<ソビエト時代のタルコフスキー>+1

共産党統制下
抑圧された自由の中でこそ
うまれた傑作の数々
その源泉を辿る

3/13(土)-3/26(金)

アンドレイ・タルコフスキー Andrei Arsenyevich Tarkovsky

1932年4月4日~1986年12月29日
長編監督作は7本と寡作だが、水、雨、光など自然を駆使した抒情的な作風により映像の詩人と呼ばれ、没後35年を経てもなお、世界中の映画ファンを虜にしている。その作品は長く見続けられている傑作揃いである。ソ連からフランスに亡命して僅か2年後の1986年、54才で肺ガンによりパリで客死。

配給:パンドラ 協力:ザジフィルムズ/マグネット・コミュニケーションズ

入場料

一般1,500円/会員1,200円/大専・シニア1,100円/高校生以下800円

トークイベント

3/13(土)『ストーカー』16:30回上映後 ゲスト:沼野充義さん

沼野充義[ぬまの みつよし] 1954年東京生まれ。日本のスラヴ文学者。名古屋外国語大学世界教養学部教授・副学長、東京大学名誉教授。専門はロシア・ポーランド文学。

上映スケジュール

3/13(土) 3/14(日) 3/15(月) 3/16(火) 3/17(水) 3/18(木) 3/19(金)
鏡14:30-16:20
ノスタルジア14:30-16:36
ノスタルジア
惑星ソラリス14:30-17:15
惑星ソラリス
ストーカー14:30-17:20
ストーカー
鏡14:30-16:25
ローラー+僕の村14:30-16:55
ローラー+僕の村
アンドレイ14:30-17:40
アンドレイ
ストーカー16:30-19:13
ストーカー
アンドレイ16:45-19:50
アンドレイ
ローラー+僕の村17:25-19:50
ローラー+僕の村
ノスタルジア17:30-19:40
ノスタルジア
惑星ソラリス16:35-19:25
惑星ソラリス
ストーカー17:05-19:50
ストーカー
鏡17:50-19:45

予定表 横にスクロールできます

3/20(土) 3/21(日) 3/22(月) 3/23(火) 3/24(水) 3/25(木) 3/26(金)
惑星ソラリス14:10-17:00
惑星ソラリス
ストーカー14:00-16:45
ストーカー
アンドレイ14:00-17:10
アンドレイ
ローラー+僕の村14:00-16:25
ローラー+僕の村
鏡14:00-15:55
ノスタルジア14:00-16:06
ノスタルジア
惑星ソラリス14:00-16:50
惑星ソラリス
ノスタルジア17:10-19:20
ノスタルジア
ローラー+僕の村16:55-19:20
ローラー+僕の村
鏡17:20-19:15
惑星ソラリス16:35-19:20
惑星ソラリス
ストーカー16:15-19:05
ストーカー
アンドレイ16:15-19:20
アンドレイ

予定表 横にスクロールできます

上映作品紹介

ローラーとバイオリン

1960年/46分/カラー/デジタル/スタンダード
脚本:A・ミハルコフ=コンチャロフスキー、アンドレイ・タルコフスキー
撮影:ワジーム・ユーソフ
出演:イーゴリ・フォムチェンコ、ウラジーミル・ザマンスキー、ニーナ・アルハンゲリスカヤ、マリナ・アドジユベイ、ユーラ・ブルーセフ、スラヴァ・ボリーソフ、サーシャ・ヴィトスラフスキー

バイオリン大好き少年サーシャは、近所の少年たちにいじめられているところを、青年セルゲイに助けられる。セルゲイはローラーで整地作業をする労働者だったが、これをきっかけに二人は友だちになり、サーシャは労働を知り、セルゲイは音楽に心を開かれてゆく。だが、二人で映画を見ることをサーシャの母親は反対するのだった・・・・。タルコフスキーが全ソ国立映画大学卒業制作としてつくった第一回監督作品で、アルベール・ラモリスの『赤い風船』に刺激されたと言われている。大学同窓の盟友アンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキーと一緒に脚本を執筆。

*1960年ニューヨーク国際学生映画コンクール第1位

僕の村は戦場だった デジタルリマスター版

1962年/94分/モノクロ/デジタル/スタンダード
原作:ウラジーミル・ボゴモーロフ
脚本:ウラジーミル・ボゴモーロフ、ミハイル・パパーワ
撮影:ワジーム・ユーソフ
出演:ニコライ・ブルリャーエフ、ワレンチン・ズブコフ、Ye・ジャリコフ、V・マリャービナ、イリーナ・タルコフスカヤ、ニコライ・グリニコ

タルコフスキーの長編第一回監督作品。第二次世界大戦下のソビエト。カッコーの鳴く美しい村で、明るい陽光と戯れる12才の少年イワンはママから水をもらう。と、そこに銃声が響く。イワンは両親と妹をドイツ軍に殺され、一人ぼっちになってしまった。まだ、あどけなさの残る彼は、学校に通わせたいとの周囲の大人たちの思いをよそに、復讐心に燃えてパルチザンに協力し、危険をおかして敵の占領地域への偵察活動に従事するが・・。幼い者のこころをゆがめる戦争。激しい戦闘シーンと、少年の心に時折よみがえる平和な日々の対比の中で、戦争の悲惨さと虚しさが浮かびあがる傑作である。

*1962年ヴィネツィア国際映画祭金サン・マルコ金獅子賞

*サンフランシスコ国際映画祭監督賞

アンドレイ・ルブリョフ

1967年/182分/モノクロ&カラー/デジタル/シネスコ
脚本:アンドレイ・タルコフスキー、アンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー
撮影:ワジーム・ユーソフ
出演:アナトリー・ソロニーツィン、イワン・ラピコフ、ニコライ・グリニコ、ニコライ・セルゲエフ、ニコライ・ブルリャーエフ、イルマ・フウシュ

時は15世紀初頭。モスクワのアンドロニコフ修道院で、信仰と絵画の修業を積んだアンドレイたち僧侶は、降りしきる雨の田舎道を急いでいた。彼らは道中、旅芸人が権力を風刺して捕えられるのを目撃した。圧制に苦しむ民衆を目の当たりにしてアンドレイの苦悩は深まる。ロシア最高の伝説的イコン画家アンドレイ・ルブリョフ(14世紀後半から15世紀前半)の生涯を描き、同時に当時のロシア社会をあぶりだす。10のエピソードにより、時代と人間、社会と民衆を重層的に積み上げて映画を構成し、歴史の真実に迫った意欲作。ロケ地となったウラジーミル、スズタリ、ノヴゴロドなどの古都も美しく印象的である。

*1969年カンヌ国際映画祭批評家連盟賞

*1971年ジュシー賞(フィンランド)外国語映画賞 他多数

惑星ソラリス デジタルリマスター版

1972年/165分/モノクロ&カラー/デジタル/シネスコ
原作:「ソラリスの陽のもとに」(スタニスワム・レム)
脚本:アンドレイ・タルコフスキー、フリードリヒ・ガレンシュテイン
撮影:ワジーム・ユーソフ
出演:ナタリア・ボンダルチュク、ドナタス・バニオニス、ユーリー・ヤルヴェト、ウラジスラフ・ドヴォルジェツキー、アナトリー・ソロニーツィン、ニコライ・グリニコ

世界SF映画史上に金字塔を打ち立てた作品である。海と雲に覆われ、生物の生存が確認されていない惑星ソラリス。だが、ソラリスの海は理性を持つと科学者たちは考え、何度も海と接触しようと試みたが失敗。宇宙ステーションは混乱に陥り、地上との交信が途切れてしまう。その調査のために派遣された心理学者クリスの目前に現れたのは、友人の死体に自殺した妻。さらに、残された二人の科学者は何かに怯えている・・・。極限状態にある人間の心に焦点を当て、哲学的命題を観客に投げかけてよこす。ちなみに未来都市の風景として映し出されるのは、東京都港区赤坂見附の立体交差。一人で見ては語りたくなり、誰かと一緒に見ては考える、そんな深い思索を呼び覚ます映画である。

*1972年カンヌ国際映画祭審査員特別賞 他

1975年/110分/カラー/デジタル/スタンダード
脚本:アレクサンドル・ミシャーリン、アンドレイ・タルコフスキー
撮影:ゲオルギー・レルベルグ
出演:マルガリータ・テレホワ、オレーグ・ヤンコフスキー、イグナト・ダニルツェフ、フィリップ・ヤンコフスキー

タルコフスキーの自伝的要素の濃い作品である。過去と現在を交差させる中から、<私>の記憶が蘇る。木立に囲まれた祖父の家で髪を洗う母。暮らしに困り宝石を売る母に従いて行ったこと。火事で納屋が燃えた年に家族の許から去っていった父。電話が突然鳴る。母の勤める印刷会社の同僚が誰かの死を知らせてきた。校正ミスで、アタフタした大人たちのことを思い出す。時として校正ミスは、命にもかかわる政治問題を引き起こした。第二次世界大戦、中国の文化大革命、宇宙開発、中ソ国境紛争など、激動の世界情勢も描かれ、心象風景が次第に形づくられてゆく。見た後、いつまでも余韻が残る不思議な魅力に溢れる作品である。ちなみに母のカットに流れるのは、タルコフスキー自らが詠む実父アルセニー・タルコフスキーの詩である。

ストーカー デジタルリマスター版

1979年/163分/カラー/デジタル/スタンダード
原作・脚本:「路傍のピクニック」アルカージー・ストルガツキー、ボリス・ストルガツキー
撮影:アレクサンドル・クニャジンスキー
出演:アレクサンドル・カイダノフスキー、アリーサ・フレインドリフ、アナトリー・ソロニーツィン、ニコライ・グリニコ

タルコフスキーの名を世界映画史に刻印した作品である。SF愛好者なら知らぬ人のいないストルガツキー兄弟が、自らの原作をもとに脚本も執筆。隕石でも落ちたのか、大地に突然現れた空間<ゾーン>。その中には願掛けの<部屋>があると言われ、<ストーカー>と呼ばれる部屋案内人の三人の男たちがいた。雨、水、火などのタルコフスキー映画に欠かせない要素を駆使して、規制の多い当時のソビエト社会の暗喩と、そこに生きる人々の苦悩と未来への希望を描く。

*1980年ダヴィド・ドナテロ賞、ルキノ・ヴィスコンティ賞

*1980年ファンタスボルト映画祭観客審査員賞

ノスタルジア

©1983 RAI-Radiotelevisione ltaliana

1983年/126分/イタリア・フランス・ソ連/カラー/デジタル/ヴィスタ/配給:ザジフィルムズ
脚本:アンドレイ・タルコフスキー、トニーノ・グエッラ
撮影:ジュゼッペ・ランチ
出演:オレグ・ヤンコフスキー、エルランド・ヨセフソン、ドミツィアーナ・ジョルダーノ

タルコフスキーがはじめてソ連国外でつくった映画。イタリア、トスカーナ地方。モスクワの詩人アンドレイ・ゴルチャコフと通訳のエウジェニアは、自殺した18世紀ロシアの音楽家、パヴェル・サスノフスキーの足跡を辿るためにこの地にやって来た。アンドレイは病に侵されている。村には世界の終末を憂え、家族ぐるみであばら家に閉じこもるドメニコがいた。彼はアンドレイに、「ロウソクの火を消さずに広場を渡る。それが世界の救済に結び付く」と言う……。水、霧、闇、光と言ったタルコフスキー作品に欠かせない要素に、イタリア撮影技術の艶と鮮かさを加えて、混迷の世界とそれを憂える心を抒情的に描き出す。主人公アンドレイの読む詩は、タルコフスキーの父、アルセニー・タルコフスキーによるものである。

*1983年カンヌ国際映画祭創造大賞・国際映画批評家連盟賞・エキュメニック賞