チベット映画特集

映画で見る現代チベット

チベット映画特集

映画で見る現代チベット

チベット映画特集

世界的なチベット映画人の作品を中心に、日本プレミア上映を含む貴重な7作品を特集。
全7作品を通して現代のチベット社会を見つめ、同時に、21世紀に誕生したチベット映画のこれまでの歩みを振り返る特集です。

入場料

一般1,800円/会員1,500円/大専・シニア1,100円/高校生以下800円

オンライントークイベント ※オンライン開催に変更となりました。

9.4[土]10:00『ラモとガベ』上映後 ゲスト:松尾みゆきさん、三宅伸一郎さん

松尾みゆき (字幕翻訳者、映像プロデューサー)
中国の青海省で日本語を教えながら中国語とチベット語を学んでいた時に、ソンタルジャ監督と出会う。『草原の河』『巡礼の約束』『ラモとガベ』の字幕を手がける。現在は、自身でドキュメンタリーを製作。

三宅伸一郎(大谷大学教授)
専門はチベット学。特に、ボン教(仏教伝来以前のチベットの宗教)の歴史研究。ケサル王物語に関しても論考あり。資料収集・調査のため青海省(東北チベット)に通い、縁あってソンタルジャ監督らと交流を重ねる。『草原の河』『巡礼の約束』『ラモとガベ』の字幕監修担当。

上映スケジュール

9/4(土) 9/5(日) 9/6(月) 9/7(火) 9/8(水) 9/9(木) 9/10(金)
ラモとガベ10:00-11:50
ラモとガベ
トークイベント
巡礼の約束10:00-11:55
巡礼の約束
ラモとガベ10:00-11:55
ラモとガベ
巡礼の約束10:00-11:55
巡礼の約束
ラモとガベ10:00-11:55
ラモとガベ
巡礼の約束10:00-11:55
巡礼の約束
タルロ10:00-12:05
タルロ
オールド・ドッグ12:30-14:00
オールド・ドッグ
陽に灼けた道12:10-13:45
陽に灼けた道
オールド・ドッグ12:10-13:45
オールド・ドッグ
陽に灼けた道12:10-13:45
陽に灼けた道
オールド・ドッグ12:10-13:45
オールド・ドッグ
陽に灼けた道12:10-13:45
陽に灼けた道
オールド・ドッグ12:15-13:45
オールド・ドッグ

予定表 横にスクロールできます

9/11(土) 9/12(日) 9/13(月) 9/14(火) 9/15(水) 9/16(木) 9/17(金)
草原の河13:40-15:25
草原の河
ラモとガベ13:55-15:45
ラモとガベ
草原の河13:40-15:25
草原の河
陽に灼けた道13:40-15:35
陽に灼けた道
草原の河13:40-15:25
草原の河
オールド・ドッグ13:40-15:15
オールド・ドッグ
ラモとガベ13:40-15:35
ラモとガベ
タルロ15:45-17:50
タルロ
ラサへの歩き方15:55-17:55
ラサへの歩き方
タルロ15:45-17:50
タルロ
ラサへの歩き方15:45-17:50
ラサへの歩き方
タルロ15:45-17:50
タルロ
ラサへの歩き方15:45-17:50
ラサへの歩き方
タルロ15:45-17:50
タルロ

予定表 横にスクロールできます

作品紹介

ラモとガベ(原題) <日本プレミア上映>

©GARUDA FILM

2019年/110分/カラー
原題:拉姆与嘎贝(英語題:Lhamo an)
監督・脚本:ソンタルジャ
撮影:王猛
美術:ツェラン・トンドゥプ, タクツェ・トンドゥプ
エンディング曲:ヤンシクツォ
サウンドデザイン:李涛, ダゲン・ゾンディ・ジャムツォ
編集: マチュー・ラクラウ, サンダクジャプ
出演:ソナム・ニマ(ガベ)、デキ(ラモ)、スィチョクジャ(ジャシ)

詳細 https://note.com/moviola/n/ne5414579373d

ソンタルジャ監督の長編第4作。東チベットで生まれた世界最長の英雄叙事詩「ケサル王物語」に若い男女の運命を重ねて描いた意欲的な最新作。

ラモとガベは婚姻届を出しに行ったところ、ガベが以前結婚しており、まだ離婚が成立していないことを知る。元妻とは4年前に結婚の約束をしたものの、間際で破談となり、ガベは自分が結婚していたことを知らなかったのだ。ガベは離婚するために元妻を探し始め、元妻が世俗を捨て、出家していたことを知る。尼僧となった元妻を寺院に訪ねるが、会うことさえままならず、ガベの離婚話は一向に進まない。一方ラモは、正月に行われる歌舞劇「ケサル王物語」で、罪のために地獄に落ちた女性の役で稽古に取り組んでいたが、その役にわだかまりを感じ、次第に結婚への恐れを感じ始める。ラモは、人に言えない秘密を抱えていた…。

*2019年サンセバスチャン映画祭公式出品

巡礼の約束

©GARUDA FILM

2018年/109分/カラー
監督:ソンタルジャ
プロデューサー:ヨンジョンジャ(容中爾甲)
脚本:タシダワ、ソンタルジャ
撮影:ワン・ウェイファ
出演:ヨンジョンジャ(容中爾甲)、ニマソンソン、スィチョクジャ
字幕:松尾みゆき
字幕監修:三宅伸一郎

公式 http://moviola.jp/junrei_yakusoku/

ある出来事から、前夫との約束を果たそうと巡礼にでる妻ウォマ。その妻を心配し、後を追ってくる夫ロルジェ。こころを閉ざしていた前夫との息子ノルウも母に会いにやってくるのだが……。 ウォマの意志を引き継ぐ、血のつながらぬ父と息子。ふたりはある日、母を亡くした一頭の仔ロバと出会い、ともに聖地ラサへと巡礼の道を歩きつづける。 夫役には、この映画の舞台であるチベット高原の東にあるギャロン出身の国際的歌手ヨンジョンジャ。民族衣装も美しい妻役は人気女優ニマソンソン。多くの候補者の中から「目」の魅力で選ばれた息子役スィチョクジャ、そして仔ロバの名演も忘れがたい。

本作を企画したのは、夫役も演じるチベット人歌手ヨンジョンジャ(中国名:容 中 爾 甲)。世界的ダンサーであるヤン・リーピンの舞台「蔵謎」のプロデューサーでもあり、チベット文化の普及・継承を担っている。監督は、『草原の河』の感動も記憶に新しいソンタルジャ。共同脚本はチベットを代表する作家タシダワが手がけている。 悲しみ、後悔、嫉妬、それらを超えようとする夫と妻、なさぬ仲の父と息子に生まれる絆。チベット仏教の聖地ラサへの五体投地の巡礼から、死者とともに生きるチベットの祈りのこころが伝わってくる。誰もが道に迷う現代に、新鮮な感動が風のように胸を吹き抜けていく名作である。 突然、聖地ラサへの巡礼にでると決めた妻。いったいなぜ?夫は旅立った妻の後を追った……。山あいの村で、夫のロルジェ、ロルジェの父と暮らすウォマ。病院である事実を告げられたウォマは、聖地ラサへの五体投地での巡礼旅に、一人で行くと決意する。半年以上もかかる巡礼の旅に、初めは反対していたロルジェだが、ウォマの固い決意にラサ巡礼を受け入れる。しかし妻の決意にはある秘密があった。旅に出た妻を追ってくる夫。そして妻の実家に預けられ、心を閉ざしていた前夫との息子もやってきた。後悔、嫉妬、わだかまりを抱えながらも、少しずつ結びついていく三人。しかし、そんなある日、ウォマがついに倒れてしまう…。

*上海国際映画祭審査員大賞・最優秀脚本賞

草原の河

©GARUDA FILM

2015年/98分/カラー
原題:河(英題:River)
監督・脚本:ソンタルジャ
出演:ヤンチェン・ラモ、ルンゼン・ドルマ、グル・ツェテン

公式 http://www.moviola.jp/kawa/

2015年ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門でのワールド・プレミアを皮切りに、数々の国際映画祭で上映されて高い評価を受けた本作。上海国際映画祭では主演の少女を演じるヤンチェン・ラモ(撮影開始時6歳)がアジア新人賞・最優秀女優賞を最年少で受賞し、話題を呼んだ。また東京国際映画祭では『河』という原題でワールド・フォーカス部門にて上映され、公開が熱望されていた作品である。

監督は、2011年に発表した長編デビュー作『陽に灼けた道』がバンクーバー国際映画祭でヤング・シネマ賞グランプリを受賞するなど、その第一作から独特な映像感覚によって映画的に物語を語る傑出した才能で、世界的な注目を集めた俊英、ソンタルジャ。これまでチベットを舞台にした映画は数々公開されて来たが、チベット映画人の監督作は本作が初めてとなる。同じチベットを舞台にしながら、外からの視点と内なる視点の相違を考えるのも興味深い。

海抜3000メートルを超えるチベット高原で半農半牧の暮らしを営む一家を主人公にした本作は、父親へのわだかまりをいまだ捨てきれない男グルと、その幼い娘ヤンチェン・ラモがやがて生まれてくる赤ん坊に対して抱く葛藤とを重ね合わせて描く。素人の俳優を使いながら、それぞれの心のうちを見事に描ききったソンタルジャ監督の演出力は卓越している。わけても6歳の少女ヤンチェン・ラモと子羊ジャチャの名演は観客を驚かせるだろう。

陽に灼けた道 <劇場未公開>

©GARUDA FILM

2011年/89分/カラー
監督・脚本:ソンタルジャ
プロデューサー:ヨンジョンジャ(容中爾甲)
撮影:王猛
美術:パクパジャプ
録音・作曲・歌:ドゥッカル・ツェラン
編集:ソンタルジャ、銭冷冷
芸術指導:ペマ・ツェテン、李興
脚本顧問:ツェラン・トンドゥプ、孫亮
出演:イシェ・ルンドゥプ(ニマ)、ロチ(老人)、カルザン・リンチェン(ニマの兄)

詳細 https://note.com/moviola/n/nfb850b89e4d9

ソンタルジャ監督の長編デビュー作。バンクーバー国際映画祭アジア部門新人監督賞はじめ数々の映画賞を受賞して、一躍世界中に注目された。自分の過失で母を死なせてしまい、心を閉ざした青年が、ある老人との出会いから心を溶かしていく物語を、極端に少ない台詞と映像で物語っていき、ソンタルジャの個性が強く表れている。主人公を演じたイシェ・ルンドゥプの表情の切り取り方や、老人の存在を狂言回しのように配した語り口も独特で、デビュー作の荒々しさはあるものの、ソンタルジャ監督の才気を感じさせる必見作である。

自分の過失で母を死なせてしまった青年ニマは自責の念にとらわれ、聖地ラサへ巡礼の旅に出るが、苦しみは消えない。心の傷を抱えたまま故郷へ帰るバスに乗ったニマは、そのバスの中で不思議な老人と出会う。故郷が近くにつれ、ニマは自らを孤独に追いやるように途中でバスを降りるが、老人はニマ気がかりで、バスを降り、ニマとともに旅を続ける。老人の温かい語りかけにニマは少しずつ心を開いていくが、老人もまた家族の問題を抱えていることが明らかになる……。
協力:福岡市総合図書館

*2011年バンクーバー国際映画祭タイガー&ドラゴン賞受賞
*2011年福岡国際映画祭アジア・フォーカス正式招待
*2011年香港国際映画祭特別賞受賞

ラサへの歩き方 ~祈りの2400km 

2015年/118分/カラー
監督:チャン・ヤン(「胡同のひまわり」「帰郷」)
出演:チベット巡礼をする11人の村人

公式 http://www.moviola.jp/lhasa/

中国で300万人動員の大ヒットとなった巡礼ロードムービー。実際の村人に自身と重なる役を演じさせるという独特のスタイルで描く。カム地方から聖地ラサ、そしてカイラス山へ巡礼旅に出た11人の村人、追突事故、出産、資金不足、様々な困難に直面するが……。外の目だからこその感嘆の視点で丹念に日常が描かれ、生活の中にある祈りの心を感じさせる秀作。
五体投地ごたいとうちで2400kmもの距離を巡礼する。その驚き。

五体投地とは、両手・両膝・額(五体)を地面に投げ伏して祈る、仏教でもっとも丁寧な礼拝の方法。チベットには今も聖地巡礼を、五体投地で礼拝しながら、長い時間をかけて進んでいく人々がいる。「しゃくとり虫のように進む」と説明されるように、やってみれば、いかに進むのが大変かがわかる。本作は、チベットの小さな村の11人の村人が、聖地ラサへ、そして最終目的地の聖山カイラスへ、2400kmもの距離を、なんと五体投地で行く巡礼旅を描いた驚くべきロードムービーである。

チベット、カム地方マルカム県プラ村。ニマの家では、父親が亡くなり、まだ四十九日が明けず、法事が行われていた。父の弟のヤンペルは、兄のように思い残すことなく自分は死ぬ前に聖地ラサ行きたいと願っていた。ニマは叔父の願いを叶え、叔父を連れ、ラサへ巡礼に行く決意をする。彼らの巡礼のことを知ると、次々と同行を願う村人が集まり、老人、妊婦、そして幼い少女タツォを含め一行は総勢11人になった。村から五体投地で1200km離れた聖地ラサへ、さらにそこから1200kmあるカイラス山への巡礼の旅がはじまる。

オールド・ドッグ <劇場未公開>

©Mani Stone Pictures

2011年/89分/カラー
監督:ペマ・ツェテン
脚本:ペマ・ツェテン
撮影:ソンタルジャ
録音・音楽:ドゥッカル・ツェラン
製作:サンジェ・ジャンツォ
出演:ロチ(老人)、ドルマキャプ(息子)、タムディンツォ(息子の嫁)

詳細 https://note.com/moviola/n/n95c0d61f96ab

長編第一作『静かなるマニ石』がバンクーバー国際映画祭やプサン国際映画祭はじめ数々の映画祭で受賞し、名匠アッバス・キアロスタミ監督に「心から感動を覚えた」と称賛されたペマ・ツェテン監督の純チベット語映画の長編第3作。1990年代末、中国富裕層の間で起きたチベットのマスチフ犬ブームを背景に、「犬を通じてチベット族の現状を表現したかった」と監督が語るように、中国富裕層が象徴する経済発展がチベット高原の牧畜民の生活にも容赦なく入り込んでくる状況をストレートに描き出している。それまでのペマ・ツェテン作品と大きく異なり、怒りや絶望を鋭く投げかけ、特にそのラストは、観客に大きな衝撃を与えた。製作は、ペマ・ツェテン監督同様、世界にチベット語映画を送り出した重要人物で、詩人としても有名なチベット人映画プロデューサーのサンジェ・ジャンツォ。撮影はペマ・ツェテン監督の4歳下の後輩にあたる『巡礼の約束』のソンタルジャ監督が担当している。第12回東京フィルメックスグランプリ受賞。

広々とした草原に生きる牧畜民の老人。彼は老マスチフ犬を飼っている。中国の大都市に暮らす富裕層の間に起きたマスチフ犬ブームから、犬泥棒が現れたり、しつこく付きまとう仲買人がやってきたり、心の休まる暇がない。老人の息子までも、大金を得ていい暮らしがしたいと願い、犬を高値で売り飛ばそうとするのだが、老人は「犬は民族の誇り」と手放すことを頑なに拒む……。

タルロ <劇場未公開>

©Mani Stone Pictures

2015年/123分/モノクロ
監督:ペマ・ツェテン
脚本:ペマ・ツェテン
撮影:呂松野
美術:タクツェ・トンドゥプ
録音:ドゥッカル・ツェラン
編集:宋氷
編集顧問:寥慶松
製作:高宏、佳琳
出演:シデ・ニマ、ヤンシクツォ

詳細 https://note.com/moviola/n/n2b2c24fdfddf

小説家としても知られるペマ・ツェテン監督自身による漢語小説『タルロ』を映画化。社会の変化に翻弄されて自身のアイデンティティを見失うチベット牧畜民を、寓話的でありながらも鋭く鮮烈に描いた。全編モノクロで、テーマに対するシンプルで深い洞察、洗練されたフレーミング、ユーモアを含んだ重層的な演出、編集に至るまでペマ・ツェテン芸術を代表する一作として国内外で高い評価を得た。『オールド・ドッグ』に続いて、東京フィルメックスグランプリ受賞をはじめ、チベット人監督の作品として台湾・金馬奨で初めて最優秀作品賞にノミネートされた作品でもある(同年の最優秀作品はホウ・シャオシェン『黒衣の刺客』だった)。

孤児として育ち、家族のいない羊飼いのタルロ。ある日、役所からID(身分証明書)を作れと言われ、タルロはIDに必要な写真を撮りに町へ。すると写真館で、そんなボサボサ髪ではダメだと言われ、今度は髪を切るために入った理髪店へ。理髪師の女はタルロに親しげに話しかけ、女性を知らないタルロはいとも簡単に籠絡され……。