アメリカ黒人映画傑作選

アメリカ黒人映画傑作選

アメリカ黒人映画傑作選

今まで見過ごされてきた
黒人監督による黒人映画の秀作たち

7/12(土)―7/18(金)

アメリカ黒人映画傑作選

今まで見過ごされてきた
黒人監督による黒人映画の秀作たち

7/12(土)―7/18(金)

長きにわたって日の目を見ることがなかったアフリカ系アメリカ人による映画。今回上映される3本は、いずれもアメリカ議会図書館の国立映画登記簿の保存に選ばれ、近年再評価が高まる傑作ばかり。あからさまな政治的、差別描写はなくとも、女性たちの眼差しやささやかな日常を通して浮き彫りになるのは、彼女たちのおかれた切実な状況社会のひずみ、そしてそれらを乗り越える限りない生命力。
ここにはイメージやステレオタイプを打ち破る“映画的瞬間”が満ち溢れている。

公式ホームページhttps://blackamericancinema.jp/

提供マーメイドフィルム

配給コピアポア・フィルム

入場料 当日一般1,900円/会員・大専・シニア1,300円/高校生以下800円

予定表 横にスクロールできます

作品紹介

ここではないどこかで Losing Ground

ここではないどこかで

©1982 Kathleen Collins, Courtesy of Milestone Films and the Kathleen Collins Estate

1982年/カラー/アメリカ/86分
監督・脚本:キャスリーン・コリンズ
出演:セレット・スコット、ビル・ガン

大学で哲学を教えるサラは、画家の夫ヴィクターとニューヨークに住んでいる。夏の間、リゾート地で創作活動に専念したいと言い出すヴィクターに対し、論文執筆のため街に残りたいサラだったが渋々付き合うことに。しかしヴィクターは現地の女性にちょっかいを出し、サラは腹いせに教え子から頼まれていた自主映画への出演を決めてしまう。アフリカ系女性監督による最初期の長編映画。正式公開には至らず、製作から6年後に監督のキャスリーン・コリンズは逝去。2015年に修復され上映を果たし、映画評論家のリチャード・ブロディが「ニューヨーカー」誌で「この映画が当時広く公開されていたら、映画史に名を刻んでいただろう」と評するなど絶賛された。エリック・ロメールを思わせるような軽妙かつ洗練された語り口で、男女の機微を活き活きと描く。

小さな心に祝福を Bless Their Little Hearts

小さな心に祝福

©1983 Billy Woodberry, Courtesy of Milestone Films and Billy Woodberry

1984年/モノクロ/アメリカ/85分
監督:ビリー・ウッドベリー
出演:ネイト・ハードマン、ケイシー・ムーア

ロサンゼルスのワッツ地区で暮らす失業者チャーリーは3人の幼い子を養うため、職探しの毎日。日雇いの仕事にありつければまだマシな方、なかなか金を稼ぐ手立てが見つからない。妻のアンダイスは夫の不甲斐なさに半ば諦め顔、家計のやりくりに苦心しながら家事に忙殺されストレスがたまる一方。そんな中、チャーリーの浮気が発覚、ついにアンダイスの怒りが爆発する。貧困地帯を舞台に、黒人家族の過酷な日常を抑制の効いたモノクロ映像で丹念に追う。監督は〈L.A.リベリオン※〉の中心人物の一人、ビリー・ウッドベリー。脚本と撮影を“最も偉大な黒人監督”と評されるチャールズ・バーネットが手掛けている。Rotten Tomatoesで100%の支持率を獲得。10分近く長回しで捉えたキッチンでの夫婦喧嘩は壮絶の一言。
※L.A.リベリオン:1960年代後半から1980年代後半にかけてUCLAで学び、ハリウッドの伝統にとらわれない自由な映画づくりを目指したアフリカ系の映画人たちを指す。代表的な人物としてチャールズ・バーネット(『Killer of Sheep』)、ラリー・クラーク(『Passing Through』)、ジュリー・ダッシュ、ビリー・ウッドベリーらがいる。

海から来た娘たち Daughters of the Dust

海から来た娘たち

Images Courtesy of Park Circus/The Cohen Film Collection

1991年/カラー/アメリカ/112分
監督・脚本:ジュリー・ダッシュ
出演:コーラ・リー・デイ、バーバラ・O・ジョーンズ

1902年、アメリカ大西洋沖シー諸島のある島。長年住んだ故郷を離れ、北への移住を決めたぺザント一族だったが、長老のナナは亡き夫が眠るこの地に残ると言い張る。それぞれの思惑が交錯する中、いよいよ島を出る時が来た。これから生まれてくる子供のモノローグで綴られる、ガラ族の女系家族の物語。虐げられても失わなかった高貴な魂と誇りを、詩的な映像美で高らかに謳いあげる。黒人女性監督による初めて公開された長編映画で、2016年にリリースされたビヨンセのアルバム『レモネード』が本作に多大な影響を受けていることから注目が集まり、2022年にはサイト&サウンド誌「史上最高の映画ベスト100」の60位に選出されるなど、今も語り継がれる名作。1991年のサンダンス映画祭で撮影賞を受賞。