5/17(土)~
太陽(ティダ)の運命

©2025 映画「太陽の運命」製作委員会
2025年/129分/日本/配給:インターフィルム
監督:佐古忠彦
撮影:福田安美
音声:町田英史
編集:庄子尚慶
語り:山根基世
音楽:兼松衆、阿部玲子、澤田佳歩、佐久間奏、栗原真葉、三木 深
テーマ曲:「艦砲ぬ喰ぇー残さー」 作詞・作曲:比嘉恒敏
制作:琉球放送、TBSテレビ
【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,500円(税込)を当館受付にて発売中!
イベント情報
5/17(土)上映後、佐古忠彦監督の舞台挨拶がございます。
大田昌秀と翁長雄志・・・二人の知事が相剋の果てにたどり着いた境地、そしてこの国の現在地とは―
政治的立場は正反対であり、互いに反目しながらも国と激しく対峙した二人の沖縄県知事がいた。1972年の本土復帰後、第4代知事の大田昌秀(任期1990~98年)と第7代知事の翁長雄志(任期2014~18年)である。ともに県民から幅広い支持を得、保革にとらわれず県政を運営した。大田は、軍用地強制使用の代理署名拒否(1995)、一方の翁長は、辺野古埋め立て承認の取り消し(2015)によって国と法廷で争い、民主主義や地方自治のあり方、この国の矛盾を浮き彫りにした。大田と翁長、二人の「ティダ」(太陽の意。遥か昔の沖縄で首長=リーダーを表した言葉)は、知事として何を目指し、何と闘い、何に挫折し、そして何を成したのか。そこから見えるこの国の現在地とは―。
佐古忠彦監督が沖縄現代史に切り込んだ、新たなる野心作
沖縄戦後史を描いた『米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー』2部作(2017/19)、戦中史を描いた『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』(2021)に続く佐古忠彦監督最新作は、それぞれの信念に生きた二人の知事の不屈の闘いをたどり、その人間的な魅力にも光を当て、彼らの人生に関わった多くの人々の貴重な証言を交えて沖縄現代史に切り込んだ、全国民必見のドキュメンタリーだ。



5/17(土)~
マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド

© Geko Films – Tempesta – 2023
2023年/フランス・イタリア/イタリア語・フランス語/99分/字幕:杉本あり
原題:Maria Montessori (La ouvelle Femme)
配給:オンリー・ハーツ 劇場営業:トリプルアップ
協力:国際モンテッソーリ協会(AMI)
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
イタリア大使館/イタリア文化会館
監督・脚本:レア・トドロフ
脚本:カトリーヌ・バイエ
出演:ジャスミン・トリンカ 、レイラ・ベクティ、ラファエル・ソンヌヴィル=キャビー、ラファエレ・エスポジト、ピエトロ・ラグーザ、アガト・ボニゼール、セバスティアン・プドゥル、ラウラ・ボレッリ、ナンシー・ヒューストン
モンテッソーリ教育の生みの親、マリア・モンテッソーリの劇的な人生。
ブルジョア社会の運命さえも変えた、強く知的なひとりの女性の物語。
Amazon創業者ジェフ・ベゾス、Google創業者ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、シンガーソングライターのテイラー・スウィフト、将棋の藤井聡太などが受けたことでも注目されるモンテッソーリ教育。本作は、その生みの親であるマリア・モンテッソーリがメソッドを獲得し、1907年に「子どもの家」を開設するまでの苦悩に満ちた7年間を描いた感動作。
20世紀初頭のイタリア・ローマ。マリア・モンテッソーリ(ジャスミン・トリンカ)は、ある「成功者」と出会う。フランスの有名なクルチザンヌ(高級娼婦)リリ・ダレンジ(レイラ・ベクティ)だ。リリは娘の学習障がいが明るみに出そうになったとき、自分の名声を守るためにパリから逃亡してきたのだった。マリアはこの時期すでに画期的な新しい教育法の基礎を築いていた。リリはマリアを通して、娘はただの障がいのある女の子ではなく、強い意志と才能を持った人として、ありのままの娘を知るようになる。マリアに共鳴したリリは、男性中心社会の中でもがくマリアの野望の実現に手を貸すのだが・・・。
監督は、パリ、ウィーン、ベルリンで政治学を学び、その後ドキュメンタリー映画を主に活動してきたレア・トドロフ。2012年初のドキュメンタリー「Saving Humanity during Office Hours」を監督し、14年には「Russian Utopia」を共同監督。15年にジャンナ・グルジンスカ監督のオルタナティブ教育をテーマにしたドキュメンタリー「School Revolution: 1918-1939」の脚本を執筆。そして、遺伝性疾患を持って生まれた娘の誕生が本作制作への決定的な契機となった。本作が長編劇映画、初監督となる。
マリア・モンテッソーリを演じるのは、『息子の部屋』で俳優デビューを飾り、『輝ける青春』『フォルトゥナータ』『泣いたり笑ったり』など数多くの作品で映画賞を受賞しているジャスミン・トリンカ。俳優のみならず監督としても活躍しており、第75回カンヌ国際映画祭ではコンペティション部門の審査員を務めた。リリ役には、『虚空の鎮魂歌(レクイエム)』『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』『パーフェクト・ナニー』のレイラ・ベクティ。リリの娘・ティナを演じるのはラファエル・ソンヌヴィル=キャビー。本作のマリア・モンテッソーリのもとで学ぶ障がいを抱えた子どもたちの役は、同じ立場の子どもたちが演じているが、キャスティングのワークショップに参加したラファエルと監督は出会い、ティナ役にぴったりだと初日に感じ抜擢した。本作が彼女のデビュー作となる。



5/24(土)~
デコチン DECO-CHIN

(C)2025 中島らも/集英社・TOブックス
2025年/91分/日本/配給:フリック
監督・脚本:島田角栄
プロデューサー:林哲次
出演:松永天馬(アーバンギャルド)、永岡佑、中田彩葉、古市コータロー(THE COLLECTORS)、小林雅之(JUN SKY WALKER(S))、仲野茂(アナーキー)、マツモトクラブ、プリティ太田、ゆってぃNYチーズケーキTOKYO FRIDAY NIGHT、鳥居みゆき
原作:中島らも「DECO-CHIN」(集英社文庫刊「君はフィクション」所収)
主題歌:「ナルシスト」松永天馬
製作:TOブックス
撮影:笠真吾
美術:山本宗
VFX:奇志戒聖
録音:内田達也
照明:松田章吾
特殊造形:ゾンビストック
音楽監督:RYU智秀
宣材写真&デザイン:松蔭浩之
イベント情報
5/24(土)15:55回上映後、松永天馬さん(本作出演、アーバンギャルド)、佐渡未来さん、ナマコラブさん、松蔭浩之さん(本作ポスター写真デザイン担当、現代美術家、写真家)の舞台挨拶がございます。
中島らも没後21年
最期の傑作短編小説、まさかの完全映画化!
2004年急逝した小説家中島らも。その破天荒な人生と、彼独自の世界観が反映された作品群は、今読んでも色褪せることなく、彼の死後も世代を超えて愛読され続けている。そんな彼が亡くなる直前に書き上げた最期の短編小説が『DECO-CHIN』だ。ミュージシャンの道に挫折し、カウンターカルチャー誌の副編集長となった主人公が、あるバンドとの出会いによって自らの肉体改造をもって覚醒する愛の物語だ。そのあまりに衝撃的な内容に、映像化不可能と言われた原作が遂にスクリーンに登場する!
監督・脚本は、ロック魂をテーマに数々の映画作品を世に送り出してきた島田角栄。自ら聖書(バイブル)と語る原作の映像化に際して、監督曰く“町のごちゃごちゃしたところをフォーカスして切り取りたかった” と高円寺、中野、早稲田を舞台に選んだ。主人公の松本には初の野外ワンマンとなる17周年記念公演『アーバンギャルドの昭和百年・野音戦争』を成功させたアーバンギャルドのリードヴォーカル松永天馬、他、永岡佑、古市コータロー(THE COLLECTORS)、小林雅之(JUN SKY WALKER(S))、仲野茂(アナーキー)、お笑い芸人のゆってぃNYチーズケーキTOKYO FRIDAY NIGHT、鳥居みゆき、マツモトクラブ等ジャンルを超えた出演陣が顔を揃えた。
ミュージシャンの道に挫折した松本が
あるフリークスバンドとの出会いによって覚醒する!!
ミュージシャンの道をあきらめインプラント、スピリットタン等カウンターカルチャーを扱う音楽誌「OPSY」の編集者として毎日を送る松本は、ある日、社長命令でプロダクションからの売り込みバンド「The PEACH BOYS」のワンマンライブに足を運ぶ。しかし、そのあまりの酷さに編集者としての人生を「なんという徒労だ」と愚痴り絶望する。そんなライブ終演後、店長の五百鬼頭が一つのバンドを紹介する。告知もせず突然登場した世界でも稀有なバンド「THE COLLECTED FREAKS」との衝撃の出会いだった。
そして松本は”自分を愛するために“ある決断をする・・・・・・



5/24(土)~1週間限定
『自由なファンシィ』+「筒井武文監督特集」

『自由なファンシィ』+「筒井武文監督特集」
5/24(土)-5/30(金)
『自由なファンシィ』+「筒井武文監督特集」
5/24(土)-5/30(金)
筒井武文監督が2015年に制作した幻の恋愛映画『自由なファンシィ』の公開を記念して、代表作3作品を同時上映する。
筒井武文監督プロフィール
1957年三重県生まれ。東京造形大学在学中に習作『6と9』(1981)を手掛けた後、長編処女作『レディメイド』(1982)を発表。その後、フリーの助監督、フィルム編集者を経て、独立後、 自主制作映画『ゆめこの大冒険』(1986)を3年がかりで完成させ劇場公開。その他に劇団、遊◉機械/全自動シアターの世界を映像化した『学習図鑑』(1987)、3D作品『アリス イン ワンダーランド』(1988)がある。並行して、TV、記録映画、企業CMなど幅広く演出。『おかえり』(篠崎誠、1996)では製作と編集を、『どこまでもいこう』(塩田明彦、1999)では編集を担当。イメージフォーラム、映画美学校、東京芸術大学大学院映像研究科などで後進の育成につとめる。また、映画批評、海外映画人へのインタビューなども多数手がける。2004年、監督作『オーバードライヴ』が公開。最新作は、映画美学校第10期高等科生とのコラボレーション作品『孤独な惑星』。3月末で、東京芸術大学大学院映像研究科映画専攻教授を退任。
入場料
『自由なファンシィ』一般1800円/会員1500円/大専・シニア1200円/高校生以下800円
「筒井武文監督特集」一般1600円/会員1300円/大専・シニア1200円/高校生以下800円
イベント情報 各回上映後トークイベント開催!
★5/24(土)18:55『自由なファンシィ』、松平英子さん、筒井武文監督
★5/25(日)18:30『孤独な惑星』、筒井武文監督
★5/28(水)18:30『ゆめこの大冒険』、筒井武文監督
★5/29(木)18:30『自由なファンシィ』、諏訪敦彦さん、筒井武文監督
★5/30(金)18:30『バッハの肖像』、筒井武文監督
上映スケジュール
5/24(土) | 5/25(日) | 5/26(月) | 5/27(火) | 5/28(水) | 5/29(木) | 5/30(金) |
![]() 自由なファンシィ トークイベント 上映後 松平英子さん、筒井武文監督 |
![]() 孤独な惑星 トークイベント 上映後 筒井武文監督 |
![]() 自由なファンシィ |
![]() 自由なファンシィ |
![]() ゆめこの大冒険 トークイベント 上映後 筒井武文監督 |
![]() 自由なファンシィ トークイベント 上映後 諏訪敦彦さん、筒井武文監督 |
![]() バッハの肖像 トークイベント 上映後 筒井武文監督 |
![]() ゆめこの大冒険 |
![]() 自由なファンシィ |
![]() バッハの肖像 |
![]() 孤独な惑星 |
![]() 自由なファンシィ |
![]() 孤独な惑星 |
![]() ゆめこの大冒険 |
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作品紹介
自由なファンシィ

©2015 筒井武文
2015年/日本/115分/DVD/配給:COMTEG
監督・脚本:筒井武文
脚本:久保寺晃一、松平英子
撮影:谷口和寛
編集:大川景子
音楽:中野弘基
音楽監修:長嶌寛幸
出演:岩瀬亮、松平英子、浜崎茜、新井晴み(友情出演)他
いくつもの秘密を抱える女の運命と女の秘密に翻弄される男の運命
美術大学の職員として平穏に過ごしていた田上千尋は、同棲中の恋人・大沢ゆかりとすれ違う日々が続いている。戸惑いが募る千尋は、ゆかりにプロポーズをするが、返事は曖昧に濁されたものだった。ある日、千尋は親族にゆかりを紹介しようとするが、ゆかりの部屋が空っぽになっていたことを発見する。半狂乱にゆかりを探し回る千尋は、友人たちから気分転換にと芝居の招待状を受け取る。公演名は「自由なファンシィ」。物語の中で愛人と駆け落ちをし、夫への別れの手紙を綴るヒロインを、ゆかりが演じていることを、千尋は知る由もない。そして公演前日、翻弄される男と、いくつもの秘密を抱えた女の運命が動き出す……。
映画と演劇、ドキュメンタリーとフィクションが溶け込み、さまざまな表情を見せるロマンティックな恋愛映画の魔法を唱えたのは、『孤独な惑星』(11) 『ホテルニュームーン』(19)の筒井武文監督。「愛の3部作」の第2作目としてファムファタール(=運命の女)についての物語を現実世界に映し出した。ゆかりの秘密に翻弄されてゆく主人公・千尋役を『正欲』(23)、『愛に乱暴』(24)の岩瀬亮がコミカルかつシリアスに演じ、いくつもの秘密を抱えるもう一人の主人公・ゆかりを松平英子が演じる。
孤独な惑星

©映画美学校/筒井武文
2010年/日本/94分/35ミリ
監督:筒井武文
脚本:宮崎大祐
撮影:芦澤明子
照明:御木茂則
サウンドデザイン:森永泰弘
出演:竹厚綾、綾野剛、三村恭代、水橋研二、ヒカルド、市山貴章、ミッキー・カーチス
団地の踊り場を挟んで向き合う孤独なOLとカップル。ひょんなきっかけから男がOLの部屋のベランダに転がり込み、奇妙な恋愛喜劇が始まる。ドアの開閉によって人間関係に新たな変化が生じる様はルビッチ映画のようにスリリングで、彼らの恋のゆくえに目が離せない。ガラス戸を挟んだもどかしげな男女のやり取りが素晴らしい。
バッハの肖像

2010年/日本/120分/DCP
監督:筒井武文
撮影:芦澤明子、御木茂則
録音:鈴木明彦、森永泰弘
製作:堀越謙三、田中深雪
出演:ミシェル・コルボ、鈴木雅明、勅使川原三郎、タチアナ・ヴァシリエヴァ、ルネ・マルタン
勅使川原三郎の躍動する身体とその影、そしてタチアナ・ヴァシリエヴァによる無伴奏チェロ組曲が織りなす妖しくも官能的な舞台。ミシェル・コルボや鈴木雅明の情熱溢れる指揮による受難曲やカンタータ。それらを捉える冷静な画面の合間に映画作家自身のパッションが不意に噴出する瞬間が訪れる希有な音楽ドキュメンタリー。
ゆめこの大冒険

1986年/日本/70分/DVD
監督・脚本:筒井武文
撮影:宮武嘉昭、熊谷朋之
音楽:蓮舎通治
助監督:諏訪敦彦
製作:西村朗
出演:かとうゆめこ、すずきやすし、宮原清、にわ望、高橋孝英、沖山美紀、チーコ
筒井流「ゲームの規則」。怪盗ゆめことマッド・サイエンティストが乗る気球は、メリエス的な世界一周の旅へと出発し、二人の熱いキスで北極熊を驚かせ、巴里の夜景へと私たちを誘う。さらに偽りの遠近法の中の追跡劇は、映画が作り物の真実であることを指し示す。無声映画への深い愛と該博な知識に裏づけされた初期代表作。
5/31(土)~
青春 -3部作-

青春-苦- 青春-帰-
出稼ぎの若者たちを通して一つの世代の運命を浮かび上がらせる3部作。
ワン・ビンという巨大な作家とともに在る僥倖。
5/31(土)―6/13(金)
『鉄西区』『死霊魂』などで世界で最も賞賛されるドキュメンタリー作家の一人であるワン・ビン(王兵)の最新作。第1部は2023年カンヌ国際映画祭で初上映され、翌年に日本公開。第2部『青春-苦-』は2024年8月のロカルノ映画祭、第3部『青春-帰-』は2024年9月のヴェネチア国際映画祭で世界初上映。『鉄西区』以来の3部作がついにそのベールを脱ぐ!
公式ホームページhttps://moviola.jp/seishun/
入場料 1作品当たり 一般2,100円/会員・大専・シニア1,500円/高校生以下1,000円
※特別興行につき各種サービスデーは適応しません。ご了承ください。
前売券全国共通特別鑑賞3回券4,200円(税込)、1回券1,700円(税込)を当館受付にて発売中!

© 2023 Gladys Glover – House on Fire – CS Production – ARTE France Cinéma – Les Films Fauves – Volya Films – WANG bing
2024年/フランス=ルクセンブルク=オランダ/226分(3時間46分)途中休憩あり/配給:ムヴィオラ
監督:ワン・ビン
中国語題:青春 苦
英語題:YOUTH (HARD TIMES)
字幕:磯尚太郎
青春 -苦-(第2部)
中国の縫製工場で働く若者たちを描く『青春』第2部。
金がない。金を持ち逃げされる。泣けてくる。
もうすぐ春節がやってくる。
第2部は「苦」。中国。子供服の街・織里(しょくり)。その縫製工場で繰り広げられる若者たちの物語は、さらにドラマティックになって行く。ユンはミスばかりして仲間に呆れられ、もう働きたくない。ワンシャンは帳簿をなくしてしまい、社長に賃金は払えないと言われる。社長が取引先を殴っているのを見た。別の工場では、社長が全財産を持ち逃げした。苦々しい交渉の日々。若者たちは春節を祝うため、故郷へと帰る。

© 2023 Gladys Glover – House on Fire – CS Production – ARTE France Cinéma – Les Films Fauves – Volya Films – WANG bing
2024年/フランス=ルクセンブルク=オランダ/152分(2時間32分)/配給:ムヴィオラ
監督:ワン・ビン
中国語題:青春 帰
英語題:YOUTH (HOMECOMING)
字幕:磯尚太郎
青春 -帰-(第3部)
中国の縫製工場で働く若者たちを描く『青春』の掉尾を飾る第3部。
故郷に帰る。結婚式を挙げる。生きていく。
生きることの途方もなさ。
第3部は「帰」。春節の休暇が近づき、織里(しょくり)の縫製工場は閑散としている。わずかに残った労働者たちも帰省する。誰もが故郷で春節を祝うために。休暇中に結婚式を挙げるものがいる。でも、故郷には仕事がない。ミンイェンの故郷の雲南は寒い。家にいても息は白く、手がかじかむ。休暇が終わり、労働者たちはまた工場に戻る。働き場所がなくなったものもいる。少年少女のまだ幼い声が響く。新しく若い世代の出稼ぎが、また工場にやってきたのだ。

© 2023 Gladys Glover – House on Fire – CS Production – ARTE France Cinéma – Les Films Fauves – Volya Films – WANG bing
2023年/フランス=ルクセンブルク=オランダ/215分(3時間35分)/配給:ムヴィオラ
監督:ワン・ビン
中国語題:青春 春
英語題:YOUTH(SPRING)
撮影:前田佳孝、シャン・シャオホイ、ソン・ヤン、リウ・シェンホイ、ディン・ビーハン、ワン・ビン
編集:ドミニク・オーヴレイ、シュー・ビンユエン、リヨ・ゴン
字幕:磯尚太郎
【アンコール上映】
青春 -春-(第1部)
これは、アクション映画で、恋愛映画で、経済の映画で、そして何より青春映画
上海を中心に大河・長江の下流一帯に広がる、長江デルタ地域。ここだけで日本のGDPをはるかに上回る大経済地域だ。しかし、映画が描くのは、長江デルタの大企業でも大工場でもない。織里という町の小さな衣料品工場で働く10代後半から20代の若い世代の労働と日常だ。世界は彼らに注目しない。しかし、そこには驚くほどにみずみずしい青春がある。
猛烈なスピードでミシンをかける姿はアクション映画で、振り付けられたダンスのよう。恋愛をめぐる駆け引きはボーイ・ミーツ・ガール。あちこちで起こる言い争いは、暴力への沸点をはらむ。5元をめぐる経営者とのささやかな攻防。彼らがここで生きていることを徹底的に肯定し、それぞれの人物を注意深く見つめ、共感を寄せること。ワン・ビンの視線は、やがて中国という巨大な国に生きる一つの世代全体の運命を浮かび上がらせる。様々な題材に取り組んできたワン・ビンが、初めて若者にフォーカスした必見のドキュメンタリー体験。

2003年/中国/中国語/カラー/545分
第1部:工場 240分
第2部:街 175分
第3部:鉄路 130分
監督、撮影、編集:ワン・ビン
録音:ハン・ビン、チェン・チェン
製作:ズゥ・ズゥ
提供:ワン・ビン
【オールナイト上映】
鉄西区
中古のデジタルキャメラがあれば、映画が世界と対峙できることを証明し、映画が21世紀に突入したことを宣言したワン・ビン監督の衝撃的な第一作。日本占領時代に建設された工業地区の衰退を描く。
日本占領中に設立され、大規模な工業地域に変貌していった中国東北部瀋陽にある鉄西区。廃れゆくこの地域を3部構成で描いた全9時間におよぶ超長編ドキュメンタリー。ひとつの時代の終焉という巨大な出来事に、ひとりの青年が構える小さなビデオキャメラが、長い時間をかけて記録することにより、中国社会が抱える現実をも浮き彫りにした稀有なドキュメンタリー。 第1部「工場」では3つの工場の没落と、そこで働く労働者たちが記録され、第2部「街」では、取り壊しが決まった労働者住宅の若者たち、そして第3部「鉄路」では、鉄道労働者としてぎりぎりの生活を送る父と子の物語がつづられる。
*山形国際ドキュメンタリー映画祭2003大賞
入場料3,600円均一/会員のみ3,000円
※特別興行につき各種サービスデーは適応しません。ご了承ください。
6/7(土)~
雪子 a.k.a.

©2024 「雪子a.k.a.」製作委員会
2024年/98分/日本/配給:パル企画
監督・編集:草場尚也
製作:鈴木ワタル、桑原佳子
プロデューサー:岩村修、関和紀
原作:鈴木史子、草場尚也
脚本:鈴木史子
撮影:寺本慎太朗
美術:松本千広
音楽:GuruConnect
ラップ監修:ダースレイダー
主題歌:「Be Myself」(Prod. GuruConnect)ポチョムキン(餓鬼レンジャー)、泰斗a.k.a.裂固 & 瑛人
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
出演:山下リオ、樋口日奈、占部房子、渡辺大知、石田たくみ(カミナリ)、剛力彩芽、石橋凌
【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,500円(税込)を当館受付にて発売中!特典:レコード型ステッカーをプレゼント!
教員×ラップ
新鋭 草場尚也監督が描く、現代のニューヒロイン!
不安に生きる全ての人に贈る優しい物語が誕生。
PFFアワード2019日活賞とホリプロ賞の2冠受賞作「スーパーミキンコリニスタ」で注目を浴びた草場尚也監督の待望の劇場用映画初監督作品。
“29歳問題”の渦中で人生に迷った主人公・雪子が、ラップを通して自分と向き合い答えを探す姿を描くと同時に、教職に就く人たちの声を拾い集めて作られた脚本によって、雪子の教師という仕事の明暗も浮き上がらせる。
主演は、映画や舞台など作品規模にとらわれず意欲的に活躍する山下リオ。同僚教師に樋口日奈、占部房子。恋人や友人に渡辺大知、剛力彩芽。そして雪子の父を石橋凌が演じ、個性豊かな実力派の俳優たちが脇を固める。さらに雪子が披露するリリックは、ラッパーのダースレイダーが本作の為に書き下ろした。ラスト、雪子がコトバに乗せて気持ちを解放していくさまは爽快で、生きづらさを感じる私たちの心を躍らせてくれる。
私にできること、それは私自身でいること。
記号のように過ぎていく29歳の毎日に、漠然とした不安を感じている小学校教師の雪子。
不登校児とのコミュニケーションも、彼氏からのプロポーズにも本音を口にすることを避け、ちゃんと答えが出せずにいる。
ラップをしている時だけは本音が言えていると思っていたが、思いがけず参加したラップバトルでそれを否定され、立ち尽くしてしまった。
いい先生、いいラッパー、いい彼女に…なりたい?と自問自答しながら誕生日を迎えた。でも現実は、30歳になったところで何も変わらない自分でしかない。
それでも自分と向き合うために一歩前へ進んだ彼女が掴んだものとは―――。



6/7(土)~
黒い瞳 4K修復ロングバージョン

© 1987 Excelsior Film-TV. © 2010 Cristina D’Osualdo. All rights reserved.
1987年/143分/イタリア/イタリア語、ロシア語/配給:ザジフィルムズ
原題:OCI CIORNIE
監督:ニキータ・ミハルコフ
脚本:アレクサンドル・アダバシャン、ニキータ・ミハルコフ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ
原作:アントン・チェーホフ「犬を連れた奥さん」他
音楽:フランシス・レイ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ、シルヴァーナ・マンガーノ、マルト・ケラー、エレナ・サフォーノヴァ
幸せの涙と、悲しみをたたえた微笑みに彩られたほろ苦くも甘い、文芸ラブ・ストーリー
アテネを経てイタリアに向かう客船。ひと気のない食堂の、窓際のテーブルに座る初老の男は、食堂に入ってきたロシア人の紳士に、自らの人生を語り始める…。男の名はロマーノ。イタリアの田舎町で生まれた彼は、大銀行家の一人娘エリザと結婚し富を得たが、夫婦の仲は冷え切っていた。銀行が倒産の危機に瀕する中、ロマーノは一人家を出て湯治場に身を寄せ、そこで美しいロシア人の女性アンナと出会い、激しい恋に落ちる。一通の手紙を残し消えたアンナを追い、ロマーノはロシアに向かうが…。
マルチェロ・マストロヤンニ生誕100年
アントン・チェーホフ没後120年
本作は、ロシアの文豪アントン・チェーホフの「犬を連れた奥さん」を含む4つの短編から着想を得た物語で、『機械じかけのピアノのための未完成の戯曲』(1977)などの名匠ニキータ・ミハルコフが監督と脚本を務めた。共同脚本に、『山猫』(63)、『家族の肖像』(74)などヴィスコンティ作品に欠かせなかった名脚本家スーゾ・チェッキ・ダミーコが名を連ね、全編に奏でられる流麗な音楽はフランシス・レイが手掛けている。ロマーノの妻エリザをシルヴァーナ・マンガーノが、娘クラウディアをイザベラ・ロッセリーニが演じている。
名手たちの奇跡のコラボレーションによって生み出された本作は、日本でもロングランヒットを記録しキネマ旬報ベストテンの第6位に選出。そこはかとない可笑しみと、円熟期を迎えた男の悲哀が滲み出るマストロヤンニの名演に、世界中の大人の観客が魅了された。カンヌ国際映画祭男優賞のほか、イタリアのアカデミー賞であるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では13部門にノミネート、主演男優賞と主演女優賞のW受賞を果たした。
このたび公開されるのは、4K修復が施され、約25分のシーンが追加されたロングバージョン。マストロヤンニの没後20年に制作され、第73回ヴェネチア国際映画祭ヴェネチア・クラシック部門に出品された。マストロヤンニの生誕100年とチェーホフの没後120年を機に、ついに日本でも公開を迎える。



6/13(金)~
おばあちゃんと僕の約束

©2024 GDH 559 CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED
2024年/126分/タイ/配給:アンプラグド
原題:Lahn Mah
監督・脚本:パット・ブーンニティパット
脚本:トッサポン・ティップティンナコーン
製作:ワンルディー・ポンシティサック、ジラ・マリクン
音楽:ジャイテープ・ラーロンジャイ
撮影:ブンヤヌット・グライトーン
編集:タマラット・スメートスパチョーク
出演:プッティポン・アッサラッタナクン(ビルキン)、ウサー・セームカム、サンヤー・クナーコン、サリンラット・トーマス、ポンサトーン・ジョンウィラート、トンタワン・タンティウェーチャクン
【前売券】ムビチケカード 1,600円(税込)を当館受付にて発売中!特典:ポストカードをプレゼント!
2024年タイで記録的な大ヒット!
自分よりも家族を思う愛情の深さに、涙があふれて止まらない。
大学を中退してゲーム実況者を目指す青年エム。従妹のムイが祖父から豪邸を相続したと聞き、自分も楽をして暮らしたいと画策。エムにはお粥を売って生計を立てている一人暮らしの祖母メンジュがおり、ステージ4のガンに侵されていることが判明。不謹慎にもエムはメンジュに近づき、彼女から信頼され相続を得ようとするのだが、その慎ましく懸命に生きる姿や考えに触れていき……。
2024年4月にタイで公開され、年間最大のオープニング成績を記録した超話題作『おばあちゃんと僕の約束』。涙なしには観られないことから、鑑賞後に号泣する観客の様子を、TikTokをはじめとするソーシャルメディアに上げるブームが勃発。若者を中心に大流行し、社会現象となり、世界中で驚異の約120億円超の記録的な大ヒットに繋がった。
製作は、『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(17)、『女神の継承』(21)でヒット連発、“アジアのA24”と称される新進気鋭の映画スタジオGDH。本作で、タイ史上初となるアカデミー賞®国際長編映画部門ショートリスト入りを果たした。主人公エムを演じるのは、ドラマ「I Told Sunset About You 〜僕の愛を君の心で訳して〜」(20)の出演を機に、タイをはじめアジア全域で大人気スターとして注目を集める俳優・ミュージシャンのビルキンこと、プッティポン・アッサラッタナクン。おばあちゃん役のウサー・セームカムは、78歳にして俳優デビュー。『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』で校長役を務めたサリンラット・トーマスがエムの母親を演じる。祖母、子、孫の三世代が織りなす普遍的な家族の物語でありながら、笑いを交えた新鮮な切り口で描き、バンコクの古く美しい風景の中で繰り広げられるヒューマンドラマ。心の琴線に触れるあたたかく優しい音楽と共に、誰もが家族や故郷を思わずにはいられない名作が誕生した。



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6/14(土)~
トレンケ・ラウケン

アルゼンチン、ドイツ / 2022 年/スペイン語/DCP/ Part1 (128分)、Part2 (132分) /原題:Trenque Lauquen/配給:トーデスフィルム、ユーロスペース
監督・脚本:ラウラ・シタレラ
製作:エル・パンペロ・シネ
出演:ラウラ・パレーデス、エセキエル・ピエリ
カイエ・デュ・シネマ誌ベストテン第1位
世界中の批評家や映画ファンを魅了した南米の迷宮的ミステリー
協働的かつインディペンデントな映画制作を20年以上続けてきたアルゼンチンの映画コレクティブ「エル・パンペロ・シネ」。今、世界中の映画祭から注目されるこの集団の集大成的作品がラウラ・シタレラ監督『トレンケ・ラウケン』だ。今作は4時間超のボルヘス&ボラーニョ的迷宮ミステリーでありつつ、誰もが楽しめる娯楽作であり、探偵もの、メロドラマ、クィア、フェミニズム、SFなど様々なジャンルや要素を越境しながら吸収して、誰も見たことのない境地へと観客を連れていく。
昨年末、4日間限定で行われた下高井戸シネマでの上映会では連日朝から行列ができ、チケットは完売、SNS上には絶賛の声があふれ、一瞬にして映画ファンの話題をさらった本作が遂に全国の劇場で公開される。
平原に消えた1人の女性、彼女を探す2人の男たち
アルゼンチンの片田舎トレンケ・ラウケンで、ひとりの植物学者の女性ラウラが姿を消す。取り残された二人の男たち―恋人のラファエル、同僚のエセキエル―は、彼女を追って町や平原をさまよう。彼女はなぜいなくなったのか。この土地には何が眠っているのか。映画が進むにつれ物語は予想のつかない多方向へひろがり、謎はさらなる謎を呼び、秘密は秘密として輝きはじめる―。
*2023年カイエ・デュ・シネマ誌ベストテン第1位
*第79回ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門正式出品
*第60回ニューヨーク映画祭正式出品
*サン・セバスチャン国際映画祭正式出品
*マルデルプラタ国際映画祭 ラテンアメリカ最優秀作品賞



6/14(土)~
ラウラ・シタレラ監督特集 響きあう秘密
『トレンケ・ラウケン』公開を記念して
ラウラ・シタレラ監督の全長編3本を特集上映
エル・パンペロ・シネ常連の役者やスタッフとシタレラが作り上げたこのサーガでは、個々の作品の謎めいた魅力がきらめきつつ、すべての物語が奇跡的に連動していきます。『トレンケ・ラウケン』を見る前もしくは見た後に、シタレラたちが織りなす壮大な世界の秘密にもっと近づいてみませんか。
<ラウラ・シタレラ Laura Citarella>
1981年、ブエノスアイレス州ラプラタに生まれる。ブエノスアイレス映画大学の監督コースを卒業。2005年より、マリアノ・ジナス、アレホ・モギシャンスキー、アグスティン・メンディラルスとともに映画製作会社エル・パンペロ・シネの一員となる。長編監督作として『オステンデ』(2011)、『ドッグ・レディ』(2015)、『詩人たちはフアナ・ビニョッシに会いに行く』(2019)、『トレンケ・ラウケン』(2022)がある。アルゼンチンにおける最も有力なインディペンデント映画プロデューサーの一人であり、プロデュース作品としてマリアノ・ジナス監督『並外れた物語』(2008)、『ラ・フロール 花』(2018)、アレホ・モギジャンスキー監督『カストロ』(2009)、『オウムと白鳥』(2013)、『黄金虫』(2014)、『金のために』(2019)など。
作品紹介
オステンデ

アルゼンチン/2011年/85分/スペイン語/DCP/原題:Ostende
監督:ラウラ・シタレラ
製作:マリアノ・ジナス
撮影:アグスティン・メンディラルス
録音:ロドリゴ・サンチェス・マリニョ
編集:アレホ・モギシャンスキー
音楽:ガブリエル・チュフニク
出演:ラウラ・パレーデス、フリアン・テジョ、サンティアゴ・ゴベルノリ、デボラ・デフティアル、フェルナンダ・アラルコン、フリオ・シタレラ
ラジオのクイズコンテストの懸賞で、ブエノスアイレス近郊オステンデのホテルを訪れたラウラ。だがリゾートはシーズンオフ。後から合流する彼氏を待つ間、彼女は2人の若い女を連れた中年男を観察しはじめる。男の奇炒な態度に好奇心をくすぐられ、密かにくり広げられているかもしれない中年男をめぐる物語を解き明かそうと想像をふくらませてゆくが…。ヒッチコックやロメールへ目配せをしつつ、日常に潜むフィクションにのめり込む女性を描いた監督デビュー作。シタレラは『トレンケ・ラウケン』に連なるサーガの一篇であり、異なる世界にいる同じ登場人物の物語だと語っている。
ドッグ・レディ

アルゼンチン/2015年/98分/スペイン語/DCP/原題:La Mujer de los Perros
監督:ラウラ・シタレラ、ベロニカ・ジナス
製作:エル・パンペロ・シネ
撮影:ソレダ・ロドリゲス
編集:イグナシオ・マスジョレンス
音響:マルコス・カノサ
音楽:フアナ・モリーナ
出演:ペロニカ・ジナス、フリアナ・ムラス、ヘルマン・デ・シルバ、フアナ・サラ
ひとりの女性がたくさんの犬に囲まれて、平原を横切っていく。 彼女はブエノスアイレス郊外の空き地に自らの手で建てた小屋で、10匹の犬とともにひっそりと暮らしている。金も使わず、言葉も喋らず、社会からはみ出たような謎の女。だが無秩序に肥大化した大都市の周縁には、彼女のような謎が謎のままで存在できる世界が広がっている。狩りに出て、食事をし、水辺を眺め、やがて死ぬ。そんな原初的な自由が許された世界の、彼女は名もなき観察者なのかもしれない。主人公を演じるのはエル・パンペロ・シネのマリアノ・ジナスの姉ベロニカ・ジナス。ベロニカの発案を彼女とシタレラが共同監督した作品。
詩人たちはフアナ・ビノョッシに会いに行く

アルゼンチン/2019年/98分/スペイン語/DCP/原題:Las Poetas visitan a Juana Bignozzi
監督:ラウラ・シタレラ、メルセデス・ハルフォン
製作:エル・パンペロ・シネ、メルセデス・ハルフォン
撮影:イネス・ドゥアカステラ、アグスティン・メンディラルス
編集:ミゲル・デ・スピリア、アレホ・モギシャンスキー
音響:マルコス・カノサ
出演:マルティン・ロドリゲス、マルセリーナ・ハルマ、マルティン・ガンバロータ、グラシエラ・ゴルドチュルク、アナ・ポルア
フアナ・ビニョッシという詩人が死んだ。彼女の詩を世に遺したいと願う若い詩人メルセデス・ハルフォンは、ラウラ・シタレラたちとビニョッシについての映画を作ることにする。遺品を整理しながらビニョッシの詩に向き合う女性たち。プロットもなくはじまったこのプロジェクトは、彼女たちが予想だにしなかった複雑で繊細なものへと進化していく。『トレンケ・ラウケン』と同時期に制作された今作では、アレクサンドラ・コロンタイや書物への書き込みといった共通のエピソードが語られ、シタレラ作品の最重要テーマである「共同体への希求」が、軽やかに切実に記録されている。
6/21(土)6/22(日)
柳下美恵の ピアノdeフィルム vol.15『君と別れて』

柳下美恵のピアノdeフィルムvol.15
『君と別れて』Apart From You
サイレント映画の35ミリフィルム上映 × ピアノの即興生伴奏
2025.6.21[土]&22[日] 各日12:30
映画が誕生してまもなく130年。最初の約40年間の作品は今ではサイレント映画と呼ばれています。映写機のフィルムがスクリーンに映し出され、語りや音楽伴奏と共に上映していました。トーキーは映写速度が24コマ/秒ですが、サイレントは作品によって違っています。トーキーのスクリーンサイズは作品によって違っていますが、サイレントは1.33×1でした。デジタル上映が主流になる今、映画が誕生した頃の形にこだわった上映を試みます。


フィルム提供:国立映画アーカイブ

1933年/日本/72分[24fps]予定/ 35mm/サイレント/松竹キネマ
監督・原作・脚本: 成瀬巳喜男/撮影: 猪飼助太郎/フィルム提供:国立映画アーカイブ
出演:水久保澄子(芸者 照菊)、吉川満子(芸者 菊江) 、磯野秋雄(菊江の息子 義雄)、河村黎吉(照菊の父)、突貫小僧(照菊の弟)
メロドラマに定評のある成瀬監督の残存する数少ないサイレント映画の名作。主演の水久保澄子は、前年に同監督の『蝕める春』でデビュー、瞬く間に人気になり『チョコレート・ガール』では主人公を演じた。磯野秋雄は『女學生と與太者』(ピアノdeフィルムvol.14で上映)でも水久保澄子、吉川満子と共演、『限りなき舗道』(ピアノdeフィルムvol.11)では主人公、忍節子の弟を演じた。1933年度第10回キネマ旬報日本映画ベストテン第四位。本年は成瀬巳喜男生誕120年の巳年、成瀬監督に精通した研究者のトークと併せてお楽しみください。
照菊は家が貧しく若くして芸者になった。先輩芸者の菊江は息子義雄を育てながらやるせない思いで働いている。義雄は、母親の職業を受け入れられず、不良仲間と非行に走る。しかし義雄は照菊に好意を持ち境遇を知って仲間と手を切ろうとした。
6.21[土]・22[日] 大久保清朗さん
映画評論家/山形大学人文社会科学部 准教授/著書:成瀬巳喜男の世界へ(共著)筑摩書房
入場料一般・シニア2,000円/会員1,700円/ユース(25歳以下)1,000円
6.18[水]より、横浜シネマリンオンラインチケット予約サイト、9:30より劇場受付にて、座席指定券を販売いたします。詳細は劇場Webサイトにてご確認ください。

サイレント映画ピアニスト。武蔵野音楽大学ピアノ専攻卒業。1995年、山形国際ドキュメンタリー映画祭のオープニング上映、映画生誕百年祭『光の生誕リュミエール!』でデビュー。 以来、国立映画アーカイブや神戸映画資料館などのアーカイブ、映画の復元と保存に関するワークショップ、全国コミュニティシネマ会議、東京国際映画祭、京都国際映画祭、アップリンク、シネマ・ジャック&ベティなどの映画館、海外は韓国映像資料院、SEAPAVAA(東南アジア太平洋地 域視聴覚アーカイブ)マレーシア会議、タイ無声映画祭、 ポルデノーネ無声映画祭、ボローニャ復元映画祭(イタリア)、ボン無声映画祭(ドイツ) などで伴奏。日本、イギリス、アメリカ、デンマークで出版された 『裁かるゝジャンヌ』のDVDやブルーレイの音楽を担当した。音楽で見せる欧米スタイルの無声映画伴奏者は日本人初。映画を楽譜として映画に寄り添い続ける。映画館にピアノを常設する“映画館にピアノを!”、サイレント映画×ピアノの生伴奏“ピアノdeシネマ”、 サイレント映画週間“ピアノ&シネマ”などサイレント映画を映画館で上映する環境作りに注力中。2025年デビュー30周年を迎える。
6/21(土)~
メイデン

© 2022 FF Films and Medium Density Fibreboard Films.
2022年/117分/カナダ/英語/提供:クレプスキュール フィルム、シネマ サクセション/配給:クレプスキュール フィルム
原題:The MAIDEN
監督・脚本:グラハム・フォイ
撮影:ケリー・ジェフリー
編集:ブレンダン・ミルズ
美術:エリカ・ロブコ
録音:イアン・レイノルズ
プロデューサー:ダイヴァ・ザルニエリウナ、ダン・モントゴメール
出演:ジャクソン・スルイター、マルセル・T・ヒメネス、ヘイリー・ネス、カレブ・ブラウ、シエナ・ イー
日本語字幕:上條葉月
カナダ・カルガリー郊外を舞台に、思春期の少年少女の友情と孤独、
喪失の悲しみを紡ぎ上げた、メランコリックで魔法めいた映像世界
カイルとコルトンは、カルガリーの郊外に住む高校生。親友同士のふたりは住宅地をスケートボードで駆け抜けたり、渓谷で水遊びに興じたりと、気の向くままに日々を過ごしている。夏休みが終わりに近づいたある夜、立入禁止区域の鉄道の線路に侵入したカイルに惨たらしい出来事が降りかかる。その頃、同じ高校に通う少女ホイットニーが行方不明になり、奇しくもコルトンが渓谷の岩場で拾ったホイットニーの日記帳には、学校での人間関係に悩む彼女の切実な心情が綴られていた。果たしてホイットニーの身に何が起こり、彼女はどこへ消えたのか。孤立したコルトンは、どうすれば心の空洞を埋めることができるのか。そして、まだ現世をさまよっているかもしれないカイルの魂の行く末とは……。
ある日突然、取り返しのつかない悲劇に見舞われた高校生の若者たち。やるせない喪失感と孤独に苛まれる少年少女3人の物語を、粒子の粗い16ミリフィルムの質感を生かしたみずみずしい映像美で紡ぎ上げ、観る者に超自然的とも言える魔法めいた映画体験をもたらす。グラハム・フォイ監督の長編デビュー作『メイデン』は、彼自身が育ったカナダ西部のアルバータ州カルガリーで撮影を行ったメランコリックな青春映画。いずれもオーディションで見出され、これが映画デビュー作となったジャクソン・スルイター、マルセル・T・ヒメネス、ヘイリー・ネスの演技と存在感も特筆もの。なかでも若き日のリヴァー・フェニックスを想起させるスルイターの鮮烈なカリスマ性には、多くの観客が目を奪われることだろう。本作は、第79回ヴェネツィア国際映画祭のヴェニス・デイズ部門で”未来の映画賞”を受賞、第75回カンヌ国際映画祭の批評家週間「Next Step」のプログラムにも招待され、フォイ監督は期待の新鋭として世界に認められた。



6/28(土)~
デリカド
命懸けで森を守る。これはもはや戦争だ。
気候変動の最前線でフィリピン“最後の秘境”を決死で守る環境活動家たちを追うドキュメンタリー
フィリピンの「世界で最も美しい島」パラワン島は“最後の秘境”、“最後の生態系フロンティア”として名高く、手つかずの自然やコバルトブルーに輝く海を求めて世界中から観光客やダイバーが訪れるアジア屈指のリゾートだ。しかし、一見のどかな熱帯の島に見えるパラワン島では、違法伐採や違法漁業が横行している。この雄大な生態系を守るため、地元の環境保護団体を束ねるパラワンNGOネットワーク(PNNI)が立ち上がった。環境警備隊である彼らの闘いは戦争に近い。違法伐採者はライフルで武装しており、命を落とすメンバーが後を絶たないのだ。人類は「6度目の大絶滅」や気候変動の危機に直面しているが、この島は開発によって急速に生物多様性が失われている最前線になっている。
リゾートを訪れる私たちに決して無関係ではない問題
PNNIの代表ボビーは環境弁護士としてタタ、ニエヴェスらのメンバーと共に、パラワン島の生態系を“経済発展”のために破壊しようとする腐敗した政治家や実業家を相手に命がけの闘いを挑む。チェーンソーの音を頼りに森を進み、違法伐採者から押収したチェーンソーは700台に上り、それらは事務所前にクリスマスツリーのように積み上げられている。また、事務所の敷地内は違法に木材を積んでいた船やトラックを展示した博物館でもある。ボビーは、パラワン島を守るためエコツーリズムの推進を掲げる候補者の町長再選に協力するが、2人は時のドゥテルテ大統領に殺害予告を受ける。果たして彼らは“最後の秘境”を守ることができるのだろうか──。

©Karl Malakunas

©Karl Malakunas

©Delikado LLC
7/5(土)~
無名の人生

©鈴木竜也
2024年/93分/日本/配給:ロックンロール・マウンテン/配給協力:インターフィルム
監督・原案・作画監督・美術監督・撮影監督・色彩設計・キャラクターデザイン・音楽・編集:鈴木竜也
プロデューサー:岩井澤健治(『音楽』『ひゃくえむ。』)
声の出演:ACE COOL、田中偉登、宇野祥平、猫背椿、鄭玲美、鎌滝恵利、西野諒太郎(シンクロニシティ)、中島歩、毎熊克哉、大橋未歩、津田寛治
数々の映画祭を席巻した鈴木竜也、満を持しての劇場長編デビュー
『音楽』『JUNK HEAD』に続く、 個人制作の長編アニメーションの新たな傑作誕生
2021 年、コロナ禍を機に独学で作り始めた短編アニメーション『MAHOROBA』が、ぴあフィルムフェスティバル、下北沢映画祭ほか国内の自主映画祭で数多くの賞を受賞した鈴木竜也監督が、たった1人で、1年半を費やし描き上げた長編デビュー作『無名の人生』。
『MAHOROBA』ではブラック企業に勤める男が逃亡を図る物語、続く『無法の愛』でははみ出し者の男女の関係を軸に、現実社会で起きた無差別刺傷事件にも焦点を当てるなど、一貫して“不条理な世の中に生きる者たちの生き様”をシニカルな描写で描いてきた鈴木監督。『無名の人生』は、仙台に暮らすいじめられっ子の孤独な少年が、父親の背中を追ってアイドルを目指すところから始まる物語。生まれてから死ぬまでに蔑称や源氏名などいくつもの呼称で呼ばれた主人公の波乱に満ちた100年の生涯を、高齢ドライバーや芸能界の闇、若年層の不詳の死、戦争など今まさに我々が直面する数々のセンセーショナルな社会問題を背景に全10章で描き切ります。そして、章ごとにタッチも色彩も変化し、観る者を飽きさせない変幻自在なアニメーションの果てに待つ、前代未聞の衝撃的なラストとは…。
制作期間7年半、総作画枚数4万枚超で国内外を席巻した岩井澤健治監督作『音楽』(19)、世界の映画賞で称賛されたストップモーションアニメ『JUNK HEAD』(21)のヒットが記憶に新しい、日本の個人制作の長編アニメーション市場。今回、岩井澤監督が『無名の人生』のプロデュースを手掛け、アニメ業界にさらなる多様性をもたらします。
鈴木監督たっての希望で主人公の声を務めたのは、ラッパーのACE COOL。その卓越したスキルで抒情的・哲学的なラップを放ち、聴く者を魅了。今回、映画初出演かつ声優初挑戦となりましたが、少ない台詞ながらも主人公の心の揺らぎと悲哀を繊細に表現しました。そして、実力派俳優から、フリーアナウンサー、お笑い芸人など、世代もフィールドも異なるキャスト陣が、そのほとんどが声優未経験ながら、監督の孤高の作品作りと唯一無二の作風に共鳴。個人制作の長編アニメーションの新たな傑作がここに誕生しました。



7/5(土)~7/8(火)
横浜フランス月間2025

横浜フランス月間2025
~食・環境にまつわるドキュメンタリー作品上映&トーク~
7/5(土)-7/8(火)
横浜フランス月間2025
~食・環境にまつわるドキュメンタリー作品上映&トーク~
7/5(土)-7/8(火)
映画監督 フランソワーズ・デボワ

日本人の母とフランス人の父の間に生まれる。グルノーブル政治学院を卒業後、ベルリンのメットフィルムスクールでドキュメンタリー映画を学ぶ。パリでシャンソン・レアリストの歌手として、またアムステルダムで料理研究家として活動。現在はベルリンを拠点にドキュメンタリー映画の製作に専念する。日本文化、なかでも美食をテーマにした、親密なポートレート作品を数多く手がけている。彼女は心惹かれるプロジェクトがあれば、世界のどこへでも足を運ぶ。
代表作『ジャン=マルク・ブリニョと佐渡のこと』は、数々の賞を受賞。最新作『KAZUO』では、佐渡の名高い蕎麦職人の厨房で過ごした1週間を丹念に描いている。

主催 アンスティチュ・フランセ
公式サイト https://culture.institutfrancais.jp/event/mdf2025_associe
作品紹介
ジャン=マルク・ブリニョと佐渡のこと

2020年/90分/カラー/ドイツ
日本人にもほとんど知られていない手つかずの島での私的な逃避行へと私たちを誘う。
本州の西、日本海に浮かぶ佐渡島。かつて流浪の地であったのと同時に、15世紀以降のゴールドラッシュの歴史をもち、ここに足跡を残した様々な個性によって築かれた日本の縮図と形容されることもある。今もその精神と独自の伝統が息づいている土地である。
10年前、フランスの自然派ワインの先駆者として知られるジャン=マルク・ブリニョは、フランスのジュラを離れ、家族とともに佐渡に移住することを決めた。彼はそれまで一度もワインのために耕されたことのない土地で、ゼロからワイン造りを始めたのだ。ヨーロッパ的慣習から遠く離れた場所で、ワイン栽培とパーマカルチャー農法の実験を行うために、新たなスタートを切った。果たして彼は、気候的、文化的、地質学的な制約の中で成功を収めることができるのだろうか。
KAZUO

2023年/97分/カラー/ドイツ
1968年、佐渡に生まれた蕎麦職人、KAZUOこと齋藤和郎さん。佐渡の人気蕎麦屋「茂左衛門(もぜむ)」を営む。東京で学び、働いたのち、生まれ故郷の佐渡に戻ることを決意、帰郷後は、改めて島を見つめ直し、佐渡の山々や豊かな自然を探求する日々。
そんな彼が、ここ数年佐渡に関心を持って度々来島しているデボワ監督と出会い、「1週間、僕の厨房で過ごしてみないか」と声をかけたことからこの作品は誕生した。彼が四季折々の恵みを生かし、正確でインスピレーションあふれる創作郷土料理を提供していく姿をとらえた作品。
7/5(土)~
それでも私は

©Yo-Pro
2025年/119分/日本/制作・配給:Yo-Pro/配給協力:きろくびと
監督:長塚 洋
撮影:長塚 洋、木村浩之
編集:竹内由貴
整音:西島拓哉
アニメーション:竹原 結
音楽:上畑正和
特別協力:「それでも私は」上映委員会
娘なことは、罪ですか?
「父の名は、松本智津夫。」
“麻原彰晃の娘”として生きることを強いられた彼女の41年
1995年3月、日本を震撼させた地下鉄サリン事件。その首謀者の娘として生まれた松本麗華(まつもと・りか)は父親が逮捕された 当時12歳。以来、どこに行っても父の名、事件の記憶、そして「お前はどう償うのか?」という問いがつきまとってきた。
「虫も殺すな」と説いたはずの教団の信徒たちが起こした数々の凶行に衝撃を受け、父親が裁判途中で言動に異常を来したために、彼がそれら犯罪を命じたこともまだ受け入れ切れない。死刑の前に治療して事実を話させて欲しいとの彼女の願いに識者らも賛同し、真相を求め続けるが、間もなく突然の死刑執行。麗華は社会が父親の死を望んだと感じ、極度の悲しみと絶望のうちに生きることになる。それでも人並みの生活を営もうとするが、定職に就くことや銀行口座を作ることさえ拒まれる。国は麗華に対して教団の「幹部認定」をいまだに取り消さず、裁判所に不当を訴えても棄却されてしまう――。
社会からの絶え間ない差別や排除の中、 自らの生き方を模索し続ける6年の記録
加害者の家族が背負う罪とは何か。オウム事件を含む犯罪報道に長く身を置いてきた長塚洋監督(『望むのは死刑ですか オウム“大執行“と私』)が考え続けた当事者たちの事件後の人生。松本麗華と出会い、その答えを求めて6年間に渡り記録し続けた。
社会が被害者の代弁者となり加害者の家族を責める。バッシングに負けずひたむきに自身の人生を築こうともがく麗華の姿は、この世界で苦しみながら生きている人に向けた希望のメッセージとなりうるか。



7/12(土)~7/18(金)
アメリカ黒人映画傑作選

アメリカ黒人映画傑作選
今まで見過ごされてきた
黒人監督による黒人映画の秀作たち
7/12(土)―7/18(金)
アメリカ黒人映画傑作選
今まで見過ごされてきた
黒人監督による黒人映画の秀作たち
7/12(土)―7/18(金)
長きにわたって日の目を見ることがなかったアフリカ系アメリカ人による映画。今回上映される3本は、いずれもアメリカ議会図書館の国立映画登記簿の保存に選ばれ、近年再評価が高まる傑作ばかり。あからさまな政治的、差別描写はなくとも、女性たちの眼差しやささやかな日常を通して浮き彫りになるのは、彼女たちのおかれた切実な状況社会のひずみ、そしてそれらを乗り越える限りない生命力。
ここにはイメージやステレオタイプを打ち破る“映画的瞬間”が満ち溢れている。
公式ホームページhttps://blackamericancinema.jp/
提供マーメイドフィルム
配給コピアポア・フィルム
入場料 当日一般1,900円/会員・大専・シニア1,300円/高校生以下800円
予定表 横にスクロールできます
作品紹介
ここではないどこかで Losing Ground

©1982 Kathleen Collins, Courtesy of Milestone Films and the Kathleen Collins Estate
1982年/カラー/アメリカ/86分
監督・脚本:キャスリーン・コリンズ
出演:セレット・スコット、ビル・ガン
大学で哲学を教えるサラは、画家の夫ヴィクターとニューヨークに住んでいる。夏の間、リゾート地で創作活動に専念したいと言い出すヴィクターに対し、論文執筆のため街に残りたいサラだったが渋々付き合うことに。しかしヴィクターは現地の女性にちょっかいを出し、サラは腹いせに教え子から頼まれていた自主映画への出演を決めてしまう。アフリカ系女性監督による最初期の長編映画。正式公開には至らず、製作から6年後に監督のキャスリーン・コリンズは逝去。2015年に修復され上映を果たし、映画評論家のリチャード・ブロディが「ニューヨーカー」誌で「この映画が当時広く公開されていたら、映画史に名を刻んでいただろう」と評するなど絶賛された。エリック・ロメールを思わせるような軽妙かつ洗練された語り口で、男女の機微を活き活きと描く。
小さな心に祝福を Bless Their Little Hearts

©1983 Billy Woodberry, Courtesy of Milestone Films and Billy Woodberry
1984年/モノクロ/アメリカ/85分
監督:ビリー・ウッドベリー
出演:ネイト・ハードマン、ケイシー・ムーア
ロサンゼルスのワッツ地区で暮らす失業者チャーリーは3人の幼い子を養うため、職探しの毎日。日雇いの仕事にありつければまだマシな方、なかなか金を稼ぐ手立てが見つからない。妻のアンダイスは夫の不甲斐なさに半ば諦め顔、家計のやりくりに苦心しながら家事に忙殺されストレスがたまる一方。そんな中、チャーリーの浮気が発覚、ついにアンダイスの怒りが爆発する。貧困地帯を舞台に、黒人家族の過酷な日常を抑制の効いたモノクロ映像で丹念に追う。監督は〈L.A.リベリオン※〉の中心人物の一人、ビリー・ウッドベリー。脚本と撮影を“最も偉大な黒人監督”と評されるチャールズ・バーネットが手掛けている。Rotten Tomatoesで100%の支持率を獲得。10分近く長回しで捉えたキッチンでの夫婦喧嘩は壮絶の一言。
※L.A.リベリオン:1960年代後半から1980年代後半にかけてUCLAで学び、ハリウッドの伝統にとらわれない自由な映画づくりを目指したアフリカ系の映画人たちを指す。代表的な人物としてチャールズ・バーネット(『Killer of Sheep』)、ラリー・クラーク(『Passing Through』)、ジュリー・ダッシュ、ビリー・ウッドベリーらがいる。
海から来た娘たち Daughters of the Dust

Images Courtesy of Park Circus/The Cohen Film Collection
1991年/カラー/アメリカ/112分
監督・脚本:ジュリー・ダッシュ
出演:コーラ・リー・デイ、バーバラ・O・ジョーンズ
1902年、アメリカ大西洋沖シー諸島のある島。長年住んだ故郷を離れ、北への移住を決めたぺザント一族だったが、長老のナナは亡き夫が眠るこの地に残ると言い張る。それぞれの思惑が交錯する中、いよいよ島を出る時が来た。これから生まれてくる子供のモノローグで綴られる、ガラ族の女系家族の物語。虐げられても失わなかった高貴な魂と誇りを、詩的な映像美で高らかに謳いあげる。黒人女性監督による初めて公開された長編映画で、2016年にリリースされたビヨンセのアルバム『レモネード』が本作に多大な影響を受けていることから注目が集まり、2022年にはサイト&サウンド誌「史上最高の映画ベスト100」の60位に選出されるなど、今も語り継がれる名作。1991年のサンダンス映画祭で撮影賞を受賞。
7/12(土)~
黒川の女たち

2025年/99分/日本/配給:太秦/製作:テレビ朝日
監督:松原文枝
語り:大竹しのぶ
撮影:神谷潤、金森之雅
編集:東樹大介
プロデューサー:江口英明
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画制作支援事業)
支援:独立行政法人日本芸術文化振興会
【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,400円(税込)を当館受付にて発売中!
なかったことにはできない
1945年 関東軍敗走の満州で待ちうけた、黒川開拓団の壮絶な運命―
戦争と性暴力の事実、いま知るべきことがここに在る。
80年前の戦時下、国策のもと実施された満蒙開拓により、中国はるか満洲の地に渡った開拓団。日本の敗戦が色濃くなる中、突如としてソ連軍が満洲に侵攻した。守ってくれるはずの関東軍の姿もなく満蒙開拓団は過酷な状況に追い込まれ、集団自決を選択した開拓団もあれば、逃げ続けた末に息絶えた人も多かった。そんな中、岐阜県から渡った黒川開拓団の人々は生きて日本に帰るために、敵であるソ連軍に助けを求めた。しかしその見返りは、数えで18歳以上の女性たちによる接待だった。接待の意味すらわからないまま、女性たちは性の相手として差し出されたのだ。帰国後、女性たちを待っていたのは労いではなく、差別と偏見の目。節操のない誹謗中傷。同情から口を塞ぐ村の人々。込み上げる怒りと恐怖を抑え、身をひそめる女性たち。青春の時を過ごすはずだった行先は、多くの犠牲を出し今はどこにも存在しない国。身も心も傷を負った女性たちの声はかき消され、この事実は長年伏せられてきた。だが、黒川の女性たちは手を携えた。
したこと、されたこと、みてきたこと。幾重にも重なる加害の事実と、犠牲の史実を封印させないために――。
『ハマのドン』松原文枝監督最新作。



7/19(土)~
突然、君がいなくなって

© Compass Films , Halibut , Revolver Amsterdam , MP Filmska Produkcija , Eaux Vives Productions , Jour2Fête , The Party Film Sales
2024年/80分/アイスランド=オランダ=クロアチア=フランス/アイスランド語/配給:ビターズ・エンド/PG12
原題:Ljósbrot
英題:When the Light Breaks
監督・脚本:ルーナ・ルーナソン
撮影:ソフィア・オルソン(『サーミの血』「ザ・クラウン」)
音楽:ヨハン・ヨハンソン(『メッセージ』『博士と彼女のセオリー』)
出演:エリーン・ハットル、ミカエル・コーバー、カトラ・ニャルスドッティル、バルドゥル・エイナルソン、アゥグスト・ウィグム、グンナル・フラプン・クリスチャンソン
後援:アイスランド大使館
わたしを”秘密”にしたまま、恋人が死んだ。
レイキャビクの長い夏の1日。孤独を抱えた彼女が行きつく先は—。
暮れない夜に喪失がつなぐ“絆” についての物語。
美大生ウナには、大切な恋人ディッディがいる。しかし、二人の関係は秘密だ。彼には遠距離恋愛をしている長年の恋人、クララがいる。ある日ディッディはクララに別れを告げに行くと家を出た後、事故に巻き込まれ帰らぬ人となってしまう。誰にも真実を語ることができないまま、ひとり愛する人を失った悲しみを抱えるウナの前に、何も知らないクララが現れる――。クララを励ます仲間たちを見て、ウナの心は追い詰められていく。そんななか、クララはウナに対するある思いを打ち明けるのだった…。行き場のない気持ちに翻弄されるウナの姿、徐々に近づいていく“愛する人を失った”二人の距離、そして仲間の死を受け入れようと寄り添い合う若者たちの姿を、狂おしいほどの緊張感とかつてない繊細さで映し出す。
カンヌ国際映画祭ある視点部門オープニング上映の後、世界中の映画祭を席巻‼
『わたしは最悪。』『コンパートメントNo.6』に次ぐ北欧発の現代(いま)を描いた人間ドラマの傑作!
監督は、これまで3作の長編映画でカンヌ、サン・セバスティアン、ロカルノなど数々の国際映画祭の賞や招待を受け、短編映画「The Last Farm」ではアカデミー賞®にノミネートされるなど、世界的に注目を浴びるルーナ・ルーナソン。今作では誰もが経験しうる身近な人の不在、そして集団のなかでの個についての儚くも美しいつながりを、真っすぐに描き切る。24年カンヌ国際映画祭ある視点部門オープニング作品として上映されるや「凄まじく引きこまれる」「美しい」と絶賛の声が集まった。秘密を抱えた主人公ウナを演じるのは、映像、音楽作品で広く活躍するエリーン・ハットル。親密さをもった繊細且つ力強い演技で、25年ベルリン国際映画祭にてヨーロッパ・シューティングスター賞を受賞した。


7/19(土)~
犬の裁判

©BANDE À PART – ATELIER DE PRODUCTION – FRANCE 2 CINÉMA – RTS RADIO TÉLÉVISION SUISSE – SRG SSR – 2024
2024年/81分/スイス・フランス/配給:オンリー・ハーツ
原題:LE PROCES DU CHIEN
監督:レティシア・ドッシュ
脚本:レティシア・ドッシュ、アン=ソフィー・バイリー
出演:レティシア・ドッシュ、フランソワ・ダミアン、ジャン・パスカル・ザディ、アンヌ・ドルヴァル、コディ(犬)、マチュー・ドゥミ、アナベラ・モレイラ、ピエール・ドラドンシャン
字幕:東郷佑衣
【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,300円(税込)を当館受付にて発売中!特典:特製ポストカードをプレゼント!
彼は無罪か有罪か?
犬の罪を問う前代未聞の裁判が始まる
実話に基づいた傑作法廷コメディ
負け裁判ばかりで事務所から解雇寸前の弁護士アヴリルは、次の事件では必ず勝利を勝ち取ろうと決意する。そんなときある男から、かけがえのない伴侶で絶望的な状況にある犬コスモスの弁護を依頼される。アヴリルはどうしても見過ごせず、またも勝ち目のない犬を弁護するという不条理に飛び込んでしまう。犬の命がかかった裁判が、にぎやかにときにコミカルに展開する。人間と動物との関係に疑問を投げかける、実話に基づいた傑作法廷コメディ。



7/26(土)~
パフィンの小さな島

© 2023 Puffin Rock and The New Friends
2023年/80分/アイルランド・イギリス/配給:チャイルド・フィルム
原案:トム・ムーア、リリー・バーナード、ポール・ヤング
脚本:サラ・ダディ
監督:ジェレミー・パーセル
助監督:ロレイン・ローダン
後援:駐日アイルランド大使館
うまくいかなくても大丈夫。ずっとそばにいるよ。
やさしい友情につつまれて、きっとここがしあわせな“居場所”になる。
アイルランド西部の小さな島(トンガリ島)に暮らすパフィン(ニシツノメドリ)の女の子ウーナと弟のババ、仲間の動物たちが繰り広げる冒険と、友情の物語です。ある日、大きな嵐によって故郷を失った動物たちがトンガリ島に逃れてきます。パフィンの仲間の鳥であるエトピリカのイザベルは、新しい環境になじめず、なかなか友達を作ることができません。みんなに認めてもらいたくて、イザベルが誰にも相談せずにしたことが、思いもかけない結果を招いてしまいます。ウーナと仲間たちは、イザベルを助けることができるでしょうか。
世界中にファンを持つカートゥーン・サルーン最新作
本作は、アカデミー長編アニメ賞に4度ノミネートされたアイルランドのスタジオ、カートゥーン・サルーンが、幼い子供たちのために製作した人気TVシリーズをもとに、長編映画化した作品です。愛らしいキャラクターたち、耳に残る音楽、美しい自然描写と、スタジオの特徴を最大限に生かした本作は、本国ダブリンの映画館で一年にわたるロングランヒットとなるほど、多くの人に愛されています。
主人公は絶滅危惧種に指定されている海鳥パフィン(ニシツノメドリ)の女の子ウーナと弟のババ。世界遺産スケリグ・マイケル島などアイルランドの島々にインスパイアされたというトンガリ島を舞台に、愛らしい冒険が繰り広げられます。戦いなどの暴力を排し、行方不明のパフィンの卵を探すという一見シンプルな物語にみえて、自然保護、多様性、調和といった深いテーマが、美しい自然の中に描かれます。



7/26(土)~
舟に乗って逝く

©2023 Fractal Star Film Production Co., Ltd., Infinina Media Co., Ltd.
2023年/99分/中国/配給:ムヴィオラ、面白映画
原題:乘船而去
英語題:Gone with the Boat
監督・脚本・編集:チェン・シャオユー(陳小雨)
製作:ホアン・ファン(黄帆)
撮影:ホアン・イーチュアン(黄一川)
美術:ドン・シャオジェン(鄧曉珍)
出演:ゴー・ジャオメイ(葛兆美)、リウ・ダン(劉丹)、ウー・ジョウカイ(呉洲凱)
⼤丈夫。私たちは⽣きてゆく。
中国の水郷・江南地域。
葬ること葬られること、逝くこと行くことが幾重にも重なり描かれる家族の物語。
たくさんの運河があり、かつては舟が生活の要だった町・徳清。母は、昔、舟で嫁入りした。ここは、母がようやく見つけた自分の居場所。ある日その母に重い病気が見つかる。その治療を巡って、アメリカ人の夫と上海に暮らす長女と、旅のガイドをしながら風来坊のように暮らす弟の意見は食い違う。母、娘、息子、孫、彼らの周囲の家族たち。誰にも訪れる、葬る葬られる物語。
胸にしまった真実を描く脚本と目を瞠る映像
1994年生まれのチェン・シャオユー監督デビュー長編!
1994年生まれの若手監督、チェン・シャオユーが、自身の故郷・徳清で撮影。台湾のエドワード・ヤン監督を愛し、日本の小津安二郎監督に影響され、チベットの名匠ペマ・ツェテン監督に指導を受け、「真実」を描くことの大切さを本作に込めた。長女役のリウ・ダンは映画『人生って、素晴らしい/Viva La Vida』、ドラマ「開端-RESET」などで知られ、本作で金鶏奨助演女優賞に見事輝いた。



8/23(土)~
KNEECAP/ニーキャップ

© Kneecap Films Limited, Screen Market Research Limited t/a Wildcard and The British Film Institute 2024
2024年/105分/イギリス・アイルランド/配給:アンプラグド
原題:KNEECAP
監督・脚本:リッチ・ペピアット
製作:トレバー・バーニー、ジャック・ターリング
撮影:ライアン・カーナハン 音楽:マイケル・“マイキー・J”・アサンテ
出演:モウグリ・バップ、モ・カラ、DJプロヴィ、ジョシー・ウォーカー、マイケル・ファスビンダー
俺たちの言葉《プライド》を取り戻せ
アイルランドに実在する放送禁止ヒップホップ・トリオの半自伝的ドラマ
アイルランド語を守るための武器は《言葉と音楽》
ベルファストのアナーキーな3人組が立ち上がる!
母国語の復権を掲げてアイルランド語でラップをし、その過激な言動から「セックス・ピストルズ以来の物議を醸すヒップホップ・トリオ」と呼ばれるグループ、KNEECAP(ニーキャップ)。彼ら自身が主演し「アイルランド版”トレインスポッティング”」と評されている、ほぼ実話の物語がここに誕生。
舞台は北アイルランド、ベルファスト。父親から「アイルランド語は自由のための弾丸だ」という教育を受けながら共に育ったニーシャと友人のリーアム。ある夜、リーアムと音楽教師のJJがひょんなことから出会ったことをきっかけに、アイルランド語の歌詞による楽曲制作を開始。3人は「ニーキャップ」を結成し、楽曲を通じて母国語の権利を取り戻すべく活動していくのだが……。
2022年まで公用語として認められていなかったアイルランド語と、自分たちのアイデンティティのために闘う彼らの姿をエネルギッシュに描いた半自伝的物語。本国ではアイルランド語映画として初週動員歴代1位の大ヒットを記録。世界の映画祭でも大絶賛を受け、25の受賞と63のノミネートを果たした話題作。今年、世界最大級の音楽フェスであるコーチェラにも出演し、パワフルなパフォーマンスで音楽ファンの間でも注目が集まっているニーキャップが今夏、日本のスクリーンでも大暴れ!
*第97回アカデミー賞® 国際長編映画ショートリスト選出(アイルランド代表)
*第40回サンダンス国際映画祭 観客賞(NEXT部門)
*第27回英国インディペンデント映画賞 作品賞・新人脚本家賞・助演男優賞・キャスティング賞・編集賞・音楽賞・音楽監修賞
8/23(土)~
OKAは手ぶらでやってくる

Ⓒ2024 NPO映像記録/ウェストサイドプロダクツ
2024年/90分/日本/ドキュメンタリー/配給:ミカタ・エンタテインメント
監督・朗読:牧田敬祐
挿入歌:友部正人
制作:松林展也、小林洋一
脚本:牧田敬祐
撮影:吉本憲正、桜田純弘、梅本承平、鶴岡由貴
録音・編集:細川雅浩
MA:吉田一郎(スレダボ)、ガリレオクラブ
題字:糸田トコ
アニメーション:徳永尚和
バリアフリー字幕:COMプラニング
デザイン:塩山一志、押方泰彦
Web:Haising
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
製作:特定非営利活動法人映像記録、ウェストサイドプロダクツ
宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
売られる子どもをなくしたいと日本を飛び出した
「一人NGOのOKA」こと栗本英世のカンボジアでの苦闘の記録
東南アジアで「ひとりNGO」として活動し、2022年に71歳でこの世を去った栗本英世の人生を、生前の彼の映像や、関係者の証言でひも解く。人身売買や地雷の危険にさらされた人々を支援し、子どもの教育のため草葺きの寺子屋を立てるなど、各地を奔走した栗本。いつも一文なしで、手ぶらで現れることから、いつしか「OKA(カンボジア語でチャンスの意)」と呼ばれるようになった。何が彼をそこまで駆り立てたのか。彼が残したものとはーー?
監督は、主に近畿圏の民俗行事や芸能を記録し、市民活動やNGOを映像で支援するNPO映像も撮影してきた牧田敬祐。これまでに、大峯修験を記録した『峰入』(映文連アワード2017:部門優秀賞)、日中戦争時代の日本人反戦兵士を描いたドキュメンタリー映画『戦影』(2021)などを手がけてきた。
*東京ドキュメンタリー映画祭2024 長編部門コンペティション グランプリ受賞



8/23(土)~
囁きの河

2024年/108分/日本/配給:渋谷プロダクション
監督・脚本:大木一史
エグゼクティブプロデューサー:青木辰司
音楽:二宮玲子
撮影監督:山中将希
録音:森下怜二郎
出演:中原丈雄、清水美砂、三浦浩一、渡辺裕太、篠崎彩奈、カジ、輝有子、木口耀、宮﨑三枝、永田政司、堀尾嘉恵、福永和子、白砂昌一、足達英明、寺田路恵、不破万作、宮崎美子
巻き戻しができない1回きりの人生、無理をしなきゃいけない時がある
令和2年7月豪雨の被災地である熊本県球磨川を舞台に、失くした居場所を自分で取り戻すまでを描く
熊本豪雨から3か月目のある日、母の訃報を聞いた今西孝之は、22年ぶりに故郷の町に足を踏み入れた。山が削られ、多くの家屋が流されて、川の地形まですっかり変わり果てていた。孝之は、故郷を離れて以来会う事のなかった息子の文則と再会する。だが、文則はかつて幼い自分を見捨てた父に心を開こうとはしなかった。文則は、球磨川下りの船頭になるための修業に励んでいたが、水害後航行不能となった球磨川下りの再開の目処は、たっていなかった。孝之たちの家の対岸に、老舗旅館「人吉三日月荘」が建っている。旅館の主、山科宏一は、孝之の幼馴染であり、女将の雪子は、孝之のかつての恋人である。帰還を機に、夫婦との交流が再開した。水害の時、旅館の建物が半壊してしまった。さらに宏一の父は、その最中に溺死しまう。この出来事によって宏一は、大きなトラウマを抱えることになる。なんとか旅館を再生しようとする雪子と、旅館を畳んでしまいたいと思う宏一との間に、心の溝が生まれる。水害を機に多くの人々が、進むべき道筋を見失い混乱していた。孝之は、先ずは荒れ果てた田畑の開墾に乗り出した。水害を受けた土を耕すことに次第に、深い生きがいを感じるようになった。雪子も、宏一を何とか説得して、旅館再生に向けての道を歩み始めていた。だが、河と共に生きようとする人々に、次々と試練が訪れる。彼らの復興への歩みは閉ざされてしまうのであろうか。彼らは、どのような決断をするのであろうか。球磨川の水が、逆巻くように流れて行く。
