ユーリー・ノルシュテイン監督特集上映 「アニメーションの神様、その美しき世界」

ユーリー・ノルシュテイン監督特集上映

©2016 E.S.U.E C&P SMF

公式ホームページ

ノルシュテイン監督代表作6本を2Kスキャンにて修復
絵画を超えた夢幻の映像体験。至福の芸術世界にようこそ!

1941年9月15日、旧ソ連に生まれたロシア人アニメーター、ユーリー・ノルシュテイン。切り絵を用いた緻密な作風で知られ、“アート・アニメーションの神様”として日本の宮崎駿・高畑勲監督をはじめ、世界中のアニメーターからリスペクトされている。
今回、ノルシュテイン監督がソ連時代に監督した6本の作品について、オリジナルネガから2Kスキャニングされたデータをロシアから取り寄せ、レストレーション(修復)とグレーディング(色調整)をおこない、2K修復版を制作。また音声についても大元の磁気テープからデジタル化し、日本の誇る音響エンジニア、オノ・セイゲン氏が修復・マスタリングを担当。
映像、音声共にかつてない美しさで甦った世界アニメーション史に輝く傑作群。これまでノルシュテイン作品に触れたことのない方も、ぜひこの機会に素晴らしい世界をお楽しみください!

25日・最初の日
ケルジェネツの戦い
キツネとウサギ
アオサギとツル
霧の中のハリネズミ
話の話

当日一般1,600円/会員1,300円/大専・シニア1,100円/高校生以下800円

【半券提示割り】『ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくる』の入場券半券の提示で一般料金より300円引き

作品紹介

25日・最初の日

©2016 E.S.U.E C&P SMF

1968年/ソ連/10分
原題:25-e – pervyy den
監督・アニメーション・脚本・美術:Y.ノルシュテイン、A.チューリン
撮影:V.スルハーノフ
音楽:D.ショスタコーヴィッチ

25日・最初の日

ロシア革命を鮮烈に描いたデビュー作

美術監督のアルジィ・チューリンとの共作。「25日」とは、ロシア旧暦で1917年10月のロシア革命最初の日にあたる日。静かな広場に民衆の怒りが打ち寄せ、資本家・貴族・ブルジョア・聖職者・憲兵らの支配者階級が打ち倒される様子が描かれる。
「1920年代の芸術(ロシア・アヴァンギャルドアート)を基盤に映画を作る」という企みの通り、都市のデザインはジョルジュ・ブラック(1882-1963)、漫画は詩人ウラジミール・マヤコフスキー(1893-1930)をモチーフに、音楽はショスタコーヴィッチの交響曲11番と12番を使用した。熱き時代のアーティストたちを使い、革命を回想し、戦った人々の想いを再現しようとした意欲的な監督デビュー作。

ケルジェネツの戦い

©2016 E.S.U.E C&P SMF

1971年/ソ連/10分
原題:Secha pri Kerzhentse
監督・脚本:I.イワノフ=ワノー
監督・アニメーション:Y.ノルシュテイン
美術・演出:M.ソコローヴァ、V.ナウーモフ
撮影:V.スルハーノフ
音楽:N.A.リムスキー・コルサコフ

ケルジェネツの戦い

中世の壁画が鮮やかに動きだす

ロシアの著名な作曲家リムスキー・コルサコフの同名の間奏曲「ケルジェネツの戦い」を使った監督第二作。イワン・イワノフ・ワノーとの共同監督作品で、『25日・最初の日』の鮮烈な手法を取り入れようと、ノルシュテインを共同監督に招いて制作。
「ケルジェネツ」は河の名前で、実際にこの河のほとりで行われた西暦988年のロシアとタタールの戦争が描かれ、それに巻き込まれる村が舞台となる。当初、人形アニメでと提案したワノーに対し、ノルシュテインは切り絵の手法を主張。見事に成功をおさめ、その規格外の才能に注目が集まる契機となった。

*1972年 ザグレブ国際映画祭 最優秀賞・特別審査員賞

キツネとウサギ"

©2016 E.S.U.E C&P SMF

1973年/ソ連/10分
原題:Lisa i zayats
監督・アニメーション:Y.ノルシュテイン
美術:F.ヤールブソワ
撮影:T.ブニモーヴィッチ
音楽:M.メェローヴィッチ
編集:N.アブラーモワ
語り:V.ホフリャコフ

キツネとウサギ

初の子ども向け作品

監督3本目にして初の単独演出作品。なかなかスタジオから仕事がもらえなかったノルシュテインが、スタジオの上層部にウケのよい「子どものための作品」として、ロシア民話の「キツネとウサギ」を提案して制作。原案はウラジーミル・ダーリ(1801-1872)の民話。ウサギがキツネに家を乗っ取られてしまい、オオカミ・クマ・ウシなど強そうな動物がキツネを追い出そうと手伝ってくれるのだが・・・
単なる原作のアニメ化にはしたくなかったノルシュテインは、妻で美術監督のヤールブソワとともに、民衆美術を参考にキャラクターデザインを考えたという。日本でも人気のマトリヨーシカなどのロシア雑貨に見られるような、鮮やかな色彩をもち素朴ながらも高度に様式化された「ガラジェッツ絵画」のデザインを全面的に取り入れた。

*1974年 ザグレブ国際映画祭 児童映画最優秀賞

アオサギとツル"

©2016 E.S.U.E C&P SMF

1974年/ソ連/10分
原題:Tsaplya i zhuravl
監督・アニメーション:Y.ノルシュテイン
脚本:R.カチャーノフ、Y.ノルシュテイン
美術:F.ヤールブソワ
撮影:A.ジュコーフスキー
作曲:M.メェローヴィッチ
編集:N.アブラーモワ

アオサギとツル

浮世絵・水墨画を取り入れた恋愛劇

原案は前作に続きウラジーミル・ダーリの民話。シナリオは当初『チェブラーシカ』のロマン・カチャーノフ監督に依頼していたが、望むものとは違ったためノルシュテインが全面的に改稿した。
お互いに気になる存在のツルとアオサギが結婚の申し込みをし合う。申し込まれた方は、なぜか傲慢な気分、あるいは天邪鬼になり、断っては後悔してという繰り返しを続け、笑えるようでいて哀しくもあるような特別な世界が繰り広げられる。
ノルシュテイン本人が満足した出来栄えという作品だけあって、様々な試みが軽やかに成功している。生涯で最も相性のよかった撮影監督アレクサンドル・ジュコフスキーとの邂逅により、北斎や広重の浮世絵や、水墨画に着想を得て、湿原や雨を幻想的に描写した。廃墟となった貴族屋敷を舞台空間として選ぶセンスなど、切り絵アニメでこれほどの内面心理が表現できるのかと観る者を驚かせる。

*1975年 アヌシー国際映画祭 審査員特別賞

霧の中のハリネズミ"

©2016 E.S.U.E C&P SMF

1975年/ソ連/10分
原題:Yozhik v tumane
監督・アニメーション:Y.ノルシュテイン
脚本:S.コーズロフ
美術:F.ヤールブソワ
撮影:A.ジュコーフスキー
作曲:M.メェローヴィッチ
編集:N.アブラーモワ
声優:A.バターロフ、M.ビノグラードワ、V.ネビンヌイ

霧の中のハリネズミ

世界で最も愛されたノルシュテイン作品

夕暮れの野原をハリネズミのヨージックが急ぎ足で歩いている。友だちの子グマの家でお茶を飲みながら星を数えるために。しかし、いつしか周囲には夕霧が立ちのぼリ・・・
高畑勲監督が「ただただすばらしい10分間と余韻を味わう」と感嘆し、世界で最も愛されたノルシュテイン作品。原案はセルゲイ・コズロフの児童文学だが、ノルシュテインはそこに「霧から出た後にハリネズミの人生観が変わる」という独自のアイディアを付け加えた。「なんの罪もない存在がまったく見ず知らずの状況に陥る。そしてこのナイーブな存在は人生にはまだまだ知らないことがある、神秘に満ちたものがある、その中にはドラマがあるのだということを感じ取っていくのです」。
このプロットにハリネズミの造形がぴったりと寄リ添い、観客は深い霧のなかを進ハリネズミの心情に同化してしまう。ハリネズミ以外にも、子グマ、ミミズク、白い馬、蛾の群れ、ホタル、犬、魚と、多様なキャラクターが登場し、子どもたちにも人気を博した。
本作のためにノルシュテインは撮影のジュコーフスキーとともに大型の撮影台を制作。そのマルチプレーンと呼ばれる多層のガラス面に切り絵を配置する手法によって、彼独自の深い映像空間がひとつの完成形をみた作品。

*1976年 全ソ連映画祭 最優秀賞
*1977年 テヘラン国際青少年映画祭 最優秀賞受賞と金の大メダル
*1977年 ロンドン・フェステイバル年間最優秀映画賞
*1978年 シドニー国際映画祭 銀のブーメラン賞

話の話"

©2016 E.S.U.E C&P SMF

1979年/ソ連/29分
原題:Skazka skazok
監督・アニメーション:V.ノルシュテイン
脚本:L.ベトルシェフスカヤ、V.ノルシュテイン
美術:F.ヤールブソワ
撮影:I.スキダン=ボーシン
音楽:M.メェローヴィッチ、W.A.モーツァルト、J.S.バッハ
編集:N. アブラーモワ
声優:A. カリャーギン

話の話

世界アニメーション史に残る最高傑作

ノルシュテイン自身が「もっとも心情に沿った内容で、私の友達に語った、手紙に綴るような作品」と話しているとおリ、自伝的な要素を多く含む作品。トルコの詩人ナジム・ヒクメットの同名の詩をもとに、ロシア子守唄に登場する狼の子を狂言回しとして、自身の記憶を色濃く反映した映像叙情詩となっている。ストーリーはあるようでなく、様々な日常の断片が、時に悪夢的な、時にユーモアのあるイメージをもたらす。
1941年に生まれたノルシュテインにとって、戦争の記憶はくっきりと残っている。同年6月にソ運がドイツと開戦したため、戦火の中で生まれたノルシュテイン。実際に自分が生まれ育った木造アバートを本作に登場させているが、そこに住んでいた20家族のうち、少なくとも8人は戦死したという。
アパートの中庭では戦勝記念パーティが開かれたり、戦死通知を受け取る夫人たちの様子が描かれもする。各映画祭ではその完成度と芸術性の高さがこれまでにないほど評価され、キャリア中最大の記念碑となった作品でもある。

*1980年 ザグレブ国際映画祭 最優秀賞
*1980年 オタワ国際映画祭 最優秀賞
*第二回モスクワ国際青少年映画祭 最優秀アニメーション賞・観客審査員賞
*1984年 映画芸術アカデミーとASIFAが共催した国際アンケートで「歴史上、世界最高のアニメーション映画」として認定