近日上映作品

12/27(土)~

さようなら昭和百年

さようなら昭和百年

さようなら昭和百年

闘う人々は美しい

2025/12/27(土)-2026/1/9(金)

さようなら昭和百年

闘う人々は美しい

2025/12/27(土)-2026/1/9(金)

昭和といえば娯楽映画の宝庫であり、楽しく優れた映画が数多く作られて来ました。
一方で、昭和といえば戦争の時代があり、多くの戦争映画も作られました。そして戦後民主主義の中で、労働者や市井の人々が権力に抗う映画もすばらしい映画がたくさん誕生しました。闘う人々の映画になぜこうも人は心動かされるのでしょうか。昭和を代表する監督たちの作品を上映することで、私たちを奮い立たせる闘う映画の持つ力に迫ります。

協力 アテネフランセ文化センター、映画美学校、KADOKAWA、近代映画協会、神戸映画資料館、独立プロ名画保存会、日活、北星映画、「山谷」制作上映委員会

入場料一般1,600円/会員・大専・シニア1,300円/ハンディ1,000円/高校生以下800円

トークイベント
1/4(日)16:10『山谷やられたらやりかえせ』上映後、小見憲さん(「山谷」制作上映委員会)
佐藤満夫監督と映画を引き継いだ山岡強一監督。お二人亡き後、撮影現場とあの時代のことを知る「こみけんさん」こと、小見憲さんにお話いただきます。

上映スケジュール

12/27(土) 12/28(日) 12/29(月) 12/30(火) 12/31(水) 1/1(木) 1/2(金)
にあんちゃん11:50ー13:31
にあんちゃん
裸の島11:50ー13:30
裸の島
証人の椅子11:50ー13:35
証人の椅子
ニッポン国古屋敷村11:50ー15:30
ニッポン国古屋敷村
どっこい!人間節 寿・自由労働者の街11:50ー13:51
どっこい!人間節 寿・自由労働者の街
襤褸の旗11:50ー13:45
襤褸の旗
蟹工船13:45ー15:40
蟹工船
襤褸の旗13:45ー15:40
襤褸の旗
泥の河13:50ー15:40
泥の河
山谷やられたらやりかえせ14:00ー15:50
山谷やられたらやりかえせ
にあんちゃん14:00ー15:41
にあんちゃん

予定表 横にスクロールできます

1/3(土) 1/4(日) 1/5(月) 1/6(火) 1/7(水) 1/8(木) 1/9(金)
橋のない川 第一部13:55ー16:05
橋のない川 第一部
どっこい!人間節 寿・自由労働者の街13:55ー16:00
どっこい!人間節 寿・自由労働者の街
蟹工船13:55ー15:47
蟹工船
襤褸の旗13:55ー15:50
襤褸の旗
ニッポン国古屋敷村13:55ー17:45
ニッポン国古屋敷村
証人の椅子13:55ー15:38
証人の椅子
橋のない川 第一部13:55ー16:05
橋のない川 第一部
橋のない川 第二部16:20ー18:40
橋のない川 第二部
山谷やられたらやりかえせ16:10ー18:00
山谷やられたらやりかえせ
上映後トーク
小見憲さん
泥の河16:00ー17:45
泥の河
裸の島16:05ー17:45
裸の島
泥の河17:55ー19:40
泥の河
どっこい!人間節 寿・自由労働者の街15:50ー17:51
どっこい!人間節 寿・自由労働者の街
橋のない川 第二部16:20ー18:40
橋のない川 第二部
証人の椅子18:00ー19:43
証人の椅子
にあんちゃん18:00ー19:41
にあんちゃん
山谷やられたらやりかえせ18:00ー19:50
山谷やられたらやりかえせ

予定表 横にスクロールできます

作品紹介

蟹工船

蟹工船

©北星

1953年/日本/112分/モノクロ/35mm/製作:現代ぷろだくしょん/作品提供:北星映画
監督・脚本:山村聰
原作:小林多喜二
撮影:宮島義勇、仲沢半次郎
音楽:伊福部昭
出演:山村聰、日高澄子、森雅之、河野秋武、森川信、平田未喜三、中原早苗

小林多喜二によるプロレタリア文学の名作小説を、山村聰が初監督。昭和初年、不況で仕事にあぶれた労働者や農夫たちが続々と函館港に集まっていた。彼らが乗り込むのは船内に加工設備を持つ蟹工船の博光丸。嵐の中で病人が続出するが、監督の浅川は労働者の体より作業を優先させる。ついに乗組員たちは仕事をボイコットし、監督に要求書を叩きつけるが…。

にあんちゃん

にあんちゃん

©1959日活

1959年/日本/101分/モノクロ/35mm/配給:日活
監督:今村昌平
原作:安本末子
脚本:池田一朗、今村昌平
撮影:姫田真佐久
音楽:黛敏郎
出演:長門裕之、吉行和子、二谷英明、松尾嘉代、沖村武、前田暁子、北林谷栄、芦田伸介

空前のベストセラーとなった十才の少女の日記を映画化。昭和28年、佐賀県の小さな炭鉱で炭鉱夫が息を引き取った。残された四人の子供たちは父に死なれた悲しみよりも、明日からの生活への不安がつのった。20才になったばかりの長男喜一が小さな弟や妹たちを養ってゆくなど無理な話だが…。貧しさに負けず、明るく逞しく生きる兄弟愛を描いた感動巨篇。

裸の島

裸の島

©近代映画協会

1960年/日本/98分/モノクロ/35mm/製作:近代映画協会
監督・脚本:新藤兼人
撮影:黒田清巳
音楽:林光
編集:榎寿雄
出演:乙羽信子、殿山泰司、田中伸二、堀本正紀

瀬戸内海の孤島に住む夫婦と幼い兄弟の家族は、日々、痩せた土地を耕し、舟で水を汲みに行き、急斜面を登って運ぶ。夫婦の懸命な努力で、なぎさから頂上まで耕されている。ある暑い日の午後、突然長男が発病した。孤島へ医者が駈けつけた時、太郎はもう死んでいた。限られた登場人物と台詞を一切排除した野心作。製作スタッフ僅か13人で作られた。

*第2回モスクワ国際映画祭グランプリ

証人の椅子

証人の椅子

©KADOKAWA1965

1965年/日本/103分/35mm/配給:KADOKAWA
監督:山本薩夫
原作:開高健
脚本:井手雅人
撮影:上村竜一
音楽:池野成
出演:福田豊土、吉行和子、新田昌玄、奈良岡朋子、樋浦勉、寺田誠、日色ともゑ

ある寒い夜明け、徳島のラジオ店主が殺害される事件が起きた。捜査が難航する中、住み込みの店員だった少年の証言で、被害者の内縁の妻・洋子が逮捕された。彼女は無実を主張するも有罪判決が下されるが、数年後ラジオ商殺しの犯人だと名乗る男が現れた。昭和28年に実際に起きた事件を題材に、冤罪疑惑を広く世に訴えた、監督入魂の一作。

橋のない川 第一部

橋のない川 第一部

©独立プロ名画保存会

1969年/日本/127分/モノクロ/35mm/製作:ほるぷ映画/作品提供:独立プロ名画保存会
監督:今井正
原作:住井すゑ
脚本:八木保太郎
撮影:中尾駿一郎
音楽:間宮芳生
出演:北林谷栄、長山藍子、伊藤雄之助、小沢昭一、寺田路恵、阿部寿美子

奈良盆地の一角にある小森という被差別部落で、誠太郎、孝二の兄弟は、祖母と母に温かく見守られ育てられていた。彼らを取り巻く差別する側の生徒、学校の理不尽。どんな場でも祖母は、どんなことにも屈せず、賢く、人間らしく生きることを身を持って教えていく。部落問題というタブーに挑んだ住井すゑのベストセラーの映画化。北林谷栄が演ずる祖母役が秀逸。

橋のない川 第二部

橋のない川 第二部

©独立プロ名画保存会

1970年/日本/140分/モノクロ/35mm/製作:ほるぷ映画/作品提供:独立プロ名画保存会
監督:今井正
原作:住井すゑ
脚本:佐治乾、今井正
撮影:中尾駿一郎
音楽:間宮芳生
出演:伊藤雄之助、北林谷栄、長山藍子、阿部寿美子、小沢昭一、原田大二郎、津田京子

誠太郎、孝二は社会人として働き始めるが、孝二は出身が分かる度に解雇される。教師として働く幼馴染まちえと再会した孝二は、彼女に差別による苦しい胸の内を明かす。米騒動が大阪でも起き、小森出身の者も捕まっていく。自立への道を歩み始めた部落の人々の長く苦しい生き様を描く。底流には監督自身の理不尽な社会を打ち砕きたいという情熱が流れている。

襤褸らんるの旗

襤褸の旗

1974年/日本/115分/モノクロ/35mm/製作:映画「襤褸の旗」製作委員会/作品提供:神戸映画資料館
監督:吉村公三郎
脚本:宮本研
撮影:宮島義勇、関根重行
出演:三国連太郎、荒木道子、田村亮、志村喬

明治時代の栃木・群馬の渡良瀬川周辺で起きた足尾銅山の公害事件「足尾鉱毒事件」に材をとった作品。農民の苦しみを体感し公害と環境破壊に対して闘った田中正造代議士の半生を描いた本格的な劇映画で、実際に臭い土を食べるなど三国連太郎の熱演が語り草となっている。三里塚の農民と支援の労働者・学生が大挙出演協力したことでも知られる。

どっこい!人間節 寿・自由労働者の街

どっこい!人間節 寿・自由労働者の街

©映画美学校

1975年/日本/121分/モノクロ/16mm⇒DVD/製作:小川プロダクション/作品提供:映画美学校
構成:小川紳介
製作:伏屋博雄、白石洋子、朝日節子、飯塚俊男、福田克彦、林鉄次
撮影:奥村祐治(J・S・C)
録音:久保田幸雄
編集:小川紳介、田處苗樹、湯本希生

山谷、釜ケ崎とならんで日本三大寄せ場の一つ横浜・寿町。90軒の簡易宿泊所が密集し、5000人前後の人々が暮らす。小川プロの若手スタッフが約10カ月住みこみ、19時間ものフィルムを回した。スクリーンには、寿町の人々が次々と登場し、自分たちの過去を語り、未来への希望を語る。そして、そのうちのある者は、映画の完成を待たずに死んでしまうのである。

泥の河

泥の河

©小栗康平事務所

1981年/日本/105分/モノクロ/35mm/製作:木村プロダクション/作品提供:小栗康平事務所
監督:小栗康平
原作:宮本輝
脚本:重森孝子
撮影:安藤庄平
音楽:毛利蔵人
出演:田村高廣、藤田弓子、朝原靖貴、加賀まりこ

宮本輝の処女作を原作に、大阪安治川河口を舞台に、河っぷちの食堂に住む少年と、対岸に繋がれた廓舟の姉弟との出会いと別れを描く。自主製作、自主公開という小さな取り組みから始まり、欧米はもとより旧ソ連邦、中国やアジア諸国にまでその配給をひろげ、製作から40年以上経た今日でも、名作として語り継がれている小栗康平監督のデビュー作。

ニッポン国古屋敷村

ニッポン国古屋敷村

©映画美学校

1982年/日本/213分/カラー/16mm⇒DVD/製作:小川プロダクション/作品提供:映画美学校
監督・編集:小川紳介
製作:伏屋博雄
撮影:田村正毅
録音:菊池信之
音楽:関一郎
詩:木村迪夫

山形県上山市の蔵王山中に入った、戸数わずか8軒の古屋敷村とその住人たち。冷害による稲作被害の原因を科学的に究明する前半から、かつて盛んだった炭焼きと戦争体験などについて老人たちが個人史を語る後半まで、ひとつの共同体を舞台にしてニッポン国の歴史絵巻が展開する。小川紳介監督とスタッフは自ら農業を営み被写体と関係を築き上げていく。

*ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞受賞作

山谷やまやられたらやりかえせ

山谷やられたらやりかえせ

写真提供 大島俊一

1985年/日本/110分/カラー/16mm⇒Blu-ray/「山谷」制作上映委員会
監督:佐藤満夫、山岡強一
ナレーション:城之内元晴
音楽:蠱的態(大熊ワタル、篠田昌已ほか)

映画の冒頭は、山谷の路上に倒れた、微かにまだ息のある佐藤満夫監督自身の姿からはじまる。山谷労働者の姿を正面から撮影するドキュメンタリー映画制作に取りかかろうとしていた佐藤監督は、1984年12月22日早朝、日本国粋会金町一家西戸組組員の凶刃に斃れる。これは通例、物語の終了を意味するが、この映画では、むしろ物語の始まりとなっている。

12/27(土)~

蘭島行

蘭島行

©KAMADA FILM

2024年/日本/84分/配給:鎌田フィルム
監督:鎌田義孝
脚本:中野太、鎌田義孝
音楽:山田勳生
撮影:新宮英生、田宮健彦
編集:中村和樹
出演:木村知貴、輝有子、足立智充、竹江維子、大橋哲郎、磯貝圭子、松橋勝巳、山野久治

公式ホームページ

【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,600円(税込)を当館受付にて発売中!

北緯四十三度 さまよう

東京に住む売れないパンクロッカーの佐々木芳夫(木村知貴)は、母が自殺を図ったという連絡を受けた。芳夫は妻のふりを頼んだ黒沢真紀(輝有子)を連れて、生まれ故郷の北海道蘭島に駆けつける。エリート建築デザイナーの弟・悟史(足立智充)を加えた3人は、母が目を覚ますまで奇妙な時間を過ごす。芳夫は母の日記に、「死んだら父の遺骨と一緒に海に散骨してほしい」と書いてあるのを目にした。母の願いを悟史にも告げ、芳夫たち3人は母の散骨場所を探しに出かけるが・・・。

人生の悲哀と明日へのかすかな希望が織りなす帰郷譚

本作は、運に見放されたパンクロッカーとその妻のふりをする天涯孤独の女、そして何年も会っていなかった弟との数日間を描く人間ドラマ。
監督は、『YUMENO ユメノ』『TOCKA [タスカー]』に続く、長編三作目となる鎌田義孝。前二作品と同様に本作も北海道で撮影、小樽市近郊の蘭島をロケ地に選んだ。音楽は山田勳生(『EUREKA』『はるねこ』)、共同脚本を中野太(『二人静か』『蒲団』)が担っている。
2025年2月に開催された世界三大ファンタスティック映画祭のひとつ、ポルト国際映画祭に出品され、監督週間部門コンペティションで主演男優賞(木村知貴)を受賞。ポルトガルの人々の心を魅了した。


蘭島行 蘭島行 蘭島行

1/3(土)~

手に魂を込め、歩いてみれば

手に魂を込め、歩いてみれば

©Sepideh Farsi Reves d’Eau Productions

2025年/フランス・パレスチナ・イラン/113分/配給:ユナイテッドピープル
監督:セピデ・ファルシ
プロデューサー:ジャヴァド・ジャヴァエリー
制作:Rêves d‘Eau Pro
登場人物:セピデ・ファルシ、ファトマ・ハッスーナ

公式ホームページ

廃墟のガザで撮影を続けるフォトジャーナリストと彼女を見守るイラン人監督―
1年にわたるビデオ通話で紡がれた 比類なきドキュメンタリー

イスラエルによるガザ攻撃が続いていた2024年、イラン出⾝の映画監督セピデ・ファルシは、緊急に現地の⼈々の声を届ける必要性を感じていた。しかし、ガザは封鎖されており⾏くことは出来ない。そこで、知り合ったガザ北部に暮らす24歳のパレスチナ⼈フォトジャーナリスト、ファトマ・ハッスーナとのビデオ通話を中⼼とした映画の制作を決意する。
以後、イランからフランスに亡命したため祖国に戻れない監督と、監督の娘と同じ年齢で、ガザから出られないファトマとのビデオ通話が毎⽇のように続けられた。そして、ファトマは監督にとってガザを知る⽬となり、監督はファトマが外の世界とつながる 架け橋となり、絆を築いていく。

ファトマは空爆、饑餓や不安にさらされながらも⼒強く⽣きる市⺠の姿や、街の僅かな輝きを写真に収め、スマホ越しにガザの様⼦を伝え続けた。監督が「彼⼥は太陽のような存在」と形容するように、彼⼥はいつも明るかったが、度重なる爆撃で家族や友⼈が殺されていくにつれ、表情を暗くしていく。そして悲劇はファトマをも襲う。2⼈が交流を始めて約1年後の2025年4⽉15⽇、本作のカンヌ映画祭上映決定の知らせを、ファトマは喜んだが、その翌⽇、イスラエル軍の空爆でファトマを含む家族7⼈が殺されてしまったのだ。

25歳になったばかりのファトマの死は、本⼈が「もし死ぬのなら、響き渡る死を望む」と書いたように、世界中に波紋を広げることになる。


手に魂を込め、歩いてみれば

©Sepideh Farsi Reves d’Eau Productions

手に魂を込め、歩いてみれば

©Fatma Hassona

手に魂を込め、歩いてみれば

©Sepideh Farsi Reves d’Eau Productions

1/9(金)~

CROSSING 心の交差点

©2023 French Quarter Film AB, Adomeit Film ApS, Easy Riders Films, RMV Film AB, Sveriges Television AB

2024年/スウェーデン・デンマーク・フランス・トルコ・ジョージア/ジョージア語・トルコ語・英語/106分/カラー/16:9/5.1ch/配給:ミモザフィルムズ
原題:Crossing
監督・脚本:レヴァン・アキン
出演:ムジア・アラブリ、ル-カス・カンカヴァ、デニズ・ドゥマンリ
字幕:横井和子
後援:スウェーデン大使館、デンマーク大使館

公式ホームページ

出会いと別れが交錯する街、イスタンブールで紡がれる、過去と未来をつなぐ心の旅
『ダンサー そして私たちは踊った』レヴァン・アキン監督最新作

ジョージアに暮らす元教師のリアは、行方不明になったトランスジェンダーの姪、テクラを探すため、テクラを知るという青年アチとともに、トルコ・イスタンブールへと旅立つ。しかし行方をくらませたテクラを見つけ出すのは想像以上に困難だった。やがてリアは、トランスジェンダーの権利のために闘う弁護士、エヴリムと出会い、彼女の助けを借りることに。なぜテクラはジョージアを離れたのか。東西の文化が溶け合うイスタンブールを舞台に、テクラを探す旅を通して、リア、アチ、エヴリム、3人の心の距離が、少しずつ近づいていく——。

監督・脚本を手がけたのは、前作『ダンサー そして私たちは踊った』(19)で、第92回アカデミー賞国際長編映画賞のスウェーデン代表に選出されるなど国際的に高い評価を受けた、レヴァン・アキン。階級やジェンダー、セクシュアリティといったテーマを一貫して探求してきたアキン監督は、本作『CROSSING 心の交差点』の制作にあたり、ジョージアのトランスジェンダーの少女と、彼女を支え続けた祖父との実話に着想を得、綿密なリサーチを重ねて、イスタンブールのトランスコミュニティを描き出した。エヴリム役には、実際にトランス女性であるデニズ・ドゥマンリを起用し、現地のクィアコミュニティからスタッフを迎え入れるなど、制作の姿勢にもリスペクトが込められている。
言葉も世代も文化的背景も異なる人々が、ときにすれ違いながらも、互いを分かり合おうと寄り添う姿を静かにあたたかく描き出した本作は、第74回ベルリン国際映画祭で、LGBTQ+をテーマにした作品に贈られる最も歴史のある映画賞であるテディ賞の審査員特別賞を受賞。映画批評サイトRotten Tomatoesでは、批評家たちから97%という高い支持を得た。


1/10(土)~

佐藤忠男、映画の旅

佐藤忠男、映画の旅

©GROUP GENDAI FILMS CO., LTD.

2025年/日本/98分/製作・配給:グループ現代
監督:寺崎みずほ
撮影:大久保千津奈(JSC)
録音:姫井信二
編集:遠山慎二
プロデューサー:川井田博幸
出演:佐藤忠男、秦早穗子、イム・グォンテク、シャージ・N・カルン ほか

公式ホームページ

【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,300円(税込)を当館受付にて発売中!特典:しおりをプレゼント!

イベント情報
1/12(月祝)上映後、寺崎みずほ監督の舞台挨拶がございます。

映画評論家、佐藤忠男、
「映画」で世界を変えようとした男がいた――
日本で初めて、ひとりの映画評論家に迫った
ドキュメンタリーが誕生

日本を代表する映画評論家、佐藤忠男。独学で映画評論の道を拓き、70年にわたる評論家人生で日本映画史を体系化した功績、そして後年、ライフワークとしてアジア映画を発掘し、日本に先駆的に紹介した功績から、映画評論家として初めて文化功労者に選出された第一人者として知られる。また、アジアとの映画交流や後進の育成にも尽力し、韓国、フランス、モンゴル、ベトナムなどからも勲章を授与した唯一無二の存在である。庶民の目線から多岐に論じ、150冊を超す著作を有する映画評論の巨人をアジアへと突き動かすものは果たして何だったのか?2022年3月に91歳で逝去した佐藤忠男の映画人生を探るドキュメンタリー。

佐藤が学長を務めた日本映画学校(現日本映画大学)で教え子であった寺崎みずほが、カメラを手に2019年より密着。少年期の戦争経験、映画を通して受けたカルチャーショック、映画への憧れ、映画人生の長い道のりをともに歩いた最愛の妻・久子との出会い。そして1万本を優に超す映画を鑑賞した彼が「小津安二郎監督の『東京物語』と比肩するくらい、世界で一番好きな映画」と言い残した1本のインド映画『魔法使いのおじいさん』(G.アラヴィンダン監督)への想い……生前のインタビューや世界の映画関係者の証言から人物像を紐解くとともに、佐藤の“たからもの”を探しに、日本各地からアジアへと旅に出た。生涯、一途に映画を愛し続けた映画の伝道師が私たちに残したメッセージとは?日本で初めて、ひとりの映画評論家に迫ったドキュメンタリーが誕生した。


佐藤忠男、映画の旅 佐藤忠男、映画の旅 佐藤忠男、映画の旅

1/10(土)-1/23(金)

野田真吉特集 ゆきははなである

野田真吉特集

人々の暮らし、神々の宴

野田真吉特集

ゆきははなである

1/10(土)-1/23(金)

人々の暮らし、神々の宴

野田真吉特集

ゆきははなである

1/10(土)-1/23(金)

神事、暮らし、自然、経済活動、社会運動、科学…
縦横無尽、変幻自在の映画作家・野田真吉の視線はとどまらない

大学在学中に中原中也に師事し詩作に勤しんだ野田真吉は、卒業後の1937年にP.C.L映画製作所に入社。その後東宝文化映画部に所属し、農村の記録映画などを撮るが、戦争によって活動を休止し従軍する。敗戦後、復職し児童映画などを手掛けるが、東宝争議を闘い、退社。フリーになってからは、社会運動を記録し、企業・産業PR映画や実験映画を作り、松本俊夫らと新しい映画とその方法を唱え、芸術運動に関わっていった。1970年代以降は、以前から興味を持っていた民俗文化の映像化に本格的に取り組み、歴史的社会的に培われてきた日本人の意識構造の深部を映し出そうとした。

ハレとケ、生と死、私たちの根底に脈々とながれる不変のリズムを8作品4プログラムで刻む

あらゆるものが変貌を遂げた現代においても、人々はなぜ古来より続く神事に心惹かれるのか。なぜ自然とともにある暮らしに関心を持つのか。本特集では、野田が記録した多種多様な事象の中から、かつての人々の暮らしと祭りの姿を取り上げ、私たちの根底に流れる不変のリズムを探求する。
ドキュメンタリー作家として20世紀の日本人を見つめ、独自の理念と手法で解き明かそうとした野田真吉の映像世界の幕が開く。

野田真吉

野田 真吉 Noda Shinkichi

1913年愛媛県八幡浜市生まれ。父親は南宗派の画家・野田青石。早稲田大学仏文科在学中、中原中也に師事し、詩作を始める。1937年に卒業し、P.C.L.(同年に東宝映画に改組)に入社し文化映画部に配属。亀井文夫らと出会う。『郵便従業員』(1939)で監督デビュー。1941年に二度目の召集を受け、敗戦まで陸軍に所属。 戦後、東宝争議を闘い、退社。
1952年からフリーとして活動を開始し、産業PR映画、社会派記録映画、実験映画など様々な作品を手がける。この時期に、青森の末端の村に住む人々の営みを記録したドキュメンタリー映画『忘れられた土地 生活の記録シリーズ II』(1958)や、ミクロの世界に壮大なドラマを見出したPR映画『マリン・スノー 石油の起源』(1960)などの作家性溢れる代表作を制作。一方で、大島渚、吉田喜重らの「映画批評の会」、安部公房、島尾敏雄らの「現在の会」など、さまざまな集団に関わり芸術活動を行う。1955年には「教育映画作家協会」(のちの「記録映画作家協会」)を組織し、1964年には松本俊夫、土本典昭、黒木和雄、東陽一、小川紳介らと「映像芸術の会」を結成。機関誌の編集に携わり精力的に映画評論を執筆。『まだ見ぬ街』(1963)以降、自主製作映画を手がけるようになる。また日本テレビで放映された「ノンフィクション劇場」や「すばらしい世界旅行」など、ドキュメンタリー番組の制作にも携わる。1967年、佐々木基一らと杉並シネクラブを設立、自主上映活動にも取り組む。 1970年『冬の夜の神々の宴 遠山の霜月祭』を制作。以降は民俗映像に強い興味を持ち、近代化により消滅の危機に陥った祭りや伝統芸能、民俗行事を記録することに情熱を注いだ。 1978年、映像作家の北村皆雄、民俗学者の野口武徳、宮田登とともに「日本映像民俗学の会」を創設。
著書として、「日本ドキュメンタリー映画全史」(1984)、「ある映画作家 フィルモグラフィ的自伝風な覚え書」(1988)、「中原中也 わが青春の漂泊」(1988)、「映像 黄昏を暁と呼びうるか」(1991)がある。また1978年に第一詩集「奈落転々」、1982年に第二詩集「暗愚唱歌」を出版。 1993年、80歳で没。

公式サイト https://www.gnome15.com/noda-shinkichi/

企画・配給 ノーム

協力 亘純吉、資料映像バンク、神戸映画資料館、田中晋平、新日本映画社

入場料一般1,900円/会員・大専・シニア1,300円/高校生以下800円

作品紹介

Aプログラム

谷間の少女

谷間の少女

1949年/モノクロ/49分
演出:野田真吉
撮影:浦島進
音楽:古関裕而
原作:白柳美彦
製作:湯原甫、米山彊
出演:岡村道子、浜村純、木下ゆづ子、亘幸子

山村の厳しい生活の中で、逞しく生きる子供たちのリアルな姿が輝きを放つ、児童映画の名作

栃木県湯西川の山村。山奥で炭焼を生業とする家の娘キサは村の学校に入る。学校までは険しい谷を越えなければならないが、キサは勉強も学友との交流も全てを楽しみ、学校生活を謳歌する。だが、ある日、火事で炭焼小屋が焼失し、キサは両親を手伝うため学校に行けなくなってしまう。それを知った友人たちは団結して復旧を手伝うことに。撮影先の湯西川の子供たちが出演し、衣装も現地調達で制作された。

農村住宅改善

農村住宅改善

1941年/モノクロ/20分(戦後公開版)
監督:野田真吉
撮影:福田三郎
編集:山田耕造
音楽:服部良一
監修:竹内芳太郎

「考現学」の祖、建築学者の今和次郎らによる東北農村住宅の実態調査を記録した貴重なドキュメンタリー

1940年、民家研究者でもあった建築学者の今和次郎らが「住宅は生活の容器である」という視点から東北一円の農村住宅の実態を調査した。その調査隊に随行し、苛酷な自然環境の中にある民家の実態を記録し、農村の生活改善の必要性を説いた作品。今回のバージョンは35分程度のオリジナル版を短縮し戦後公開したもの(オリジナル版は現存しない)。戦前の家の様子が克明に記録されており、資料としても貴重な作品。

Bプログラム

機関車小僧

機関車小僧

1950年/モノクロ/45分
演出:野田真吉
脚本:野田真吉、内山義重
撮影:浦島進
音楽:大木正夫
製作:米山彊
出演:二口信一、亘幸子、大町文夫、原緋紗子、河村弘二

田園を走る蒸気機関車と機関士に憧れる少年。厳しい生活の中でも子供たちの未来に希望を込めた、野田的ネオレアリズモ作品

戦争で両親を亡くした小学6年生の明は、叔父夫婦の元で暮らしている。父と同じ機関士になることを夢みる明は機関士が力のいる仕事だと知るが、友人が持ち上げた大きな石を持ち上げられない。それでもあきらめない明は休暇で里帰りした姉に相談し、姉は応援を約束してくれる。姉が去る日、土産を渡そうと山に入った明に試練が…。野田は子供の視点に立ったリアリズムを追求しながら、子供たちの未来に希望を込めた。

忘れられた土地 生活の記録シリーズ II

忘れられた土地 生活の記録シリーズ II

1958年/モノクロ/30分
演出・脚本:野田真吉
撮影:高橋佑次
録音:大橋鉄矢
音楽:間宮芳生
解説:高島陽

高度経済成長の陰で取り残された人々の過酷な暮らし。観察者であろうとする野田の心の震えが滲み出た伝説の記録映画

下北半島のほぼ北東端、アイヌ語で“行き止まり”の意味を持つ尻労(しつかり)地区。人々は漁業と農業で生計を立てている。男は昔ながらの磯船の漁を続けているが、岩手から来る大謀網の漁船に為す術がない。女は日暮れまで田畑を耕している。親に代わり年長の子供が弟妹の面倒を見ている。観察者であろうとした野田が感情を抑えきれなかった過酷な環境。高度経済成長期の一つの現実を記録した野田の代表作の一つ。

Cプログラム

異形異類の面掛行列

異形異類の面掛行列

1988年/カラー/18分
監督・構成・製作:野田真吉
撮影:田中茂、高坂政孝
録音:井上洋右、大塚正之

異形異類の面掛10人衆が軽快なお囃子に合わせて練り歩く鎌倉の御霊神社の祭礼「面掛行列」を、実験的な構成で見せる記録映画

面掛行列は鎌倉の御霊神社で行われる祭礼。奈良時代から伝わる伎楽の面や田楽の面をつけた10人衆が御霊神社から極楽寺の坂までを練り歩き、豊作・豊漁を祈願する。野田は1972年に神奈川ニュース映画協会の依頼で祭礼を撮影し、後にフィルムをもらい受けて私家版として本作を完成させた。前半は面掛行列をダイナミックに映し、後半は展示のように面を紹介するという、動と静を対比させた構成が実験的な記録映画。

冬の夜の神々の宴 遠山の霜月祭

冬の夜の神々の宴 遠山の霜月祭

1970年/モノクロ/37分
監督・編集・制作:野田真吉
撮影:長谷川元吉
撮影助手:亘真幸
録音:野田純
製作協力:大野耕司、松川八洲雄、岩佐寿枝、北村皆雄、一杉陽子、長野県下伊那郡上村下栗

信州遠山郷の神事「霜月まつり」。全国の神々を召喚し、怨霊を慰め一年の安寧を願う一夜の祭りを幻想的に映し出した、異色の記録映画

長野県飯田市遠山郷の「霜月まつり」。一年で日が最も短い冬至(旧暦の11月/霜月)に全国の神々を招き入れ、生命力の甦りを願う。夜を徹して行われる湯立神楽で、沸き立つ湯けむりの中、仮面をまとった神々や死霊の化身が舞う。この神事には一揆で滅ぼされた領主・遠山一族の怨霊を慰め祀る舞が組みこまれている。野田は説明を極力排して旅人のような眼で祭りを追い、神々が集う一夜を夢幻のように描き出した。

生者と死者のかよい路 新野の盆おどり 神送りの行事

生者と死者のかよい路 新野の盆おどり 神送りの行事

1991年/カラー/36分
監督・構成・製作:野田真吉
撮影:亘真幸、大塚正之、岩崎充利、小川克己
録音:井上洋右
現地録音:菊地進平、大塚正之
製作協力:オフィスMAP
協力:新野高原踊りの会

3日間、町全体で夜通し踊り続ける「新野の盆踊り」。山間の集落で長い歴史をもつ伝統行事の心意をとらえたドキュメンタリー

長野県阿南町新野で盆に開催される「新野の盆踊り」。夜を徹した盆踊りで生者と死者が交歓する。踊り続けた三夜が明ける早朝、神送りが行われる。名残を惜しむ人々に道を阻まれながら運ばれた切子燈籠が燃やされ、盆に迎えた祖霊が東の空へと送リ出される。人々は振り返らずに「秋唄」を歌いながら家路につく。『ゆきははなである』を完成させた野田が5年に渡り新野に通って作り上げた、民俗神事芸能記録の集大成。

Dプログラム

ゆきははなである 新野の雪まつり

ゆきははなである 新野の雪まつり

1980年/カラー/129分
演出・編集・制作:野田真吉
撮影:亘真幸
音響:井上洋右
タイトル:城所昌夫
ナレーター:高島陽
制作協力:大野耕司、大塚正之、小川克己、岩佐寿枝、亘知也

仮面仮装の神々がくり返し現れる「新野の雪まつり」。中世からつづく人々の心意を、祭りの中に見出そうとした記録。

長野県阿南町新野の伊豆神社と諏訪社を中心に13世紀頃から続く「新野の雪まつり」の記録。冬に舞い落ちる雪を稲穂の花に見立て、実りの先触れとして五穀豊穣を願う。夜を徹して行われる祭では「きょうまん(競馬)」「翁」などの仮面仮装の芸能が次々と行われ、実りをもたらす精霊「さいほう」の登場に場が沸き立つ。来る一年の生産に向けた農民の日常(ケ)の願いを、ハレの祭りの中に読み取ろうとした作品。

1/17(土)~

白の花実

白の花実

©2025 BITTERS END/CHIAROSCURO

2025年/日本/110分/配給:ビターズ・エンド
英題::White Flowers and Fruits
監督・脚本・編集:坂本悠花里
プロデューサー:山本晃久
音楽:フジモト ヨシタカ
脚本協力:田中幸子、大江崇允
撮影:渡邉寿岳
出演:美絽、池端杏慈、蒼戸虹子、河井青葉、岩瀬亮、山村崇子、永野宗典、田中佐季、伊藤歩、吉原光夫、門脇麦

公式ホームページ

完璧な少女は、なぜ屋上から飛び降りたのか――?
これまでの少女映画が触れなかった、“死の向こう側”へ――
かつて観たことのない奇妙で美しい“ファントム・ファンタジー”、誕生。

周囲に馴染めず、転校を繰り返す杏菜が、新たな寄宿学校で出会ったのは、美しく完璧な少女・莉花。しかし、莉花は突然、屋上から飛び降りて命を絶ってしまう。残されたのは一冊の≪日記≫。ページをめくるたび、莉花の苦悩や怒り、痛み—— そして、言葉にできなかった“ある秘密”が浮かび上がる。その秘密に触れた杏菜と少女たちの心は揺さぶられ、初めて“自分”と向き合い始める。やがて日記から青白く揺れる“鬼火”のような魂が現れ、杏菜の心に静かに入り込む。その魂に導かれ、杏菜は予想もつかない行動へと踏み出す——。観る者は知らず知らずのうちに、その奇妙で美しい世界へと引き込まれていく。

第73回サン・セバスティアン国際映画祭New Directors部門のクロージング作品として選出され、現地のワールドプレミア上映後には熱い喝采を浴びた本作。
監督を務めたのは、『21世紀の女の子』(19)の一篇「reborn」で注目を集め、中編「レイのために」(19)や短編「木が呼んでいる」(20)など数々の映画賞を受賞した経歴をもつ坂本悠花里。少女たちの繊細な感情を耽美にすくいとった唯一無二の映像感覚で、鮮烈な長編映画デビューを飾る。
本作は、周囲に馴染めず転校を繰り返してきた主人公・杏菜が、転校先の寄宿学校で出会った、美しく完璧なルームメイト・莉花の突然の死をきっかけに、残された≪日記≫と、莉花の“魂”に静かに侵食され、心を揺るがせていく物語。
これまでの少女映画では描かれなかった、“死の向こう側”へとそっと踏み込んでいく、かつて観たことのない、“ファントム・ファンタジー”がここに誕生した。


白の花実 白の花実 白の花実

1/17(土)~

サタジット・レイ レトロスペクティブ 2025

サタジット・レイ レトロスペクティブ 2025

サタジット・レイ レトロスペクティブ 2025

1/17(土)―

サタジット・レイ レトロスペクティブ 2025

1/17(土)―

黒澤明、マーティン・スコセッシ、
フランシス・フォード・コッポラ、ウェス・アンダーソン……
世界の巨匠たちが愛してやまない映画界の巨人

サタジット・レイ監督

Photo by Tamaki MATSUOKA

サタジット・レイ(1921-1992)

1921年5月2日、インドのコルカタ生まれの映画監督、脚本家、作曲家、小説家、カリグラファー、イラストレーター。ベンガル地方屈指の名家・レイ家の出身で、詩人で画家の祖母と、文学者であり画家でもあった父シュクマル・レイの影響を強く受けて育つ。コルカタ大学では経済学を専攻し、その後、ノーベル文学賞にも輝く詩人ラビンドラナート・タゴールが創設したサンティニケタン大学に進学し、タゴールから深い芸術的・思想的影響を受ける。1942年からはイギリス系の広告会社にて広告デザイナーとして活動する傍ら、映画への情熱を育む。1949年には「カルカッタ(コルカタ)・フィルム・ソサエティ」の創設に参加。同年、ジャン・ルノワールが『河』の撮影のためインドを訪れた際に彼のアシスタントを務め、またヴィットリオ・デ・シーカやルキノ・ヴィスコンティらのネオレアリズモ映画に触発され、自らの映画制作を決意する。
1951年に初監督作『大地のうた』の制作に着手。1955年に完成させ、翌年カンヌ国際映画祭でベストヒューマンドキュメント賞を受賞。その後も、オプー三部作として知られる『大河のうた』、『大樹のうた』を完成させ、名声を不動のものとする。その生涯で30本を超える映画を制作し、インド映画界のみならず、世界中の映画人に計り知れない影響を与えた。彼の作品は人間の本質に迫る深い洞察と、詩的な映像、音楽のセンスによって、今なお色褪せることがない。

公式サイト https://satyajit-ray2025.com/

提供 JAIHO

配給 グッチーズ・フリースクール

入場料一般1,900円/会員・大専・シニア1,300円/高校生以下800円

作品紹介

音楽サロン デジタルリマスター日本劇場初公開

音楽サロン デジタルリマスター

COPYRIGHT 1956/ALL RIGHT RESERVED ANJAN BOSE

1958年/100分/原題:Jalsaghar/英語題:The Music Room
製作・監督・脚本:サタジット・レイ
原作:タラションコル・ボンドバッダエ
撮影:シュブロト・ミットロ
編集:ドゥラル・ドット
美術:ボンシ・チョンドログプト
音楽:ヴィラーヤト・カーン
出演:チョビ・ビッシャシュ、ゴンガポド・ボシュ、カリ・ショルカル

20世紀初頭のベンガル地方。地主ビッションボル・ラエは、経済的に困窮しながらも、かつての栄光と誇りにしがみつくように、音楽と舞踊に耽る日々を送っている。隣人である新興の実業家ガングリに対して対抗心を燃やしたロイは、最後の誇りをかけて、自らの音楽サロンで盛大な演奏会を開く。
世界中の映画製作者に影響を与えた、レイ監督の芸術性と映像美が際立つ傑作。音楽監督はシタール奏者の巨匠ヴィラーヤト・カーンが務め、演奏会以外の場面でも有名演奏家が多数出演している。

ビッグ・シティ デジタルリマスター

ビッグ・シティ デジタルリマスター

COPYRIGHT 1963/ ALL RIGHTS RESERVED RDB ENTERTAINMENTS

1963年/136分/原題:Mahanagar/英語題:The Big City
監督・脚本・音楽:サタジット・レイ
原作:ノレンドロナト・ミットロ
撮影:シュブロト・ミットロ
編集:ドゥラル・ドット
美術:ボンシ・チョンドログプト
出演:マドビ・ムカルジ、オニル・チャタルジ、ヘレン・チャタルジ

平凡な銀行員シュブロトは家族で唯一の働き手。ある時シュブロトの妻アロティは、(主婦は家にいるべきという)慣習と義父の反対を振り切って訪問販売員としての職を得る。アロティは仕事で順調に評価され自信と経済的自立を手にするが、その状況を受け入れることができない夫は妻に離職を迫る。
レイ監督が初めてネオリアリズモへの挑戦を試みた作品であり、物語は1955年当時のコルコタの日常を描く。貧しい下層・中流階級を襲う社会経済的な苦悩に焦点を当て、それを主人公女性の自立を通じて表現している。

*ベルリン国際映画祭 銀熊賞(監督賞)受賞

チャルラータ デジタルリマスター

チャルラータ デジタルリマスター

COPYRIGHT 1964/ ALL RIGHTS RESERVED RDB ENTERTAINMENTS

1964年/119分/原題:Charulata/英語題:Charulata
監督・脚本・音楽:サタジット・レイ
原作:ラビンドラナート・タゴール
撮影:シュブロト・ミットロ
編集:ドゥラル・ドット
美術:ボンシ・チョンドログプト
出演:マドビ・ムカルジ、ショウミットロ・チャタルジ、ショイレン・ムカルジ

1880年頃のカルカッタ(現コルカタ)。美しいチャルラータは、外界から隔絶されたヴィクトリア朝時代の華美な邸宅で当てもなく毎日を過ごしている。理想主義的な知識人の夫ブポティはそんな妻を愛し支えているものの、新しい政治新聞の発行に追われ妻との時間が思うようにとれない。そんな折、ブポティのいとこのアマルが訪ねて来ると、ブポティはチャルラータに眠る文才を開花させてほしいとアマルに頼む。
愛、理想主義、失望、そして悲哀への賛歌である本作は、レイ監督が手掛けた中で最も優美な作品であり、監督の創造期と言われる1960年代に撮られた最高傑作。

*ベルリン国際映画祭 銀熊賞(監督賞)受賞

臆病者 デジタルリマスター日本劇場初公開

臆病者 デジタルリマスター

COPYRIGHT 1965/ ALL RIGHTS RESERVED RDB ENTERTAINMENTS

1965年/70分/原題:Kapurush/英語題:The Coward
監督・脚本・音楽:サタジット・レイ
原作:プレメンドロ・ミットロ
撮影:ショウメンドゥ・ラエ
編集:ドゥラル・ドット
美術:ボンシ・チョンドログプト
出演:ショウミットロ・チャタルジ、マドビ・ムカルジ、ハラドン・バナルジ

監督作品の常連であるショウミットロ・チャタルジが、コルコタの脚本家で主人公のアミを演じている。アミは不運にも乗車したタクシーの故障に見舞われるが、茶園を経営する裕福なビマールの親切で彼の家に泊まることになる。驚いたことに、ビマールの家にいた彼の妻コルナは、何年も前、アミが自身の優柔不断ゆえに失った元恋人であった。
家族、結婚、男尊女卑、階層といった旧来の価値観と、個人の自由や愛、自己決定といった新しい価値観のぶつかり合いが描かれる。

聖者 デジタルリマスター日本劇場初公開

聖者 デジタルリマスター

COPYRIGHT 1965/ ALL RIGHTS RESERVED RDB ENTERTAINMENTS

1965年/67分/原題:Mahapurush/英語題:The Holy Man
監督・脚本・音楽:サタジット・レイ
原作:ラジシェコル・ボシュ(ポロシュラム)
撮影:ショウメンドゥ・ラエ
編集:ドゥラル・ドット
美術:ボンシ・チョンドログプト
出演:チャルプロカシュ・ゴーシュ、ロビ・ゴーシュ

弁護士であるグルパダ・ミトラは、妻の死以来、深刻な精神不安に陥っている。娘のブチキとバラナシからの帰路、グルパダは不老を自称するビリンチ・ババと出会う。グルパダは彼に感銘を受け、彼を支援し入信することを決意する。
コメディ映画の体裁を取りつつ、宗教的偽善や盲目的な信仰を鋭く風刺し、狂信的信仰を戒めている。伝統と近代化が交錯するインド社会に対するレイ監督の鋭い観察が投影された作品。

主人公 デジタルリマスター日本劇場初公開

主人公 デジタルリマスター

COPYRIGHT 1966/ ALL RIGHTS RESERVED RDB ENTERTAINMENTS

1966年/117分/原題:Nayak/英語題:The Hero
監督・脚本・音楽:サタジット・レイ
撮影:シュブロト・ミットロ
編集:ドゥラル・ドット
美術:ボンシ・チョンドログプト
出演:ウットム・クマル、ショルミラ・タクル(ヒンディー語読み:シャルミラー・タゴール)、ニルモル・ゴーシュ

有名なベンガル映画俳優であるアリンダムは、デリーで行われる授賞式へ列車で向かうことになる。列車内では乗客全員が彼のことを知っている。その中で彼の関心を引いたのは、お堅い女性誌の記者アディティだった。スターの役割に明快で批判的な視点を持つ彼女がアリンダムにインタビューを行うことで、彼は自身の半生を見つめ直すことになる。
アリンダムの危機や内省を通して、映画業界の問題(軽薄な娯楽作品の量産、商業主義、そして腐敗したビジネス慣行)を巧みに批判している。

*ベルリン国際映画祭 審査員特別表彰

エレファント・ゴッド デジタルリマスター日本劇場初公開

エレファント・ゴッド デジタルリマスター

COPYRIGHT 1979/ ALL RIGHTS RESERVED RDB ENTERTAINMENTS

1979年/122分/原題:Joi Baba Felunath/英語題:The Elephant God
監督・原作・脚本・音楽:サタジット・レイ
撮影:ショウメンドゥ・ラエ
編集:ドゥラル・ドット
美術:オショク・ボシュ
出演:ショウミットロ・チャタルジ、ショントシュ・ドット、シッダルト・チャタルジ

私立探偵のフェルーとそのいとこが休暇のためバラナシの街に到着すると、ある男に事件の解決を依頼される。ネパールの王子から譲り受けた家宝だという貴重なガネーシャの金像が盗難に遭ったらしい。フェルーは、事件解決のための重要な手がかりを知る少年ルクと親しくなる。
レイ監督自身による小説「探偵フェルダーシリーズ」を元に映画化された第2作目。ショウミットロ・チャタルジ演じる探偵がその高い分析力と洞察力で事件を解決に導く、エンターテイメント性に富んだテンポのよい冒険コメディ。

1/23(金)~

黒の牛

黒の牛

© NIKO NIKO FILM / MOOLIN FILMS / CINEMA INUTILE / CINERIC CREATIVE / FOURIER FILMS

2024年/日本=台湾=アメリカ/114分/スタンダード&シネマスコープサイズ/5.1chサラウンド/白黒&カラー/配給:ALFAZBET/ニコニコフィルム/ムーリンプロダクション
監督・脚本・編集:蔦哲一朗
プロデューサー:市山尚三、エリック・ニアリ、黄インイク、アレックス・ロー
共同プロデューサー:饒 紫娟
撮影監督:青木穣
脚本:久保寺晃一、上田真之、熊野桂太
美術:部谷京子
衣装:大塚満
録音:岩間翼、大町響槻
サウンドデザイン:周震、松野泉
音楽:坂本龍一
出演:リー・カンション、ふくよ(牛)、田中泯、須森隆文、ケイタケイ ほか
製作:ニコニコフィルム、ムーリンプロダクション、CINEMA INUTILE、シネリック・クリエイティブ、フーリエフィルムズ

公式ホームページ

内なる宇宙と森羅万象。禅に伝わる「十牛図」から紐解く、大いなる円環

急速に変わりゆく時代。住む山を失い、放浪の旅を続けていた狩猟⺠の男は、山中で神々しい黑い牛と邂逅する。男は抵抗する牛を力ずくで連れ帰り、人里離れた⺠家で共に暮らしはじめる。生きるために大地を耕しはじめた男と牛だったが、自然の猛威の前に、息を合わせることができない。しかし、ある禅僧との出会いをきっかけに、次第に心を通わせていく──。

リー・カンション×⽥中泯 ×坂本⿓⼀

主演は、ツァイ・ミンリャン作品で知られる台湾の名優リー・カンション。映画『国宝』で歌舞伎役者・⼩野川万菊役で強烈な印象を残したダンサーの⽥中泯が禅僧として出演。音楽には、⽣前本作への参加を表明していた坂本⿓⼀の楽曲を使⽤し、場所や時代を超越した世界観をさらに深く印象づけている。

日本初70mmフィルムを一部使用、完成まで8年を要した壮⼤なスケールの映像詩 「フィルム以外では映画を撮らない」と明言し、独自の映像哲学を貫く蔦哲一朗監督。本作も全編をフィルムで撮影し、⻑編劇映画としては⽇本初となる70mmフィルムも⼀部で使⽤した。⽇本・台湾・アメリカの3か国が⼿を携えた国際共同製作で、8年もの歳月と想像を超える情熱の末に生み出された、壮⼤なスケールの映像詩である。


黒の牛 黒の牛 黒の牛

1/24(土)~

特集 ロッセリーニ×ゴダール[2つのゼロ年]

2つのゼロ年

特集

ロッセリーニ×ゴダール

[2つのゼロ年]

特集

ロッセリーニ×ゴダール

[2つのゼロ年]

2人の巨匠が描く、2つの[ゼロ年]

第二次世界大戦後の廃墟と化したベルリンを舞台に、ひとりの少年を通して戦争がもたらす残酷さを描いたロベルト・ロッセリーニの『ドイツ零年』(1948)と、ベルリンの壁崩壊の翌年、東ドイツに潜伏していた老スパイの西側への帰還の旅を描いたジャン=リュック・ゴダールの『新ドイツ零年』(1991)。1945年をドイツにとっての《ゼロ年》と示し、戦後ベルリンの“虚無の廃墟”を冷徹に描いたロッセリーニに対し、ゴダールは東西ドイツが統合された1990年を《新ゼロ年》として、ふたたび“虚無の廃墟”にもどされたドイツを見つめ直した。戦後80年、東西ドイツ統一35年を迎える2025年、思いがけない、だが必然にみちた2作品の邂逅が実現する。

公式サイト https://www.zaziefilms.com/zero/

配給 ザジフィルムズ

入場料一般1,900円/会員・大専・シニア1,300円/高校生以下800円

前売券全国共通鑑賞2回券 2,600円(税込)を当館受付にて発売中!特典:ポストカードセットをプレゼント!

作品紹介

ドイツ零年

ドイツ零年

© Cinecittà Luce, CSC – Cineteca Nazionale, Cineteca di Bologna, Coproduction Office.

1948年/イタリア/74分/ドイツ語/モノクロ
原題:Germania anno zero
監督:ロベルト・ロッセリーニ
脚本:ロベルト・ロッセリーニ、マックス・コルペット、カルロ・リッツァーニ
撮影:ロベール・ジェイヤール
音楽:レンツォ・ロッセリーニ
出演:エドムント・メシュケ、エルンスト・ピットシャウ、インゲトラウト・ヒンツェ、フランツ・クリューガー

ナチス・ドイツが崩壊した1945年=[ゼロ年]
一人の少年を通して描かれる 戦争がもたらす残酷さ

ナチス・ドイツ崩壊後のベルリン。病弱で寝たきりの父、元ナチ党員で警察を恐れて家に引きこもる兄、家計を助けながら父の看病をする姉と、間借りした狭い部屋に暮らす少年エドモンドは、父と兄に代わってお金を稼ぐために、学校にも行かず、毎日廃墟のような街をさまよっている。ある日、エドモンドは小学校の担任教師だったエニングに街中で出会う。学校を追放され、今は闇商売に手を染めるエニングが説くナチス思想に、無垢なエドモンドは次第に感化され……。

新ドイツ零年

新ドイツ零年

© BRAINSTORM 1991. Licensed through ECM Records GmbH

1991年/フランス/62分/フランス語、ドイツ語など/カラー
原題:Allemagne année 90 neuf zéro
監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
撮影:クリストフ・ポロック、ステファン・ベンダ、アンドレアス・エルバン
出演:エディ・コンスタンティーヌ、ハンス・ツィシュラー、クラウディア・ミヒェルゼン、アンドレ・ラバルト
字幕翻訳:堀 潤之

東西ドイツが統合された1990年=[新ゼロ年]
東ドイツに潜伏していた老スパイの“西”への帰還の旅

前年にベルリンの壁が崩壊した1990年のドイツ。西ドイツ側のスパイとして東ベルリンに30年間潜伏していた諜報員レミー・コーションのもとへ、軍情報部のゼルテン伯爵がやってくる。「すべて終わった」と告げられたレミーは、彼に勧められるがまま、西側への帰還を目指して東ドイツを大きく迂回する旅に出る。トーマス・マンの小説の登場人物を思わせる娘シャルロッテや、ドン・キホーテとサンチョ・パンサなど、様々な人々と出会いながらレミーは西側にたどり着く……。

1/24(土)~

テイク・ミー・サムウェア・ナイス

テイク・ミー・サムウェア・ナイス

© 2019(PUPKIN)

2019年/オランダ・ボスニア/91分/配給:クレプスキュール フィルム
原題:TAKE ME SOMEWHERE NICE
監督・脚本:エナ・センディヤレヴィッチ
撮影:エモ・ウィームホフ
編集:ロット・ロスマーク
音響:ヴィンセント・シンセレッティ
音楽: エラ・ファン・デル・ワウデ
出演:サラ・ルナ・ゾリッチ、エルナド・プルニャヴォラツ、ラザ・ドラゴイェヴィッチ

公式ホームページ

オランダからボスニアへ 少女でも大人でもないアルマの”自分探し”の旅が始まる。
誰か連れ出して…この退屈な世界から

揺れるカーテンの隙間からのぞいたブティックのミラーが、ワンピースを選ぶ一人の少女を映している。アルマ──オランダ生まれのボスニア人。両親は戦火に揺れた祖国を離れ、オランダで彼女を育ててきた。やがて父はひとり祖国へ戻り、消息は遠ざかっていた。そんな父が入院したという知らせが届き、母に言われるまま、アルマはたったひとりでボスニアへと向かう。
ボスニアの空港で彼女を出迎えたのは、従兄のエミル。終始ぶっきらぼうな態度で、アルマをアパートに連れ帰っても言葉少な。やがて「急ぐから」とアルマを部屋に置き去りにしてしまう。キャリーケースは壊れ、荷物も取り出せないまま。居場所のない空間に身を持て余し、アルマは街へ出た。そして衝動のように、髪を金色に染める。その夜、アパートの扉の前で眠り込んでいた彼女に声をかけたのは、エミルの“インターン”を名乗るデニスだった。彼だけが、アルマの話に耳を傾けてくれる。
翌日。父のいる町・ポドべレジイェを目指し、小さなスーツケースを引いてバスに乗り込んだアルマ。だが休憩の間に、バスは彼女を置き去りにし、荷物だけを乗せたまま走り去ってしまう…。

この物語は、アルマ同様にボスニア生まれオランダ育ちのエナ・センディヤレヴィッチ監督による長編デビュー作。監督が心酔するジム・ジャームッシュ監督の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』に影響を受けて描かれた作品だ。男女3人の主要キャラクター、静的でミニマルな演出、ゆったりと流れる時間、そして余白に満ちた空間。さらにアイデンティティが不確かな主人公の”自分探し”という普遍的なテーマを追求した本作は、世界中から優れたインディペンデント映画が集うロッテルダム国際映画祭コンペティション部門でタイガーアワードを受賞し、国際的にも高く評価された。
少女から大人になるとは、どういうことなのだろうか。母と父という異なるアイデンティティを持つアルマの本当の居場所はどこなのか。オランダでもなくボスニアでもない、彼女にとっての素敵な居場所とは何だろう。
心地よい風と太陽、水の煌めき…アルマに「とびっきりの夏」はいつ訪れるのだろうか──。


テイク・ミー・サムウェア・ナイス テイク・ミー・サムウェア・ナイス テイク・ミー・サムウェア・ナイス

1/24(土)~

アフター・オール・ディーズ・イヤーズ デジタル・リマスター版

アフター・オール・ディーズ・イヤーズ

©cinemadrifters

2010→2025年/マレーシア・中国・日本/98分/モノクロ+カラー/DCP/ステレオ
英題:After All These Years
監督・脚本:リム・カーワイ
撮影:メイキン・フォン・ビンフェイ(馮炳輝)
録音:山下彩
編集:奥原浩志、Phillip Lin
美術:Amanda Weiss
音楽:Albert Yu
配給:Cinema Drifters
宣伝:大福
出演:大塚匡将、ゴウジー(狗子)、ホー・ウェンチャオ(何文超)

公式ホームページ

リム・カーワイ幻のデビュー作が15年の時を経て蘇る
自己存在への恐怖、日常からの逃避を圧倒的な構造美で描き出した、鮮烈なるデビュー作

大阪を拠点に、香港、中国、バルカン半島などで映画を製作し、どこにも属さず彷徨う“シネマドリフター(映画流れ者)”を自称する映画監督リム・カーワイ。その原点となる『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』がデジタル・リマスター版として、15年の時を経てスクリーンに蘇る。

2010年、『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』は香港国際映画祭をはじめ、各国の映画祭で絶賛され、黒沢清監督は、「アジアのパワーと混沌が、ヨーロピアンな深い思索をもって構築され、最後にはまるでハリウッド映画のような興奮で観客の心を釘付けにする・・・世界映画の理想的なカタチがここにある。」と語った。

2000 年代末の混沌とした時代が生み出した、 無国籍インディペンデント映画の奇跡─

10年ぶりに故郷に帰ってきたア・ジェ。
しかし、家族でさえ彼の存在を知る者はいない─
唯一ア・ジェを覚えているのは、レストランの店主ラオ・ファンだけだ。
ラオ・ファンに連れられ、秘密の鍵を握る男に会いに行くが、ア・ジェは殺人の濡れ衣をきせられ処刑されてしまう…。
死んだはずのア・ジェが、再び街に戻ってきた。
空虚な日常を生きるラオ・ファンは、過ぎし日々に思いを寄せる。
町に起こる奇怪な事件をきっかけに、彼らは新しい人生を手に入れられるのか─
第一部で自己の存在についての恐怖と疑いを、第二部で退屈な日常生活からの逃避を、空想と幻想を通して描かれていく。
二つの異なった視点で世界を覗いたとき、観客は自然と白昼夢に引き込まれていく─


アフター・オール・ディーズ・イヤーズ アフター・オール・ディーズ・イヤーズ アフター・オール・ディーズ・イヤーズ

1/31(土)~

ただ、やるべきことを

ただ、やるべきことを

©Nareun Cinema / Myung Films Lab.

2023年/韓国/101分/配給:太秦
英題:Work to Do
原題:해야 할 일
監督・脚本:パク・ホンジュン
製作:映画会社ナルン、ミョンフィルムラボ
撮影:チェ・チャンファン
編集:チョ・ヒョンジュ
音楽:イム・ミンジュ
出演:チャン・ソンボム、ソ・ソッキュ、キム・ドヨン、キム・ヨンウン、チャン・リウ、イ・ノア、カン・ジュサン、キム・ナムヒ

公式ホームページ

【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,500円(税込)を当館受付にて発売中!

第28回釜山国際映画祭“今年の俳優賞”受賞!
2010年代、韓国の造船業界が直面した深刻な不況――
リストラを実行する人事部社員たちの葛藤を描く、それぞれの選択の物語

組織の一員として「やるべきこと」、ひとりの人間として「やるべきこと」。ふたつの感情をぶつけ合いながら誰しもが働き、生きているだろう。映画『ただ、やるべきことを』はリストラで従業員を解雇しなければならない人事チームの社員たち、それぞれの決断をリアルに描く。
映画の舞台は韓国パク・クネ大統領の退陣を求める大規模な「ろうそくデモ」が行われた2016年、造船業は世界的不況に見舞われ多くのリストラと廃業があった。漢陽重工業入社4年目のジュニは人事チームに異動するとすぐ、リストラ対象者の名簿を作るように指示される。会社を立て直すためと自身を納得させ、やるべき仕事をこなしていくが会社都合で対象者が絞り込まれていき、親しい先輩と友人、そのどちらかを選ばなければならない状況に追い込まれていく――。

本作は『JSA』『建築学概論』などの制作会社ミョンフィルム(イ・ウン代表)が未来の韓国映画をリードする映画人育成を目的として設立した、ミョンフィルムラボ6期のパク・ホンジュン監督長編デビュー作品。造船会社の人事で働いた経験を基に、職業上の義務と個人的感情の間で板挟みになる労働者の心理を深い視点で描き出した。主演を務めたチャン・ソンボム(ドラマ「秘密の森」「新兵」など人気作に多数出演)は第28回釜山国際映画祭「今年の俳優賞」を受賞。リアリティーを極限まで高めた俳優陣の演技が称賛された。

従来の映画の多くは解雇される人々が会社と一戦交える物語でありそれは勝利の、逆転の、希望のドラマだ。しかし、現実はそんなに輝かしいものではない。本作はリストラを実行する人事部社員の視点から、労働者と会社の対立、その間に幾重にも重なる様々な悲劇と哀しみを映し出し、労働映画に新たな角度から迫る。理想と現実の間でもがきながら生きる、わたしたちの物語がそこにはある。


ただ、やるべきことを ただ、やるべきことを ただ、やるべきことを

2/7(土)-2/20(金)

中央アジア今昔映画祭 vol.3 ウズベキスタン特集

中央アジア今昔映画祭 vol.3

中央アジア今昔映画祭 vol.3
ウズベキスタン特集

2/7(土)-2/20(金)

中央アジア今昔映画祭 vol.3
ウズベキスタン特集

2/7(土)-2/20(金)

新旧6作品でウズベキスタンを堪能する、
温故知新のシネマトリップ

中央アジアのほぼ中心に位置するウズベキスタン。激動の長い歴史を経たこの国は、現在中央アジア諸国最大の人口を有し、著しい経済成長を続けている。そしてこの国は、欧州・中東・アジアの歴史・文化が交わり、独自の映画が生み出されてきた知られざる映画大国でもある。中央アジア今昔映画祭第3弾は、中央アジア≪ウズベキスタン≫の旅へ。

ウズベキスタン共和国

面積は日本の約1.2倍の44万7400平方キロメートル。人口は3,700万人を超え、中央アジア最大の人口を有する。首都はタシュケント。宗教は主にイスラム教スンニ派。国家語はテュルク諸語のひとつのウズベク語だが、ロシア語も広く通じる。
古来よりシルクロードとして知られる東西の交易路として栄えるが、19世紀後半にロシア帝国に組み込まれる。その後、ロシア内戦を経て、1924年にウズベク・ソヴィエト社会主義共和国成立。1991年8月にウズベキスタンとしてソ連からの独立を果たす。
サマルカンド、ブハラ、ホラズム州ヒヴァの歴史地区はいずれも世界遺産に登録され、世界中から訪れる観光客でにぎわう。

公式ホームページhttps://trenova.jp/centralasia3/

主催・企画・配給トレノバ

協力梶山祐治、ノーム

入場料 一般1,900円/会員・大専・シニア1,300円/高校生以下800円

作品紹介

きみに夢中 日本劇場初公開

きみに夢中

1958年/ソ連/79分/ロシア語、ウズベク語/カラー
原題: Maftuningman
監督:ユルダシ・アグザモフ
脚本:トゥラブ・トゥラ
撮影:ミハイル・クラスニャンスキー
音楽:イクラム・アクバロフ、ムタリ・ブルハノフ、マナス・レヴィエフ
出演:クララ・ジャリロワ、サナト・ディヴァノフ、ラノ・ハムロクロワ、トゥルグン・アジゾフ、アッバス・アジゾフ

ウズベキスタン最初のミュージカルコメディとして、大ヒットを記録した作品。劇中の歌の数々は、ウズベク人の記憶に長く留まることになった。1950年代のウズベキスタン各地の人々の服装や街並みも必見。
タシュケントのスタジオではミュージカル映画『きみに夢中』の撮影が行われているが、主役にふさわしい歌い手と踊り手が見つからない。監督はサマルカンド、ブハラ、フェルガナを回るスカウトの旅に出て、それぞれの地域で才能ある若者を見出していく。そうしてタシュケントに集められた若者たちは、力をあわせて映画の完成を目指す。

やさしさ 日本初公開

やさしさ

1966年/ソ連/70分/ロシア語/B&W
原題:Nezhnost
監督:エリヨル・イシムハメドフ
脚本:オデリシャ・アギシェフ
撮影:ディリシャト・ファトフリン
編集:R・ハムラエワ、マリヤ・チ モフェエワ
出演:マリヤ・ステルニコワ、ロディオン・ナハペトフ、ログシャン・ アグザモフ、マイヤ・マフドワ、サイダ・ボロディナ

60年代後半から70年代にかけて勃興したウズベク・ヌーヴェルヴァーグを代表する作品。夏のタシュケントを舞台に“やさしさ”によって絡み合う3つの恋と青春を、洗練されたスタイルで描く。
少年サンジャルは川で出会った年上の女性レーナに恋をするが、レーナの彼氏ティムールの登場で恋心は砕け散る。その夏、レーナとティムールたちは車で旅行に出て、友人の祖母の家に泊まる。彼女の孫娘マムラは、ティムールを一目見て惹かれる。夏休みが終わってもマムラは彼のことが忘れられず、カーニバルの日、街に会いに行く。

苦い果実 日本劇場初公開

苦い果実

1975年/ソ連/61分/ロシア語・ウズベク語/カラー
原題:Gorkaya yagoda
監督:カマラ・カマロワ
脚本:ヤロスラフ・フィリッポフ
撮影:アレクサンドル・パッン
美術:ナリ マン・ラヒムバエフ
音楽:ルミル・ヴィルダノフ
出演:シャヒダ・ガフロワ、シャフナズ・ブルハノワ、 ベクゾッド・ハムラエフ、ババ・アンナノフ、アント ニーナ・ルスタモワ

ソ連時代から現在まで、中央アジアの女性監督としてもっとも⾧く活動したカマラ・カマロワ。彼女の近年 再評価されている⾧編デビュー作。少年少女たちが大人になる過程を彼らの友情や恋愛とともに描く。
13歳のナルギズはバレエや読書が好きな少女で、不良少年のエルキンに惹かれている。エルキンは夢見がちなナルギズをバカにするが、内心では彼女に好意を持っている。夏休みに祖母の元へやってきた ラリはナルギズの親友だが、ナルギズとエルキンが親しくなっていくにつれ、ラリとナルギズの関係も変化していく。

UFO少年アブドラジャン

UFO少年アブドラジャン

1992年/88分/ウズベキスタン/ウズベク語、ロシア語/カラー
原題:Abdulladzhan, ili posvyashchaetsya Stivenu Spilbergu
監督:ズリフィカル・ムサコフ
脚本:リフシヴォイ・ムハメジャノフ、ズリフィカル・ムサコフ
撮影:タルガト・マンスロフ
編集:ウルマスホン・テミロワ
出演:ラジャブ・アダシェフ、シュフラト・カユモフ、トゥイチ・アリポフ、トゥチ・ユスポワ、ジャヴロン・ハムラエフ

ソ連からの独立間もないウズベキスタンで公開され、国民の60%が劇場で鑑賞したという伝説的大ヒット作。スティーブン・スピルバーグへの手紙として物語られるユーモアたっぷりのSFドラマ。
ウズベキスタンのとある村の集会で、未確認飛行物体が近づいているというモスクワからの電報が読み上げられる。村人が半信半疑でいるなか、農夫バザルバイは奇妙な円盤が墜落するのを目撃する。そこには裸の少年が倒れていた。アブドラジャンと名付けられた少年は不思議な力を発揮し、村の集団農場に数々の珍現象が起こりだす。

熱いノン 日本初公開

熱いノン

2018年/ウズベキスタン/87分/ウズベク語/カラー
原題:Issiq non
監督・脚本:ウミド・ハムダモフ
撮影:ジャホンギル・イブラギモフ
美術:アリシェル・ウザコフ
音楽:タイル・クジエフ
出演:ザリナ・エルガシェワ、ムナヴァル・アブドゥ ラエワ、フェルザ・サイドワ、ロラ・エルタエワ、ラジズ・ラヴシャノフ

大人たちが出稼ぎのために去っていった村で祖母と暮らす少女。彼女の家族に対する心情を美しい映像で描 いた、近年のウズベク映画を代表する作品。第92回アカデミー賞国際⾧編映画賞ウズベキスタン代表。
家族と暮らすために施設を出て田舎にやってきたズリフィヤは、期待に胸を膨らませていたが、母親は家にはおらず祖母と暮らすことに。彼女は古い考え方を持つ祖母に対して反発を強くしていく。母親との電話もできない中、彼女の味方になってくれるのは、日課として熱いノン(=パン)を焼いている叔母だけだった。

ファリダの二千の歌 日本劇場初公開

ファリダの二千の歌

2020年/ウズベキスタン/110分/ウズベク語、ロシア語/カラー
原題:Faridaning ikki ming qo’shig’i
監督・脚本:ヨルキン・トゥイチエフ
撮影:バホディル・ユルダシェフ
編集:フルシド・アリホジャエフ
美術:ベクトシ・ラジャボフ
出演:サノバル・ハクナザロワ、バフロム・マチャノフ、イルミラ・ラヒムジャノワ、ユルドゥズ・ラジャボワ、マルジョナ・ウリャエワ

ボリシェヴィキに対し、白軍とムスリムの反乱軍「バスマチ」が劣勢に立つ1920年代初頭のウズベキスタン西部。ソヴィエト化が進む中、一夫多妻で暮らす家族の揺らぎを描く。第94回アカデミー賞国際⾧編映画賞ウズベキスタン代表。
カミルは3人の妻とともに何もない田舎で暮らしている。ある日、彼は若い女性ファリダを4人目の妻として迎える。若く美しい妻の登場に、歳の近い妻は友達がやってきたように喜び、情熱的な妻は激しい嫉妬心に駆られる。その頃、ボリシェヴィキの軍隊が彼らの住む地域に進軍し、カミルたちは生き方の再考を迫られることになる。

2/7(土)~

ぼくの名前はラワン

ぼくの名前はラワン

ⓒ Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institute

2022年/イギリス/クルド語・英語・イギリス⼿話(BSL) /90分/提供:ニューセレクト/配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
原題:Name Me Lawand
監督・脚本:エドワード・ラブレース
出演:ラワン・ハマダミン
⽇本語字幕:杉⼭緑
バリアフリー字幕:⼾⽥紗耶⾹
⽇本語字幕及びバリアフリー字幕監修:那須映⾥、サミュエル・アッシュ

公式ホームページ

この世界は、きっと変えられるー。
難民としてイギリスに渡った “ろう者”の少年の成長を描く感動のドキュメンタリー

生まれつき耳が聞こえない<ろう者>でクルド人の少年ラワン。イラクでの生活にラワンの将来を案じた両親は、イギリスへ亡命することを決意。難民キャンプで1年を過ごした後、ある支援者の尽力で一家はイギリスに入国。ラワンはダービーにある王立ダービーろう学校に入学することに。 生まれて初めて手話を学んだラワンは、先生や友達とコミュニケーションを取ることで、周囲が驚くような成長を遂げていく。そんな中、ラワン一家は突然、イギリス政府から国外退去を命じられるのだった…

これまでSXSWやBFIロンドン映画祭などで高い評価を受けてきたイギリス人監督のエドワード・ラブレース。2019年にラワンと出会ったラブレースは、殻を破ろうとする彼に心動かされ、クルド人やろう者のプロデューサーらと撮影チームを組み、実に4年もの年月をかけてラワンの成長をカメラに収めていった。心に傷を負ったろう者の少年が、新天地での出会いと学びによって自分らしさを獲得していく過程を、ダイナミックで抒情的な映像と音楽で描写。そこに宿る圧倒的な没入感と心揺さぶる物語は世界中で絶賛され、ニューヨーク・ドキュメンタリー映画祭を始めとする各国の映画賞を席巻。世界を深い感動と共感で包んだ成長物語が誕生した。


ぼくの名前はラワン ぼくの名前はラワン ぼくの名前はラワン

2/7(土)~

平田雄己監督特集上映《Lost in Images》

Lost in Images

協力:東京藝術大学大学院映像研究科
企画・主催:イハフィルムズ

“平田雄己はまぎれもなく未来の映画作家だ。”―蓮實重彦

平田雄己監督は、神奈川県出身・1999年生まれの現在25歳。日本大学芸術学部映画学科監督コースを卒業後、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域に進学。蘇鈺淳監督『走れない人の走り方』の演出部をはじめスタッフとしても経験も積みつつ、大学院の教授であった黒沢清・諏訪敦彦・塩田明彦らに師事。東京藝術大学大学院映像研究科在学時に制作を行った『ピクニック』と『ロスト・イン・イメージズ』はいずれも高評価を受けていながら、これまで学内および修了制作展での上映しか行われておらずソフト化・配信予定も無く、本特集が貴重な上映機会となります。

作品紹介

ピクニック

ピクニック

©2023 東京藝術大学大学院映像研究科

2023年/日本/20分/ヨーロピアンビスタ
監督:平田雄己
脚本:福嶋芙美、平田雄己
プロデューサー:大槻美夢
撮影・照明:小澤将衡
録音・サウンドデザイン:谷口祐
美術:粟悦
衣裳・ヘアメイク:前川睦巴
編集:王菲児
音楽:佐藤七海
出演:大場みなみ、西山真来、佐々木想、上坂美来

★第72回サン・セバスティアン国際映画祭NEST部門 正式出品

ある日文乃は、恋人の修一、その娘の湊とピクニックに行く。しかし3人の空気は少しぎこちない。やがて、3人は散り散りに。死んだ母・美帆との記憶に浸る湊。過去の家族の幻想を見る修一。そして、文乃の前には美帆が現れる。

ロスト・イン・イメージズ

ロスト・イン・イメージズ

©2024 東京藝術大学大学院映像研究科

2024年/日本/56分/シネマスコープ
監督:平田雄己
脚本:平田雄己、福嶋芙美、峰岸由依
プロデューサー:大槻美夢
撮影:韓天翼
照明:小澤将衡
美術:庄蕾麦、袁彦妮
録音・サウンドデザイン:邱文翰
編集:許佳雯
助監督:志筑司、季子汀
CG 制作:D.Rock-Art
音楽:須藤佳帆
出演:細川岳、大西信満、向里祐香、川瀬陽太、遊屋慎太郎、村上由規乃、宮田佳典、服部竜三郎、齊藤由衣 

信じられる世界の終わり。

探偵映画の製作に取り組む監督の桐山。しかし、出演していた女優・美羽が謎めいた失踪を遂げたことから、撮影は中止に陥ろうとしていた。桐山は、美羽の兄を名乗る謎めいた男・真とともに美羽の行方を探し始めるが、劇中の出来事によって現実が侵食されていき、大きな混乱の渦に巻き込まれていく。

2/7(土)~

どうすればよかったか?

どうすればよかったか?

© 2024動画工房ぞうしま

2024年/日本/101分/配給:東風
監督・撮影・編集:藤野知明
制作・撮影・編集:淺野由美子
編集協力:秦岳志
整音:川上拓也
製作:動画工房ぞうしま

公式ホームページ

【書籍刊行記念アンコール上映】
面倒見がよく優秀な姉に統合失調症の症状が現れた
父と母は玄関に南京錠をかけ、彼女を閉じ込めた――
家族という他者との20年にわたる対話の記録

面倒見がよく、絵がうまくて優秀な8歳ちがいの姉。両親の影響から医師を志し、医学部に進学した彼女がある日突然、事実とは思えないことを叫び出した。統合失調症が疑われたが、医師で研究者でもある父と母はそれを認めず、精神科の受診から姉を遠ざけた。その判断に疑問を感じた弟の藤野知明(監督)は、両親に説得を試みるも解決には至らず、わだかまりを抱えながら実家を離れた。

このままでは何も残らない——姉が発症したと思われる日から18年後、映像制作を学んだ藤野は帰省ごとに家族の姿を記録しはじめる。一家そろっての外出や食卓の風景にカメラを向けながら両親の話に耳を傾け、姉に声をかけつづけるが、状況はますます悪化。両親は玄関に鎖と南京錠をかけて姉を閉じ込めるようになり……。

20年にわたってカメラを通して家族との対話を重ね、社会から隔たれた家の中と姉の姿を記録した本作。“どうすればよかったか?” 正解のない問いはスクリーンを越え、私たちの奥底に容赦なく響きつづける。分かりあえなさとともに生きる、すべての人へ向けた破格のドキュメンタリー。


どうすればよかったか? どうすればよかったか? どうすればよかったか?

2/21(土)~1週間限定

もしも脳梗塞になったなら

もしも脳梗塞になったなら

©シンクアンドウィル ⻘空映画舎

2025年/⽇本/102分/配給:渋谷プロダクション
監督・脚本:太⽥隆⽂
製作:鯛中淳
撮影監督:三本⽊久城
録⾳:⻄⼭秀明
助監督:植⽥中
編集:三本⽊久城
出演:窪塚俊介、藤井武美、⽔津亜⼦、久場寿幸、冨⽥佳輔、並樹史朗、酒井康⾏、嵯峨崇司、仁科貴、安部智凛、奈佐健⾂、川淳平、杉⼭久美⼦、⽥辺愛美、飯島⼤介、三輪和⾳、新宮⾥奈、宮本弘佑、鯛中蓮都、藤⽥朋⼦、⽥中美⾥、佐野史郎

公式ホームページ

「僕がなんでこんな病気に!」
他人の不幸を笑う奴ら?
涙と感動で綴る、実話の映画化

1人暮らしの映画監督・大滝隆太郎は突然、脳梗塞を発症。目がよく見えない。言葉もうまく出ない。心臓機能が20%まで低下、夏の猛暑で外出は危険。友人に電話しても「お前が病気?笑わせるなよー」と言われ、SNSに闘病状況を書いても、的外れな助言や誹謗中傷ばかり。「俺はこのまま孤独死?」と追い込まれるが、意外な人たちから救いの手が?本人には悲劇、周りの人たちには喜劇?病気と医療を笑いと涙で描く社会派現代劇。

脳梗塞を経験した映画監督が作った映画。
全部、本当の話。
困った時、役立ちます!

脳梗塞はよく聞く病気だが、詳しく知る人は少ない。それを体験したのが『向日葵の丘 1983年夏』『朝日のあたる家』等で知られる太田隆文監督。「僕の闘病生活が誰かの役に立てば」と、自身の経験を映画化した。彼は17年間休まず映画作り。そのために脳梗塞。心臓機能は危険値。両目とも半分失明。検査、治療、入院、手術、リハビリの日々を経験し、それを映画でリアルに再現。闘病中は、的外れな助言や嫌がらせの他、悪気はないのに病人を踏みつける人たちもいた。そんな時、家族や友人はどうすべきか?やがて気づいた大切なことを、暗い難病物語にはせず、笑いと感動で描いたノンフィクション映画である。
主人公・大滝隆太郎役には、太田監督が師事した大林宣彦監督の『花筐/HANAGATAMI』で主演した窪塚俊介。隆太郎の妹役で藤井武美、母役で田中美里、隆太郎をネットで応援する友人役で藤田朋子、佐野史郎らが出演。


もしも脳梗塞になったなら もしも脳梗塞になったなら もしも脳梗塞になったなら

2/21(土)~

じっちゃ!

じっちゃ!

©つがる市フィルムコミッション

2025年/日本/93分/配給:S・D・P
脚本・監督:千村利光
エグゼクティブプロデューサー:坂本憲彦、川嶋大史
プロデューサー:堀尾星矢
撮影:オカザキタカユキ
編集:見目田健
音楽:戸田有里子
出演:中村静香、小野武彦、小笠原海(超特急)、なだぎ武、しゅはまはるみ、篠田諒、木﨑ゆりあ、望月雅友、北野瑠華、鈴原ゆりあ、内山千早、ピンクレディ(りんご娘)、張間陽子、津田寛治

公式ホームページ

【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,400円(税込)を当館受付にて発売中!

青森へ移住した孫娘と、青森なのにメロンを作る祖父。
つがるの大自然の中で繰り広げられる新生活の末に明かされる“40年前の秘密”とは――

祖父の泰助が住む街という無難な理由で、地域おこし協力隊制度を利用し、東京からつがる市にIターン移住した三上ゆき。就職先の市役所で観光・ブランド戦略課に配属された彼女は、市の魅力を全国に発信するため、慣れない業務に苦戦しながらも、祖父との日々のやりとりに癒されながら乗り越えていく。やがて怒涛の1年が過ぎ、淡い恋心を抱いていた同僚から東京でのビジネスを持ちかけられ、心が揺れるゆき。そんなある夜、ゆきは、これまで多くを語ろうとしてこなかった泰助が40年間秘めてきた事実を聞く。そこには青森に住み続けた泰助の知られざる絆の物語があった―――。

「じっちゃは、ここ、つがる市で生きていた」―――
2人が見つけた、自分の“ふるさと”

つがる市市制施行20周年記念作品として製作された本作。新天地で観光・ブランド戦略課の仕事に邁進するゆきを演じるのは、『てぃだ いつか太陽の下を歩きたい』『レディ加賀』の中村静香。ある理由で青森から離れようとしない“じっちゃ”こと祖父の泰助を演じるのは、舞台、テレビ、映画で名バイプレイヤーとして活躍してきたベテラン、小野武彦。そのほか、超特急の小笠原海、なだぎ武、しゅはまはるみ、篠田諒、木﨑ゆりあ、望月雅友、北野瑠華、津田寛治らが出演する。監督・脚本を務めるのは、2011年に『けの汁』を青森で撮って以来、青森を“第二の故郷”と語る千村利光。本作でも、田園風景、馬市まつり、岩木山、木造駅など、つがる市内の風物、名所を随所に盛り込んでいる。生まれ育った土地だけが故郷ではない。故郷を離れた者、故郷を持たぬ者、そこに住み続ける者―――観る人すべての”望郷の思い“を呼び起こすハートフルストーリーがここに誕生した。


じっちゃ! じっちゃ! じっちゃ!

3/7(土)~

医の倫理と戦争

医の倫理と戦争

©2025 Siglo

2025年/77 分/ドキュメンタリー/ 日本語字幕付き
監督・撮影・編集:山本草介
企画:伊藤真美
プロデューサー:山上徹二郎
撮影:辻智彦、伊東尚輝
撮影助手:小林沙優
整音:永濱清二
カラーグレーディング:辻智彦
音楽:田中教順
共同製作:安全保障関連法に反対する医療・介護・福祉関係者の会、シグロ
出演:天羽道子、五十風逸美、池田恵美子、伊藤真美、川嶋みどり、倉沢愛子、胡桃澤伸、小島美里、沢田貴志、 徳田安春、西山勝夫、本田宏、宮子あずさ、吉中丈志
協力:「戦争と医の倫理」の検証を進める会

公式ホームページ

歴史の闇を堀り起こし、現代の医療現場が抱える問題に正面から向き合う

現在の日本の医療現場が抱える様々な問題の根底には、第二次世界大戦における医療関係者による戦争犯罪への加担と、その隠蔽という事実がある。石井四郎が率いた「731部隊」に所属する医師たちは、中国人への人体実験を繰り返し、敗戦後その事実を隠蔽しただけでなく、人体実験で得た“ 知見” を自らの功績にかえ、戦後日本の医学界の中心に上り詰めた。そうした負の歴史と向き合い、「医の倫理」を掲げて戦争反対の声を上げ続ける医療関係者たちがいる。本作では、731部隊の真実を追いながら、現在の医療現場が抱える様々な問題に取り組む医療関係者たちの今を取材した。

山本草介監督より
  「医」と「戦争」。これほどかけ離れたものはないだろう。命を救うのが「医」であり、命を奪うのが「戦争」だからだ。僕はこの映画を撮影するまで、当然「医」に携わるものは「戦争」に抗い、否定するものだと思っていた。だが、現実はそうではなかった。過去に医療者は実験と称した大量殺人さえし、現在も、反戦運動に関わるものは少数であり職場では異端とされる・・・ 。
 なぜなのだろう? 医療者がどれだけ努力を重ねて一人の命を繋いでも、一生かけて新しい治療法を開発しても、戦争が起こればすべてが無に帰すのに。僕は退院する患者を見送る医療者の笑顔を知っている。それが心から生まれたものであると知っている。力及ばなかった時の苦悩も見ている。
 しかし、だからこそ、この映画を世に出す必要があると思った。彼らに見てもらう必要があると思った。そして私たちの命への「倫理」そのものが脆く、いとも簡単に失われることを、僕はこの映画を作り、知った。


医の倫理と戦争 医の倫理と戦争 医の倫理と戦争

3/28(土)~

金子文子 何が私をこうさせたか

金子文子 何が私をこうさせたか

©旦々舎

2025年/日本/121分/製作・配給:旦々舎
監督:浜野佐知
企画:鈴木佐知子
脚本:山﨑邦紀
撮影監督:高間賢治(JSC)
制作:森満康巳
助監督:永関勇
編集:目見田健
音楽:吉岡しげ美
出演:菜葉菜、小林且弥、三浦誠己、洞口依子、吉行和子、菅田俊、白川和子、大方斐紗子、結城貴史、和田光沙、鳥居しのぶ、咲耶、佐藤五郎、足立智充、贈人、浅野寛介、森了蔵、関根大学、巣山優奈

公式ホームページ

【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,500円(税込)を当館受付にて発売中!

100年前、日本の国家権力に全力で抗った虚無主義者/無政府主義者・金子文子 死刑判決から獄中での自死に至る121日間を描く。

1923年9月、朝鮮人の虚無主義者/民族主義者の朴烈と共に検束され、1926年3月、大逆罪で死刑判決を受けた金子文子。恩赦で無期に減刑され、栃木女子刑務所に送られたが、7月23日、独房で自死した。没年23歳。金子文子は、なぜ死んだのか?大審院の死刑判決の後、栃木女子刑務所で自死するまで何があったのか。本作は、残された生の声を伝える短歌をもとに、これまで空白であった死刑判決から自死に至る121日間の、文子のたったひとりの闘いを描く。

メガホンを取ったのは、1971年にピンク映画で監督デビューし、300本を超える映画を監督・制作してきた浜野佐知。自主制作作品では、尾崎翠(作家)、湯浅芳子(ロシア文学者)、宮本百合子(作家)など100年前の日本で自らを曲げることなく生きた女性たちを描いてきた浜野監督が、長年映画化を切望し続けた金子文子の最後の孤独な闘いを監督人生の集大成として完成させた。主演には、菜葉菜。『百合子、ダスヴィダーニヤ』『雪子さんの足音』で浜野監督作品に出演し、その演技力から文子役として抜擢。最後まで国家権力に抵抗した文子の魂の叫びを体現した。また文子の同志・朴烈には、監督としても活躍している小林且弥。予審判事・立松懐清には、三浦誠己。ほか、浜野作品に馴染みの深い吉行和子、白川和子、大方斐紗子、洞口依子、鳥居しのぶに加え、和田光沙、咲耶、菅田俊、足立智充、結城貴史、佐藤五郎など個性的な俳優陣が集結。脚本は山﨑邦紀、撮影監督は高間賢治、音楽監督は吉岡しげ美。長野県松本市にある戦前の裁判所や刑務所を移築した「松本市歴史の里」などで撮影された。


金子文子 何が私をこうさせたか 金子文子 何が私をこうさせたか 金子文子 何が私をこうさせたか
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