相米4K ふたつの創造 ふたつの感性
相米4K
ふたつの創造 ふたつの感性
12/20(土)―1/2(金)
相米4K
ふたつの創造 ふたつの感性
12/20(土)―1/2(金)
風のように速く、花のように美しく舞う――
相米は「ションベン・ライダー」(1983年)についてこのように語っている。「この作品は夏休みの間、ひたすら西に向かって走るという映画です」(A PEOPLE・刊「相米慎二 最低な日々」より)。風のように疾走するブルース(河合美智子)、ジョジョ(永瀬正敏)、辞書(坂上忍)。「ションベン・ライダー」が、「ションベン・ライダー 4Kレストア版」として遂に蘇る。4Kの映像監修は、数々の相米映画の助監督を担当した榎戸耕史が務めた。
“風”の映画が「ションベン・ライダー」なら、“花”の映画は「風花」(2001年)だ。あまりにも美しい、東京の桜の満開の元でのゆり子(小泉今日子)と廉司(浅野忠信)によるファーストシーン。その「風花」が「風花 4Kレストア版」として復活を遂げる。4Kの映像監修は本作のチーフ助監督だった高橋正弥が担当。
それぞれの映画がエッジを立てて、あるいはより繊細に儚く蘇る。「台風クラブ」(1985年)は「“水”の映画」であった。「お引越し」(1993年)は「“火”の映画」でもあった。「ションベン・ライダー」は「“風”の映画」である。「風花」は「“花”の映画」である。自然のあるがままのように、相米映画という存在は屹立している。2001年、9月9日、相米慎二は逝った――。53歳だった。風のように速く、花のように美しく舞った。その人生に私たちは“4Kレストア版”を通じて、また出会うのである。それは、再会ではなく新たな「ふたつの創造 ふたつの感性」とのはじめての邂逅である――。
相米慎二プロフィール
1948年1月13日、岩手県盛岡市生まれ。長谷川和彦や曽根中生、寺山修司の下で主にロマンポルノの助監督を務めたのち、『翔んだカップル』(80)で映画監督としてデビュー。82年6月、長谷川和彦、根岸吉太郎、黒沢清ら若手監督9人による企画・制作会社「ディレクターズ・カンパニー」を設立。『台風クラブ』(85)は第1回東京国際映画祭[ヤングシネマ]でグランプリを受賞。その後、『お引越し』(93)で芸術選奨文部大臣賞を受賞、第46回カンヌ国際映画祭ある視点部門に出品。『あ、春』(98)は1999年度キネマ旬報ベスト・テンの第1位に選出されたほか、第49回ベルリン国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞した。2001年、小泉今日子主演の『風花』を発表し、これが遺作となる。9月9日死去。享年53。
公式サイト https://www.apeople.world/sohmaishinji_4k/
配給 A PEOPLE CINEMA(エーピープルシネマ)
入場料一般1,900円/会員・大専・シニア1,300円/高校生以下800円
作品紹介
ションベン・ライダー 4Kレストア版
©1983 kittyfilm
1983年/118分
製作:キティ・フィルム
原案:レナード・シュレイダー
脚本:西岡琢也/チエコ・シュレイダー
撮影:田村正毅/伊藤昭裕
照明:熊谷秀夫
美術:横尾嘉良
音楽:星勝
出演:藤竜也/河合美智子/永瀬正敏/鈴木吉和/坂上忍
数々の“相米伝説”シーンが次々に繰り出される一作
ジョジョ、辞書、ブルースの3人の中学生はガキ大将のデブナガにいつもいじめられていた。今日こそやっつけようというとき、そのデブナガが3人の前で誘拐されてしまう。デブナガの父が覚醒剤を垂れ流していることに腹を立てた横浜のヤクザ極龍会の仕業であった。誘拐した組員は山と政の二人組だが、マスコミはこの事件を派手に報道し、組ではもてあましていた。一方、ジョジョ、辞書、ブルースは横浜に向かい、極龍会の組員で、山と政を連れ戻すように命令を受けた中年のヤクザ、厳兵と出会う――。
7分にわたる冒頭のワンシーン・ワンカット。貯木場での追っかけあい。まさに相米伝説ともいえるシーンが次々に繰り出す。「セーラー服と機関銃」で興行的成功を収めた相米がエンジン全開でその世界観をブローアップした一作。公開当時同時上映だった「うる星やつら オンリー・ユー」の押井守は本作を観て衝撃を受け、「勝手にやっていいんだ」と翌年、傑作「ビューティフル・ドリーマー」を作り上げたという。関係者だけが観た「ションベン・ライダー」の3時間半を超える全長版があったが、もうそのフィルムは存在してないという――。
風花 4Kレストア版
©テレビ朝日/TOKYO FM
2001年/116分
製作:テレビ朝日、TOKYO FM
原作:鳴海章
脚本:森らいみ
撮影:町田博
照明:木村太朗
美術:小川富美夫
音楽:大友良英
出演:小泉今日子/浅野忠信/尾美としのり/鶴見辰吾/柄本明/笑福亭鶴瓶
相米慎二の遺作であり、新しい息吹が芽生えた一作
故郷・北海道に残した一人娘の香織に5年ぶりに逢いに行く風俗嬢のゆり子。泥酔し、コンビニで万引きしたことから、自宅謹慎を命じられている高級官僚の廉司。廉司は酔った勢いからゆり子の北海道への旅につきあうことになり、二人のぎくしゃくとしたドライブが始まった。だが実家に着いた義父の「東京で何をしたか知らないわけじゃない。娘の香織に逢わせるわけにはいかない」という言葉に返す術もなく実家を後にする。廉司には上司からの一方的な解雇通告が。行き場をなくした二人は雪の残る山奥へと向かっていく――。
相米映画に新しい流れが生まれた作品。小泉今日子と浅野忠信は、相米映画に初出演。阪本順治監督作品で知られる椎井友起子がプロデューサーを務めた。また、「鮫肌男と桃尻娘」などで知られた町田博はCMでのタッグを経て、初の相米映画のカメラマンに。一方で、相米映画のOBもズラリ。脇には鶴見辰吾、尾美としのり、寺田農、木之元亮、笑福亭鶴瓶(声)、柄本明らが出演。本作は2001年1月に公開。相米慎二は同年、9月9日に逝去。「風花」は相米慎二の遺作となった。