残されし大地
©CVB / WIP /TAKE FIVE – 2016 – Tous droits reserves
2016年/ベルギー/カラー/DCP/5.1ch/76分
監督:ジル・ローラン
プロデューサー:シリル・ビバス
出演:松村直登ほか
原題:『LA TERRE ABANDONNEE』
制作:CVB Brussels
配給プロデューサー:奥山和由(チームオクヤマ)
配給協力:太秦
提供:祇園会館
後援:ベルギー王国大使館/ベルギー観光局ワロン・ブリュッセル
舞台挨拶
5/3(水)11:45回上映後、鵜戸玲子さん(故ジル・ローラン監督の妻)の舞台挨拶がございます。
ジル・ローラン監督が見つめた、FUKUSHIMAの“人と土地のつながり”――
2011年3月11日福島原子力発電所の事故のあと、福島第一原発から約12キロに位置する富岡町は帰還困難区域として指定された。そこにひとり留まり、猫、犬、牛、かつて第一原発で飼育されていたダチョウ等の動物保護活動を続ける松村直登の存在からこの映画は始まった。監督のジル・ローランは、ベルギーを拠点に主に欧州で活躍するサウンドエンジニアだった。妻の母国である日本に2013年に家族と共に来日。元々環境問題にも興味があった事から、“福島”について調べる中で、海外メディアで紹介されていた富岡町の松村直登さんの存在を知り、自らメガホンを取る事を決意。そして選んだ題材が“土地と寄り添いながら生きる人たちの力強さ“だった。
3組の家族に寄り添う事で、日常としての福島、そして故郷を愛する思いを紡ぎ出す。“反原発”を声高に語るわけではなく、土地本来の持つ変わらぬ自然の美しさを切り取り、感じ取ってもらうことに、ジル・ローランの監督としてのメッセージが込められている。本作は2015年8月から10月にかけて、福島県において2回に渡り撮影された。パリ同時テロ後の12月、編集作業のためにジル監督は祖国ベルギー・ブリュッセルに一時帰国。編集作業が一通り終わり、内覧試写をする予定だった2016年3月22日、ベルギー地下鉄テロで命を落とすという思いがけない事件が起こる。
初監督作品にして遺作となった、生命の映像詩。
妻の母国である日本で待望の公開
映画はジル監督の想いを受け継いだ、プロデューサーや同僚らの手によって完成。そしてベルギーの仲間達、妻の熱い想いが伝わり、NHKおはよう日本や各新聞など多くの媒体でも取り上げられ、京都国際映画祭2016クロージング上映、そして2017年春日本での公開が決定した。まさに製作者が、命を懸けて、命の尊さを描いた珠玉のドキュメンタリー映画である。
福島第一原発から約12キロ離れた、福島県双葉郡富岡町。18番ゲートがある夜の森は、かつては桜の名所として賑わっていた場所だ。いまはゲート内の商店街に人影はなく、開け放されたままの窓からカーテンが外にたなびき、植物が建物に絡みついている。
3.11以後、町に残された動物を保護し育てる為、自分の故郷・富岡町に残る事を決めた松村直登。寡黙な父とふたり、いまも避難指示解除準備区域の自宅に留まっている。その活動は海外からも注目され、2014年にはフランスに招かれ講演も行った。
庭に実った瑞々しい茄子をふたりで収穫する半谷夫妻。時にテレビを見ながら笑い、仲睦まじい。「水と土で生きてるんだ。」と穏やかに語る農作業中の半谷さんの背後にはフレコンバックが積まれ、除染作業が淡々と行われている。
富岡町の自宅に戻ってきた半谷夫妻の元を訪れた松村さんは、「犬猫がいなかったら、俺も逃げてた。」という。そして「99%が逃げてんのに、1%だけ逃げていない」自分達は変わり者だと笑いあう。「好き勝手やって85歳までいきるか、悩んで90歳まで生きるか、どっちがいいか。」という問いかけに、「100歳まで生きる。」と答える半谷さん。故郷で生きる事を決意した3人は、自分達、そして故郷に突きつけられた現実の中、たくましく笑顔で日常を送っていた。
南相馬市内の雇用促進住宅に住む佐藤夫妻。市内にある自宅のリフォームをすすめている。丁寧な手入れをされていた庭木も、放射線量が高い為、次々と切り倒されていく。お彼岸の墓参りで放射能測定器を片手に“来年こそ”は故郷への帰還を先祖に誓う。庭に実った、自然の再生、生命力の象徴と言われるイチジクを食べながら、かつてこの町に暮らしていた友人たちと語らう時間。各々が家族の事情を抱え、3.11以後の国や行政、そして故郷に戻る者、戻らない者の間に生まれる葛藤に揺れ動いていた。
淡々と進んでいく日常生活の中で、彼らが自然体で紡ぐ言葉の中に“ある日”を境に、かつての故郷を失った人間たちの今とこれからが見えてくる。
上映日時
4/29(土)~5/5(金) | 5/6(土)~5/12(金) |
11:45〜13:05 | 10:00~11:20 |