ピアニストを待ちながら
©合同会社インディペンデントフィルム/早稲田大学国際文学館
2024 年/61 分/日本/制作・配給:合同会社インディペンデントフィルム
監督・脚本:七里圭
プロデューサー:熊野雅恵
撮影:渡辺寿岳
照明:高橋哲也
録音:松野泉、黄 永昌
音楽:宇波拓
編集:宮島竜治、山田佑介
出演:井之脇海、木竜麻生、大友一生、澁谷麻美、斉藤陽一郎
イベント情報
11/16(土)上映後、宮島竜治さん(本作編集)× 七里圭監督、11/20(水)上映後、渋谷哲也さん(日本大学教授/ドイツ映画研究)× 七里圭監督のトークイベントがございます。
――――繋がりにつながれて、真夜中――――
異才・七里圭監督 × 主演・井之脇海
世界的建築家・隈研吾が手掛けた村上春樹ライブラリーで全編撮影!
出られない図書館を舞台に描く、目に見えないものに紐付けられた若者たちの物語
目覚めるとそこは真夜中の図書館だった。瞬介(井之脇海)が倒れていた階段の両側には、吹き抜けの天井まで高く伸びた本棚がそびえ、あちこちの段に小さなヒトガタが潜んでいる。扉という扉を開けて外に出てみるが、なぜか館内に戻ってしまう。途方に暮れた瞬介は、導かれるようにして一台のグランドピアノを見つけ、そっと鍵盤を鳴らす。
やがて瞬介は、旧友の行人(大友一生)とその彼女だった貴織(木竜麻生)に再会する。三人は大学時代の演劇仲間だった。行人と貴織はもう随分前からここにいるらしい。他にも、見知らぬ中年男の出目(斉藤陽一郎)や謎の女絵美(澁谷麻美)もいる。行人は、この状況を逆手にとって、かつて上演できなかった芝居の稽古を始める。それは、行人が作・演ずるはずだった「ピアニストを待ちながら」。しかし、瞬介には気になることがあった。確か、行人は死んだはずでは……?
ガラスの向こうは明けない夜。自動ドアはいつでも開くが、どういうわけか外には出られない。どこにも行けない理不尽な状況で、居合わせた男女5人は、なぜか芝居の稽古に興じ始める。まるで、幽閉されたことに甘んずるかのように。そこにはいない誰か、不在の視線を意識しながら……。
このおかしな物語は、私たちが経験したコロナ禍や、今や当たり前になったオンライン、SNSでの非対面コミュニケーションの奇妙さを暗示している。20世紀の不条理は、すでにリアル。私たちは、いつも不在の相手につながれて、待たされて、くたびれている。サミュエル・ベケットの有名戯曲を思わせる題名に、その意図が込められている。
映画の舞台となるのは、世界的な建築家の隈研吾が手掛けた、村上春樹ライブラリー。村上文学をイメージした迷宮的空間で全編撮影されたことも、見どころの一つだ。本作は、この村上春樹ライブラリー(早稲田大学国際文学館)の開館記念映画として製作された短編をもとに、約1時間の劇場公開(ディレクターズカット)版として完成された作品である。
主演は、若手実力派の井之脇海。『東京ソナタ』(08)の天才ピアノ少年、『ミュジコフィリア』(21)の現代音楽に目覚める学生を更新するように、本作でも吹替なしのピアノ演奏を披露している。共演には、『福田村事件』(23)『熱のあとに』(24)など話題作の出演が続く木竜麻生とともに、『カゾクデッサン』(20)『劇場版 美しい彼〜eternal』(23)の大友一生を抜擢。そして、『王国(あるいはその家について)』等で鮮烈な印象を残す澁谷麻美、故青山真治監督作品で常連のベテラン俳優、斉藤陽一郎がわきを固める。
監督は、今年デビュー20周年を迎える七里圭。劇場初作品の『のんきな姉さん』(04)で注目され、カルト的な人気を誇る『眠り姫』(07/サラウンドリマスター版16)や『DUBHOUSE』(12)、「音から作る映画」プロジェクト(14〜18)、『背 吉増剛造×空間現代』(22)など、常に先鋭的な作品を生み出してきた異才である。唯一無二のフィルモグラフィーを重ねる七里にとって、本作は久々の劇映画となる。
上映日時
11/16(土) | 11/17(日) | 11/18(月)~11/22(金) | 11/23(土)~11/29(金) |
18:45-19:46 | 19:20-20:21 | 19:10-20:15 | 19:30-20:35 |
料金
一般 | 大学・専門・シニア | 高校以下 | |
通常 | ¥1800 | ¥1200 | ¥800 |
会員 | ¥1500 | ¥1200 | ¥800 |
のんきな姉さん
イベント情報
11/21㈭17:30回上映後、梶原阿貴さん、塩田貞治さんの舞台挨拶がございます。
イベント情報
11/21㈭17:30回上映後、梶原阿貴さん、塩田貞治さん(姉弟コンビ)の舞台挨拶がございます。
来場者プレゼント
11/21(木)、ポストカードとステッカーを先着40名様にプレゼント!塩田貞治さんが今回の上映のために描き下ろしました。
2004年/87分/DCP(オリジナル35mm/デジタルリマスター2022年)
原作:山本直樹
脚本:七里圭
撮影:たむらまさき
音楽:侘美秀俊
編集:宮島竜治
出演:梶原阿貴、塩田貞治、大森南朋、梓、佐藤允、三浦友和、細田玲菜、細田晃慶
姉(梶原阿貴)との禁じられた愛の記憶を小説に書き、雪山で自殺しようとする弟(塩田貞治)と、聖なる夜にオフィスで残業する姉。その二人の現在に、記憶=小説がフラッシュ・バックされてゆく。雪山と都会、現在と過去という二つの空間、二つの時間が錯綜し、いつしか姉弟はふたりきりで、夜空一杯に打ちあがる花火を見ている。そこは夢の世界か、黄泉の国か…。
目覚めれば目覚めるほど夢に近づいていく、不思議な感触の長編劇場公開映画第一作。七里はこのデビュー作を監督するにあたり、敬愛する山本直樹の同名漫画を原作にして、その漫画の霊感源、唐十郎『安寿子の靴』、森鴎外『山椒大夫』までを射程に収めた。
上映日時
11/19(火)、11/21(木) | 11/23(土)、11/25(月)、11/27(水)、11/29(金) |
17:30-19:00 | 20:45-22:15 |
料金
一般 | 大学・専門・シニア | 高校以下 | |
通常 | ¥1600 | ¥1200 | ¥800 |
会員 | ¥1300 | ¥1200 | ¥800 |
眠り姫
2007-2016年/80分/DCP(オリジナルDVテープ/DCP2024年)
原作:山本直樹
撮影:七里圭、高橋哲也
音楽:侘美秀俊
録音:小林徹哉、七里圭
演奏:カッセ・レゾナント
声の出演:つぐみ、西島秀俊、山本浩司、大友三郎、園部貴一、橋爪利博、榎本由希、張替小百合、横山美智代、五十嵐有砂、馬田幹子、坂東千紗、鶴巻尚子、斉藤唯、北田弥恵子、新柵未成
いま出てきたトイレの中に、誰かがいるような気がしてならない…。パジャマ姿の青地(つぐみ)が眩しそうにカーテンをめくる。もう陽も高い。中学の非常勤講師をしている彼女は、このごろ学校へ行くのがおっくうで、いくら寝ても寝たりない感じが抜けない。同僚教師の野口(西島秀俊)は、自分の顔のことは棚に上げ、青地の顔がだんだん膨らんできていると笑う。長く付き合い過ぎた彼氏(山本浩司)との会話は上滑りし、好きだという気持ちもすでにおぼろになっている。繰り返し見続けるのは、記憶とも妄想ともつかぬ奇妙な夢。どうも何かが変だ…。
夢は、体が眠っているのに脳は活動している半覚醒状態に現れるが、冒頭、夜が朝へと移りゆくまどろみの時間を映し出す本作は、全編、夢の中の出来事かのように思わせる。ほとんど人の姿が映らない空っぽの風景にさざめく、濃密な人の気配と声。静かに狂気を孕んでいく男女の日常が、美しい朝焼けや薄明の光景とともに、声や物音だけでつづられていく。山本直樹原作の同名漫画は、幻聴を主題にした内田百閒『山高帽子』を下敷きにしている。2007年の初公開から毎年アンコール上映が繰り返されているほど、熱狂的なファンを持つカルト映画。なぜ人々がこの作品に魅かれ続けるのか、それは観た者にしか分からない。
上映日時
11/18(月)、11/20(水)、11/22(金) | 11/24(日)、11/26(火)、11/28(木) |
17:30-19:00 | 20:45-22:15 |
料金
一般 | 大学・専門・シニア | 高校以下 | |
通常 | ¥1600 | ¥1200 | ¥800 |
会員 | ¥1300 | ¥1200 | ¥800 |