濱口竜介監督特集上映《言葉と乗り物》
4/30(土)-5/6(金)
―言葉は 想像力を運ぶ電車です―
映画『親密さ』より
4/30(土)-5/6(金)
―言葉は 想像力を運ぶ電車です―
映画『親密さ』より
濱口竜介監督最新作『偶然と想像』までの濱口監督の歩みをたどる監督作をセレクトし特集上映します。
ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した『偶然と想像』、そしてカンヌ国際映画祭では『ドライブ・マイ・カー』が4冠、その後各国での受賞・ノミネートの嵐が止まらない、いま世界でもっとも注目される映画作家となった濱口竜介監督。
大学映画研究会で撮られた8mm作品ながらすでに濱口映画の特徴の詰まった『何食わぬ顔』、世界に発見されるきっかけとなった初期代表作『PASSION』、軽妙でかつスリリング極まりないコメディ『永遠に君を愛す』、日韓共同制作の体制に応答するかのように様々なボーダーを横断する『THE DEPTHS』、俳優ワークショップから出発し舞台劇制作そのものを組み込んだ4時間超の青春映画『親密さ』、100年残る記録映画を目指して「語り」を捉えた東北記録映画三部作(『なみのおと』『なみのこえ 気仙沼/新地町』『うたうひと』)、来るべき長編へのパイロット版として構想された『不気味なものの肌に触れる』、演技未経験の出演陣とこれまでの演出方法を磨き上げ現代映画のひとつの到達点となった『ハッピーアワー』、そして『偶然と想像』にも繋がる軽やかさを纏った『天国はまだ遠い』。
濱口映画に欠かせない「言葉」、そしてさまざまな「乗り物」… 濱口竜介のフィルモグラフィーを見つめると、一貫した、複数の主題があり、作品ごとでの挑戦があり、それがさらに次の作品へと繋がっていることが浮かび上がってきます。
いま改めて、そして初めて、濱口竜介作品をスクリーンで発見してください。
濱口竜介 はまぐちりゅうすけ
1978年神奈川県生まれ。2008年、東京藝術大学大学院映像研究科の修了制作『PASSION』がサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスに出品され話題を呼ぶ。その後は日韓共同制作『THE DEPTHS』(10)、東日本大震災の被害を受けた人々の「語り」をとらえた『なみのおと』、『なみのこえ』、東北地方の民話の記録『うたうひと』(11~13/共同監督:酒井耕)、4時間を超える虚構と現実が交差する意欲作『親密さ』(12)などを監督。15年、映像ワークショップに参加した演技経験のない4人の女性を主演に起用した5時間17分の長編『ハッピーアワー』が、ロカルノ、ナント、シンガポールほか国際映画祭で主要賞を受賞。商業映画デビュー作『寝ても覚めても』(18)がカンヌ国際映画祭コンペテション部門に選出され、共同脚本を手掛けた黒沢清監督作『スパイの妻〈劇場版〉』(20)ではヴェネチア国際映画祭銀獅子賞に輝く。『偶然と想像』は第71回ベルリン国際映画祭にて銀熊賞(審査員グランプリ)受賞、『ドライブ・マイ・カー』(21)では、第74回カンヌ国際映画祭にて脚本賞に加え、国際批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞も同時受賞。その後も世界各地での受賞が相次ぎ、いま、世界から最も注目される映画作家の一人として躍進を続けている。
公式ホームページ上映作品
- 何食わぬ顔(long version)
- PASSION
- 永遠に君を愛す
- THE DEPTHS
- 親密さ
- なみのおと
- なみのこえ 気仙沼
- なみのこえ 新地町
- うたうひと
- 不気味なものの肌に触れる
- ハッピーアワー
- 天国はまだ遠い
- 偶然と想像
- 1プログラム料金:一般1,500円/会員1,200円/シニア1,100円/学生応援プライス500円
- 特別料金プログラム1『親密さ』:一律2,000円
- 特別料金プログラム2『ハッピーアワー』:三部通し券のみ一律3,000円
- 特別上映『偶然と想像』:一般1,800円/会員1,500円/シニア1,100円/学生応援プライス(大学生以下)500円
上映スケジュール
4/30(土) | 5/1(日) | 5/2(月) | 5/3(火祝) | 5/4(水祝) | 5/5(木祝) | 5/6(金) |
12:00ー13:45 何食わぬ顔 |
12:00ー14:05 偶然と想像 |
12:00ー14:25 なみのおと |
12:00ー14:00 PASSION |
12:00ー13:40 不気味なものの肌に触れる/天国はまだ遠い |
12:00-13:05 永遠に君を愛す |
12:00-14:05 THE DEPTHS |
14:00-16:00 PASSION |
14:20-15:25 永遠に君を愛す |
14:35-16:25 なみのこえ気仙沼 |
14:15-20:10 ハッピーアワー |
13:55-16:00 THE DEPTHS |
13:20-17:50 親密さ |
14:15-15:55 何食わぬ顔 |
16:15-17:55 不気味なものの肌に触れる/天国はまだ遠い |
15:40-20:10 親密さ |
16:35-18:20 なみのこえ新地町 |
16:15-18:00 何食わぬ顔 |
16:05-20:30 親密さ |
||
18:10-20:15 THE DEPTHS |
18:30-20:30 うたうひと |
18:15-20:15 PASSION |
18:05ー20:10 偶然と想像 |
|||
|
23:00ー4:55 ハッピーアワー オールナイト上映 |
5/14(土) | 5/15(日) | 5/16(月) | 5/17(火) | 5/18(水) | 5/19(木) | 5/20(金) |
20:50
-22:51 偶然と想像 |
20:50
-22:50 PASSION |
20:50
-22:51 THE DEPTHS |
20:50
-22:51 偶然と想像 |
20:50
-22:50 PASSION |
20:50
-22:51 THE DEPTHS |
20:50
-22:51 偶然と想像 |
予定表 横にスクロールできます
作品紹介
何食わぬ顔(long version)
©2002 fictive
2002年/98分
監督・脚本・編集:濱口竜介/撮影:渡辺淳、濱口竜介、東辻賢治郎/録音:井上和士/音楽:David Nude、ROMAN
出演:松井智、濱口竜介、岡本英之、遠藤郁子、石井理絵 ほか
友人に言われるままに亡兄の遺作となる8ミリ映画を撮影する野村。彼の煮え切らない態度が周囲を戸惑わせる。東京大学映画研究会にて全編8mmフィルムで撮影された本作は、濱口が敬愛するジョン・カサヴェテス『ハズバンズ』(’70)の影響が色濃い。映画内映画の緻密な構成など、濱口映画のエッセンスがすでに本作には詰まっている。
PASSION
©︎東京藝術大学大学院映像研究科
2008年/115分
監督・脚本:濱口竜介/撮影:湯澤祐一/照明:佐々木靖之/録音:草刈悠子/編集:山本良子
出演:河井青葉、岡本竜汰、占部房子、岡部尚、渋川清彦 ほか
結婚間近の果歩と智也を祝う席上、智也の過去の浮気が発覚し…。男女5人が揺れ動く一夜を描いた群像劇。渋川清彦、河井青葉、占部房子と、『偶然と想像』や濱口作品の常連になる俳優たちが結集している。第56回サン・セバスチャン国際映画祭、第9回東京フィルメックスへ出品され映画作家・濱口竜介が世界に発見されるきっかけとなった初期代表作。
永遠に君を愛す
©2009 fictive
2008年/115分
監督:濱口竜介/脚本:渡辺裕子/撮影:青木穣/照明:後閑健太/録音:金地宏晃、上條慎太郎/編集:山崎梓/音楽:岡本英之
出演:河井青葉、杉山彦々、岡部尚、菅野莉央、天光眞弓、小田豊 ほか
結婚式当日を迎えた永子と誠一の1日を描く。永子には婚約者・誠一に言い出せない秘密があった。『PASSION』に出演した河井青葉と岡部尚が出演し、同作とは反転したような役柄を演じている。秘密と本音が明らかになっていくスリリングさを基調としつつ、突拍子もない展開に笑ってしまうような要素にも満ちた中編作品。
THE DEPTHS
© Tokyo University of the Arts Graduate School of Film and New Media & Korean Academy of Film Arts 2010
2010年/121分
監督:濱口竜介/脚本:大浦光太、濱口竜介/撮影監督:ヤン・グニョン/照明:後閑健太/録音:金地宏晃/編集:山崎梓/音楽:長嶌寛幸
出演:キム・ミンジュン、石田法嗣、パク・ソヒ、米村亮太朗、村上淳 ほか
韓国人カメラマン・ペファンは日本滞在中に男娼のリュウをモデルとして見出すも、過酷な運命が二人を待つ。濱口作品初参加となった石田法嗣が、さまざまな境界を取り払っていくリュウを演じる。東京藝術大学と韓国国立映画アカデミーによる共同製作作品で、キャストだけでなくスタッフも日韓混成チームで行われた。
親密さ
© ENBUゼミナール
2012年/255分
監督・脚本:濱口竜介/舞台演出:平野鈴/撮影:北川喜雄/編集:鈴木宏/整音:黄永昌/劇中歌:岡本英之
出演:平野鈴、佐藤亮、田山幹雄、伊藤綾子、手塚加奈子、新井徹、菅井義久、香取あき ほか
ENBUゼミナールの映像俳優コースの修了作品としてスタートした企画。「親密さ」という演劇を作り上げていく過程をフィクションとして演じる前半と、実際の上演を記録し映画として構成した後半の二部構成で描かれる傑作青春群像劇。現実と虚構が複雑に交錯し続け、虚実の彼岸にあるリアリティーの核心が胸を揺さぶる。
なみのおと
©silent voice
2011年/142分
監督:濱口竜介、酒井耕/撮影:北川喜雄/整音:黄永昌
津波被害を受けた三陸沿岸部に暮らす人々の対話を撮り続けたドキュメンタリー。親しいもの同士が震災について見つめ合い、語り合う口承記録の形が取られている。未曾有の事態に対してカメラは何を記録し、この被災を伝え続けることができるのか。被災地の悲惨な映像ではなく、映画が「良き伝承者」となるよう、対話と、そこから生成される人々の感情を記録しようとする。
なみのこえ 気仙沼
©silent voice
2013年/109分
監督:濱口竜介、酒井耕/実景撮影:北川喜雄/整音:黄永昌
2012年1月から2013年3月に行われた宮城県気仙沼市に暮らす7組11名への対話形式インタビューの記録。『なみのおと』から一年が経ち、「被災者」の声ではなく、現実にそこに生きる「一人ひとり」の声として対話が記録された。発言は、当事者による一次情報としてただ提示されるのではなく、カメラは声の抑揚や発言者や聞き手の表情など言葉に還元できない要素を捉える。
なみのこえ 新地町
©silent voice
2013年/103分
監督:濱口竜介、酒井耕/実景撮影:北川喜雄/整音:鈴木昭彦
2012年1月から2012年6月に、福島第一原子力発電所から約50キロ離れた場所に位置する福島県新地町に暮らす6組10名への対話形式インタビュー。三部作に共通して、両監督が聞き手として、カメラを正面から向けられる被写体としても登場することから、制作者の倫理的な態度が窺える。「聞く」ことで得られる「いい声」(書籍『カメラの前で演じること』)という経験は、その後制作した『ハッピーアワー』にも大きく示唆を与えた。
うたうひと
©silent voice
2013年/120分
監督:濱口竜介、酒井耕/撮影:飯岡幸子、北川喜雄、佐々木靖之/整音:黄永昌
100年先への被災体験の伝承という課題に対して、東北地方伝承の民話語りから示唆を得て、みやぎ民話の会の小野和子を聞き手に迎え、伝承の民話語りが記録された。語り手と聞き手の間に生まれる民話独特の「語り/聞き」の場は、創造的なカメラワークによって記録され、スクリーンに再現される。映画と民話の枠を超えた新たな伝承映画。
不気味なものの肌に触れる
©2013 Sunborn, fictive
2013年/54分
監督:濱口竜介/脚本:高橋知由/撮影:佐々木靖之/音響:黄永昌/音楽:長嶌寛幸/振付:砂連尾理
出演:染谷将太、渋川清彦、石田法嗣、瀬戸夏実、村上淳、河井青葉、水越朝弓 ほか
千尋は父を亡くして、腹違いの兄・斗吾が彼を引き取る。斗吾と彼の恋人・里美は千尋を暖かく迎えるが、千尋の孤独は消せない。千尋が夢中になるのは、同い年の直也とのダンスだ。しかし、無心に踊る彼らの街ではやがて不穏なできごとが起こりはじめる…。来るべき長編映画『FLOODS』のパイロット版でもある異色作。
ハッピーアワー
©2015 KWCP
2015年/317分
監督:濱口竜介/脚本:はたのこうぼう(高橋知由、野原位、濱口竜介)/撮影:北川喜雄/照明:秋山恵二郎/録音:松野泉/音楽:阿部海太郎
出演:田中幸恵、菊池葉月、三原麻衣子、川村りら ほか
30代も後半を迎えた、あかり、桜子、芙美、純の4人は、なんでも話せる親友同士だと思っていた。純の秘密を知るまでは……。市民参加による「即興演技ワークショップ in Kobe」から誕生した。ほとんどの登場人物を演技未経験者がつとめ、これまでにない試みでつくりあげた三部構成の本作は、ロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した。
天国はまだ遠い
©2016 KWCP
2016年/38分
監督・脚本:濱口竜介/撮影:北川喜雄/録音:西垣太郎/整音:松野泉/音楽:和田春/出演:岡部尚、小川あん、玄理
AVのモザイク付けを生業とする雄三は、女子高生の三月(みつき)と奇妙な共同生活を送っている。ある日、三月の妹から雄三に一本の電話が入る。見える/見えない/見せないこと、カメラを向ける/向けられるなど、過去作とも共通した主題が現れつつ、不思議な爽快感も残す。当初クラウドファンディングのリターンとして企画された短編作品。
特別上映
偶然と想像
©︎ 2021 NEOPA / Fictive
2021年/121分/日本/カラー/1.85:1/DCP/PG12映倫/配給:Incline/配給協力:コピアポア・フィルム
監督・脚本:濱口竜介
撮影:飯岡幸子
プロデューサー:高田聡
製作:NEOPA、fictive
出演:(第一話)古川琴音、中島歩、玄理/(第二話)渋川清彦、森郁月、甲斐翔真/(第三話)占部房子、河井青葉
驚きと戸惑いの映画体験が、いま始まる—
2021年のカンヌ映画祭では『ドライブ・マイ・カー』が脚本賞など4冠に輝き、2020年のベネチア国際映画祭では共同脚本を手がけた『スパイの妻』が銀獅子賞(監督賞)、そして本作が、ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞するなど世界が最も注目する監督のひとりとなり、また日本映画の新しい時代をリードする存在となった濱口⻯介。待望の新作は、「偶然」をテーマに3つの物語が織りなされる初の、そして自身が「このスタイルをライフワークとしたい」と語る「短編集」となった。
偶然―それは、人生を大きく静かに揺り動かす
親友同士の他愛ない恋バナ、
大学教授に教えを乞う生徒、
20年ぶりに再会した女友達・・・
軽快な物語の始まり、日常の対話から一転、鳥肌が立つような緊張感とともに引き出される人間の本性、切り取られる人生の一瞬…日本映画の新時代を感じさせる映画体験が、観るものの心を捉えるだろう。
出演に、『街の上で』『花束みたいな恋をした』など話題作に出演し圧倒的な存在感を放つ古川琴音を始め、中島歩、森郁月、甲斐翔真らフレッシュな顔ぶれが揃った。そして濱口組出演経験のある玄理、渋川清彦、占部房子、河井青葉ら個性豊かな俳優陣が好演。小さな撮影体制でリハーサル・撮影時間を充分に確保し、彼らの繊細な表現を丁寧に映した。まるで劇中に流れるシューマンのピアノ曲集『子供の情景』のように軽やかかつ精緻で、遊び心に溢れた俳優の演技は必見だ。
今、こうしている瞬間にも
偶然の引力で引き合わされている-
第一話 魔法 (よりもっと不確か)
撮影帰りのタクシーの中、モデルの芽衣子(古川琴音)は、仲の良いヘアメイクのつぐみ(玄理)から、彼女が最近会った気になる男性(中島歩)との惚気話を聞かされる。つぐみが先に下車したあと、ひとり車内に残った芽衣子が運転手に告げた行き先は──。
第二話 扉は開けたままで
作家で教授の瀬川(渋川清彦)は、出席日数の足りないゼミ生・佐々木(甲斐翔真)の単位取得を認めず、佐々木の就職内定は取り消しに。逆恨みをした彼は、同級生の奈緒(森郁月)に色仕掛けの共謀をもちかけ、瀬川にスキャンダルを起こさせようとする。
第三話 もう一度
高校の同窓会に参加するため仙台へやってきた夏子(占部房子)は、仙台駅のエスカレーターであや(河井青葉)とすれ違う。お互いを見返し、あわてて駆け寄る夏子とあや。20年ぶりの再会に興奮を隠しきれず話し込むふたりの関係性に、やがて想像し得なかった変化が訪れる。
- 一般1,800円/会員1,500円/シニア1,100円/学生応援プライス(大学生以下)500円