昭和の怪女優 浪花千栄子

「上品」を演じればその底に「下品」があり、「下品」を演じれば底に「上品」を漂わせる。 カッカと笑う笑顔の底に哀しみがあり、悲嘆にくれる姿の底に躍然たる明るさがある。 美貌とは無縁の「仇(あだ)な美しさ」を持つ女優、それが浪花千栄子だ。——–大分シネマ5支配人 田井 肇 <トークゲスト>

2018.11.17(土) 1日のみの上映イベント

浪速千千栄子ロゴ

 横浜の様々な会場で映画を観に集まって来る人たちに、映画の魅力をもっと深く知ってもらおう、横浜の映画文化を盛り立てていこう、という目的とともに、横浜で映画上映に関わっている人たちの情報交換と交流を目的として企画した本企画、今回は、浪花千栄子に焦点を当て、その魅力に迫ります。あたかもそんな人が存在しているかのような錯覚に陥らされる揺るぎない存在感、そして役者としての上手さ、浪花千栄子特集としては珍しいセレクションの3作品をぜひお楽しみ下さい。『鉄腕投手 稲尾物語』は、国立映画アーカイブ所蔵の、ニュープリントでお届けします。

■浪花 千栄子 なにわ ちえこ プロフィール


本名、南口 キクノ(なんこう きくの)、1907年(M40)大阪府生まれ。両親と死別し、8歳から道頓堀に女中奉公に出される。その後、幾つもの仕事経て、1930年(S5)23歳で、2代目渋谷天外、曾我廼家十吾らが旗揚げした「松竹家庭劇」に加わり、天外と結婚、さらに天外らが旗揚げした「松竹新喜劇」でも看板女優として活躍する。1950年(S25)天外の浮気から離婚し、退団する。1951年(S26)、NHKラジオの「アチャコ青春手帖」に出演、「お父さんはお人好し」でも花菱アチャコと共演し、長寿番組となる。同時に、映画出演も続き、溝口健二『祇園囃子』でブルーリボン助演女優賞を受賞して以来、溝口、木下恵介らに重用される。代表作に、森繁久弥と共演した『夫婦善哉』、黒澤明『蜘蛛巣城』、内田吐夢『宮本武蔵』、小津安二郎『彼岸花』などがある。テレビドラマでは、『太閤記』、『細うで繁盛記』などに出演、自叙伝に「水のように」がある。1973年(S48)急逝、享年66歳。没後、勲四等瑞宝章受章

■3作品上映&トークショー


花嫁会議画像

花嫁会議(1956)
©TOHO CO., LTD.

花嫁会議

1956年/白黒/スタンダード/88分/35㎜/製作・配給:東宝


製作:佐藤一郎
監督:青柳信雄
脚本:梅田晴夫、椿澄夫
撮影:遠藤精一
美術:北猛夫、清水喜代志
音楽:松井八郎
出演:柳家金語楼、雪村いづみ、本間文子、小林桂樹、浪花千栄子、池部良、小泉博、岡田茉莉子

兄弟揃って10年来のこぶ付やもめの元吉と次郎(柳家金語楼と千秋実)、ある日、元吉のもとへ見合い話が舞い込む。大阪から来た千代子(浪花千栄子)というその相手は、乗り気でない元吉に「これでも、処女でおます」と猛アピール、その甲斐あってか元吉はすっかり千代子に惚れ込んでしまう。一方、次郎一家に、謎の不精ひげ男、為五郎(池部良)が突然現れ、傍若無人な振る舞いをするが…。見合い話をきっかけに次々と縁談が巻き起こるという、結婚コメディの佳作。小津安二郎へのオマージュが随所に散りばめられている。

丼池画像

丼池(1963)
©TOHO CO., LTD.

丼池 どぶいけ

1963年/白黒/シネマスコープ/104分/35㎜/製作:宝塚映画/配給:東宝


製作:杉原貞雄、山本紫朗
監督:久松静児
原作:菊田一夫
脚本:藤本義一
撮影:黒田徳三
美術:加藤雅俊
音楽:広瀬健次郎
出演:司葉子、新珠三千代、三益愛子、森光子、中村鴈治郎、佐田啓二、浪花千栄子

昭和27年の大阪。カツミ(司葉子)は、がめつさでは丼池筋NO.1の松子(三益愛子)から高い金利で金を借り、高利貸しをする会社を立ち上げた。元許嫁でもある老舗繊維問屋「園忠」の番頭定彦(佐田啓二)の仲介で、社長忠兵衛(中村鳫治郎)に700万円を用立てたが、忠兵衛は既に松子に850万円の借金があった。強欲な松子は、合わせて1550万円をカタに「園忠」を乗っ取ろうと企てるが…。大阪を舞台に「金」の話をさせるなら浪花千栄子の右に出るものはいない。一文無しから這い上がって来た底抜けに明るい行商のおばちゃん役で登場。

鉄腕投手 稲尾物語

鉄腕投手 稲尾物語(1959)
©TOHO CO., LTD.
国立映画アーカイブ所蔵作品
ニュープリント

鉄腕投手 稲尾物語

1959年/白黒/シネマスコープ/105分/35㎜/製作・配給:東宝/文部省選定


製作:杉原貞雄
構成:菊島隆三
監修:三原脩
監督:本多猪四郎
脚本:蓮池義雄
撮影:遠藤精一
美術:北辰雄
音楽:古関裕而
出演:志村喬、浪花千栄子、稲尾和久、吉田光男、白川由美、柳川慶子、江原達怡

プロ野球・西鉄ライオンズの黄金時代を築いた稲尾和久投手の半生を本人主演で描いた。稲尾和久は、大分県別府市の漁師の家に生まれており、浪花千栄子は、和久を優しく見守る母親を演じている。漁師の父親には志村喬。この父親の一言で一番条件の良い南海ではなく、地元の西鉄球団を選んだ和久は、入団後めきめきと頭角を現した。クライマックスは、伝説の昭和33年日本シリーズ対巨人戦、連日の好投でチームが劇的な逆転優勝を遂げるまでを、ニュースフィルムと共に再現している。偉大なる両親と鉄腕稲尾誕生の物語。

※本作はバリアフリー音声ガイド付で上映致します。協力:ヨコハマらいぶシネマ/かながわバリアフリー映画祭

■トークショー


ゲスト:大分シネマファイブ支配人

田井 肇さん

たい はじめ/1956年岐阜市生まれ。3歳の頃より大分県・別府市で育つ。1976年に始まった湯布院映画祭の立ち上げメンバーの一人。その後、湯布院映画祭を離れ、1989年より大分市でミニシアター「シネマ5」(74席)を運営。2011年より姉妹館「シネマ5bis」(168席)を手掛け、現在2館を運営している(いずれの映画館も前経営者が閉館したものを引き継ぐかたちで運営を始めた)。

聞き手:ヨコハマ映画祭実行委員長

北見 秋満さん

きたみ あきみつ/1956年新潟県佐渡生まれ。世阿弥の佐渡配所、正法寺で腰掛石を的に見たててひたすらボールを投げ続ける野球少年として育つ。日大映画学科に進学後、たどり着いた先がヨコハマ映画祭立ち上げの現場、鶴見京浜映画劇場。1992年よりヨコハマ映画祭実行委員長。サントリー地域文化賞、ヨコハマ遊大賞などの受賞がある。1998年横浜文化賞奨励賞受賞。リヨン・リュミエール研究所、日本映画祭参画。

■スケジュール11/17(土)


10:00-11:30 花嫁会議

11:55-13:45 丼池

14:00-15:50 鉄腕投手 稲尾物語

16:00-17:00 トークショー

※トークショーは、3作品のうちどちらか1作品のチケットご購入の方に限りご入場いただけます。『鉄腕投手 稲尾物語』ご覧のお客様優先で、空席があればご入場いただけます。トークショーのみの入場券はございません。

■入場料


【当日料金】 一般1,300円/大専・シニア1,100円/高校生以下800円

※貸館上映のため、招待券、ポイント鑑賞券はご利用いただけません。

■横浜シネマネットワーク実行委員会とは?


「全国コミュニティシネマ会議in横浜2017」の開催を機に、横浜の地で、映画上映に関わっている人たちにより生まれたネットワーク。参加個人、参加団体間の、情報交換、交流の場づくりを目指します。 映画を観に来る人たちには、様々な映画鑑賞スタイル(シネコン、ミニシアター、映画祭、自主上映会etc.)を体験することで、映画の魅力をより深く知っていただき、ひいては、横浜の映画文化を盛り立てることを目標とします。