シャンタル・アケルマン映画祭2023
映画に革命をもたらした伝説の映画監督
2022年の特集上映に続き、劇場初公開作を含む全10本をラインナップ
シャンタル・アケルマン映画祭2023
6.3(土)~6.23(金)
映画に革命をもたらした伝説の映画監督、
2022年の特集上映に続き、劇場初公開作を含む全10本をラインナップ。
シャンタル・アケルマン映画祭2023
6.3(土)~6.23(金)
上映作品全てデジタルリマスター版
既成の映画ルーティンをことごとく破壊し、観る者を全く新しい地平へと誘う映画監督、シャンタル・アケルマン。昨年、イギリス映画協会が10年ごとに選出する「史上最高の映画100」にて代表作『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』 が見事1位に輝いた(2位はA・ヒッチコックの『めまい』、3位はO・ウェルズの『市民ケーン』)。そんな彼女の特集が昨年に続き今年も開催。『ジャンヌ・ディエルマン~』を含む前回上映された5作品に加え、処女短編『街をぶっ飛ばせ』をはじめ新たに5作品をラインナップ。全10本、そのいずれもが異なる貌を持つアケルマンの世界を堪能せよ。
シャンタル・アケルマン Chantal Akerman
1950年6月6日、ベルギーのブリュッセルに生まれる。両親は二人ともユダヤ人で、母方の祖父母はポーランドの強制収容所で死去。母親は生き残ったのだという。女性でありユダヤ人でありバイセクシャルでもあったアケルマンは15歳の時にジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』を観たことをきっかけに映画の道を志し、18歳の時に自ら主演を務めた短編『街をぶっ飛ばせ』(68)を初監督。その後ニューヨークにわたり、初めての長編『ホテル・モンタレー』(72)や『部屋』(72)などを手掛ける。ベルギーに戻って撮った『私、あなた、彼、彼女』(74)は批評家の間で高い評価を得た。25歳のときに平凡な主婦の日常を描いた3時間を超える『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』を発表、世界中に衝撃を与える。
その後もミュージカル・コメディ『ゴールデン・エイティーズ』(86)や『囚われの女』(99)、『オルメイヤーの阿房宮』(2011)などの文芸作、『東から』(93)、『南』(99)、『向こう側から』(2002)といったドキュメンタリーなど、ジャンル、形式にこだわらず数々の意欲作を世に放つ。母親との対話を中心としたドキュメンタリー『No Home Movie』(2015)を編集中に母が他界。同作完成後の2015年10月、パリで逝去。
主催:マーメイドフィルム 配給:コピアポア・フィルム 宣伝:VALERIA
後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本、ベルギー大使館
入場料:一般1,800円/会員1,500円/大学生・専門学生・シニア1,200円/高校生以下800円
※『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』のみ一律1,800円
※本映画祭は招待券、ポイント鑑賞券などはご使用いただけません。
上映スケジュール
6/3(土) | 6/4(日) | 6/5(月) | 6/6(火) | 6/7(水) | 6/8(木) | 6/9(金) |
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14:30-16:15 街をぶっ飛ばせ+家からの手紙 |
14:30-18:00 ジャンヌ・ディエルマン |
14:30-16:10 ゴールデン・エイティーズ |
14:30-16:30 東から |
14:30-16:05 一晩中 |
17:00-18:35 一晩中 |
17:00-18:36 ゴールデン・エイティーズ |
16:30-18:30 東から |
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16:20-18:25 囚われの女 |
16:40-18:25 街をぶっ飛ばせ+家からの手紙 |
16:20-18:35 アンナの出会い |
予定表 横にスクロールできます
6/10(土) | 6/11(日) | 6/12(月) | 6/13(火) | 6/14(水) | 6/15(木) | 6/16(金) |
10:20-12:00 ゴールデン・エイティーズ |
10:20-13:50 ジャンヌ・ディエルマン |
10:00-11:30 私、あなた、彼、彼女 |
10:00-11:35 一晩中 |
10:20ー13:50 ジャンヌ・ディエルマン |
10:00-11:45 街をぶっ飛ばせ+家からの手紙 |
10:00-12:10 オルメイヤーの阿房宮 |
12:10ー13:50 街をぶっ飛ばせ+家からの手紙 |
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11:40-13:50 オルメイヤーの阿房宮 |
11:50-13:50 東から |
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12:00-13:40 ゴールデン・エイティーズ |
12:20-13:50 一晩中 |
予定表 横にスクロールできます
6/17(土) | 6/18(日) | 6/19(月) | 6/20(火) | 6/21(水) | 6/22(木) | 6/23(金) |
16:10-18:05 東から |
16:10-17:55 街をぶっ飛ばせ+家からの手紙 |
16:10-18:07 囚われの女 |
16:10-17:45 私、あなた、彼、彼女 |
16:10-17:55 ゴールデン・エイティーズ |
16:10-17:45 一晩中 |
16:10-18:05 東から |
予定表 横にスクロールできます
作品紹介
街をぶっ飛ばせ Saute ma ville ※『家からの手紙』と併映本映画祭での初上映作
Collections CINEMATEK – ©Fondation Chantal Akerman
監督・出演:シャンタル・アケルマン
撮影:ルネ・フルシュター
1968年/ベルギー/モノクロ/12分
当時18歳だったアケルマンが、ブリュッセル映画学校の卒業制作として初めて監督、主演を務めた記念すべき処女作。花束を手にアパートの階段を駆け上がったひとりの女。鼻歌を口ずさみながらパスタをつくって食べ、調理器具をばらまき、洗剤をまき散らし、マヨネーズを浴びる。狭いキッチンで縦横無尽に暴れ回った彼女の支離滅裂な行動は、驚くべき事態で幕を閉じる。その後の反逆的な作品群の原点とも言える破壊的なエネルギーに満ちた、あまりに瑞々しい短編。
私、あなた、彼、彼女 Je Tu Il Elle
© Chantal Akerman Foundation
監督・脚本:シャンタル・アケルマン
撮影:ベネディクト・デルサル
出演:シャンタル・アケルマン、クレール・ワティオン、ニエル・アレストリュプ
1974年/ベルギー・フランス/モノクロ/86分
アケルマン自身が演じる名もなき若い女性がひとり、部屋で家具を動かし手紙を書き、裸で砂糖をむさぼる。部屋を出た彼女はトラック運転手と行動を共にし、訪れた家で女性と愛を交わす……。殺風景な空間と単調な行為が彼女の閉塞感や孤独を際立たせ、激しく身体を重ね合うことで悦びがドラマティックに表現される。観客は彼女の道程を緊張感を持って見つめることによって、その“時間”を彼女と共有する。
ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地 Jeanne Dielman, 23, quai du Commerce, 1080 Bruxelles
© Chantal Akerman Foundation
監督・脚本:シャンタル・アケルマン
撮影:バベット・マンゴルト
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ジャン・ドゥコルト、ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ
1975年/ベルギー/カラー/200分
ジャンヌは思春期の息子と共にブリュッセルのアパートで暮らしている。湯を沸かし、ジャガイモの皮を剥き、買い物に出かけ、“平凡な”暮らしを続けているジャンヌだったが……。アパートの部屋に定点観測のごとく設置されたカメラによって映し出される反復する日常。その執拗なまでの描写は我々に時間の経過を体感させ、反日常の訪れを予感させる恐ろしい空間を作り出す。ジャンヌを演じるのは『去年マリエンバートで』(61)、『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』(72)のデルフィーヌ・セイリグ。本作は2022年、英国映画協会が10年ぶりに更新した「史上最高の映画100」にて1位に選ばれた。
家からの手紙 News from Home ※『街をぶっ飛ばせ』と併映本映画祭での初上映作
Collections CINEMATEK – ©Fondation Chantal Akerman
監督:シャンタル・アケルマン
撮影:バーベット・マンゴール、リュック・ベナムー
1976年/ベルギー・フランス/カラー/85分
路地、大通りを走る車、駅のホームで電車を待つ人々、地下道……1970年代ニューヨークの荒涼とした街並みに、母が綴った手紙を読むアケルマン自身の声がかぶさる。固定ショットやトラベリングで映し出される公共のロケーションと、時折車の音に掻き消されながらも朗読される、愛情溢れる言葉の融合。都会の寂しさと、遠く離れた家族の距離がエレガントな情感を持って横たわる、映画という<手紙>。
アンナの出会い Les Rendez-vous d’Anna
© Chantal Akerman Foundation
監督・脚本:シャンタル・アケルマン
撮影:ジャン・パンゼ
出演:オーロール・クレマン、ヘルムート・グリーム、マガリ・ノエル
1978年/ベルギー・フランス・ドイツ/カラー/127分
最新作のプロモーションのためにヨーロッパの都市を転々とする女流映画監督を描く、アケルマンの鋭い人間観察力が光る一本。教師、母親、母親の友人らとの接触を挟みながら、常に孤独に彷徨い歩く主人公アンナの姿と、日常に溶け込みはしない断片的な空間と時間とを通して、アイデンティティや幸福の本質が絶妙な構成で描き出されている。『パリ・テキサス』(84)のオーロール・クレマン、『キャバレー』(72)のヘルムート・グリーム、『フェリーニのアマルコルド』(73)のマガリ・ノエルとアケルマン作品にしては豪華なキャストが揃う。
一晩中 Toute une Nuit本映画祭での初上映作
Collections CINEMATEK – ©Fondation Chantal Akerman
監督:シャンタル・アケルマン
撮影:カロリーヌ・シャンプティエ、フランソワ・フェルナンデス、マチュー・スチフマン
出演:オーロール・クレマン、チェッキー・カリョ、ヴェロニク・シルヴェール、ヤン・デクレール
1982年/ベルギー・フランス/カラー/90分
ブリュッセルの暑い夜、眠りにつくことのできない人々。ある者は恋人の腕のなかに飛び込み、ある者は街に繰り出し、夫婦は語らい、そしてある者はバーでダンスを踊る……。官能的な熱を帯びた一晩の中で連結していく、数々の出会いや別れ。詩的な青色の夜を描き出す撮影監督の一人に、ジャック・リヴェット監督『北の橋』(81)、80年代のジャン=リュック・ゴダール監督作品、近年ではレオス・カラックス監督『アネット』(2021)を手掛けた名女性キャメラマン、カロリーヌ・シャンプティエ。
ゴールデン・エイティーズ Golden Eighties本映画祭での初上映作
© Jean Ber – Fondation Chantal Akerman
監督:シャンタル・アケルマン
脚本:シャンタル・アケルマン、ジャン・グリュオー、レオラ・バリッシュ、ヘンリー・ビーン、パスカル・ボニゼール
撮影:ジルベルト・アゼヴェード、リュック・ベナムー
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ミリアム・ボワイエ、ジャン・ベリー、リオ
1986年/ベルギー・フランス・スイス/カラー/96分
美容院やカフェが並ぶパリのカラフルなブティック街を舞台に、そこで働く従業員たち、客たちが恋模様を歌い上げるミュージカル。パステルカラーの衣装に身を包んだ登場人物たちが歌い踊るロマンティックな浮遊感と、愛に対するアケルマンの容赦ない視線が巧みにバランスされている。シナリオにはフランソワ・トリュフォー監督作品に欠かせないジャン・グリュオー、アンドレ・テシネ監督『ブロンテ姉妹』(1979)やジャック・リヴェット監督『美しき諍い女』(1991)を手掛けたパスカル・ボニゼールと名脚本家が参加した。
東から D’Est ※日本語字幕無し本映画祭での初上映作
Collections CINEMATEK – ©Fondation Chantal Akerman
監督:シャンタル・アケルマン
撮影:レイモンド・フロモン、バーナード・デルヴィル
1993年/ベルギー・フランス/カラー/115分
ポーランドやウクライナ、東ドイツといった、ソ連崩壊後の旧共産主義国の都市とそこで暮らす人々の姿をとらえたドキュメンタリー。ナレーションや場所の名前をも排して、アケルマンは時折市井の人々の家庭の様子を散りばめながら、果てしない距離や文化情勢、生活様式を記録した。洞窟のような駅のホーム、カメラを見つめる人々の表情、寒空……。透徹した眼差しがその場所で確かに流れる時間と観客を近づけ、好奇心を駆り立て、映像そのものが静かに語りはじめる。
囚われの女 La Captive
© Corbis Sygma – Marthe Lemell
監督・脚本:シャンタル・アケルマン
撮影:サビーヌ・ランスラン
出演: スタニスラス・メラール、シルヴィ・テスチュー、オリヴィエ・ボナミ
2000年/フランス/カラー/117分
祖母とメイド、そして恋人のアリアーヌとともに豪邸に住んでいるシモンは、アリアーヌが美しい女性アンドレと関係を持っていると信じ込み、次第に強迫観念に駆られていく。マルセル・プルーストの「失われたときを求めて」の第五篇、「囚われの女」の大胆で自由な映像化。嫉妬に苛まれ、愛の苦悩に拘束される虜囚の境地をアケルマンは洗練された表現で描写する。ジャン=リュック・ゴダールの『軽蔑』(63)やアルフレッド・ヒッチコックの『めまい』(58)をも想起させるこの傑作は公開年の「カイエ・デュ・シネマ」ベストテンで2位に選ばれた。
オルメイヤーの阿房宮 La Folie Almayer
© Chantal Akerman Foundation
監督・脚本:シャンタル・アケルマン
撮影:レイモンド・フロモン
出演: スタニスラス・メラール、マルク・バルベ、オーロラ・マリオン
2011年/ベルギー・フランス/カラー/127分
東南アジア奥地の河畔にある小屋で暮らす白人の男オルメイヤー。彼は現地の女性との間に生まれた娘を溺愛し外国人学校に入れるが、娘は父親に反発するように放浪を重ねていく……。『地獄の黙示録』(79)のもとになった「闇の奥」で知られるイギリスの作家ジョゼフ・コンラッドの処女小説を脚色。時代も場所も明かされず抽象化された設定の中で、狂気と破滅の物語が繰り広げられる。原作の持つ実存主義と家父長制という重苦しいテーマを孕みながらも、アジアの街並みを自在に歩き回る娘を横移動で捉えたカメラが素晴らしく、幻想的なまでに美しい。