ジャン・ヴィゴ特集 4Kレストア版

29歳でこの世を去った伝説の映画作家ジャン・ヴィゴ。その詩的な映像表現と才気に満ちた傑作が、4Kレストアでスクリーンに甦る!

ジャン・ヴィゴ Jean Vigo

1905年4月26日、パリのアナキストが集まるアジトの屋根裏で生まれた。シャルトル市の全寮制リセ・マルソーで中等教育を受けるが、その経験が『新学期 操行ゼロ』(33)を生み出すことになる。1925年、パリの名門ソルボンヌ大学の文学部に入学したが肺結核のため療養生活を送る。
その後、ヴィゴは写真家の助手をつとめながら、アヴァンギャルド映画やドキュメンタリー映画を鑑賞するシネクラブを組織。再び体調を崩した彼は、パリの病院で撮影監督ボリス・カウフマンと意気投合。一緒に制作した『ニースについて』(30)は、カウフマンが前年に異母兄ジガ・ヴェルトフと作った『カメラを持った男』(29)の強い影響を受けている。翌年の『競泳選手ジャン・タリス』(31)では、愛用のカメラをガラス箱に入れて水中撮影に成功。第3作『新学期 操行ゼロ』(33)は、「無政府主義的な反抗心を助長する、知事など公共の権威者および牧師など聖職者に対する攻撃」との理由で上映禁止になった。
『アタラント号』での真冬の撮影により体調は悪化、ヴィゴはベッドから編集を指示して完成させた。試写の評判は惨憺たるもので、配給会社のゴーモンは「娯楽を求める大衆向けではない」と大幅に短縮し、題名も『過ぎ行く艀』と変えて公開した。ヴィゴは改変版を見ることなく、1934年10月5日に敗血症を併発して死去した。

『アタラント号 4Kレストア版』

「ジャン・ヴィゴ短編3作」

  • 『新学期 操行ゼロ』
  • 『競泳選手ジャン・タリス』
  • 『ニースについて』

●横浜シネマリンでの上映は、4K修復版を元にした2K上映となります。

当日一般1,500円/会員1,200円/大専・シニア1,100円/高校生以下800円

作品紹介

アタラント号 4Kレストア版

©1934 Gaumont

1934年/フランス/88分/DCP/配給:アイ・ヴィー・シー
原題:L’ Atalante
監督:ジャン・ヴィゴ
脚本:ジャン・ギネ
撮影:ボリス・カウフマン
音楽:モーリス・ジョベール
出演:ジャン・ダステ、ディタ・パルロ、ミシェル・シモン、ルイ・ルフェーヴル、ジル・マルガリティス

アタラント号 4Kレストア版

現在に至るまで80年近く世界の映画ファン、映画作家たちを魅了し続けるジャン・ヴィゴ唯一の長編にして遺作。

くめどもつきせぬロマンティシズム、澄みきった情緒。フランソワ・トリュフォー、アキ・カウリスマキ、エミール・クストリッツァ…数々の世界の映画作家たちがベスト作品に挙げ、ヴィゴの名を映画史に刻んだ不滅のマスターピース。
初公開から83年、娘リュス・ヴィゴと映画史家ベルナール・エイゼンシッツの協力・監修のもとで完成し、2017年カンヌ映画祭でお披露目された4Kレストア版。

愛することの情熱、愛されることの歓び。

田舎町とル・アーヴル間を運行する艀船アタラント号。乗組員は船長のジャンとジュリエットの新婚カップル、変わり者の老水夫ジュールおやじと少年水夫、そしてかわいい猫たち。
はじめは新婚生活にときめいていたジュリエットだったが、狭い船内の単調な生活に息が詰まってくる。アタラント号がパリへ到着するとジャンとジュリエットはダンスホールへ。そこへ行商人がやって来てジュリエットを口説き始める。田舎娘のジュリエットは大都会パリへの憧れを抑えきれず、夜にこっそりと船を降りてしまう。怒り心頭のジャンは彼女を置き去りにして出航してしまうが…。

アタラント号 4Kレストア版 アタラント号 4Kレストア版 アタラント号 4Kレストア版

新学期 操行ゼロ

©1933 Gaumont

1933年/フランス/49分/DCP/配給:アイ・ヴィー・シー
原題:Zéro de Conduite
監督・脚本・編集:ジャン・ヴィゴ
撮影:ボリス・カウフマン
音楽:モーリス・ジョベール
出演:ジャン・ダステ、ルイ・ルフェーヴル、ジルベール・プリュション、ジェラール・ド・ベダリュー

新学期 操行ゼロ

ヴィゴが描く小さな革命。猛烈なアナーキズムと自由で詩情に満ちた映像表現。監督第3作、28歳のときの作品。終盤のまくら投げのシーンの美しさは映像表現の極点と言える。そのスキャンダラスな内容のために12年近く公開禁止となった、ジャン・ヴィゴの反骨精神が爆発した渾身の意欲作。トリュフォーの『大人は判ってくれない』は本作の影響を受けて製作された。

競泳選手ジャン・タリス

©1931 Gaumont

1931年/フランス/10分/DCP/配給:アイ・ヴィー・シー
原題:Taris, Roi de L’eau
監督・脚本・編集:ジャン・ヴィゴ
撮影:ボリス・カウフマン
出演:ジャン・タリス(本人)

競泳選手ジャン・タリス

監督2作目、26歳のときの作品でゴーモン社の依頼を受けて製作したニュース映画。
パリにあるフランス自動車クラブのスイミングプールには、外から水中を見ることができる一種の“舷窓”が設置されており、その窓を通して水中撮影の多くを行った。
スローモーション、逆再生、ディゾルブ、そして水中撮影。わずか10分の本編内で様々な映画技法を駆使し、競泳選手のジャン・タリスを解剖する。本作で用いられている技法は後の『新学期 操行ゼロ』『アタラント号』へと受け継がれる。

ニースについて"

©1930 Gaumont

1930年/フランス/23分/DCP/配給:アイ・ヴィー・シー
原題:À Propos de Nice
監督:ジャン・ヴィゴ、ボリス・カウフマン
脚本:ジャン・ヴィゴ
撮影:ボリス・カウフマン
音楽:マルク・ぺロンヌ
作曲と演奏:ステファン・ホーン、フランク・バッキアス

ニースについて

ヴィゴ初監督作。25歳のときの短編。パリの病院で知り合い意気投合したボリス・カウフマンとの共同監督作品。 南仏のリゾート地ニースの街並みを背景に、バカンスに興じるブルジョワたちと庶民の営みを交差させエネルギッシュに活写する映像スケッチ。ヴィゴの批評性とアナーキズムが垣間見える珠玉の小品。

『アタラント号』上映日時

3/2(土)~3/8(金) 3/9(土)~3/15(金)
14:35~16:05 19:10~20:45

「ジャン・ヴィゴ短篇3作」上映日時

3/2(土)~3/8(金) 3/9(土)~3/15(金)
16:15~17:50 20:55~22:25