12/6(土)~
旅と日々
© 2025『旅と日々』製作委員会
2025年/日本/89分/配給:ビターズ・エンド
監督・脚本:三宅唱
原作:つげ義春「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」
音楽:Hi’Spec
撮影:月永雄太
編集:大川景子
出演:シム・ウンギョン、堤真一、河合優実、髙田万作、佐野史郎、斉藤陽一郎、松浦慎一郎、足立智充、梅舟惟永
小さな旅や見知らぬ人との出会いが心の隙間を埋めていく――。
強い日差しが注ぎ込む夏の海。ビーチが似合わない男が、陰のある女に出会い、ただ時を過ごす――。脚本家の李は行き詰まりを感じ、旅に出る。冬、李は雪の重みで今にも落ちてしまいそうなおんぼろ宿でものぐさな宿主、べん造と出会う。暖房もなく、布団も自分で敷く始末。ある夜、べん造は李を夜の雪の原へと連れ出すのだった……。
恋愛や友情、仕事の同僚でもない、名のない関係性の登場人物たち。人と人、その背景にある時間と空気までをも丁寧にすくい取る。これまでの作品同様に、三宅唱監督はかすかなきっかけで心が回復していく様を描き出す。旅先での小さな出会いが、ほんのちょっと、それでも確かに人生を変えることがある。誰しもの人生に寄り添うようなあたたかく優しい視線が観る者の心をそっと包み込む、目にも耳にも鮮やかな傑作が誕生した。
第78回ロカルノ国際映画祭金豹賞《グランプリ》&ヤング審査員賞特別賞W受賞!!
世界が熱い視線を注ぐ三宅唱監督最新作
『ケイコ 目を澄ませて』(22)、『夜明けのすべて』(24)などで映画賞を席巻し、現代日本映画界を牽引する三宅唱監督の最新作『旅と日々』。原作は、つげ義春の「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」。2020年フランスのアングレーム国際漫画祭で特別栄誉賞に輝いた稀代の漫画家の、初版から50年以上を経た2作を三宅監督が見事な手腕で現代的にアップデートした。そして、世界で最も歴史ある国際映画祭の一つであるロカルノ国際映画祭にて日本映画では18 年ぶりとなる金豹賞《グランプリ》に加え、ヤング審査員賞特別賞をW受賞。既にUS、フランス、韓国、中国、台湾、香港、インドネシア、ポルトガル、ギリシャでの配給も決定するなど、世界が最も注目している日本映画監督と言っても過言ではない。
主人公・李を演じるのは、『新聞記者』(19)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞し、韓国出身ながら日本映画界に不可欠な俳優シム・ウンギョン。共演に映画、テレビ、舞台と縦横無尽に活躍する堤真一、2024年の映画賞を多々受賞した河合優実、話題作への出演が続く髙田万作、さらに、つげ義春作品に欠かせない俳優・佐野史郎を加え、屈指の実力派俳優陣が集結した。
12/6(土)~
はだしのゲンはまだ怒っている
© BS12 トゥエルビ
2025年/日本/90分/配給:アギィ
企画・監督・編集:込山正徳
プロデューサー:高橋良美、木村利香
共同プロデューサー:大島新、前田亜紀
制作:東京サウンド・プロダクション
制作協力:ネツゲン
宣伝協力:リガード
製作:BS12 トゥエルビ
イベント情報
12/6(土)上映後、込山正徳監督、大島新共同プロデューサーの舞台挨拶がございます。
一作の漫画が、なぜ、いまなお私たちを熱くするのか?
その〈誕生〉から〈現在〉を見つめるドキュメンタリー
アメリカが広島に落とした原子爆弾で被爆し、家族を失った少年ゲンが、貧困や偏見に苦しみながらも力強く生き抜く姿を描いた漫画「はだしのゲン」。主人公のモデルは6歳で原爆を体験した作者の中沢啓治さん自身です。「週刊少年ジャンプ」での連載が始まった1973年から半世紀、25ヶ国で翻訳出版され、2024年には漫画のアカデミー賞とも呼ばれるアメリカの「アイズナー賞」を受賞。手塚治虫さんや宮崎駿さんらに続き、殿堂入りを果たしました。しかしいっぽうで近年は、「描写が過激」「間違った歴史認識を植え付ける」などと、学校図書館での閲覧制限を求める声が上がったり、広島市の平和教材から消えるなどして、大きな議論を呼びました。なぜ、いまなお一作の漫画がこれほどまでに私たちを熱くするのでしょう?
戦後80年を経ても消えることのない怒りと悲しみ、そして優しさ
本作は、メディア・アンビシャス映像部門大賞、第15回衛星放送協会オリジナル番組アワード番組部門〈ドキュメンタリー〉最優秀賞などを受賞したBS12スペシャル「『はだしのゲン』の熱伝導 ~原爆漫画を伝える人々~」の映画化です。監督は「春想い 〜初めての出稼ぎ〜」「われら百姓家族」など数々の傑作ドキュメンタリー番組を手がけてきた込山正徳。映画化に際して、込山監督を敬愛してやまない大島新(『香川1区』『国葬の日』)と前田亜紀(『NO選挙,NO LIFE』)が共同プロデューサーとして参加しました。
“戦後80年”を迎えたいまもウクライナや中東では戦火が続き、核の脅威は決して過去のものではありません。映画は不朽の反戦漫画の誕生から現在を見つめ、私たちが生きているこの世界に溢れる、怒りや悲しみ、そして優しさを映し出していきます。
12/6(土)~
ザ・フー キッズ・アー・オールライト
©Who Group Ltd
1979年/イギリス/110分/英語/配給:オンリー・ハーツ
原題:The Kids Are Alright
監督:ジェフ・スタイン
音楽監督:ジョン・エントウィッスル(ザ・フー)
出演:ザ・フー(ロジャー・ダルトリー、ジョン・エントウィッスル、キース・ムーン、ピート・タウンゼント)、リンゴ・スター
字幕:福永詩乃
【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,300円(税込)を当館受付にて発売中!
老いる前に死にたいね
ロックをロックたらしめた最高最強の4人組
すべての反抗と冒険を肯定した魂のドキュメント
ビートルズ、ローリング・ストーンズと共にブリティッシュ・ロックの黄金期を牽引し、ロックを革新し続けたスーパーバンド、ザ・フー。それにもかかわらず全盛期の来日がかなわなかった彼らの1964年から1978年までの代表曲のライブパフォーマンスを中心に、プロモーションフィルム、インタビューなどを含む、ロック・ドキュメンタリー映画史上の傑作。
数多い歴史的なシーンの中でもとりわけ、本作のために1978年5月にシェバートン・スタジオで撮影された、伝説的天才ドラマー、キース・ムーン最後の渾身のパフォーマンス(32歳での死の3か月前、メンバー全員が死力を尽くした)がフィーチャーされているのは貴重。
監督ジェフ・スタインは、「直線的で年代順のドキュメンタリー」ではなく、「フィルムによるロックンロール復活集会」や「スリル満点のジェットコースター」のような作品を創り出そうと試みたという。
映画はキース・ムーン死後の1979年、73年のアルバム『四重人格』を原作とした映画『さらば青春の光』と同時公開されたが日本では未公開。
ザ・フー レコード・デビュー60周年、そして、彼らのほぼすべての曲を作ったピート・タウンゼントが80歳を迎える2025年、完成から46年を経て、全曲歌詞字幕付きで日本初劇場公開!
12/13(土)~
『よみがえる声』公開記念 朴壽南監督特集
『よみがえる声』公開記念
朴壽南監督特集
12/13(土)-19(金)
『よみがえる声』公開記念
朴壽南監督特集
12/13(土)-19(金)
沈黙を破る映像作家 朴壽南——
在日朝鮮人の歴史の闇に光を当てた人生の軌跡
広島や長崎で原爆被害を受けた朝鮮人、長崎の軍艦島に連行された徴用工、沖縄戦の朝鮮人元軍属、そして日本軍の「慰安婦」にされた女性たちの声なき物語を撮り続けてきた映像作家・朴壽南。全監督作品を上映することで、その貫かれた正義、その精神、そして偉大な軌跡に迫ります。この機会にぜひご鑑賞ください。
朴壽南 パク・スナム
1935年3月、三重県生まれ。在日朝鮮人2世。1958年、小松川事件の在日朝鮮人2世の少年死刑囚、李珍宇(イ・ジヌ)との往復書簡『罪と死と愛と』で注目を集める。1964年より植民地による強制連行、広島と長崎で被爆した在日朝鮮人一世の声を掘り起こし、証言集を出版。ペンをカメラにかえ、1986年『もうひとつのヒロシマ』初監督、1991年『アリランのうた−オキナワからの証言』、2012年『ぬちがふぅ(命果報)−玉砕場からの証言』、2017年『沈黙−立ち上がる慰安婦』、2025年『よみがえる声』最新作は、娘朴麻衣との初の共同監督。
公式ホームページhttps://nutigafu.wixsite.com/park-soonam
入場料 一般1,600円/会員・大専・シニア1,300円/高校生以下800円
『よみがえる声』のみ一般1,900円/会員・大専・シニア1,300円/高校生以下800円
イベント情報 朴壽南監督・朴麻衣共同監督の登壇
★上映後トークイベント 12/13(土)『沈黙』、14(日)『アリランのうた』、19(金)『ぬちがふぅ(命果報)』各13:40の回
★上映前舞台挨拶 12/14(日)『よみがえる声』16:20の回
上映スケジュール
| 12/13(土) | 12/14(日) | 12/15(月) | 12/16(火) | 12/17(水) | 12/18(木) | 12/19(金) |
13:40ー15:37沈黙-立ち上がる慰安婦 上映後トーク 朴壽南監督・朴麻衣共同監督 |
13:40ー15:20アリランのうた 上映後トーク 朴壽南監督・朴麻衣共同監督 |
13:40ー16:00ぬちがふぅ(命果報) |
13:40ー16:08よみがえる声 |
13:40ー16:15よみがえる声 |
13:40ー14:45もうひとつのヒロシマ |
13:40ー15:52ぬちがふぅ(命果報) 上映後トーク 朴壽南監督・朴麻衣共同監督 |
16:30ー19:00よみがえる声 |
16:20ー19:00よみがえる声 上映前舞台挨拶 朴壽南監督・朴麻衣共同監督 |
16:30ー19:00よみがえる声 |
16:15ー17:55アリランのうた |
16:30ー18:50ぬちがふぅ(命果報) |
15:00ー17:00沈黙-立ち上がる慰安婦 |
16:50ー19:20よみがえる声 |
18:05ー19:03もうひとつのヒロシマ |
17:15ー19:00アリランのうた |
予定表 横にスクロールできます
作品紹介
もうひとつのヒロシマ−アリランのうた
©1986朴壽南
1986年/58分/日本語・韓国語/カラー/16ミリ→Blu-ray
監督:朴壽南
撮影:星野欣一
編集:富塚良一
整音:甲藤勇
音楽:原正美
製作:青山企画、アリランのうた製作委員会
*2005年 山形国際ドキュメンタリー映画祭 在日特集
*2013年 被爆者の声をうけつぐ映画祭 正式出品
*2016年 釜山平和映画祭 正式出品
父や母たちは、未曾有の原爆惨禍を証言して、人類の未来を証言する
広島・長崎で十万人ともいわれながら、日本、南北朝鮮の政府からも棄民されてきた朝鮮人の原爆被爆の実態に初めて光をあてた監督第一作。1965年から広島、長崎、筑豊を旅して、南北の分断をこえた朝鮮人被爆者の沈黙を掘り起こし、73年に証言集を発表。85年からペンをカメラに替え、植民地下の強制連行と皇民化教育、差別と原爆障害に苦しむ同胞の声、治療のため来日した在韓被爆者の訴えをすくいとり、日本の反核運動に衝撃を与えた。
アリランのうた−オキナワからの証言
©1991朴壽南
1991年/100分/日本語・韓国語/カラー/16ミリ→Blu-ray
監督:朴壽南
撮影:大津幸四郎、宮内一徳
編集:富塚良一
整音:甲藤勇
音楽:原正美
製作:アリランのうた製作委員会
*2005年 山形国際ドキュメンタリー映画祭 在日特集
*2022年 ソウル国際女性映画祭 正式出品
私のあるべき場所はどこか。それを捜して、戦後なお隠蔽されてきた歴史の闇へ降りていった
歴史の闇に葬られてきた沖縄戦の朝鮮人「軍属」と「慰安婦」の実相を追う第二作。本作も死者の鎮魂と再生の思いに貫かれる。1989年、朴壽南は沖縄に移住し戦争体験を聞き取り、韓国の元「軍属」や日本兵ら100人以上を取材。慶良間諸島に強制連行された軍属の日本兵による虐殺や「慰安婦」の悲劇を明らかにする。「慰安婦」は「天皇の軍隊による性暴力」と提起した本作は、1990年代、日本の責任を問う韓国の元「慰安婦」の闘いを支えた。
ぬちがふぅ(命果報) -玉砕場からの証言-
©2012朴壽南
2012年/132分/日本語・韓国語・沖縄口/カラー/SD→Blu-ray
監督:朴壽南
撮影:大津幸四郎、照屋真治
録音:奥井義哉
編集:上嶋皓之、小俣孝行
音楽:原正美
制作コーディネーター:安井喜雄
助監督:朴麻衣
制作協力:プラネット映画資料図書館
製作:アリランのうた製作委員会
*2013年 第13回山形国際ドキュメンタリー映画祭 特別招待
*2013年 第18回あいち国際女性映画祭 正式出品
*2014年 第5回釜山平和映画祭大賞<夢見る平和賞>受賞
*2015年 CNEX 台北ドキュメンタリー映画祭 正式出品
私たちは恨の道で出会い、ぼう大な沖縄の民衆の「恨」を撮影してきた
沖縄人に強いられた「玉砕」(集団自決)と朝鮮から連行された「慰安婦」「軍属」の真実に迫る第三作。タイトルは命の幸せをかみしめる沖縄の言葉。1945年3月、米軍が上陸した慶良間諸島で日本軍の命令により玉砕の悲劇が起こる。2005年、元戦隊長らが自決命令は出してないと「大江・岩波沖縄戦裁判」を起し、教科書から「軍命」が削除される。真相を追い再び沖縄へ。玉砕訓示を聞いた男性や遺族の新証言を集めた。朝鮮人の「軍属」「慰安婦」と沖縄人の恨(ハン)を27人の証言で描く。
沈黙-立ち上がる慰安婦
©2017朴壽南
2017年/117分/日本・韓国/カラー/HD→Blu-ray
監督:朴壽南
撮影:大津幸四郎、ハン・ジョング、チャン・ソンホ 他
編集・プロデューサー:朴麻衣
音楽:ユン・ソンヘ
うた:イ・オクソン
ハングル題字:朴壽南
製作・配給:アリランのうた製作委員会
*2016年 第18回ソウル国際女性映画祭 正式出品
*第9回ソウル老人映画祭 正式出品
*第8回韓国DMZ国際ドキュメンタリー映画祭 特別賞<勇敢な雁賞>
ハルモニたちは半世紀の沈黙を破って、立ち上がった
韓国・忠清北道に暮らす李玉先(イ・オクソン)さん90歳は、17歳で北満州の日本軍慰安所に連行された。半世紀の『沈黙』を破り1994年、14人の仲間と日本政府に謝罪と個人補償を求めて直接交渉を開始した。日本軍の犯罪を証言し名誉と尊厳の回復を訴え3年にわたり再三来日した。2015年、多くの主人公が亡くなった今、日韓両政府が合意した「解決」は当事者の問いに答えているのだろうか―。苦闘を共にした朴壽南が密着記録と李さんの人生をつむぎ、生き証人たちの沈黙を未来に伝える。
よみがえる声
©2025朴壽南
2025年/148分/日本・韓国/カラー/DCP
監督:朴壽南、朴麻衣(共同監督)
助監督:佐藤千綋
撮影:大津幸四郎、星野欣一、照屋真治、朴麻衣、金稔万、キム・ミョンユン
編集・プロデューサー:朴麻衣、ムン・ジョンヒョン
フィルム復元協力:安井喜雄
*第74回ベルリン国際映画祭フォーラム部門 正式出品
*第28回釜山国際映画祭ドキュメンタリー部門最優秀作品賞
*第16回高円寺ドキュメンタリー映画祭コンペティション部門グランプリ
90歳を迎える映像作家・朴壽南と娘の朴麻衣が共同監督
歴史に埋もれる声なき者たちの物語を刻銘に記録したドキュメンタリー
約40年前から朴壽南が撮り続けていた16mmフィルムを基に制作された。広島や長崎で原爆被害を受けた朝鮮人、長崎の軍艦島に連行された徴用工、沖縄戦の朝鮮人元軍属、そして日本軍の「慰安婦」にされた女性たちの声なき物語を描き出す。時代の波に飲み込まれた記憶や歴史的事実を丹念に掘り起こし、多くの人々が見過ごしてきた真実に光を当てる。それは単なる過去の記録ではなく、私たちがいま直面する課題とも深く結びついている。
12/20(土)~
ネタニヤフ調書 汚職と戦争
©2024 BNU PRODUCTIONS LLC ALL RIGHTS RESERVED.
2024年/イスラエル・アメリカ/英語、ヘブライ語、アラビア語/115分/カラー/配給:トランスフォーマー
原題または英題:The Bibi Files
監督・製作:アレクシス・ブルーム
製作総指揮:アレックス・ギブニー
製作:ラヴィヴ・ドゥルッカー(兼・出演)、カラ・エルヴァーソン、デヴィッド・ラーツ
撮影:アヴネル・シャハフ
編集:アンディ・グリーヴ、ハリル・エフラト、グレイム・バトラー
音楽:ウィル・ベイツ
日本語字幕:額賀深雪
はじまりは小さな贈り物だった…。
極秘リークされたイスラエル首相の警察尋問映像により<恐るべき真実>が暴かれる!
いまなお終わりの見えないガザ・イスラエル紛争。この紛争のキーマンとされるのがカリスマ的なリーダーシップを持ちながらも、強硬的な政治姿勢で物議を醸すイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフだ。
しかし、彼が在任中に刑事起訴された史上初のイスラエル首相であることを国外の多くの人々は知らない。2017年、彼の汚職捜査の過程で秘密裏に制作チームにリークされた未公開の警察尋問映像には、メディアや財界との贈答や利益供与の実態が記録されていた…。
アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した『「闇」へ』(07)や同賞ノミネートの『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』(06)などで知られ、米エスクァイア誌にて「現代で最も重要なドキュメンタリー作家のひとり」と称されるアレックス・ギブニーが製作総指揮を務め、ユダヤ人の父とドイツ人の母の間に生まれ、『アニタ 反逆の女神』(24)の公開も控えるアレクシス・ブルームが監督を手掛けた本作は、ネタニヤフが有罪回避のため極右勢力と結託し、長期政権の下でイスラエルを分断し民主主義を危機にさらした過程を描き出す。
警察の尋問に対して高圧的に接し、自分に対する疑惑を徹頭徹尾「嘘」だと決めつけ、時には余裕たっぷりに映画『ゴッドファーザー』の有名なセリフ「友を近くに置け、敵はもっと近くに置け」を引用する、普段のニュースでは見ることのできない人間ネタニヤフの姿を垣間見ることができる。また、彼の汚職がいかに国家の腐敗を招いていったのかを証言するのは、イスラエルの国内諜報機関シンベトの元長官、ネタニヤフの元広報担当、著名な国内の調査報道ジャーナリストたちだ。
本国では上映禁止、親イスラエルの米国でも劇場公開されていないにも関わらず、国際的に注目を集め、昨年度のアカデミー賞ショートリストに選出されるなど大きな話題を呼んだ。
人間はなぜこうも権力に弱いのか? 権力者の“力への欲望”を白日の元に曝す、いま必見のドキュメンタリー!
はじまりは小さな贈り物だった…。極秘リークされたイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフとその側近たちの警察尋問映像には、ニュースの裏側にある彼らの隠された私生活が描き出されていた。その疑惑が公になったとき、ネタニヤフの権力への欲望は肥大化し、やがて恐るべき悲劇がもたらされる。
12/20(土)~
チャップリン
©The Caravan Trail, A.I.E, Kwanon Films Limited, and Submarine Sublime 2024
Charlie Chaplin™ © Bubbles Incorporated S
2024年/スペイン・ベネルクス・イギリス・フランス/94分/配給:アンプラグド
原題:CHAPLIN SPIRIT OF THE TRAMP
監督・脚本:カルメン・チャップリン
音楽:ナサニエル・メカリー
撮影:ケネス・オリベ
編集:フーリア・フアニス
出演:マイケル・チャップリン、ジェラルディン・チャップリン、ジョニー・デップ、トニー・ガトリフ、エミール・クストリッツァ、ストーケロ・ローゼンバーグ、リタ・カベルト、ファルキート
日本語字幕:渡邉一治
【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,600円(税込)を当館受付にて発売中!特典:フィルム風しおりをプレゼント!
【チャップリン家初の公認ドキュメンタリー】
“放浪紳士”の原点はここにあった――
チャーリー・チャップリンのルーツに迫る新たな物語
ドタバタ喜劇に庶民の哀愁や社会風刺を巧みに組み込んだユーモア溢れる作品を多く生み出し、世界中の人々を魅了してきたチャーリー・チャップリン。ちょび髭にだぶだぶのズボンと大きなドタ靴、ステッキと山高帽がトレードマークの“放浪紳士”に扮し、笑いの中にさみしさや孤独を抱え、社会のなかで弱い立場の人に寄り添う心優しいキャラクターで愛されてきた。そんな放浪紳士に垣間見えるのは、ロマのアイデンティティ。本作では、チャップリンがロマの血を1/8引き、そのことを誇りに思っていたことが明かされる。極貧の少年時代からアメリカを追放されスイスで過ごした晩年まで、映画の神様チャップリンのルーツに迫る新たな視点の物語。
チャップリンに関する作品や映像は数多く作られてきたが、本作はチャップリン家が全面的に協力し公認した唯一のドキュメンタリー。製作を担当し、劇中でチャップリンの足跡を辿るのは息子マイケル・チャップリン。父の名声と親の七光りという重圧に苦しんだマイケルが父子断絶を経て、その関係を見つめ直す。『ドクトル・ジバゴ』(65)などで知られる俳優で娘のジェラルディン・チャップリンらも出演し、家族だけが知る素顔を語る。本作の監督を務めるのも、孫カルメン・チャップリン。世界的な人気者でありながら、一人の人間で父親だったチャップリンを綴る。
さらに、ジョニー・デップやエミール・クストリッツァら、チャップリンを敬愛する各界の著名人も登場。『キッド』(1921)、『街の灯』(31)、『独裁者』(40)、『ライムライト』(52)など名作の引用に加えて、本邦初公開となる家族が撮影したプライベートフィルムや貴重な記録映像を交えながら、作品に投影されるチャップリンの幼少期の記憶やユダヤ人・共産主義者のレッテル、そして放浪紳士に通じるロマの特徴や文化までをも掘り下げる。
12/20(土)~
石井隆Returns
石井隆Returns
12/20(土)―12/26(金)
石井隆Returns
12/20(土)―12/26(金)
劇画家、脚本家、映画監督として、女と男の愛の物語を描き続けた、
唯一無二の映画作家・石井隆が、スクリーンに還ってくる
石井隆が、2022年5月22日に永眠してから今年の5月で、まもなく3年という月日が経つ。劇画家、脚本家、映画監督として、これまで数々の男と女の愛の物語を描き続けた、唯一無二の映画作家。この間、イギリス、フランス、北米などでワールドセールスが続々と決まるなど、海外で再評価が高まり、こうしたムーブメントを受けて90年代の傑作4本を一挙HDリマスター版上映が実現!石井隆の世界が、再びスクリーンに還ってくる!!
石井隆プロフィール
1946年7月11日生まれ。宮城県出身。映画監督を目指して早稲田大学映画研究会に入るために早大商学部に入学、在籍中に監督助手のバイトでダイニチの現場で映画を体験するも、諸般の事情で断念。在学中、劇画家デビュー。「天使のはらわた」(77年)が大ヒットし、78年から日活ロマンポルノにてシリーズ映画化され、原作者・脚本家として映画の現場に舞い戻り、88年、『天使のはらわた 赤い眩暈』で監督デビュー。大竹しのぶ、永瀬正敏、室田日出男出演『死んでもいい』(92)では、第33回テッサロニキ国際映画祭最優秀監督賞受賞、第10回トリノ国際映画祭審査員特別賞など国内外映画賞多数受賞。『ヌードの夜』(93)年ではサンダンス・フィルム・フェスティバル・イン・トーキョー’94グランプリなどを受賞。 『GONIN』(95)はロカルノ国際映画祭、トリノ国際映画祭など数々の映画祭に出品され国内は勿論、海外でも非常に高い評価を受ける。他主な映画監督作品に『夜がまた来る』(94)、『GONIN2』(96)、『黒の天使 シリーズ』(98·99)、『フリーズ・ミー』(00)、『花と蛇』(04)、『人が人を愛することのどうしようもなさ』(07)、『ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う』(10)など。13年は『フィギュアなあなた』、『甘い鞭』2本を監督、『GONINサーガ』(15)が遺作となる。
公式サイト https://mapinc.jp/ishii-takashi/
配給 ムービー・アクト・プロジェクト
配給協力 ミカタ・エンタテインメント
協力 ファムファタル、キングレコード、日活、キネマ旬報社、中央映画貿易、ダブル・フィールド
入場料一般1,900円/会員・大専・シニア1,300円/高校生以下800円
上映スケジュール
| 12/20(土) | 12/21(日) | 12/22(月) | 12/23(火) | 12/24(水) | 12/25(木) | 12/26(金) |
18:25ー20:25死んでもいい |
18:00ー19:55ヌードの夜 |
18:00ー19:35天使のはらわた 赤い閃光 |
18:00ー19:55夜がまた来る |
18:00ー19:55ヌードの夜 |
18:00ー20:00死んでもいい |
18:00ー19:55ヌードの夜 |
20:35ー22:10天使のはらわた 赤い閃光 |
20:10ー22:05夜がまた来る |
19:45ー21:40ヌードの夜 |
20:10ー22:10死んでもいい |
20:10ー21:45天使のはらわた 赤い閃光 |
20:10ー22:05夜がまた来る |
20:10ー22:10死んでもいい |
予定表 横にスクロールできます
作品紹介
死んでもいい
©サントリー/日活/ムービー・アクト・プロジェクト
1992年10月10日公開/117分
監督・脚本:石井隆
原作:西村望『火の蛾』
出演:大竹しのぶ、永瀬正敏、室田日出男、清水美子、岩松了、竹中直人
西村望『火の蛾』を原作に映画化。石井監督は本作のテーマについて「女と男の愛のありか(在り所)を三角関係という愛の形の中で探ろうとするものです」とコメント。純愛としての三角関係が招いた悲劇を描く。大竹しのぶが、2人の男から愛される人妻・名美を演じる。挿入歌に、ちあきなおみの「黄昏のビギン」が使用されている。第33回ギリシア「テッサロニキ国際映画祭」で最優秀監督賞を受賞。
ヌードの夜
©日活
1993年12月18日公開/110分
監督・脚本:石井隆
出演:竹中直人、余貴美子、椎名桔平、速水典子、岩松了、根津甚八
ヤクザを殺した女・名美と、その女に惚れた何でも屋・紅次郎によるハードボイルド・サスペンス。石井隆監督が劇画家時代から描く名美のイメージにそっくりな余貴美子が、監督第2作『月下の蘭』(90)に続き出演。石井監督のデビュー作から出演する竹中直人が、紅次郎(実は村木)を演じる。サンダンス・フィルム・フェスティバル・イン・トーキョー’94グランプリを受賞。
夜がまた来る
©テレビ東京/キングレコード/ムービー・アクト・プロジェクト
1994年10月22日公開/108分
監督・脚本:石井隆
出演:夏川結衣、根津甚八、寺田農、椎名桔平、竹中直人、余貴美子、永島敏行
ヤクザ組織に潜入した麻薬Gメンの夫が殺され、組織に復讐しようとする未亡人・名美と、その彼女を助けるヤクザの男・村木によるネオ・ノワール作品。名美役を映画デビュー間もない夏川結衣、村木役を、監督第2作『月下の蘭』(90)から石井作品の常連となる根津甚八が演じる。ほぼナイトシーン、長回しで展開する、名美と村木の物語の集大成的な作品。
天使のはらわた 赤い閃光
©テレビ東京/キングレコード/ムービー・アクト・プロジェクト
1994年9月10日公開/87分
監督・脚本:石井隆
出演:川上麻衣子、速水典子、鶴見辰吾、根津甚八
忌まわしい過去に悩まされ、男性恐怖症となった雑誌編集者・名美をヒロインにした、エロティック・サイコミステリー。泥酔しラブホテルのベッドで目が覚めると、隣には見知らぬ男の死体があった…。現実と妄想に翻弄される名美を川上麻衣子、その相手役となるフリーライターの村木役を、同年に公開された『夜がまた来る』と同じ根津甚八が演じている。
12/20(土)~
相米4K ふたつの創造 ふたつの感性
相米4K
ふたつの創造 ふたつの感性
12/20(土)―1/2(金)
相米4K
ふたつの創造 ふたつの感性
12/20(土)―1/2(金)
風のように速く、花のように美しく舞う――
相米は「ションベン・ライダー」(1983年)についてこのように語っている。「この作品は夏休みの間、ひたすら西に向かって走るという映画です」(A PEOPLE・刊「相米慎二 最低な日々」より)。風のように疾走するブルース(河合美智子)、ジョジョ(永瀬正敏)、辞書(坂上忍)。「ションベン・ライダー」が、「ションベン・ライダー 4Kレストア版」として遂に蘇る。4Kの映像監修は、数々の相米映画の助監督を担当した榎戸耕史が務めた。
“風”の映画が「ションベン・ライダー」なら、“花”の映画は「風花」(2001年)だ。あまりにも美しい、東京の桜の満開の元でのゆり子(小泉今日子)と廉司(浅野忠信)によるファーストシーン。その「風花」が「風花 4Kレストア版」として復活を遂げる。4Kの映像監修は本作のチーフ助監督だった高橋正弥が担当。
それぞれの映画がエッジを立てて、あるいはより繊細に儚く蘇る。「台風クラブ」(1985年)は「“水”の映画」であった。「お引越し」(1993年)は「“火”の映画」でもあった。「ションベン・ライダー」は「“風”の映画」である。「風花」は「“花”の映画」である。自然のあるがままのように、相米映画という存在は屹立している。2001年、9月9日、相米慎二は逝った――。53歳だった。風のように速く、花のように美しく舞った。その人生に私たちは“4Kレストア版”を通じて、また出会うのである。それは、再会ではなく新たな「ふたつの創造 ふたつの感性」とのはじめての邂逅である――。
相米慎二プロフィール
1948年1月13日、岩手県盛岡市生まれ。長谷川和彦や曽根中生、寺山修司の下で主にロマンポルノの助監督を務めたのち、『翔んだカップル』(80)で映画監督としてデビュー。82年6月、長谷川和彦、根岸吉太郎、黒沢清ら若手監督9人による企画・制作会社「ディレクターズ・カンパニー」を設立。『台風クラブ』(85)は第1回東京国際映画祭[ヤングシネマ]でグランプリを受賞。その後、『お引越し』(93)で芸術選奨文部大臣賞を受賞、第46回カンヌ国際映画祭ある視点部門に出品。『あ、春』(98)は1999年度キネマ旬報ベスト・テンの第1位に選出されたほか、第49回ベルリン国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞した。2001年、小泉今日子主演の『風花』を発表し、これが遺作となる。9月9日死去。享年53。
公式サイト https://www.apeople.world/sohmaishinji_4k/
配給 A PEOPLE CINEMA(エーピープルシネマ)
入場料一般1,900円/会員・大専・シニア1,300円/高校生以下800円
イベント情報
12/20(土)『ションベン・ライダー』上映後、河合美智子さんのトークイベントがございます。
作品紹介
ションベン・ライダー 4Kレストア版
©1983 kittyfilm
1983年/118分
製作:キティ・フィルム
原案:レナード・シュレイダー
脚本:西岡琢也/チエコ・シュレイダー
撮影:田村正毅/伊藤昭裕
照明:熊谷秀夫
美術:横尾嘉良
音楽:星勝
出演:藤竜也/河合美智子/永瀬正敏/鈴木吉和/坂上忍
数々の“相米伝説”シーンが次々に繰り出される一作
ジョジョ、辞書、ブルースの3人の中学生はガキ大将のデブナガにいつもいじめられていた。今日こそやっつけようというとき、そのデブナガが3人の前で誘拐されてしまう。デブナガの父が覚醒剤を垂れ流していることに腹を立てた横浜のヤクザ極龍会の仕業であった。誘拐した組員は山と政の二人組だが、マスコミはこの事件を派手に報道し、組ではもてあましていた。一方、ジョジョ、辞書、ブルースは横浜に向かい、極龍会の組員で、山と政を連れ戻すように命令を受けた中年のヤクザ、厳兵と出会う――。
7分にわたる冒頭のワンシーン・ワンカット。貯木場での追っかけあい。まさに相米伝説ともいえるシーンが次々に繰り出す。「セーラー服と機関銃」で興行的成功を収めた相米がエンジン全開でその世界観をブローアップした一作。公開当時同時上映だった「うる星やつら オンリー・ユー」の押井守は本作を観て衝撃を受け、「勝手にやっていいんだ」と翌年、傑作「ビューティフル・ドリーマー」を作り上げたという。関係者だけが観た「ションベン・ライダー」の3時間半を超える全長版があったが、もうそのフィルムは存在してないという――。
風花 4Kレストア版
©テレビ朝日/TOKYO FM
2001年/116分
製作:テレビ朝日、TOKYO FM
原作:鳴海章
脚本:森らいみ
撮影:町田博
照明:木村太朗
美術:小川富美夫
音楽:大友良英
出演:小泉今日子/浅野忠信/尾美としのり/鶴見辰吾/柄本明/笑福亭鶴瓶
相米慎二の遺作であり、新しい息吹が芽生えた一作
故郷・北海道に残した一人娘の香織に5年ぶりに逢いに行く風俗嬢のゆり子。泥酔し、コンビニで万引きしたことから、自宅謹慎を命じられている高級官僚の廉司。廉司は酔った勢いからゆり子の北海道への旅につきあうことになり、二人のぎくしゃくとしたドライブが始まった。だが実家に着いた義父の「東京で何をしたか知らないわけじゃない。娘の香織に逢わせるわけにはいかない」という言葉に返す術もなく実家を後にする。廉司には上司からの一方的な解雇通告が。行き場をなくした二人は雪の残る山奥へと向かっていく――。
相米映画に新しい流れが生まれた作品。小泉今日子と浅野忠信は、相米映画に初出演。阪本順治監督作品で知られる椎井友起子がプロデューサーを務めた。また、「鮫肌男と桃尻娘」などで知られた町田博はCMでのタッグを経て、初の相米映画のカメラマンに。一方で、相米映画のOBもズラリ。脇には鶴見辰吾、尾美としのり、寺田農、木之元亮、笑福亭鶴瓶(声)、柄本明らが出演。本作は2001年1月に公開。相米慎二は同年、9月9日に逝去。「風花」は相米慎二の遺作となった。
12/27(土)~
蘭島行
©KAMADA FILM
2024年/日本/84分/配給:鎌田フィルム
監督:鎌田義孝
脚本:中野太、鎌田義孝
音楽:山田勳生
撮影:新宮英生、田宮健彦
編集:中村和樹
出演:木村知貴、輝有子、足立智充、竹江維子、大橋哲郎、磯貝圭子、松橋勝巳、山野久治
【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,600円(税込)を当館受付にて発売中!
北緯四十三度 さまよう
東京に住む売れないパンクロッカーの佐々木芳夫(木村知貴)は、母が自殺を図ったという連絡を受けた。芳夫は妻のふりを頼んだ黒沢真紀(輝有子)を連れて、生まれ故郷の北海道蘭島に駆けつける。エリート建築デザイナーの弟・悟史(足立智充)を加えた3人は、母が目を覚ますまで奇妙な時間を過ごす。芳夫は母の日記に、「死んだら父の遺骨と一緒に海に散骨してほしい」と書いてあるのを目にした。母の願いを悟史にも告げ、芳夫たち3人は母の散骨場所を探しに出かけるが・・・。
人生の悲哀と明日へのかすかな希望が織りなす帰郷譚
本作は、運に見放されたパンクロッカーとその妻のふりをする天涯孤独の女、そして何年も会っていなかった弟との数日間を描く人間ドラマ。
監督は、『YUMENO ユメノ』『TOCKA [タスカー]』に続く、長編三作目となる鎌田義孝。前二作品と同様に本作も北海道で撮影、小樽市近郊の蘭島をロケ地に選んだ。音楽は山田勳生(『EUREKA』『はるねこ』)、共同脚本を中野太(『二人静か』『蒲団』)が担っている。
2025年2月に開催された世界三大ファンタスティック映画祭のひとつ、ポルト国際映画祭に出品され、監督週間部門コンペティションで主演男優賞(木村知貴)を受賞。ポルトガルの人々の心を魅了した。
12/27(土)~
さようなら昭和百年
さようなら昭和百年
闘う人々は美しい
2025/12/27(土)-2026/1/9(金)
さようなら昭和百年
闘う人々は美しい
2025/12/27(土)-2026/1/9(金)
昭和といえば娯楽映画の宝庫であり、楽しく優れた映画が数多く作られて来ました。
一方で、昭和といえば戦争の時代があり、多くの戦争映画も作られました。そして戦後民主主義の中で、労働者や市井の人々が権力に抗う映画もすばらしい映画がたくさん誕生しました。闘う人々の映画になぜこうも人は心動かされるのでしょうか。昭和を代表する監督たちの作品を上映することで、私たちを奮い立たせる闘う映画の持つ力に迫ります。
協力 アテネフランセ文化センター、映画美学校、KADOKAWA、近代映画協会、神戸映画資料館、独立プロ名画保存会、日活、北星映画、「山谷」制作上映委員会
入場料一般1,600円/会員・大専・シニア1,300円/ハンディ1,000円/高校生以下800円
トークイベント
1/4(日)16:10『山谷やられたらやりかえせ』上映後、小見憲さん(「山谷」制作上映委員会)
佐藤満夫監督と映画を引き継いだ山岡強一監督。お二人亡き後、撮影現場とあの時代のことを知る「こみけんさん」こと、小見憲さんにお話いただきます。
上映スケジュール
| 12/27(土) | 12/28(日) | 12/29(月) | 12/30(火) | 12/31(水) | 1/1(木) | 1/2(金) |
11:50ー13:31にあんちゃん |
11:50ー13:30裸の島 |
11:50ー13:35証人の椅子 |
11:50ー15:30ニッポン国古屋敷村 |
11:50ー13:51どっこい!人間節 寿・自由労働者の街 |
11:50ー13:45襤褸の旗 |
|
13:45ー15:40蟹工船 |
13:45ー15:40襤褸の旗 |
13:50ー15:40泥の河 |
14:00ー15:50山谷やられたらやりかえせ |
14:00ー15:41にあんちゃん |
予定表 横にスクロールできます
| 1/3(土) | 1/4(日) | 1/5(月) | 1/6(火) | 1/7(水) | 1/8(木) | 1/9(金) |
13:55ー16:05橋のない川 第一部 |
13:55ー16:00どっこい!人間節 寿・自由労働者の街 |
13:55ー15:47蟹工船 |
13:55ー15:50襤褸の旗 |
13:55ー17:45ニッポン国古屋敷村 |
13:55ー15:38証人の椅子 |
13:55ー16:05橋のない川 第一部 |
16:20ー18:40橋のない川 第二部 |
16:10ー18:00山谷やられたらやりかえせ 上映後トーク 小見憲さん |
16:00ー17:45泥の河 |
16:05ー17:45裸の島 |
17:55ー19:40泥の河 |
15:50ー17:51どっこい!人間節 寿・自由労働者の街 |
16:20ー18:40橋のない川 第二部 |
18:00ー19:43証人の椅子 |
18:00ー19:41にあんちゃん |
18:00ー19:50山谷やられたらやりかえせ |
予定表 横にスクロールできます
作品紹介
蟹工船
©北星
1953年/日本/112分/35mm/モノクロ/製作:現代ぷろだくしょん/作品提供:北星映画
監督・脚本:山村聰
原作:小林多喜二
撮影:宮島義勇、仲沢半次郎
音楽:伊福部昭
出演:山村聰、日高澄子、森雅之、河野秋武、森川信、平田未喜三、中原早苗
小林多喜二によるプロレタリア文学の名作小説を、山村聰が初監督。昭和初年、不況で仕事にあぶれた労働者や農夫たちが続々と函館港に集まっていた。彼らが乗り込むのは船内に加工設備を持つ蟹工船の博光丸。嵐の中で病人が続出するが、監督の浅川は労働者の体より作業を優先させる。ついに乗組員たちは仕事をボイコットし、監督に要求書を叩きつけるが…。
にあんちゃん
©1959日活
1959年/日本/101分/35mm/モノクロ/配給:日活
監督:今村昌平
原作:安本末子
脚本:池田一朗、今村昌平
撮影:姫田真佐久
音楽:黛敏郎
出演:長門裕之、吉行和子、二谷英明、松尾嘉代、沖村武、前田暁子、北林谷栄、芦田伸介
空前のベストセラーとなった十才の少女の日記を映画化。昭和28年、佐賀県の小さな炭鉱で炭鉱夫が息を引き取った。残された四人の子供たちは父に死なれた悲しみよりも、明日からの生活への不安がつのった。20才になったばかりの長男喜一が小さな弟や妹たちを養ってゆくなど無理な話だが…。貧しさに負けず、明るく逞しく生きる兄弟愛を描いた感動巨篇。
裸の島
©近代映画協会
1960年/日本/98分/35mm/モノクロ/製作:近代映画協会
監督・脚本:新藤兼人
撮影:黒田清巳
音楽:林光
編集:榎寿雄
出演:乙羽信子、殿山泰司、田中伸二、堀本正紀
瀬戸内海の孤島に住む夫婦と幼い兄弟の家族は、日々、痩せた土地を耕し、舟で水を汲みに行き、急斜面を登って運ぶ。夫婦の懸命な努力で、なぎさから頂上まで耕されている。ある暑い日の午後、突然長男が発病した。孤島へ医者が駈けつけた時、太郎はもう死んでいた。限られた登場人物と台詞を一切排除した野心作。製作スタッフ僅か13人で作られた。
*第2回モスクワ国際映画祭グランプリ
証人の椅子
©KADOKAWA1965
1965年/日本/103分/35mm/配給:KADOKAWA
監督:山本薩夫
原作:開高健
脚本:井手雅人
撮影:上村竜一
音楽:池野成
出演:福田豊土、吉行和子、新田昌玄、奈良岡朋子、樋浦勉、寺田誠、日色ともゑ
ある寒い夜明け、徳島のラジオ店主が殺害される事件が起きた。捜査が難航する中、住み込みの店員だった少年の証言で、被害者の内縁の妻・洋子が逮捕された。彼女は無実を主張するも有罪判決が下されるが、数年後ラジオ商殺しの犯人だと名乗る男が現れた。昭和28年に実際に起きた事件を題材に、冤罪疑惑を広く世に訴えた、監督入魂の一作。
橋のない川 第一部
©独立プロ名画保存会
1969年/日本/127分/35mm/モノクロ/製作:ほるぷ映画/作品提供:独立プロ名画保存会
監督:今井正
原作:住井すゑ
脚本:八木保太郎
撮影:中尾駿一郎
音楽:間宮芳生
出演:北林谷栄、長山藍子、伊藤雄之助、小沢昭一、寺田路恵、阿部寿美子
奈良盆地の一角にある小森という被差別部落で、誠太郎、孝二の兄弟は、祖母と母に温かく見守られ育てられていた。彼らを取り巻く差別する側の生徒、学校の理不尽。どんな場でも祖母は、どんなことにも屈せず、賢く、人間らしく生きることを身を持って教えていく。部落問題というタブーに挑んだ住井すゑのベストセラーの映画化。北林谷栄が演ずる祖母役が秀逸。
橋のない川 第二部
©独立プロ名画保存会
1970年/日本/140分/モノクロ/製作:ほるぷ映画/作品提供:独立プロ名画保存会
監督:今井正
原作:住井すゑ
脚本:佐治乾、今井正
撮影:中尾駿一郎
音楽:間宮芳生
出演:伊藤雄之助、北林谷栄、長山藍子、阿部寿美子、小沢昭一、原田大二郎、津田京子
誠太郎、孝二は社会人として働き始めるが、出身が分かる度に解雇される。教師として働く幼馴染まちえと再会した孝二は、彼女に差別による苦しい胸の内を明かす。米騒動が大阪でも起き、小森出身の者も捕まっていく。自立への道を歩み始めた部落の人々の長く苦しい生き様を描く。底流には監督自身の理不尽な社会を打ち砕きたいという情熱が流れている。
襤褸の旗
1974年/日本/115分/モノクロ/35mm/製作:映画「襤褸の旗」製作委員会/作品提供:神戸映画資料館
監督:吉村公三郎
脚本:宮本研
撮影:宮島義勇、関根重行
出演:三国連太郎、荒木道子、田村亮、志村喬
明治時代の栃木・群馬の渡良瀬川周辺で起きた足尾銅山の公害事件「足尾鉱毒事件」に材をとった作品。農民の苦しみを体感し公害と環境破壊に対して闘った田中正造代議士の半生を描いた本格的な劇映画で、実際に臭い土を食べるなど三国連太郎の熱演が語り草となっている。三里塚の農民と支援の労働者・学生が大挙出演協力したことでも知られる。
どっこい!人間節 寿・自由労働者の街
©映画美学校
1975年/日本/121分/16mm⇒DVD/モノクロ/製作:小川プロダクション/作品提供:映画美学校
構成:小川紳介
製作:伏屋博雄、白石洋子、朝日節子、飯塚俊男、福田克彦、林鉄次
撮影:奥村祐治(J・S・C)
録音:久保田幸雄
編集:小川紳介、田處苗樹、湯本希生
山谷、釜ケ崎とならんで日本三大寄せ場の一つ横浜・寿町。90軒の簡易宿泊所が密集し、5000人前後の人々が暮らす。小川プロの若手スタッフが約10カ月住みこみ、19時間ものフィルムを回した。スクリーンには、寿町の人々が次々と登場し、自分たちの過去を語り、未来への希望を語る。そして、そのうちのある者は、映画の完成を待たずに死んでしまうのである。
泥の河
©小栗康平事務所
1981年/日本/105分/35mm/モノクロ/製作:木村プロダクション/作品提供:小栗康平事務所
監督:小栗康平
原作:宮本輝
脚本:重森孝子
撮影:安藤庄平
音楽:毛利蔵人
出演:田村高廣、藤田弓子、朝原靖貴、加賀まりこ
宮本輝の処女作を原作に、大阪安治川河口を舞台に、河っぷちの食堂に住む少年と、対岸に繋がれた廓舟の姉弟との出会いと別れを描く。自主製作、自主公開という小さな取り組みから始まり、欧米はもとより旧ソ連邦、中国やアジア諸国にまでその配給をひろげ、製作から40年以上経た今日でも、名作として語り継がれている小栗康平監督のデビュー作。
ニッポン国古屋敷村
©映画美学校
1982年/日本/213分/カラー/16mm⇒DVD/製作:小川プロダクション/作品提供:映画美学校
監督・編集:小川紳介
製作:伏屋博雄
撮影:田村正毅
録音:菊池信之
音楽:関一郎
詩:木村迪夫
山形県上山市の蔵王山中に入った、戸数わずか8軒の古屋敷村とその住人たち。冷害による稲作被害の原因を科学的に究明する前半から、かつて盛んだった炭焼きと戦争体験などについて老人たちが個人史を語る後半まで、ひとつの共同体を舞台にしてニッポン国の歴史絵巻が展開する。小川紳介監督とスタッフは自ら農業を営み被写体と関係を築き上げていく。
*ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞受賞作
山谷やられたらやりかえせ
写真提供 大島俊一
1985年/日本/110分/16mm⇒Blu-ray/カラー/「山谷」制作上映委員会
監督:佐藤満夫、山岡強一
ナレーション:城之内元晴
音楽:蠱的態(大熊ワタル、篠田昌已ほか)
映画の冒頭は、山谷の路上に倒れた、微かにまだ息のある佐藤満夫監督自身の姿からはじまる。山谷労働者の姿を正面から撮影するドキュメンタリー映画制作に取りかかろうとしていた佐藤監督は、1984年12月22日早朝、日本国粋会金町一家西戸組組員の凶刃に斃れる。これは通例、物語の終了を意味するが、この映画では、むしろ物語の始まりとなっている。
1/3(土)~
手に魂を込め、歩いてみれば
©Sepideh Farsi Reves d’Eau Productions
2025年/フランス・パレスチナ・イラン/113分/配給:ユナイテッドピープル
監督:セピデ・ファルシ
プロデューサー:ジャヴァド・ジャヴァエリー
制作:Rêves d‘Eau Pro
登場人物:セピデ・ファルシ、ファトマ・ハッスーナ
廃墟のガザで撮影を続けるフォトジャーナリストと彼女を見守るイラン人監督―
1年にわたるビデオ通話で紡がれた 比類なきドキュメンタリー
イスラエルによるガザ攻撃が続いていた2024年、イラン出⾝の映画監督セピデ・ファルシは、緊急に現地の⼈々の声を届ける必要性を感じていた。しかし、ガザは封鎖されており⾏くことは出来ない。そこで、知り合ったガザ北部に暮らす24歳のパレスチナ⼈フォトジャーナリスト、ファトマ・ハッスーナとのビデオ通話を中⼼とした映画の制作を決意する。
以後、イランからフランスに亡命したため祖国に戻れない監督と、監督の娘と同じ年齢で、ガザから出られないファトマとのビデオ通話が毎⽇のように続けられた。そして、ファトマは監督にとってガザを知る⽬となり、監督はファトマが外の世界とつながる 架け橋となり、絆を築いていく。
ファトマは空爆、饑餓や不安にさらされながらも⼒強く⽣きる市⺠の姿や、街の僅かな輝きを写真に収め、スマホ越しにガザの様⼦を伝え続けた。監督が「彼⼥は太陽のような存在」と形容するように、彼⼥はいつも明るかったが、度重なる爆撃で家族や友⼈が殺されていくにつれ、表情を暗くしていく。そして悲劇はファトマをも襲う。2⼈が交流を始めて約1年後の2025年4⽉15⽇、本作のカンヌ映画祭上映決定の知らせを、ファトマは喜んだが、その翌⽇、イスラエル軍の空爆でファトマを含む家族7⼈が殺されてしまったのだ。
25歳になったばかりのファトマの死は、本⼈が「もし死ぬのなら、響き渡る死を望む」と書いたように、世界中に波紋を広げることになる。
©Sepideh Farsi Reves d’Eau Productions
©Fatma Hassona
©Sepideh Farsi Reves d’Eau Productions
1/9(金)~
CROSSING 心の交差点
©2023 French Quarter Film AB, Adomeit Film ApS, Easy Riders Films, RMV Film AB, Sveriges Television AB
2024年/スウェーデン・デンマーク・フランス・トルコ・ジョージア/ジョージア語・トルコ語・英語/106分/カラー/16:9/5.1ch/配給:ミモザフィルムズ
原題:Crossing
監督・脚本:レヴァン・アキン
出演:ムジア・アラブリ、ル-カス・カンカヴァ、デニズ・ドゥマンリ
字幕:横井和子
後援:スウェーデン大使館、デンマーク大使館
出会いと別れが交錯する街、イスタンブールで紡がれる、過去と未来をつなぐ心の旅
『ダンサー そして私たちは踊った』レヴァン・アキン監督最新作
ジョージアに暮らす元教師のリアは、行方不明になったトランスジェンダーの姪、テクラを探すため、テクラを知るという青年アチとともに、トルコ・イスタンブールへと旅立つ。しかし行方をくらませたテクラを見つけ出すのは想像以上に困難だった。やがてリアは、トランスジェンダーの権利のために闘う弁護士、エヴリムと出会い、彼女の助けを借りることに。なぜテクラはジョージアを離れたのか。東西の文化が溶け合うイスタンブールを舞台に、テクラを探す旅を通して、リア、アチ、エヴリム、3人の心の距離が、少しずつ近づいていく——。
監督・脚本を手がけたのは、前作『ダンサー そして私たちは踊った』(19)で、第92回アカデミー賞国際長編映画賞のスウェーデン代表に選出されるなど国際的に高い評価を受けた、レヴァン・アキン。階級やジェンダー、セクシュアリティといったテーマを一貫して探求してきたアキン監督は、本作『CROSSING 心の交差点』の制作にあたり、ジョージアのトランスジェンダーの少女と、彼女を支え続けた祖父との実話に着想を得、綿密なリサーチを重ねて、イスタンブールのトランスコミュニティを描き出した。エヴリム役には、実際にトランス女性であるデニズ・ドゥマンリを起用し、現地のクィアコミュニティからスタッフを迎え入れるなど、制作の姿勢にもリスペクトが込められている。
言葉も世代も文化的背景も異なる人々が、ときにすれ違いながらも、互いを分かり合おうと寄り添う姿を静かにあたたかく描き出した本作は、第74回ベルリン国際映画祭で、LGBTQ+をテーマにした作品に贈られる最も歴史のある映画賞であるテディ賞の審査員特別賞を受賞。映画批評サイトRotten Tomatoesでは、批評家たちから97%という高い支持を得た。
1/10(土)~
佐藤忠男、映画の旅
©GROUP GENDAI FILMS CO., LTD.
2025年/日本/98分/製作・配給:グループ現代
監督:寺崎みずほ
撮影:大久保千津奈(JSC)
録音:姫井信二
編集:遠山慎二
プロデューサー:川井田博幸
出演:佐藤忠男、秦早穗子、イム・グォンテク、シャージ・N・カルン ほか
【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,300円(税込)を当館受付にて発売中!特典:しおりをプレゼント!
映画評論家、佐藤忠男、
「映画」で世界を変えようとした男がいた――
日本で初めて、ひとりの映画評論家に迫った
ドキュメンタリーが誕生
日本を代表する映画評論家、佐藤忠男。独学で映画評論の道を拓き、70年にわたる評論家人生で日本映画史を体系化した功績、そして後年、ライフワークとしてアジア映画を発掘し、日本に先駆的に紹介した功績から、映画評論家として初めて文化功労者に選出された第一人者として知られる。また、アジアとの映画交流や後進の育成にも尽力し、韓国、フランス、モンゴル、ベトナムなどからも勲章を授与した唯一無二の存在である。庶民の目線から多岐に論じ、150冊を超す著作を有する映画評論の巨人をアジアへと突き動かすものは果たして何だったのか?2022年3月に91歳で逝去した佐藤忠男の映画人生を探るドキュメンタリー。
佐藤が学長を務めた日本映画学校(現日本映画大学)で教え子であった寺崎みずほが、カメラを手に2019年より密着。少年期の戦争経験、映画を通して受けたカルチャーショック、映画への憧れ、映画人生の長い道のりをともに歩いた最愛の妻・久子との出会い。そして1万本を優に超す映画を鑑賞した彼が「小津安二郎監督の『東京物語』と比肩するくらい、世界で一番好きな映画」と言い残した1本のインド映画『魔法使いのおじいさん』(G.アラヴィンダン監督)への想い……生前のインタビューや世界の映画関係者の証言から人物像を紐解くとともに、佐藤の“たからもの”を探しに、日本各地からアジアへと旅に出た。生涯、一途に映画を愛し続けた映画の伝道師が私たちに残したメッセージとは?日本で初めて、ひとりの映画評論家に迫ったドキュメンタリーが誕生した。
1/10(土)-1/23(金)
野田真吉特集 ゆきははなである
人々の暮らし、神々の宴
野田真吉特集
ゆきははなである
1/10(土)-1/23(金)
人々の暮らし、神々の宴
野田真吉特集
ゆきははなである
1/10(土)-1/23(金)
神事、暮らし、自然、経済活動、社会運動、科学…
縦横無尽、変幻自在の映画作家・野田真吉の視線はとどまらない
大学在学中に中原中也に師事し詩作に勤しんだ野田真吉は、卒業後の1937年にP.C.L映画製作所に入社。その後東宝文化映画部に所属し、農村の記録映画などを撮るが、戦争によって活動を休止し従軍する。敗戦後、復職し児童映画などを手掛けるが、東宝争議を闘い、退社。フリーになってからは、社会運動を記録し、企業・産業PR映画や実験映画を作り、松本俊夫らと新しい映画とその方法を唱え、芸術運動に関わっていった。1970年代以降は、以前から興味を持っていた民俗文化の映像化に本格的に取り組み、歴史的社会的に培われてきた日本人の意識構造の深部を映し出そうとした。
ハレとケ、生と死、私たちの根底に脈々とながれる不変のリズムを8作品4プログラムで刻む
あらゆるものが変貌を遂げた現代においても、人々はなぜ古来より続く神事に心惹かれるのか。なぜ自然とともにある暮らしに関心を持つのか。本特集では、野田が記録した多種多様な事象の中から、かつての人々の暮らしと祭りの姿を取り上げ、私たちの根底に流れる不変のリズムを探求する。
ドキュメンタリー作家として20世紀の日本人を見つめ、独自の理念と手法で解き明かそうとした野田真吉の映像世界の幕が開く。
野田 真吉 Noda Shinkichi
1913年愛媛県八幡浜市生まれ。父親は南宗派の画家・野田青石。早稲田大学仏文科在学中、中原中也に師事し、詩作を始める。1937年に卒業し、P.C.L.(同年に東宝映画に改組)に入社し文化映画部に配属。亀井文夫らと出会う。『郵便従業員』(1939)で監督デビュー。1941年に二度目の召集を受け、敗戦まで陸軍に所属。 戦後、東宝争議を闘い、退社。
1952年からフリーとして活動を開始し、産業PR映画、社会派記録映画、実験映画など様々な作品を手がける。この時期に、青森の末端の村に住む人々の営みを記録したドキュメンタリー映画『忘れられた土地 生活の記録シリーズ II』(1958)や、ミクロの世界に壮大なドラマを見出したPR映画『マリン・スノー 石油の起源』(1960)などの作家性溢れる代表作を制作。一方で、大島渚、吉田喜重らの「映画批評の会」、安部公房、島尾敏雄らの「現在の会」など、さまざまな集団に関わり芸術活動を行う。1955年には「教育映画作家協会」(のちの「記録映画作家協会」)を組織し、1964年には松本俊夫、土本典昭、黒木和雄、東陽一、小川紳介らと「映像芸術の会」を結成。機関誌の編集に携わり精力的に映画評論を執筆。『まだ見ぬ街』(1963)以降、自主製作映画を手がけるようになる。また日本テレビで放映された「ノンフィクション劇場」や「すばらしい世界旅行」など、ドキュメンタリー番組の制作にも携わる。1967年、佐々木基一らと杉並シネクラブを設立、自主上映活動にも取り組む。
1970年『冬の夜の神々の宴 遠山の霜月祭』を制作。以降は民俗映像に強い興味を持ち、近代化により消滅の危機に陥った祭りや伝統芸能、民俗行事を記録することに情熱を注いだ。 1978年、映像作家の北村皆雄、民俗学者の野口武徳、宮田登とともに「日本映像民俗学の会」を創設。
著書として、「日本ドキュメンタリー映画全史」(1984)、「ある映画作家 フィルモグラフィ的自伝風な覚え書」(1988)、「中原中也 わが青春の漂泊」(1988)、「映像 黄昏を暁と呼びうるか」(1991)がある。また1978年に第一詩集「奈落転々」、1982年に第二詩集「暗愚唱歌」を出版。
1993年、80歳で没。
公式サイト https://www.gnome15.com/noda-shinkichi/
企画・配給 ノーム
協力 亘純吉、資料映像バンク、神戸映画資料館、田中晋平、新日本映画社
入場料一般1,900円/会員・大専・シニア1,300円/高校生以下800円
作品紹介
Aプログラム
谷間の少女
1949年/モノクロ/49分
演出:野田真吉
撮影:浦島進
音楽:古関裕而
原作:白柳美彦
製作:湯原甫、米山彊
出演:岡村道子、浜村純、木下ゆづ子、亘幸子
山村の厳しい生活の中で、逞しく生きる子供たちのリアルな姿が輝きを放つ、児童映画の名作
栃木県湯西川の山村。山奥で炭焼を生業とする家の娘キサは村の学校に入る。学校までは険しい谷を越えなければならないが、キサは勉強も学友との交流も全てを楽しみ、学校生活を謳歌する。だが、ある日、火事で炭焼小屋が焼失し、キサは両親を手伝うため学校に行けなくなってしまう。それを知った友人たちは団結して復旧を手伝うことに。撮影先の湯西川の子供たちが出演し、衣装も現地調達で制作された。
農村住宅改善
1941年/モノクロ/20分(戦後公開版)
監督:野田真吉
撮影:福田三郎
編集:山田耕造
音楽:服部良一
監修:竹内芳太郎
「考現学」の祖、建築学者の今和次郎らによる東北農村住宅の実態調査を記録した貴重なドキュメンタリー
1940年、民家研究者でもあった建築学者の今和次郎らが「住宅は生活の容器である」という視点から東北一円の農村住宅の実態を調査した。その調査隊に随行し、苛酷な自然環境の中にある民家の実態を記録し、農村の生活改善の必要性を説いた作品。今回のバージョンは35分程度のオリジナル版を短縮し戦後公開したもの(オリジナル版は現存しない)。戦前の家の様子が克明に記録されており、資料としても貴重な作品。
Bプログラム
機関車小僧
1950年/モノクロ/45分
演出:野田真吉
脚本:野田真吉、内山義重
撮影:浦島進
音楽:大木正夫
製作:米山彊
出演:二口信一、亘幸子、大町文夫、原緋紗子、河村弘二
田園を走る蒸気機関車と機関士に憧れる少年。厳しい生活の中でも子供たちの未来に希望を込めた、野田的ネオレアリズモ作品
戦争で両親を亡くした小学6年生の明は、叔父夫婦の元で暮らしている。父と同じ機関士になることを夢みる明は機関士が力のいる仕事だと知るが、友人が持ち上げた大きな石を持ち上げられない。それでもあきらめない明は休暇で里帰りした姉に相談し、姉は応援を約束してくれる。姉が去る日、土産を渡そうと山に入った明に試練が…。野田は子供の視点に立ったリアリズムを追求しながら、子供たちの未来に希望を込めた。
忘れられた土地 生活の記録シリーズ II
1958年/モノクロ/30分
演出・脚本:野田真吉
撮影:高橋佑次
録音:大橋鉄矢
音楽:間宮芳生
解説:高島陽
高度経済成長の陰で取り残された人々の過酷な暮らし。観察者であろうとする野田の心の震えが滲み出た伝説の記録映画
下北半島のほぼ北東端、アイヌ語で“行き止まり”の意味を持つ尻労(しつかり)地区。人々は漁業と農業で生計を立てている。男は昔ながらの磯船の漁を続けているが、岩手から来る大謀網の漁船に為す術がない。女は日暮れまで田畑を耕している。親に代わり年長の子供が弟妹の面倒を見ている。観察者であろうとした野田が感情を抑えきれなかった過酷な環境。高度経済成長期の一つの現実を記録した野田の代表作の一つ。
Cプログラム
異形異類の面掛行列
1988年/カラー/18分
監督・構成・製作:野田真吉
撮影:田中茂、高坂政孝
録音:井上洋右、大塚正之
異形異類の面掛10人衆が軽快なお囃子に合わせて練り歩く鎌倉の御霊神社の祭礼「面掛行列」を、実験的な構成で見せる記録映画
面掛行列は鎌倉の御霊神社で行われる祭礼。奈良時代から伝わる伎楽の面や田楽の面をつけた10人衆が御霊神社から極楽寺の坂までを練り歩き、豊作・豊漁を祈願する。野田は1972年に神奈川ニュース映画協会の依頼で祭礼を撮影し、後にフィルムをもらい受けて私家版として本作を完成させた。前半は面掛行列をダイナミックに映し、後半は展示のように面を紹介するという、動と静を対比させた構成が実験的な記録映画。
冬の夜の神々の宴 遠山の霜月祭
1970年/モノクロ/37分
監督・編集・制作:野田真吉
撮影:長谷川元吉
撮影助手:亘真幸
録音:野田純
製作協力:大野耕司、松川八洲雄、岩佐寿枝、北村皆雄、一杉陽子、長野県下伊那郡上村下栗
信州遠山郷の神事「霜月まつり」。全国の神々を召喚し、怨霊を慰め一年の安寧を願う一夜の祭りを幻想的に映し出した、異色の記録映画
長野県飯田市遠山郷の「霜月まつり」。一年で日が最も短い冬至(旧暦の11月/霜月)に全国の神々を招き入れ、生命力の甦りを願う。夜を徹して行われる湯立神楽で、沸き立つ湯けむりの中、仮面をまとった神々や死霊の化身が舞う。この神事には一揆で滅ぼされた領主・遠山一族の怨霊を慰め祀る舞が組みこまれている。野田は説明を極力排して旅人のような眼で祭りを追い、神々が集う一夜を夢幻のように描き出した。
生者と死者のかよい路 新野の盆おどり 神送りの行事
1991年/カラー/36分
監督・構成・製作:野田真吉
撮影:亘真幸、大塚正之、岩崎充利、小川克己
録音:井上洋右
現地録音:菊地進平、大塚正之
製作協力:オフィスMAP
協力:新野高原踊りの会
3日間、町全体で夜通し踊り続ける「新野の盆踊り」。山間の集落で長い歴史をもつ伝統行事の心意をとらえたドキュメンタリー
長野県阿南町新野で盆に開催される「新野の盆踊り」。夜を徹した盆踊りで生者と死者が交歓する。踊り続けた三夜が明ける早朝、神送りが行われる。名残を惜しむ人々に道を阻まれながら運ばれた切子燈籠が燃やされ、盆に迎えた祖霊が東の空へと送リ出される。人々は振り返らずに「秋唄」を歌いながら家路につく。『ゆきははなである』を完成させた野田が5年に渡り新野に通って作り上げた、民俗神事芸能記録の集大成。
Dプログラム
ゆきははなである 新野の雪まつり
1980年/カラー/129分
演出・編集・制作:野田真吉
撮影:亘真幸
音響:井上洋右
タイトル:城所昌夫
ナレーター:高島陽
制作協力:大野耕司、大塚正之、小川克己、岩佐寿枝、亘知也
仮面仮装の神々がくり返し現れる「新野の雪まつり」。中世からつづく人々の心意を、祭りの中に見出そうとした記録。
長野県阿南町新野の伊豆神社と諏訪社を中心に13世紀頃から続く「新野の雪まつり」の記録。冬に舞い落ちる雪を稲穂の花に見立て、実りの先触れとして五穀豊穣を願う。夜を徹して行われる祭では「きょうまん(競馬)」「翁」などの仮面仮装の芸能が次々と行われ、実りをもたらす精霊「さいほう」の登場に場が沸き立つ。来る一年の生産に向けた農民の日常(ケ)の願いを、ハレの祭りの中に読み取ろうとした作品。
1/17(土)~
白の花実
©2025 BITTERS END/CHIAROSCURO
2025年/日本/110分/配給:ビターズ・エンド
英題::White Flowers and Fruits
監督・脚本・編集:坂本悠花里
プロデューサー:山本晃久
音楽:フジモト ヨシタカ
脚本協力:田中幸子、大江崇允
撮影:渡邉寿岳
出演:美絽、池端杏慈、蒼戸虹子、河井青葉、岩瀬亮、山村崇子、永野宗典、田中佐季、伊藤歩、吉原光夫、門脇麦
完璧な少女は、なぜ屋上から飛び降りたのか――?
これまでの少女映画が触れなかった、“死の向こう側”へ――
かつて観たことのない奇妙で美しい“ファントム・ファンタジー”、誕生。
周囲に馴染めず、転校を繰り返す杏菜が、新たな寄宿学校で出会ったのは、美しく完璧な少女・莉花。しかし、莉花は突然、屋上から飛び降りて命を絶ってしまう。残されたのは一冊の≪日記≫。ページをめくるたび、莉花の苦悩や怒り、痛み—— そして、言葉にできなかった“ある秘密”が浮かび上がる。その秘密に触れた杏菜と少女たちの心は揺さぶられ、初めて“自分”と向き合い始める。やがて日記から青白く揺れる“鬼火”のような魂が現れ、杏菜の心に静かに入り込む。その魂に導かれ、杏菜は予想もつかない行動へと踏み出す——。観る者は知らず知らずのうちに、その奇妙で美しい世界へと引き込まれていく。
第73回サン・セバスティアン国際映画祭New Directors部門のクロージング作品として選出され、現地のワールドプレミア上映後には熱い喝采を浴びた本作。
監督を務めたのは、『21世紀の女の子』(19)の一篇「reborn」で注目を集め、中編「レイのために」(19)や短編「木が呼んでいる」(20)など数々の映画賞を受賞した経歴をもつ坂本悠花里。少女たちの繊細な感情を耽美にすくいとった唯一無二の映像感覚で、鮮烈な長編映画デビューを飾る。
本作は、周囲に馴染めず転校を繰り返してきた主人公・杏菜が、転校先の寄宿学校で出会った、美しく完璧なルームメイト・莉花の突然の死をきっかけに、残された≪日記≫と、莉花の“魂”に静かに侵食され、心を揺るがせていく物語。
これまでの少女映画では描かれなかった、“死の向こう側”へとそっと踏み込んでいく、かつて観たことのない、“ファントム・ファンタジー”がここに誕生した。
1/23(金)~
黒の牛
© NIKO NIKO FILM / MOOLIN FILMS / CINEMA INUTILE / CINERIC CREATIVE / FOURIER FILMS
2024年/日本=台湾=アメリカ/114分/スタンダード&シネマスコープサイズ/5.1chサラウンド/白黒&カラー/配給:ALFAZBET/ニコニコフィルム/ムーリンプロダクション
監督・脚本・編集:蔦哲一朗
プロデューサー:市山尚三、エリック・ニアリ、黄インイク、アレックス・ロー
共同プロデューサー:饒 紫娟
撮影監督:青木穣
脚本:久保寺晃一、上田真之、熊野桂太
美術:部谷京子
衣装:大塚満
録音:岩間翼、大町響槻
サウンドデザイン:周震、松野泉
音楽:坂本龍一
出演:リー・カンション、ふくよ(牛)、田中泯、須森隆文、ケイタケイ ほか
製作:ニコニコフィルム、ムーリンプロダクション、CINEMA INUTILE、シネリック・クリエイティブ、フーリエフィルムズ
内なる宇宙と森羅万象。禅に伝わる「十牛図」から紐解く、大いなる円環
急速に変わりゆく時代。住む山を失い、放浪の旅を続けていた狩猟⺠の男は、山中で神々しい黑い牛と邂逅する。男は抵抗する牛を力ずくで連れ帰り、人里離れた⺠家で共に暮らしはじめる。生きるために大地を耕しはじめた男と牛だったが、自然の猛威の前に、息を合わせることができない。しかし、ある禅僧との出会いをきっかけに、次第に心を通わせていく──。
リー・カンション×⽥中泯 ×坂本⿓⼀
主演は、ツァイ・ミンリャン作品で知られる台湾の名優リー・カンション。映画『国宝』で歌舞伎役者・⼩野川万菊役で強烈な印象を残したダンサーの⽥中泯が禅僧として出演。音楽には、⽣前本作への参加を表明していた坂本⿓⼀の楽曲を使⽤し、場所や時代を超越した世界観をさらに深く印象づけている。
日本初70mmフィルムを一部使用、完成まで8年を要した壮⼤なスケールの映像詩
「フィルム以外では映画を撮らない」と明言し、独自の映像哲学を貫く蔦哲一朗監督。本作も全編をフィルムで撮影し、⻑編劇映画としては⽇本初となる70mmフィルムも⼀部で使⽤した。⽇本・台湾・アメリカの3か国が⼿を携えた国際共同製作で、8年もの歳月と想像を超える情熱の末に生み出された、壮⼤なスケールの映像詩である。
1/24(土)~
特集 ロッセリーニ×ゴダール[2つのゼロ年]
特集
ロッセリーニ×ゴダール
[2つのゼロ年]
特集
ロッセリーニ×ゴダール
[2つのゼロ年]
2人の巨匠が描く、2つの[ゼロ年]
第二次世界大戦後の廃墟と化したベルリンを舞台に、ひとりの少年を通して戦争がもたらす残酷さを描いたロベルト・ロッセリーニの『ドイツ零年』(1948)と、ベルリンの壁崩壊の翌年、東ドイツに潜伏していた老スパイの西側への帰還の旅を描いたジャン=リュック・ゴダールの『新ドイツ零年』(1991)。1945年をドイツにとっての《ゼロ年》と示し、戦後ベルリンの“虚無の廃墟”を冷徹に描いたロッセリーニに対し、ゴダールは東西ドイツが統合された1990年を《新ゼロ年》として、ふたたび“虚無の廃墟”にもどされたドイツを見つめ直した。戦後80年、東西ドイツ統一35年を迎える2025年、思いがけない、だが必然にみちた2作品の邂逅が実現する。
公式サイト https://www.zaziefilms.com/zero/
配給 ザジフィルムズ
入場料一般1,900円/会員・大専・シニア1,300円/高校生以下800円
前売券全国共通鑑賞2回券 2,600円(税込)を当館受付にて発売中!特典:ポストカードセットをプレゼント!
作品紹介
ドイツ零年
© Cinecittà Luce, CSC – Cineteca Nazionale, Cineteca di Bologna, Coproduction Office.
1948年/イタリア/74分/ドイツ語/モノクロ
原題:Germania anno zero
監督:ロベルト・ロッセリーニ
脚本:ロベルト・ロッセリーニ、マックス・コルペット、カルロ・リッツァーニ
撮影:ロベール・ジェイヤール
音楽:レンツォ・ロッセリーニ
出演:エドムント・メシュケ、エルンスト・ピットシャウ、インゲトラウト・ヒンツェ、フランツ・クリューガー
ナチス・ドイツが崩壊した1945年=[ゼロ年]
一人の少年を通して描かれる 戦争がもたらす残酷さ
ナチス・ドイツ崩壊後のベルリン。病弱で寝たきりの父、元ナチ党員で警察を恐れて家に引きこもる兄、家計を助けながら父の看病をする姉と、間借りした狭い部屋に暮らす少年エドモンドは、父と兄に代わってお金を稼ぐために、学校にも行かず、毎日廃墟のような街をさまよっている。ある日、エドモンドは小学校の担任教師だったエニングに街中で出会う。学校を追放され、今は闇商売に手を染めるエニングが説くナチス思想に、無垢なエドモンドは次第に感化され……。
新ドイツ零年
© BRAINSTORM 1991. Licensed through ECM Records GmbH
1991年/フランス/62分/フランス語、ドイツ語など/カラー
原題:Allemagne année 90 neuf zéro
監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
撮影:クリストフ・ポロック、ステファン・ベンダ、アンドレアス・エルバン
出演:エディ・コンスタンティーヌ、ハンス・ツィシュラー、クラウディア・ミヒェルゼン、アンドレ・ラバルト
字幕翻訳:堀 潤之
東西ドイツが統合された1990年=[新ゼロ年]
東ドイツに潜伏していた老スパイの“西”への帰還の旅
前年にベルリンの壁が崩壊した1990年のドイツ。西ドイツ側のスパイとして東ベルリンに30年間潜伏していた諜報員レミー・コーションのもとへ、軍情報部のゼルテン伯爵がやってくる。「すべて終わった」と告げられたレミーは、彼に勧められるがまま、西側への帰還を目指して東ドイツを大きく迂回する旅に出る。トーマス・マンの小説の登場人物を思わせる娘シャルロッテや、ドン・キホーテとサンチョ・パンサなど、様々な人々と出会いながらレミーは西側にたどり着く……。
1/24(土)~
テイク・ミー・サムウェア・ナイス
© 2019(PUPKIN)
2019年/オランダ・ボスニア/91分/配給:クレプスキュール フィルム
原題:TAKE ME SOMEWHERE NICE
監督・脚本:エナ・センディヤレヴィッチ
撮影:エモ・ウィームホフ
編集:ロット・ロスマーク
音響:ヴィンセント・シンセレッティ
音楽: エラ・ファン・デル・ワウデ
出演:サラ・ルナ・ゾリッチ、エルナド・プルニャヴォラツ、ラザ・ドラゴイェヴィッチ
オランダからボスニアへ 少女でも大人でもないアルマの”自分探し”の旅が始まる。
誰か連れ出して…この退屈な世界から
揺れるカーテンの隙間からのぞいたブティックのミラーが、ワンピースを選ぶ一人の少女を映している。アルマ──オランダ生まれのボスニア人。両親は戦火に揺れた祖国を離れ、オランダで彼女を育ててきた。やがて父はひとり祖国へ戻り、消息は遠ざかっていた。そんな父が入院したという知らせが届き、母に言われるまま、アルマはたったひとりでボスニアへと向かう。
ボスニアの空港で彼女を出迎えたのは、従兄のエミル。終始ぶっきらぼうな態度で、アルマをアパートに連れ帰っても言葉少な。やがて「急ぐから」とアルマを部屋に置き去りにしてしまう。キャリーケースは壊れ、荷物も取り出せないまま。居場所のない空間に身を持て余し、アルマは街へ出た。そして衝動のように、髪を金色に染める。その夜、アパートの扉の前で眠り込んでいた彼女に声をかけたのは、エミルの“インターン”を名乗るデニスだった。彼だけが、アルマの話に耳を傾けてくれる。
翌日。父のいる町・ポドべレジイェを目指し、小さなスーツケースを引いてバスに乗り込んだアルマ。だが休憩の間に、バスは彼女を置き去りにし、荷物だけを乗せたまま走り去ってしまう…。
この物語は、アルマ同様にボスニア生まれオランダ育ちのエナ・センディヤレヴィッチ監督による長編デビュー作。監督が心酔するジム・ジャームッシュ監督の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』に影響を受けて描かれた作品だ。男女3人の主要キャラクター、静的でミニマルな演出、ゆったりと流れる時間、そして余白に満ちた空間。さらにアイデンティティが不確かな主人公の”自分探し”という普遍的なテーマを追求した本作は、世界中から優れたインディペンデント映画が集うロッテルダム国際映画祭コンペティション部門でタイガーアワードを受賞し、国際的にも高く評価された。
少女から大人になるとは、どういうことなのだろうか。母と父という異なるアイデンティティを持つアルマの本当の居場所はどこなのか。オランダでもなくボスニアでもない、彼女にとっての素敵な居場所とは何だろう。
心地よい風と太陽、水の煌めき…アルマに「とびっきりの夏」はいつ訪れるのだろうか──。
1/24(土)~
アフター・オール・ディーズ・イヤーズ デジタル・リマスター版
©cinemadrifters
2010→2025年/マレーシア・中国・日本/98分/モノクロ+カラー/DCP/ステレオ
英題:After All These Years
監督・脚本:リム・カーワイ
撮影:メイキン・フォン・ビンフェイ(馮炳輝)
録音:山下彩
編集:奥原浩志、Phillip Lin
美術:Amanda Weiss
音楽:Albert Yu
配給:Cinema Drifters
宣伝:大福
出演:大塚匡将、ゴウジー(狗子)、ホー・ウェンチャオ(何文超)
リム・カーワイ幻のデビュー作が15年の時を経て蘇る
自己存在への恐怖、日常からの逃避を圧倒的な構造美で描き出した、鮮烈なるデビュー作
大阪を拠点に、香港、中国、バルカン半島などで映画を製作し、どこにも属さず彷徨う“シネマドリフター(映画流れ者)”を自称する映画監督リム・カーワイ。その原点となる『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』がデジタル・リマスター版として、15年の時を経てスクリーンに蘇る。
2010年、『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』は香港国際映画祭をはじめ、各国の映画祭で絶賛され、黒沢清監督は、「アジアのパワーと混沌が、ヨーロピアンな深い思索をもって構築され、最後にはまるでハリウッド映画のような興奮で観客の心を釘付けにする・・・世界映画の理想的なカタチがここにある。」と語った。
2000 年代末の混沌とした時代が生み出した、 無国籍インディペンデント映画の奇跡─
10年ぶりに故郷に帰ってきたア・ジェ。
しかし、家族でさえ彼の存在を知る者はいない─
唯一ア・ジェを覚えているのは、レストランの店主ラオ・ファンだけだ。
ラオ・ファンに連れられ、秘密の鍵を握る男に会いに行くが、ア・ジェは殺人の濡れ衣をきせられ処刑されてしまう…。
死んだはずのア・ジェが、再び街に戻ってきた。
空虚な日常を生きるラオ・ファンは、過ぎし日々に思いを寄せる。
町に起こる奇怪な事件をきっかけに、彼らは新しい人生を手に入れられるのか─
第一部で自己の存在についての恐怖と疑いを、第二部で退屈な日常生活からの逃避を、空想と幻想を通して描かれていく。
二つの異なった視点で世界を覗いたとき、観客は自然と白昼夢に引き込まれていく─
1/31(土)~
ただ、やるべきことを
©Nareun Cinema / Myung Films Lab.
2023年/韓国/101分/配給:太秦
英題:Work to Do
原題:해야 할 일
監督・脚本:パク・ホンジュン
製作:映画会社ナルン、ミョンフィルムラボ
撮影:チェ・チャンファン
編集:チョ・ヒョンジュ
音楽:イム・ミンジュ
出演:チャン・ソンボム、ソ・ソッキュ、キム・ドヨン、キム・ヨンウン、チャン・リウ、イ・ノア、カン・ジュサン、キム・ナムヒ
【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,500円(税込)を当館受付にて発売中!
第28回釜山国際映画祭“今年の俳優賞”受賞!
2010年代、韓国の造船業界が直面した深刻な不況――
リストラを実行する人事部社員たちの葛藤を描く、それぞれの選択の物語
組織の一員として「やるべきこと」、ひとりの人間として「やるべきこと」。ふたつの感情をぶつけ合いながら誰しもが働き、生きているだろう。映画『ただ、やるべきことを』はリストラで従業員を解雇しなければならない人事チームの社員たち、それぞれの決断をリアルに描く。
映画の舞台は韓国パク・クネ大統領の退陣を求める大規模な「ろうそくデモ」が行われた2016年、造船業は世界的不況に見舞われ多くのリストラと廃業があった。漢陽重工業入社4年目のジュニは人事チームに異動するとすぐ、リストラ対象者の名簿を作るように指示される。会社を立て直すためと自身を納得させ、やるべき仕事をこなしていくが会社都合で対象者が絞り込まれていき、親しい先輩と友人、そのどちらかを選ばなければならない状況に追い込まれていく――。
本作は『JSA』『建築学概論』などの制作会社ミョンフィルム(イ・ウン代表)が未来の韓国映画をリードする映画人育成を目的として設立した、ミョンフィルムラボ6期のパク・ホンジュン監督長編デビュー作品。造船会社の人事で働いた経験を基に、職業上の義務と個人的感情の間で板挟みになる労働者の心理を深い視点で描き出した。主演を務めたチャン・ソンボム(ドラマ「秘密の森」「新兵」など人気作に多数出演)は第28回釜山国際映画祭「今年の俳優賞」を受賞。リアリティーを極限まで高めた俳優陣の演技が称賛された。
従来の映画の多くは解雇される人々が会社と一戦交える物語でありそれは勝利の、逆転の、希望のドラマだ。しかし、現実はそんなに輝かしいものではない。本作はリストラを実行する人事部社員の視点から、労働者と会社の対立、その間に幾重にも重なる様々な悲劇と哀しみを映し出し、労働映画に新たな角度から迫る。理想と現実の間でもがきながら生きる、わたしたちの物語がそこにはある。
2/7(土)-2/20(金)
中央アジア今昔映画祭 vol.3 ウズベキスタン特集
中央アジア今昔映画祭 vol.3
ウズベキスタン特集
2/7(土)-2/20(金)
中央アジア今昔映画祭 vol.3
ウズベキスタン特集
2/7(土)-2/20(金)
新旧6作品でウズベキスタンを堪能する、
温故知新のシネマトリップ
中央アジアのほぼ中心に位置するウズベキスタン。激動の長い歴史を経たこの国は、現在中央アジア諸国最大の人口を有し、著しい経済成長を続けている。そしてこの国は、欧州・中東・アジアの歴史・文化が交わり、独自の映画が生み出されてきた知られざる映画大国でもある。中央アジア今昔映画祭第3弾は、中央アジア≪ウズベキスタン≫の旅へ。
ウズベキスタン共和国
面積は日本の約1.2倍の44万7400平方キロメートル。人口は3,700万人を超え、中央アジア最大の人口を有する。首都はタシュケント。宗教は主にイスラム教スンニ派。国家語はテュルク諸語のひとつのウズベク語だが、ロシア語も広く通じる。
古来よりシルクロードとして知られる東西の交易路として栄えるが、19世紀後半にロシア帝国に組み込まれる。その後、ロシア内戦を経て、1924年にウズベク・ソヴィエト社会主義共和国成立。1991年8月にウズベキスタンとしてソ連からの独立を果たす。
サマルカンド、ブハラ、ホラズム州ヒヴァの歴史地区はいずれも世界遺産に登録され、世界中から訪れる観光客でにぎわう。
公式ホームページhttps://trenova.jp/centralasia3/
主催・企画・配給トレノバ
協力梶山祐治、ノーム
入場料 一般1,900円/会員・大専・シニア1,300円/高校生以下800円
作品紹介
きみに夢中 日本劇場初公開
1958年/ソ連/79分/ロシア語、ウズベク語/カラー
原題: Maftuningman
監督:ユルダシ・アグザモフ
脚本:トゥラブ・トゥラ
撮影:ミハイル・クラスニャンスキー
音楽:イクラム・アクバロフ、ムタリ・ブルハノフ、マナス・レヴィエフ
出演:クララ・ジャリロワ、サナト・ディヴァノフ、ラノ・ハムロクロワ、トゥルグン・アジゾフ、アッバス・アジゾフ
ウズベキスタン最初のミュージカルコメディとして、大ヒットを記録した作品。劇中の歌の数々は、ウズベク人の記憶に長く留まることになった。1950年代のウズベキスタン各地の人々の服装や街並みも必見。
タシュケントのスタジオではミュージカル映画『きみに夢中』の撮影が行われているが、主役にふさわしい歌い手と踊り手が見つからない。監督はサマルカンド、ブハラ、フェルガナを回るスカウトの旅に出て、それぞれの地域で才能ある若者を見出していく。そうしてタシュケントに集められた若者たちは、力をあわせて映画の完成を目指す。
やさしさ 日本初公開
1966年/ソ連/70分/ロシア語/B&W
原題:Nezhnost
監督:エリヨル・イシムハメドフ
脚本:オデリシャ・アギシェフ
撮影:ディリシャト・ファトフリン
編集:R・ハムラエワ、マリヤ・チ モフェエワ
出演:マリヤ・ステルニコワ、ロディオン・ナハペトフ、ログシャン・ アグザモフ、マイヤ・マフドワ、サイダ・ボロディナ
60年代後半から70年代にかけて勃興したウズベク・ヌーヴェルヴァーグを代表する作品。夏のタシュケントを舞台に“やさしさ”によって絡み合う3つの恋と青春を、洗練されたスタイルで描く。
少年サンジャルは川で出会った年上の女性レーナに恋をするが、レーナの彼氏ティムールの登場で恋心は砕け散る。その夏、レーナとティムールたちは車で旅行に出て、友人の祖母の家に泊まる。彼女の孫娘マムラは、ティムールを一目見て惹かれる。夏休みが終わってもマムラは彼のことが忘れられず、カーニバルの日、街に会いに行く。
苦い果実 日本劇場初公開
1975年/ソ連/61分/ロシア語・ウズベク語/カラー
原題:Gorkaya yagoda
監督:カマラ・カマロワ
脚本:ヤロスラフ・フィリッポフ
撮影:アレクサンドル・パッン
美術:ナリ マン・ラヒムバエフ
音楽:ルミル・ヴィルダノフ
出演:シャヒダ・ガフロワ、シャフナズ・ブルハノワ、 ベクゾッド・ハムラエフ、ババ・アンナノフ、アント ニーナ・ルスタモワ
ソ連時代から現在まで、中央アジアの女性監督としてもっとも⾧く活動したカマラ・カマロワ。彼女の近年 再評価されている⾧編デビュー作。少年少女たちが大人になる過程を彼らの友情や恋愛とともに描く。
13歳のナルギズはバレエや読書が好きな少女で、不良少年のエルキンに惹かれている。エルキンは夢見がちなナルギズをバカにするが、内心では彼女に好意を持っている。夏休みに祖母の元へやってきた ラリはナルギズの親友だが、ナルギズとエルキンが親しくなっていくにつれ、ラリとナルギズの関係も変化していく。
UFO少年アブドラジャン
1992年/88分/ウズベキスタン/ウズベク語、ロシア語/カラー
原題:Abdulladzhan, ili posvyashchaetsya Stivenu Spilbergu
監督:ズリフィカル・ムサコフ
脚本:リフシヴォイ・ムハメジャノフ、ズリフィカル・ムサコフ
撮影:タルガト・マンスロフ
編集:ウルマスホン・テミロワ
出演:ラジャブ・アダシェフ、シュフラト・カユモフ、トゥイチ・アリポフ、トゥチ・ユスポワ、ジャヴロン・ハムラエフ
ソ連からの独立間もないウズベキスタンで公開され、国民の60%が劇場で鑑賞したという伝説的大ヒット作。スティーブン・スピルバーグへの手紙として物語られるユーモアたっぷりのSFドラマ。
ウズベキスタンのとある村の集会で、未確認飛行物体が近づいているというモスクワからの電報が読み上げられる。村人が半信半疑でいるなか、農夫バザルバイは奇妙な円盤が墜落するのを目撃する。そこには裸の少年が倒れていた。アブドラジャンと名付けられた少年は不思議な力を発揮し、村の集団農場に数々の珍現象が起こりだす。
熱いノン 日本初公開
2018年/ウズベキスタン/87分/ウズベク語/カラー
原題:Issiq non
監督・脚本:ウミド・ハムダモフ
撮影:ジャホンギル・イブラギモフ
美術:アリシェル・ウザコフ
音楽:タイル・クジエフ
出演:ザリナ・エルガシェワ、ムナヴァル・アブドゥ ラエワ、フェルザ・サイドワ、ロラ・エルタエワ、ラジズ・ラヴシャノフ
大人たちが出稼ぎのために去っていった村で祖母と暮らす少女。彼女の家族に対する心情を美しい映像で描 いた、近年のウズベク映画を代表する作品。第92回アカデミー賞国際⾧編映画賞ウズベキスタン代表。
家族と暮らすために施設を出て田舎にやってきたズリフィヤは、期待に胸を膨らませていたが、母親は家にはおらず祖母と暮らすことに。彼女は古い考え方を持つ祖母に対して反発を強くしていく。母親との電話もできない中、彼女の味方になってくれるのは、日課として熱いノン(=パン)を焼いている叔母だけだった。
ファリダの二千の歌 日本劇場初公開
2020年/ウズベキスタン/110分/ウズベク語、ロシア語/カラー
原題:Faridaning ikki ming qo’shig’i
監督・脚本:ヨルキン・トゥイチエフ
撮影:バホディル・ユルダシェフ
編集:フルシド・アリホジャエフ
美術:ベクトシ・ラジャボフ
出演:サノバル・ハクナザロワ、バフロム・マチャノフ、イルミラ・ラヒムジャノワ、ユルドゥズ・ラジャボワ、マルジョナ・ウリャエワ
ボリシェヴィキに対し、白軍とムスリムの反乱軍「バスマチ」が劣勢に立つ1920年代初頭のウズベキスタン西部。ソヴィエト化が進む中、一夫多妻で暮らす家族の揺らぎを描く。第94回アカデミー賞国際⾧編映画賞ウズベキスタン代表。
カミルは3人の妻とともに何もない田舎で暮らしている。ある日、彼は若い女性ファリダを4人目の妻として迎える。若く美しい妻の登場に、歳の近い妻は友達がやってきたように喜び、情熱的な妻は激しい嫉妬心に駆られる。その頃、ボリシェヴィキの軍隊が彼らの住む地域に進軍し、カミルたちは生き方の再考を迫られることになる。
2/7(土)~
ぼくの名前はラワン
ⓒ Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institute
2022年/イギリス/クルド語・英語・イギリス⼿話(BSL) /90分/提供:ニューセレクト/配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
原題:Name Me Lawand
監督・脚本:エドワード・ラブレース
出演:ラワン・ハマダミン
⽇本語字幕:杉⼭緑
バリアフリー字幕:⼾⽥紗耶⾹
⽇本語字幕及びバリアフリー字幕監修:那須映⾥、サミュエル・アッシュ
この世界は、きっと変えられるー。
難民としてイギリスに渡った “ろう者”の少年の成長を描く感動のドキュメンタリー
生まれつき耳が聞こえない<ろう者>でクルド人の少年ラワン。イラクでの生活にラワンの将来を案じた両親は、イギリスへ亡命することを決意。難民キャンプで1年を過ごした後、ある支援者の尽力で一家はイギリスに入国。ラワンはダービーにある王立ダービーろう学校に入学することに。
生まれて初めて手話を学んだラワンは、先生や友達とコミュニケーションを取ることで、周囲が驚くような成長を遂げていく。そんな中、ラワン一家は突然、イギリス政府から国外退去を命じられるのだった…
これまでSXSWやBFIロンドン映画祭などで高い評価を受けてきたイギリス人監督のエドワード・ラブレース。2019年にラワンと出会ったラブレースは、殻を破ろうとする彼に心動かされ、クルド人やろう者のプロデューサーらと撮影チームを組み、実に4年もの年月をかけてラワンの成長をカメラに収めていった。心に傷を負ったろう者の少年が、新天地での出会いと学びによって自分らしさを獲得していく過程を、ダイナミックで抒情的な映像と音楽で描写。そこに宿る圧倒的な没入感と心揺さぶる物語は世界中で絶賛され、ニューヨーク・ドキュメンタリー映画祭を始めとする各国の映画賞を席巻。世界を深い感動と共感で包んだ成長物語が誕生した。
2/21(土)~1週間限定
もしも脳梗塞になったなら
©シンクアンドウィル ⻘空映画舎
2025年/⽇本/102分/配給:渋谷プロダクション
監督・脚本:太⽥隆⽂
製作:鯛中淳
撮影監督:三本⽊久城
録⾳:⻄⼭秀明
助監督:植⽥中
編集:三本⽊久城
出演:窪塚俊介、藤井武美、⽔津亜⼦、久場寿幸、冨⽥佳輔、並樹史朗、酒井康⾏、嵯峨崇司、仁科貴、安部智凛、奈佐健⾂、川淳平、杉⼭久美⼦、⽥辺愛美、飯島⼤介、三輪和⾳、新宮⾥奈、宮本弘佑、鯛中蓮都、藤⽥朋⼦、⽥中美⾥、佐野史郎
「僕がなんでこんな病気に!」
他人の不幸を笑う奴ら?
涙と感動で綴る、実話の映画化
1人暮らしの映画監督・大滝隆太郎は突然、脳梗塞を発症。目がよく見えない。言葉もうまく出ない。心臓機能が20%まで低下、夏の猛暑で外出は危険。友人に電話しても「お前が病気?笑わせるなよー」と言われ、SNSに闘病状況を書いても、的外れな助言や誹謗中傷ばかり。「俺はこのまま孤独死?」と追い込まれるが、意外な人たちから救いの手が?本人には悲劇、周りの人たちには喜劇?病気と医療を笑いと涙で描く社会派現代劇。
脳梗塞を経験した映画監督が作った映画。
全部、本当の話。
困った時、役立ちます!
脳梗塞はよく聞く病気だが、詳しく知る人は少ない。それを体験したのが『向日葵の丘 1983年夏』『朝日のあたる家』等で知られる太田隆文監督。「僕の闘病生活が誰かの役に立てば」と、自身の経験を映画化した。彼は17年間休まず映画作り。そのために脳梗塞。心臓機能は危険値。両目とも半分失明。検査、治療、入院、手術、リハビリの日々を経験し、それを映画でリアルに再現。闘病中は、的外れな助言や嫌がらせの他、悪気はないのに病人を踏みつける人たちもいた。そんな時、家族や友人はどうすべきか?やがて気づいた大切なことを、暗い難病物語にはせず、笑いと感動で描いたノンフィクション映画である。
主人公・大滝隆太郎役には、太田監督が師事した大林宣彦監督の『花筐/HANAGATAMI』で主演した窪塚俊介。隆太郎の妹役で藤井武美、母役で田中美里、隆太郎をネットで応援する友人役で藤田朋子、佐野史郎らが出演。
2/21(土)~
じっちゃ!
©つがる市フィルムコミッション
2025年/日本/93分/配給:S・D・P
脚本・監督:千村利光
エグゼクティブプロデューサー:坂本憲彦、川嶋大史
プロデューサー:堀尾星矢
撮影:オカザキタカユキ
編集:見目田健
音楽:戸田有里子
出演:中村静香、小野武彦、小笠原海(超特急)、なだぎ武、しゅはまはるみ、篠田諒、木﨑ゆりあ、望月雅友、北野瑠華、鈴原ゆりあ、内山千早、ピンクレディ(りんご娘)、張間陽子、津田寛治
【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,400円(税込)を当館受付にて発売中!
青森へ移住した孫娘と、青森なのにメロンを作る祖父。
つがるの大自然の中で繰り広げられる新生活の末に明かされる“40年前の秘密”とは――
祖父の泰助が住む街という無難な理由で、地域おこし協力隊制度を利用し、東京からつがる市にIターン移住した三上ゆき。就職先の市役所で観光・ブランド戦略課に配属された彼女は、市の魅力を全国に発信するため、慣れない業務に苦戦しながらも、祖父との日々のやりとりに癒されながら乗り越えていく。やがて怒涛の1年が過ぎ、淡い恋心を抱いていた同僚から東京でのビジネスを持ちかけられ、心が揺れるゆき。そんなある夜、ゆきは、これまで多くを語ろうとしてこなかった泰助が40年間秘めてきた事実を聞く。そこには青森に住み続けた泰助の知られざる絆の物語があった―――。
「じっちゃは、ここ、つがる市で生きていた」―――
2人が見つけた、自分の“ふるさと”
つがる市市制施行20周年記念作品として製作された本作。新天地で観光・ブランド戦略課の仕事に邁進するゆきを演じるのは、『てぃだ いつか太陽の下を歩きたい』『レディ加賀』の中村静香。ある理由で青森から離れようとしない“じっちゃ”こと祖父の泰助を演じるのは、舞台、テレビ、映画で名バイプレイヤーとして活躍してきたベテラン、小野武彦。そのほか、超特急の小笠原海、なだぎ武、しゅはまはるみ、篠田諒、木﨑ゆりあ、望月雅友、北野瑠華、津田寛治らが出演する。監督・脚本を務めるのは、2011年に『けの汁』を青森で撮って以来、青森を“第二の故郷”と語る千村利光。本作でも、田園風景、馬市まつり、岩木山、木造駅など、つがる市内の風物、名所を随所に盛り込んでいる。生まれ育った土地だけが故郷ではない。故郷を離れた者、故郷を持たぬ者、そこに住み続ける者―――観る人すべての”望郷の思い“を呼び起こすハートフルストーリーがここに誕生した。
3/7(土)~
医の倫理と戦争
©2025 Siglo
2025年/77 分/ドキュメンタリー/ 日本語字幕付き
監督・撮影・編集:山本草介
企画:伊藤真美
プロデューサー:山上徹二郎
撮影:辻智彦、伊東尚輝
撮影助手:小林沙優
整音:永濱清二
カラーグレーディング:辻智彦
音楽:田中教順
共同製作:安全保障関連法に反対する医療・介護・福祉関係者の会、シグロ
出演:天羽道子、五十風逸美、池田恵美子、伊藤真美、川嶋みどり、倉沢愛子、胡桃澤伸、小島美里、沢田貴志、 徳田安春、西山勝夫、本田宏、宮子あずさ、吉中丈志
協力:「戦争と医の倫理」の検証を進める会
歴史の闇を堀り起こし、現代の医療現場が抱える問題に正面から向き合う
現在の日本の医療現場が抱える様々な問題の根底には、第二次世界大戦における医療関係者による戦争犯罪への加担と、その隠蔽という事実がある。石井四郎が率いた「731部隊」に所属する医師たちは、中国人への人体実験を繰り返し、敗戦後その事実を隠蔽しただけでなく、人体実験で得た“ 知見” を自らの功績にかえ、戦後日本の医学界の中心に上り詰めた。そうした負の歴史と向き合い、「医の倫理」を掲げて戦争反対の声を上げ続ける医療関係者たちがいる。本作では、731部隊の真実を追いながら、現在の医療現場が抱える様々な問題に取り組む医療関係者たちの今を取材した。
山本草介監督より
「医」と「戦争」。これほどかけ離れたものはないだろう。命を救うのが「医」であり、命を奪うのが「戦争」だからだ。僕はこの映画を撮影するまで、当然「医」に携わるものは「戦争」に抗い、否定するものだと思っていた。だが、現実はそうではなかった。過去に医療者は実験と称した大量殺人さえし、現在も、反戦運動に関わるものは少数であり職場では異端とされる・・・ 。
なぜなのだろう? 医療者がどれだけ努力を重ねて一人の命を繋いでも、一生かけて新しい治療法を開発しても、戦争が起こればすべてが無に帰すのに。僕は退院する患者を見送る医療者の笑顔を知っている。それが心から生まれたものであると知っている。力及ばなかった時の苦悩も見ている。
しかし、だからこそ、この映画を世に出す必要があると思った。彼らに見てもらう必要があると思った。そして私たちの命への「倫理」そのものが脆く、いとも簡単に失われることを、僕はこの映画を作り、知った。
3/28(土)~
金子文子 何が私をこうさせたか
©旦々舎
2025年/日本/121分/製作・配給:旦々舎
監督:浜野佐知
企画:鈴木佐知子
脚本:山﨑邦紀
撮影監督:高間賢治(JSC)
制作:森満康巳
助監督:永関勇
編集:目見田健
音楽:吉岡しげ美
出演:菜葉菜、小林且弥、三浦誠己、洞口依子、吉行和子、菅田俊、白川和子、大方斐紗子、結城貴史、和田光沙、鳥居しのぶ、咲耶、佐藤五郎、足立智充、贈人、浅野寛介、森了蔵、関根大学、巣山優奈
【前売券】全国共通特別鑑賞券 1,500円(税込)を当館受付にて発売中!
100年前、日本の国家権力に全力で抗った虚無主義者/無政府主義者・金子文子 死刑判決から獄中での自死に至る121日間を描く。
1923年9月、朝鮮人の虚無主義者/民族主義者の朴烈と共に検束され、1926年3月、大逆罪で死刑判決を受けた金子文子。恩赦で無期に減刑され、栃木女子刑務所に送られたが、7月23日、独房で自死した。没年23歳。金子文子は、なぜ死んだのか?大審院の死刑判決の後、栃木女子刑務所で自死するまで何があったのか。本作は、残された生の声を伝える短歌をもとに、これまで空白であった死刑判決から自死に至る121日間の、文子のたったひとりの闘いを描く。
メガホンを取ったのは、1971年にピンク映画で監督デビューし、300本を超える映画を監督・制作してきた浜野佐知。自主制作作品では、尾崎翠(作家)、湯浅芳子(ロシア文学者)、宮本百合子(作家)など100年前の日本で自らを曲げることなく生きた女性たちを描いてきた浜野監督が、長年映画化を切望し続けた金子文子の最後の孤独な闘いを監督人生の集大成として完成させた。主演には、菜葉菜。『百合子、ダスヴィダーニヤ』『雪子さんの足音』で浜野監督作品に出演し、その演技力から文子役として抜擢。最後まで国家権力に抵抗した文子の魂の叫びを体現した。また文子の同志・朴烈には、監督としても活躍している小林且弥。予審判事・立松懐清には、三浦誠己。ほか、浜野作品に馴染みの深い吉行和子、白川和子、大方斐紗子、洞口依子、鳥居しのぶに加え、和田光沙、咲耶、菅田俊、足立智充、結城貴史、佐藤五郎など個性的な俳優陣が集結。脚本は山﨑邦紀、撮影監督は高間賢治、音楽監督は吉岡しげ美。長野県松本市にある戦前の裁判所や刑務所を移築した「松本市歴史の里」などで撮影された。