ホテルアイリス
©️長谷工作室
2021年/日本・台湾/100分/配給:リアリーライクフィルムズ
原題:艾利絲旅館
監督:奥原浩志
原作:小川洋子(©️幻冬舎「ホテル・アイリス」)
出演:永瀬正敏、陸夏(ルシア)、寛一郎、菜葉菜、大島葉子、馬志翔、李康生
イベント情報
【舞台挨拶】
3/26(土)14:00回上映後、菜葉菜さん、奥原浩志監督
27(日)14:05回上映後、奥原監督
4/2(土)・3(日)19:55回上映後、陸夏(ルシア)さん*オンライン、奥原監督
4/4(月)19:55回上映後、 奥原監督
【トークイベント】
4/5(火)19:55回上映後、 向井康介さん(『青い車』脚本家)、奥原監督
4/6(水)19:55回上映後、草野康太さん(俳優)、奥原監督
4/7(木)19:55回上映後、中村真夕さん(『親密な他人』監督)、奥原監督
4/8(金)19:55回上映後、スワベック・コバレフスキさん(『ホテルアイリス』音楽)、奥原監督
*奥原浩志監督は3/29(火)~最終日まで連日登壇されます。
名も知らぬ、どこか涯ての島に在る小さな海沿いのホテル。
謎めいた中年男と心に闇を抱えた若い娘。
出会ってはならない2人は、いつしか愛と死の香りに満ちた濃密な時間の淵に堕ちていく…
寂れた海沿いのリゾート地。そこで日本人の母親が経営するホテル・アイリスを手伝っているマリは、ある日階上で響き渡る女の悲鳴を聞く。赤いキャミソールのその女は、男の罵声と暴力から逃れようと取り乱している。マリは茫然自失で、ただならぬその状況を静観している。一方で、男の振る舞いに激しく惹かれているもう一人の自分がいて、無意識の中の何かが覚醒していくことにも気づき始めていた。
男は、ロシア文学の翻訳家で、小舟で少し渡った孤島で、独りで暮らしているという。住人たちは、彼が過去に起きた殺人事件の真犯人ではないかと、まことしやかに噂した。またマリも、台湾人の父親が不慮の事故死を遂げた過去を持ち、そのオブセッションから立ち直れずにいた。
男とマリの奇妙な巡り合わせは、二人の人生を大きく揺さぶり始める。
男を演じるのは、永瀬正敏。ジム・ジャームッシュや相米慎二など、時代にその名を刻む名匠たちの寵愛のもとで活躍の場を世界へと拡げ、もはや日本を代表する国際的俳優であることを誰もが疑わない。本作ではミステリアスなバッグボーンを背負いながらも、大人の男の色気をしたたかに纏うロシア文学の翻訳者を演じた。
若い娘マリを演じるのは、台湾のアップカミングスター、陸夏(ルシア)。雑誌のモデルやテレビコマーシャルに出演するタレントとしての活動を経て、本作で主演に大抜擢、映画デビューを果たした。2021年台北映画祭で本作を含む2作品の演技で超新人(Supernova)賞10人の1人に選出される。本作ではヒロインの複雑なキャラクターを可憐に、そして大胆に演じてみせた。
2人を支えるのは、個性的な俳優たち。マリの母親を演じた菜葉菜は、過剰な娘への愛と、奔放な男たちへの愛とを混在させる女の性(さが)を華やか、かつリアリティーを持たせて演じ新境地を見せる。一方、男の甥を演じた寛一郎は、異質のピグマリオンコンプレックス(人形偏愛)の対象のような存在として、その美しく古典的な容姿を存分に機能させている。マリの父親役を演じたマー・ジーシャンは映画監督としても著名で、彼が監督した永瀬正敏主演の『KANO 1931海の向こうの甲子園』は台湾で大ヒットを記録した。俳優としては最新作の『Listen before you sing』で台北映画祭で主演男優賞に選ばれている。渡し舟の船頭を演じたリー・カンションは、言わずと知れたツァイ・ミンリャン映画にとってなくてはならない存在。あまりにも映画的な存在感は、本作でも際立っている。
監督は、『波』『青い車』の奥原浩志。寡作家の彼が『黒四角』以来9年の歳月を経て発表したのが本作だ。まるでヨーロッパ映画を観ているような幽玄の世界観は、観るものを眩惑の世界へと導いていく。
その奥原監督の世界観を忠実に再現したのは、日・台の一流のスタッフたち。撮影には『少年の君』や『ソウルメイト 七月(チーユエ)と安生(アンシェン)』などデレク・ツァン監督作品で高い評価を獲得している、台湾のユー・ジンピンが参加した。『ホテルアイリス』のイメージを決定づける美術を担当したのは、『ピンポン』『火火』『前田建設ファンタジー営業部』『ミュジコフィリア』の金勝浩一。ホテルのフロントやリー・カンションの営む売店小屋など、この映画のために創り上げた美術は元からそこにあったかのようなリアリティーだ。
全編を彩る旋律はポーランド出身、『佐渡テンペスト』『君と世界が終わる日に』(テレビドラマ)、『ID-Invaded』(テレビアニメ)のスワペック・コバレフスキ。日本人にはない感性が、よりこの映画を無国籍なものへと昇華させている。
小川洋子が小説の中で描き続ける、私たちの日常の中にありながら異次元のもの、異質のものの中に見え隠れする普遍性。『ホテル・アイリス』はその世界観が最も極限的に描かれている。奥原監督は、原作のメッセージの忠実な再現を試みながらも、時間と映画的空間の歪みの中に愛と死のイメージを定着させることで、いかにも奥原監督らしい映画『ホテルアイリス』を完成させている。
上映日時
3/26(土) | 3/27(日) | 3/28(月)~4/1(金) | 4/2(土)~4/8(金) |
14:00-15:40 | 14:05-15:45 | 14:00-15:45 | 19:55-21:40 |
料金
一般 | 大学・専門・シニア | 高校以下 | |
通常 | ¥1800 | ¥1200 | ¥800 |
会員 | ¥1500 | ¥1200 | ¥800 |