ジャン・ユスターシュ映画祭

映画に生き、映画に死んだ伝説の監督。
幻の傑作が初の4Kデジタルリマスターで今、甦る。

ジャン・ユスターシュ映画祭

10/21(土)-11/3(金)

映画に生き、映画に死んだ伝説の監督。
幻の傑作が初の4Kデジタルリマスターで今、甦る。

ジャン・ユスターシュ映画祭

10/21(土)-11/3(金)

映画史に残る傑作『ママと娼婦』で、一躍時代の寵児となったフランスの映画監督、ジャン・ユスターシュ。しかし度重なる奇行、自己破壊的な行動が影響してか、その後1本の長編とわずかな中・短編を手がけただけで、1981年、42歳にして拳銃自殺を遂げた。
今年、4Kデジタルリマスターで甦った『ママと娼婦』がパリ、ニューヨークをはじめ各地で上映され、その痛ましいまでの美しさに世界は再び驚愕した。そしてほとんど彼の作品を観ることができなかったわが国でも、謎に包まれた全貌がついに明らかになる。
「死者を起こすには、強くノックすること」
そう遺して世を去った“呪われた映像作家”の扉を、いよいよ叩くときが来た。

ジャン・ユスターシュ Jean Eustache

1938年11月30日、仏ジロンド県ペサックの労働者階級一家に生まれる。父は共産党員だった。両親の離婚後、母方の祖母に育てられ、その後ナルボンヌに住む母と暮らし始める。同地で電気工の職業適性証書を取得。57年にパリに出て、フランス国有鉄道の一般工員として働く。シネマテーク・フランセーズに足しげく通う映画狂でもあった。また59年、アルジェリアへの徴兵忌避で手首を切って自殺を試み、短期間精神病棟に送られた。シネマテーク通い、さらにカイエ・デュ・シネマ誌で秘書を務めていた妻ジャネット・ドゥロを介してジャン゠リュック・ゴダール、エリック・ロメール、ジャン・ドゥーシェ、ジャン゠ピエール・レオー、ポール・ヴェッキアリといった映画関係者と知己の仲となりロメールやドゥーシェの短編映画製作に参加。62年にはヴェッキアリの助力で、初監督作にあたる短編『夜会』(未完)を、翌63年に中編『わるい仲間』を発表した。67年にドゥロと離婚した後、交際した女性の一人フランソワーズ・ルブランとの関係に一部基づいた初の長編劇映画監督作『ママと娼婦』(73)で一躍国際的注目を集めるが、続く長編劇映画『ぼくの小さな恋人たち』(74)は興行的に失敗。以後は実験的な短編・中編映画、および記録映画のみを監督。81年5月にギリシャでテラスから落下、脚を骨折。残りの人生を脚が不自由なまま過ごすことになると知り絶望する。同年11月5日、パリの自宅で拳銃自殺を遂げる。

主催:マーメイドフィルム 配給:コピアポア・フィルム 宣伝:VALERIA

公式サイトhttp://jeaneustachefilmfes.jp/

入場料:一般1,800円/会員1,500円/大専・シニア1,200円/高校生以下800円

上映スケジュール

10/21(土) 10/22(日) 10/23(月) 10/24(火) 10/25(水) 10/26(木) 10/27(金)
わるい仲間10:00ー11:26
わるい仲間/サンタクロース
ママと娼婦10:00ー13:40
ママと娼婦
ぼくの小さな恋人たち10:00ー12:05
ぼくの小さな恋人たち
ママと娼婦10:00ー13:40
ママと娼婦
わるい仲間10:00ー11:26
わるい仲間/サンタクロース
ママと娼婦10:00ー13:40
ママと娼婦
ぼくの小さな恋人たち10:00ー12:05
ぼくの小さな恋人たち
ぼくの小さな恋人たち11:35ー13:40
ぼくの小さな恋人たち
わるい仲間12:15ー13:41
わるい仲間/サンタクロース
ぼくの小さな恋人たち11:35ー13:40
ぼくの小さな恋人たち
わるい仲間12:15ー13:41
わるい仲間/サンタクロース

予定表 横にスクロールできます

10/28(土) 10/29(日) 10/30(月) 10/31(火) 11/1(水) 11/2(木) 11/3(金)
ママと娼婦16:00ー19:40
ママと娼婦
わるい仲間/サンタ16:00ー17:26
わるい仲間/サンタ
ママと娼婦16:00ー19:40
ママと娼婦
ぼくの小さな恋人たち16:00ー18:05
ぼくの小さな恋人たち
ママと娼婦17:50ー21:30
ママと娼婦
わるい仲間/サンタ17:50ー19:16
わるい仲間/サンタ
ママと娼婦17:50ー21:30
ママと娼婦
ぼくの小さな恋人たち17:35ー19:40
ぼくの小さな恋人たち
わるい仲間18:15ー19:41
わるい仲間/サンタクロース
ぼくの小さな恋人たち19:25ー21:30
ぼくの小さな恋人たち

予定表 横にスクロールできます

作品紹介

わるい仲間 Du côté de Robinson

© Les Films du Losange

1963年/フランス/白黒/39分
監督・脚本・編集:ユスターシュ/撮影:ミシェル・H・ロベール、フィリップ・テオディエール/音楽:セザール・ガッテーニョ
出演:アリスティド・ドメニコ(ジャクソン)、ダニエル・バール(友人)、ドミニク・ジェール(女性)

ユスターシュの妻ジャネット・ドゥロにふりかかった災難(ユスターシュと喧嘩して街へ出たドゥロに、二人組の無骨者がつきまとって彼女を困らせた)に基づいて構想された作品。当時ドゥロが秘書として働いていた、カイエ・デュ・シネマ誌のオフィスにある金庫から盗んだカネを使って撮られたとの伝説がある。主人公はタフガイ気取りで品位を欠く、自堕落な生活を送る若者二人組だ。彼らは街をぶらぶらするうちに知り合った女性を口説こうとするが、なびいてこないので腹いせに彼女の財布を盗む。ヌーヴェル・ヴァーグ映画的な街なかでのゲリラ撮影を活用しながらも、ここでのパリは生きづらい寒々しく退屈な街へと変貌しており、登場人物の「リアルな」描出ともども新世代作家の台頭を印象づける。

サンタクロースの眼は青い Le Père Noël a les yeux bleus

© Les Films du Losange

1966年/フランス/白黒/47分
監督・脚本:ユスターシュ/撮影:フィリップ・テオディエール/編集:クリスチアーヌ・ラック、ユスターシュ/音楽:ルネ・コル、セザール・ガッテーニョ
出演:ジャン゠ピエール・レオー(ダニエル)、ジェラール・ジメルマン(デュマ)、ルネ・ジルソン(写真家)

『ママと娼婦』『ぼくの小さな恋人たち』と併せて、ユスターシュの自伝的三部作を形成する一本。ゴダール提供による『男性・女性』(66)の未使用フィルムを使って撮られた。主演も『男性・女性』のレオー。舞台となるのは、クリスマス・シーズンの仏南西部ナルボンヌ。貧しい青年ダニエルは、モテるためのダッフルコート欲しさにサンタクロースの扮装をして街角に立ち、写真撮影のモデルを務める仕事を引き受ける。やがて彼は、変装した方がナンパに好都合であることに気づくが……ヴォイスオーヴァーを活用して定職のない若者の冴えない日々を描きつつ、やがて彼の滑稽な日常が悲哀へと、期待が幻滅へと転調する語り口が絶妙。ナルボンヌ生まれの国民的歌手シャルル・トレネに捧げられている。

ママと娼婦 La Maman et la putain

© Les Films du Losange

1973年/フランス/白黒/215分
監督・脚本:ユスターシュ/撮影:ピエール・ロム、ジャック・ルナール、ミシェル・セネ/編集:ドゥニーズ・ド・カサビアンカ、ユスターシュ
出演:ベルナデット・ラフォン(マリー)、ジャン゠ピエール・レオー(アレクサンドル)、フランソワーズ・ルブラン(ヴェロニカ)

ユスターシュにとって最初の長編映画である本作は、四時間近い破格の上映時間を通じて、やはり作家の私的経験に基づいた物語を綴っていく。その物語とは、72年のパリを舞台に、五月革命の記憶を引きずる無職の若者アレクサンドルと彼の年上の恋人マリー、前者がカフェで知り合った性に奔放な20代の看護師ヴェロニカの奇妙な三角関係を描いたものだ。ユスターシュは、当時破局を迎えたばかりだったルブラン(ヴェロニカ役を演じている)をはじめ、自身と複数の女性との関係に基づいて脚本を執筆した。完成作はカンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを獲得。男女の性的関係が台詞も含めて赤裸々に描かれた本作はスキャンダルをも巻き起こしたが、今や映画史上の傑作の一本として不動の地位を築いている。

ぼくの小さな恋人たち Mes petites amoureuses

© Les Films du Losange

1974年/フランス/カラー/123分
監督・脚本:ユスターシュ/撮影:ネストール・アルメンドロス/編集:フランソワーズ・ベルヴィル、ユスターシュ
出演:マルタン・ローブ(ダニエル)、イングリット・カーフェン(母)、ジャクリーヌ・デュフレンヌ(祖母)

二本目にして最後の長編監督作。題名はランボーの同名の詩から採られている。ペサックで心優しい祖母と二人暮らしをしていた13歳の少年ダニエルが、やがて母が継父と住むナルボンヌに移住し、経済事情から学業を諦めて二輪車販売・修理店で見習いとなる物語には、ユスターシュの少年時代の記憶が多分に投影された。作家によれば、「自分の映画はどれも最初から社会ののけ者の中に身を置く」一方、本作だけは「ある子どもの、普通の生活から脱落者の境遇への移行」を描いている。主題の一つは、聖体拝領の日に初めて異性を意識した経験に始まる、ダニエルの性的な成長だ。半ば様式的な演出が施されたこの寡黙な映画は、繊細なカラー撮影と相まってユスターシュ作品中例外的な輝きを放ち続けている。