリスト教徒の赤ちゃんの違いは?みんな同じく生まれたての赤ちゃんだ」「すべての人の平等、正義、自由の上に共存は可能である」と、自らの医療で体現してきた。彼は、ガザからイスラエルの病院に通いながら、病院で命が平等なように、外の世界でも同じく人々は平
等であるべきだと、分断に医療で橋を架けようとする。しかし、両者の共存を誰よりも望んできた彼の赦しと和解の精神が、究極の試練にさらされる。
2009 年 1 月、アブラエーシュ博士の自宅がイスラエル軍の戦車の砲撃を受け、3 人の娘と姪が殺害されてしまうという悲劇が彼を襲う。砲撃直後、博士の涙の叫びの肉声はイスラエルのテレビ局で生放送され、イスラエル中に衝撃と共に伝わった。翌日、テレビカメラの前で、博士は突然憎しみではなく、共存について語りだす。その後、正義を求めてイスラエル政府を訴え、娘の死の責任を追求するも、決して復讐心や憎しみを持たずに、知恵と決意とレジリエンスを持ち続けた。彼の赦しと和解の精神は、世界中の人々に感動を与え、数
え切れないほどの賞を受賞し、“中東のガンジー、マンデラ、キング牧師”とも呼ばれる存在となる。自伝『それでも、私は憎まない』は世界的ベストセラーとなった。しかし、2023 年 10 月 7 日のハマスのイスラエルへの攻撃、それ以降のガザへの攻撃を経て、彼の信念は再び試されることになる。
公開日未定
クローズ・アップ
© 1990 Farabi Cinema
1990年/イラン/98分/配給:ノーム、東風
原題:CLOSE-UP
監督・脚本・編集:アッバス・キアロスタミ
撮影:アリ=レザ・ザリンダスト
出演:ホセイン・サブジアン、ハッサン・ファラーズマンド、アボルファズル・アーハンハー、メフルダード・アーハンハー、モフセン・マフマルバフ
J・L・ゴダールに、「映画はグリフィスに始まりキアロスタミで終わる」と言わしめたアッバス・キアロスタミ監督、魔法的大傑作!
『友だちのうちはどこ?』やカンヌでパルムドールを受賞した『桜桃の味』などで知られる巨匠アッバス・キアロスタミ。その美しく独創的なフィルモグラフィにおいてもひときわ異彩を放ち、いまなお数多くのシネアストを魔法のように魅了し続けている本作『クローズ・アップ』。 ある男が映画監督のモフセン・マフマルバフになりすまし、裕福な一家を騙したという詐欺事件を知ったキアロスタミ監督は、すぐに裁判所を訪れ、その公判の模様をカメラに収めることに成功する。さらに、事件に至る過程を当事者たち自身に演じさせて再現することで、事の次第を明らかにしていく。ドキュメンタリーと再現、虚構と現実を精巧に織り上げていった果てに、ついに映画は詐欺容疑で逮捕された青年の心の奥に秘められた真実を探り当てる。めくるめくサスペンスと不意打ちをくらわされたような衝撃的な感動。時代を超えても色褪せない稀代の大傑作が、HDリマスター版でスクリーンに甦る!
嘘からはじまる、本当のはなし
バスで隣に座った婦人から声をかけられた映画青年サブジアン。持っていた映画の本について尋ねられ、思わず自分は本の著者である映画監督のモフセン・マフマルバフだと名乗ってしまう。すんなりとその嘘を信じた婦人は、家族全員が映画好きだと言って彼を家へ招き入れる。嘘に嘘を重ね、一家を架空の映画製作に巻き込んだサブジアンは、ついには詐欺罪で逮捕されてしまう。そして迎えた判決の時、サブジアンが明かす真実とは…。